・『〈映画の見方〉がわかる本 『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで』町山智浩
・キリスト教福音派の反知性主義
・キリスト教を知るための書籍
「アメリカの知識人階級と大衆のあいだに巨大で不健全な断絶があることが明白になった」
そう書いたのは『タイム』誌だが、最近ではなく、50年以上前の1952年の記事である。実は、こんな状況は今始まったことではなかった。'72年にマスコミや知識人、大学生の激しい反対運動にもかかわらずニクソンが再選された時も同じことが言われた。ずっとアメリカはこうだった。
アメリカ人は単に無知なのではない。その根には「無知こそ善」とする思想、反知性主義があるのだ。
1963年の名著『アメリカの反知性主義』で、歴史学者リチャード・ホフスタッターは、アメリカ人の知識に対する反感の原因のひとつにキリスト教福音主義を挙げている。福音主義とは、福音、つまり聖書を一字一句信じようとする生き方で(特に過激なのは聖書原理主義と呼ばれる)、自らを福音派とするアメリカ人は全人口の3割を占めている。彼らにとって余計な知識は聖書への疑いを増すだけであり、より無知なものほど聖書に純粋に身を捧げることができる。中世ヨーロッパでは聖書以外の書物に価値はなかったが、ルネッサンス以降、書物によって知識と論理的な思考が普及し、近代科学が生まれた。しかしその結果としてキリスト教信仰は弱体化した。しかし、アメリカでは福音派が何度となく巨大な信仰回帰運動を起こし、知性を否定してきた。たとえば福音派のドワイト・L・ムーディ牧師は「聖書以外の本は読まない」ことを誇りとした。
「アメリカの成人の2割は、太陽が地球の周りを回っていると信じている」という調査('05年ノースウエスト大学ジョン・D・ミラー博士)があるが、無理もないのだ。
ただ、福音派は元来、俗事にすぎない政治には関心が薄かった。それが強力な票田になることに気づいたのは共和党だった。
アメリカの大統領選挙は、各州ごとに決められた「選挙人」というポイントを、その州で過半数を取った候補が全取りするルールだ。だから2000年の選挙では得票数で勝ったゴアがブッシュに負けるという事態も起こった。この集計方式だと、都市のある東海岸や西海岸の州よりも、人口の少ない南部や中西部や西部の州のほうが1票の重さは重くなる。福音派は田舎に集中して住んでいるので選挙への影響力は大きい。教会やテレビ伝導で信者をごっそり投票に動員することもできる。
1980年の大統領選挙で、共和党は伝統的モラルへの回帰を唱えて彼らを取り込み、以後、福音派は共和党の強力な支持基盤になった。
【『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』町山智浩〈まちやま・ともひろ〉(文藝春秋、2008年/文春文庫、2012年)】
先日紹介したが、「アメリカの政財界人、最高裁判事等のエリートは、キリスト教のプロテスタント系の聖公会(せいこうかい)の信者が大多数です」(『宗教で得する人、損する人』林雄介)という話もある。信仰というよりは所属教団のコミュニティ性に束縛されるのだろう。
町山は昨今、完全に左方向へ舵を切ったが本書は良書である。かつてラジオ番組で父親が在日韓国人であることを吐露していたが、よもやここまで反日振りを発揮するとは予想だにせず。小田嶋隆も歩みを揃えて(町山vs.上杉隆バトルで)からあっち方向へ行ってしまった。一ファンとしては無念極まりない。
原理主義(ファンダメンタリズム)と聞けば日本人は自動的に「イスラム原理主義」を思うが、アメリカは立派なキリスト教原理主義国家である。ま、大統領が就任する際、聖書に手を置いて宣誓するような国だからね。アメリカ国民はあれを政教一致だとは言わない。で、大統領は「明白な天命」(マニフェスト・デスティニー)を国民に説くという寸法だ。アメリカ以外の国からすれば、全く「明白」ではないのだが。
アメリカではBLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動が活発になってから一気に左傾化が進んだ。彼らが振るう暴力をマスメディアは殆ど報じない。人権に名を借りた国内破壊工作だと私は考える。大統領選挙の混乱も酷かった。現職大統領がSNSを禁じられたのも長く歴史に刻まれる出来事である。それほどトランプが邪魔だったのだろう。左右のユダヤ勢力の抗争が背景にあったと囁かれている。
更に新型コロナ騒動が社会の変化をドラスティックに推し進めた。国家が国民を管理し、命令するようになったのだ。飲食店や航空会社、旅行代理店などは大打撃を受けた。工場の縮小・閉鎖も増えた。今後はビッグテックと国家の綱引きに注目する必要があるだろう。ウイルス感染については共同歩調をとっているように見える。