一昨年、エンジントラブルで修理をしたところ、ショップから「マフラーに穴が空いているので交換した方がよい」と言われた。ただしバイク屋は修理法については教えてくれなかった。私もその時は「交換するものなんだな」と思い込んでいた。それから穴を見た記憶がないから、「走ればOK」程度の浅い考えであったことがわかる。時折ビリビリする音が出る程度であった。
数日前から異音が激しくなり、マフラーを確認したところ付け根部分に亀裂が入っていた。異音は爆音へと成長を遂げ、目抜き通りで暴走族が振り返るほどになっていた。
「バイク+マフラー+修理」で検索すると
パテ埋め+
耐熱アルミテープ情報が出てくる。更に調べるとケミカル剤では長持ちしないことがわかった。一方、製造停止になったバイクのマフラーは中々見つかるものではない。だったら溶接しかないわな。
次に「バイク+マフラー+溶接+地域名」で検索した。どうもGoogleの反応が鈍い。そこで「溶接+地域名」にして片っ端からページを参照していった。時折「マフラー」が出てきた。
地域名を広域にしてみた。今行っている仕事の現場先も照会した。候補を三つに絞った。
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アート溶接工業所:横浜市
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KWD溶接工房:綾瀬市
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株式会社MT工業:厚木市
で、KWD溶接工房を選んだ。メールアドレスがなかったため電話連絡をした。今日足を運んだ。気さくな親方だった。私はアーク溶接の心得があるので、しばし溶接
談議に花が咲いた。マフラーを見てもらったところ、完全に付け根から外れていた。「ちょっと難しそうですね」と言う。私が「鉄板を巻いてはどうか?」と提案した。「できなくもないんですが、丁度サイズの合いそうな単管があるので合わせてみます」と応じた。「ここまで錆が酷いと簡単にはくっつかないかもしれません」とも。「やっつけ仕事で構わないから出来るだけのことをやって欲しい」と頼んだ。
マフラーの根元部分をグラインダーで切断し、単管を合わせ、コンクリートの床に這いつくばり、寝転がって溶接作業が行われた。年配の職人さんがバイクを傾けながら。到着してから1時間半後に修理は完了した。エンジンを始動すると以前より静かになっていた。ま、元々穴が空いていたわけだから。料金は6000円。私は安いと思った。設備+1人区と計算すれば1万円くらい吹っ掛けられるかなと考えていた。溶接の出来栄えも決して悪くない。
「これが駄目になればマフラーの錆びた部分ごとパイプを入れ替えることも可能です」と助言された。帰路につくと馬力まで少し上がった走りっぷりだ。「今朝までは気管切開された患者みたいな状態だったわけだな」と得心した。
マフラーは下部にあるため見落としがちだが、やはり普段からしっかり点検するのが正しい。少しでも錆が出ればワイヤーブラシやサンドペーパーで錆を落とし、錆止め程度の塗装を行うべきだ。更に被害が小さいうちの方が溶接しやすいのは当然である。転ばぬ先の杖に倣(なら)えば、「穴空く前の錆落とし」である。
この2~3日間というもの、騒音を撒き散らし心苦しい限りであった。ただただ、病人や要介護者、あるいは幼い子供たちの迷惑にならなければと切に祈ってきた。一度出した騒音は引っ込めることができない。我が悪業(あくごう)を謹んで謝する次第である。