めじろ台駅の前の道を城山方面へ向かうと山王坂がある。我が家からだと上り坂だ。殆どの人が坂の下で自転車を降りて押してゆく。私の自転車は「バイク」と呼べるほどの代物ではないが、21段変速なので何とか必死で漕(こ)いでゆく。ほぼ体力の限界に近い。
昨日、坂の下で3人の小学生が自転車を降りた。私は彼らを追い越した。坂の中ほどに掛かった時、私は自転車を押す小学生に抜かれた。少なからずショックを受けた。まだ低学年と思われる彼らは、半ズボンに長袖という軽装であった。まったく信じ難い話だ。私はといえばヒートテック上下、靴下2枚重ね、タートルネックの上にポケットがたくさん付いたベスト、ネックウォーマー、厚手の手袋とウールの帽子、そして防寒ズボンとダウンパーカーを着用していた。八王子の寒さはかくも手強いものだ。
私は二重のショックを受けた。3日間ほど寝込んでやりたい心境だ。太い溜息を吐いて呟いた。「わかったわかった、俺の負けだよ」と。そして「君らに譲るよ。未来を」と。
坂の上に栄光はなかった。少し心地よい敗北感が空に向かって広がっていった。
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目撃された人々(旧)
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