2021-06-05

オプション取引を学ぶ/『実戦のためのオプション』田中勝博


 八百屋にバナナを現金で買いに走るのが、現物取引。現金ではなくツケで買いに走るのが先渡し取引(フォワード取引)、1ヶ月後のバナナ購入を予約して、さらにキャンセル(反対売買)するかも知れないよと声を掛けるのが先物取引、家にあったリンゴを持ち出して、交換してよ!と頼むがスワップ取引、そして1ヶ月後に買う権利を頂戴!と頼むのがこれから勉強するオプション取引です。蛇足にはなりますが、リンゴとバナナの交換を将来の権利として売買するのがスワプション取引です。

【『実戦のためのオプション』田中勝博〈たなか・よしひろ〉(シグマベイスキャピタル、1998年)】

 2017年に読んだ。もちろん挫折している。オプションの概念を会得するのは難しい。時折思い出したようにオプション本を読んできたが一向に理解が進まない。買う権利(コールオプション)の買いと売りがあり、売る権利(プットオプション)の買いと売りがあるのだ。


 オプション最大の問題は「売り」の方が圧倒的に高確率で勝てるのだが、相場が大きく逆方向に動くと無限大の損失を被る点である。


 クレジット・スプレッドという手法を組めば損失は限定できるが、それでも素人が手を出せる世界ではない。

 本来は先物のヘッジとしてオプションは取引されている。例えば日経225先物を買った場合は、オプションのコールの買いかプットの売りを入れるという具合だ。要は日経先物の損失をオプションでカバーするのだ。もちろん利益も少なくなるわけだが、投資は生き延びてなんぼの世界なので確率の優位性に賭けるのが正しい。

 では手の内を明かそう。FRBは2022年まで量的緩和政策を継続するので株価は上がることが予測される。日経平均はかなり出遅れているため、史上最高値を更新し続けるダウが頭打ちになれば、アメリカのマネーが日本に流れ込む可能性もある。そう考えて私は5月から日経平均を買った(CFD)。

 今考えているのは来年以降の動きだ。2021年夏に開催されるダボス会議のテーマは「グレート・リセット」である。資本主義の支配者がこう掲げる以上、確実に世界システムは変更されるのだろう。新型コロナウイルス騒動はまさしく渡りに舟だ。米大統領選挙における民主党の勝利や、ゼロ炭素社会というムーブメントを鑑みると今後の世界は社会主義的色彩が強まるような気がする。

 リセットするためには大衆を手懐(なず)ける必要がある。つまり何らかのショック療法が行われるに違いない(『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン)。行き過ぎた資本主義の誤りを思い知らせるにはマーケットの暴落が一番手っ取り早い。失業率が高まれば国民は国家に依存する。大衆が放心状態に陥った瞬間が次代を築くきっかけとなるだろう。

 というわけで、「プットオプションの買い」一手で下げ相場に対応できるかどうかを勉強中である。

2021-06-02

野村雅一、嵐山光三郎


 挫折『身ぶりとしぐさの人類学 身体がしめす社会の記憶』野村雅一〈のむら・まさいち〉(中公新書、1996年)/ナンバ本で「誤った記録」として取り上げられることが多い作品だ。ナンバに関する箇所だけ読む。お婆さんの立ちションシーンから始まる巻頭に辟易させられる。品性下劣の見本であろう。既に物故しているようだが恥を書き残した感がある。

 挫折『新素人包丁記・海賊の宴会』嵐山光三郎〈あらしやま・こうざぶろう〉(講談社、1993年)/軽妙だが洒脱ではない。ま、この人の場合、下品で売っていたところがあるからね。因みに私は昔から嵐山光三郎となぎら健壱をよく間違える。そのいい加減さ、デタラメ振り、無責任を「不潔」という言葉で括ることができそうだ。不潔は動物に近づき、人間の顔を見えにくくする。やはり好印象は清潔感から始まる。濁ったものには近づかないのが一番だ。

2021-06-01

「肉」ではなく「骨」を意識する/『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓

 ・「肉」ではなく「骨」を意識する
 ・骨盤歩き

柳生心眼流の極意 平直行×菊野克紀
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン

身体革命

 ちょうどその頃、同大学(※桐朋学園大学)音楽科の教授を務める矢野や、演奏に体育を取り入れようと躍起になっていた。体の使い方が演奏をより良いものにするという確信からだったが、何を取り入れても常に物足りなさを引き摺っていた。
 ある日、甲野氏の『表の体育・裏の体育』(壮紳社)を読んだ。矢野を襲ったのは、「こんな身体運用が果たして人間に可能なのか」という驚き。さらに「可能ならば、演奏にも活かせるかもしれない」という閃(ひらめ)きだった。
 矢野はさっそく古谷に相談を持ちかけた。その古谷が矢野に紹介したのが、甲野氏の術理に傾倒していた長谷川だった。ここに古武術の叡智(えいち)に魅了された三人が結集することになる。それぞれの探求心が導いた“出会い”だったが、当時はまだ三人ともバスケットボール部のコーチを務めていたわけではない。この時点でスポーツを通じた金田との接点はなかった。
 だが、「縁は異なもの」という。98年、長谷川が同部のメンタルコーチに就任したのが、すべての始まりだった。古武術からのアプローチによるバスケット革命への序章である。

【『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦〈やの・たつひこ〉、金田伸夫〈かねだ・のぶお〉、織田淳太郎〈おだ・じゅんたろう〉(光文社新書、2003年)】

 甲野本はこれから読む予定である。上記7冊を読めばナンバ~常歩(なみあし)の概念は理解できる。ただし実際の動きはまた別の話である。

 ナンバが矢野・古谷・長谷川の出会いから始まったように、常歩(なみあし)もまた3人の出会いから始まった。まるで三国志のようなエピソードである。「三人寄れば文殊の知恵」と言うが、3人程度の情報交換が脳は心地よく感じるのだろう。5人以上になると損得が芽生え、10人を超えれば政治が頭をもたげる。

「コツをつかむ」という言葉がある。この「コツ」という文字を漢字に置き換えると、何があてはまるのか。
 答えは「骨」(こつ)である。ちなみに、広辞苑第四版をひもとくと、「骨」という漢字には、人体的な意味意外にこんな解釈が付け加えられている。
〈物事をなす、かんどころ。要領〉〈ほねのように、物事のしんとなっているもの。かなめ〉
 つまるところ、「コツをつかむ」とは、「かなめである骨の位置を把握する」「物事をなす骨の働きを熟知する」といった言葉に置き換えることができる。あるいは「骨に体の動きを覚えさせること」という意味にも繋がるかもしれない。
 実際、一流の板前が魚をさばくのに見事な腕前を見せるのは、その骨の位置をしっかり把握しているからである。まさに「コツをつかんだ」包丁さばきということになるだろう。

「骨を意識する」ことは重力を利用することにつながる。古武術は踏ん張らない。逆に膝の力を抜くのである。ナンバ歩きも同様で、拇指球に力を入れて蹴る動きを封ずる。踵(かかと)から着地するのではなく、足裏全体をそっと置く感覚で足を運ぶ。着地側の足も伸び切らないようにする。膝を真っ直ぐに伸ばす歩き方こそが膝痛の原因である。つまり、ありとあらゆる衝撃を柔らかくかわすところに日本の伝統的な振る舞いがある。

 尚、amazonの画像リンクを貼ってあるが、送料が480円も掛かるのでヨドバシドットコムか楽天ブックスで購入すればよい。

小森亨


日曜日の遊び方 「包丁修業」入門』小森亨〈こもり・とおる〉(雄鶏社、1994年)/昨日から読み始めた。目が行き届いた内容で読み物としてはこれ一冊でよさそうだ。庖丁本は写真中心のヴィジュアル系が多く、基本的な概念をつかみにくい。感覚を言葉で説明しにくいという事情もあるのだろう。片刃庖丁の刃にはスキというわずかな凹み部分があり、これが切れ味をよくしているという。ただし研いでいるうちにスキは失われてしまうが、素人だとスキを作るのは困難で直すなら購入店に頼むしかない。教科書本。雄鶏社〈おんどりしゃ〉はリーマンショックの影響で破産した。因みに書籍タイトルについてはamazonよりも私の方が正確である。