2019-08-19

プリーモ・レーヴィの最期/『プリーモ・レーヴィへの旅 アウシュヴィッツは終わるのか?』徐京植


『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』V・E・フランクル:霜山徳爾訳
『それでも人生にイエスと言う』V・E・フランクル
『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』プリーモ・レーヴィ
『休戦』プリーモ・レーヴィ
『溺れるものと救われるもの』プリーモ・レーヴィ

 ・プリーモ・レーヴィの最期

『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編
『石原吉郎詩文集』石原吉郎

 ある春の日、アウシュヴィッツの生き残り、67歳のプリーモ・レーヴィは、アパート4階の自宅前の手すりを乗り越え階下のホールに身を投げた。遺書はなかった。それから9年……。夫人はいまもひとりきりでその場所に暮らし続けている。私はこれから、その場所を見に行こうとしているのである。

【『プリーモ・レーヴィへの旅 アウシュヴィッツは終わるのか?』徐京植〈ソ・キョンシク〉(晃洋書房新版、2014年/朝日新聞社、1999年)】

 プリーモ・レーヴィの最期が自死であったのかどうかは判明していない。遺書もなかった。自死と断定しているのは多分本書だけではないか? それを確認するために読んだのだが、たったこれしか書かれていなかった。私は直ちにパタンと本を閉じた。

 67歳の老人が【誤って階段の手摺りを乗り越える】ことがあるだろうか? 仮に物を落としたとしても身を乗り出すことはまずない。少し経ってから覗く程度が普通だ。とすればそこに【明白な意志】があったと考えてよかろう。フッと風が吹くように死魔が訪れたのかもしれない。

 元々本書は読みたくなかった。徐京植〈ソ・キョンシク〉は曰く付きの人物だ。兄二人が韓国に留学していた際に北朝鮮のスパイとして韓国当局に逮捕されているのだ(学園浸透スパイ団事件)。冤罪とも伝えられているが、長兄の徐勝〈ソ・スン〉については朝鮮総連の活動家である張明秀〈チャン・ミンス〉の『徐勝(ソ・スン)「英雄」にされた北朝鮮のスパイ 金日成親子の犯罪を隠した日本の妖怪たち』が詳しい。

大高未貴氏「なぜ徐勝氏は立命館大学の教授でいられるのか」【虎ノ門ニュース】: テレビにだまされないぞぉⅡ


 徐兄弟は3人とも反日活動家である。日本を貶(おとし)め、罵り、足蹴(あしげ)にする彼らを信用するわけにはいかない。

プリーモ・レーヴィへの旅―アウシュヴィッツは終わるのか?
徐 京植
晃洋書房
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常識を疑え/『内なるシベリア抑留体験 石原吉郎・鹿野武一・菅季治の戦後史』多田茂治


『石原吉郎詩文集』石原吉郎
『望郷と海』石原吉郎
『シベリア抑留とは何だったのか 詩人・石原吉郎のみちのり』畑谷史代

 ・石原吉郎と寿福寺
  ・寿福寺再訪
 ・常識を疑え
 ・「戦利品」の一つとして、日本人捕虜のシベリヤ強制労働の道は開かれていた

『シベリア抑留 日本人はどんな目に遭ったのか』長勢了治
『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』立花隆

 しょくん、しょくんは、テンノウとかコウシツとかゆうものをもち出されると、畏れ多いと頭を下げる。
 しかし、考えろ、いったい、テンノウがなぜ尊いのか? と。
 そんなことを考えちゃいけない、と言うやつがいる、また考えたってわかるもんじゃないなどとも。けれども、ほんとに尊く畏れ多いものなら、それを考えれば考えるほど、尊さありがたさがしみじみ魂にしみこむものでなければならないはずだ。
 しょくん、ごまかされちゃいけない。よく考えろ。それを考えるな、などとゆうのは、何か後ぐらいところがあるんだ。手品の種が、ばれそうなんだ。(※菅季治が京大で学びながら、京都府立五中の嘱託教師をしていた頃、試験問題の裏に鉛筆で書いた文章。1943.11.20)

【『内なるシベリア抑留体験 石原吉郎・鹿野武一・菅季治の戦後史』多田茂治〈ただ・しげはる〉(社会思想社、1994年/文元社、2004年)※社会思想社版は「シベリヤ」となっている】

 圧力や熱は物質を変化させる。シベリア抑留は人々の地金(じがね)を炙(あぶ)り出し、純化した。

 菅季治〈かん・すえはる〉が上記文章を書いたのは1943年(昭和18年)のことである。日本が開戦以来初めて大敗を喫したミッドウェー海戦の翌年にあたる。戦局が日増しに厳しくなる中で26歳の青年が放った疑問は軍部の焦りを見事に照射している。仮に管が共産主義にかぶれていたとしても決して安易な天皇批判になってはいない。彼が批判したのは「盲信」であった。

 石原吉郎・鹿野武一・菅季治は三者三様の戦後を歩んだ。否、瀬島龍三〈せじま・りゅうぞう〉も香月泰男〈かづき・やすお〉も内村剛介〈うちむら・ごうすけ〉もそれぞれの道を歩んだ。シベリア抑留は人間を変えた。二度と元に戻ることはなかった。

 菅季治はシベリアで何を見たのだろうか? それが何であったにせよ、彼はもっと悲痛なものを帰国した日本で見たに違いない。プリーモ・レーヴィと同じだ。真の地獄はありふれた平和な日常の中にこそあるのだ。人間は人間の邪悪に絶望する。信じられるものがなくなった時、人間は人間であることをやめる。

2019-08-18

歯の構造に適した食べ物/『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆


 ・歯の構造に適した食べ物

『がん患者は玄米を食べなさい 科学が証明した「アポトーシス&免疫活性」のすごい力』伊藤悦男
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
・『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三

 なぜ米6:野菜3:肉(魚・卵)1が「きれいに代謝される」黄金比かというと、それは私たちの体が教えてくれます。
 まず歯の構造に注目してみましょう。みなさんは自分の歯が何本で、何種類あって、それぞれどんな働きを持つか分かりますか?
 歯はその動物が食べるべきものを食べやすい構造に設計されています。
 肉食動物は獲物を殺し、肉を引きちぎるために犬歯という尖った歯を持ち、草食動物は草や穀物を噛み切るために前歯の門歯があり、すりつぶすためにほとんどが臼歯を持ちます。
 では人間はどうでしょうか?
 人間は肉も草も穀物も食べる雑食ですが、その割合は【穀物をすりつぶす臼歯が62.5%、植物を噛み切る門歯が25%、肉を噛みちぎる犬歯が12.5%。】
 つまり、このバランスで食べるべきだというのが、長い歴史の中ででき上がった自然界のルールなのです。

【『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆〈おぎの・よしたか〉(マイナビ、2013年)】

 50歳を過ぎて健康オタクになることを決意した。私は果断に富む男だ。何でも決断が早い。で、何から手をつけようかと思案していた時に玄米を思いついた。早速調べた。そして「結わえる 寝かせ玄米 レトルトパック」を見つけた。


 私が購入した時は一食あたり250円くらいだと記憶するが今は300円を超えている。確かに美味かった。しかし体調の変化は全く感じられなかった。その後、別会社の商品も試したが「別にどうってことはねーな」という感想に落ち着いた。

 自分で炊いた方が手っ取り早いし、安上がりだろうと考えた。玄米ご飯は玄米を発芽させる手間がかかる。理想を言えばガス釜でご飯を炊いて、更に保温する必要があった。面倒だ。しかも玄米そのものが白米よりも値段が高い。玄米だけ食べて生きてゆけるのであればやってみる価値はあるが、料理もまともにできない中年男がそこまで打ち込むのは疑問だった。

 念には念を入れて更に調べた。マクロビオティックという宗教じみた食事法も知った。玄米食が癌に効果があることもわかった。そして玄米のデメリットも。

 ざっと紹介しよう。

 玄米には胚芽の部分にミネラルがたくさん含んでいるのに何故ミネラル不足になるのか?という質問をよく受けます。それは玄米の胚芽や表皮にフィチン酸という強力な排泄作用を持つ物質が多くあり、毒素を出して病気を治していく作用がありますが同時にミネラルも出していくのです。体内毒素とミネラルは別々の所に存在しているのではなく、毒素とミネラルはいっしょに存在しているのです。玄米食で体内毒素を出す時にミネラルも出ていくのです。

玄米食はなぜミネラル不足になるのか|間違いだらけの健康常識

玄米や灰汁(アク)の害について|間違いだらけの健康常識
野菜や果物、肉、魚介類はアクを抜かないと短命になる|間違いだらけの健康常識

そろそろ玄米が「健康食」か「不健康食」かに決着をつけようと思う
5年以上再発なしのガン患者が明かす!玄米食のデメリットとは?

 私は決断するのも早いが断念するのも早い。植物が昆虫などの外敵から身を守るために毒を発することは知っていた。その毒を以て体内の毒を制するのが薬草だ。薬とは毒の異名なのだ。

 荻野芳隆は株式会社結わえるの経営者である。本書も当然ながらマーケティングの一貫として受け止めるべきだろう。「穀物をすりつぶす臼歯」というのは間違いだ。島泰三著『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』によれば、古代の人類は骨を食べていたと考えられる。

 玄米が健康によいのであればご飯に煎り糠(ぬか)を振りかければ同じだろう。実際に私はやってみたが、やはり効果は感じられなかった。

桜沢如一の影響力/『ヨガによる病気の治し方』沖正弘

NHKが反日放送している理由は【電通】に乗っ取られているから




増補版 これでも公共放送かNHK! :君たちに受信料徴収の資格などない
小山 和伸
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2019-08-17

陰影の濃い北欧ミステリ/『湿地』アーナルデュル・インドリダソン


『罪』カーリン・アルヴテーゲン

 ・陰影の濃い北欧ミステリ

『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン
・『』アーナルデュル・インドリダソン
・『湖の男』アーナルデュル・インドリダソン
・『厳寒の町』アーナルデュル・インドリダソン
・『許されざる者』レイフ・GW・ペーション

ミステリ&SF

「子どもは哲学者だ。病院で、娘に訊かれたことがある。なぜ人間には目があるのかと。見えるようにだとぼくは答えた」
 エイナルは静かに考えている。
「あの子はちがうと言った」ほとんど自分だけに言っているつぶやきだ。
 それからエーレンデュルの目を見て言った。
「泣くことができるようによと言ったんです」

【『湿地』アーナルデュル・インドリダソン:柳沢由実子〈やなぎさわ・ゆみこ〉訳(東京創元社、2012年/創元推理文庫、2015年)】

 アーナルデュル・インドリダソンはアイスランドの作家で北欧ミステリを牽引する一人だ。エーレンデュル警部シリーズは15作品のうち4作品が翻訳されており、今のところ外れなし。ロシア文学同様、登場人物の名前に馴染みがなく覚えるのに難儀する。取り敢えず名前は声に出して読むことをお勧めしよう。

 北欧ミステリは陰影が濃い。そして内省的である。島国のせいかどこか日本と似たような印象もあるが、影の深さは非行と犯罪ほどの違いがある。例えばエーレンデュルの子供は二人とも別れた妻が引き取ったが姉のエヴァ=リンドは薬物中毒で弟のシンドリ=スナイルはアルコール依存症だ。

「泣くことができるようによ」――年を取ると泣くことが少なくなる。悲哀に耐える精神力はやがて柔らかさを失う。泣いてしまえばその後に必ずリバウンドがある。跳躍するためには屈(かが)む必要がある。涙は精神の屈伸なのだろう。涙を失った瞳の乾いた大人になってはなるまい。

2019-08-14

貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 フランスで最も有名なレストランの案内書といえば、『ミシュランガイド』である。いろいろと問題も指摘されているが、依然として非常に権威ある案内書であることには変わりない。一方、アメリカで同じ地位にあるのは、これまた有名な『ザガットサーベイ』である。どちらも、レストランの紹介と格づけを幅広く行っている点では、似たような案内書であるように見える。ただし、両者は、似ているようで、その本質は全く違うのである。
 フランスの『ミシュラン』の場合、レストランの格づけは、選び抜かれた専門家によってなされている。料理に詳しく味覚を鍛えた調査員が客を装ってレストランを回りながら、専門知識に基づいて評価を下すのである。一方、アメリカの『ザガット』では、一般読者の人気投票によってレストランの格づけが決められる。しかも、その投票権は、万人に対して同様に開かれている。誰の一票でも、一票は一票なのである。アメリカ型の民主主義は、エリートと庶民の質の差を認めない。むしろ、その差を消去することが民主的だと考えられている。だからこそ、頭数だけが問題にされるのである。おそらく、ミルやラッセルからすれば、『ザガット』的な決定法ほど、衆愚的なものはないということになろう。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 私が民主政よりも貴族政(エリート政治)を支持する理由がこれだ。ただし戦前のエリート(陸軍士官学校、海軍兵学校出身者)が大東亜戦争を敗北に導いた事実を忘れてはなるまい。

 かつて北大医学部の高名な名誉教授が「統計学的に見れば10人に1人は頭がおかしい」と語っていたことを忘れられない。amazonレビューを参照する際も「10人に1人は頭がおかしく、もう1人は結構おかしく、また1人は少しおかしい」という前提で3/10の声は無視するよう心掛けている。あと「運が悪い人」とか「相性が悪い人」なんかもいるんだよね。

 人口100万人あたりの国会議員数ランキングを見ると日本の国会議員数は少ない方だ(5.63人で168位)。個人的にはもっと減らして構わないと思う。そもそも500人で議論をするのは無理だろう。100人程度でよい。参議院は廃止して元老院を設ける。元老院は引退した政治家および専門家・学者で構成する。私は政党政治も民主政を阻害していると考える。政党はあってもいいが党議拘束は禁ずる。そして国会はカメラの出入りを自由にする。また国民が直接質問できる機会を設ける。

 官僚システムと裁判システムも変える必要があろう。更に腐敗を防ぐためにはしっかりとした賃金も必要だ。

選挙と民主政/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 代議制民主主義の定義に従えば、選挙で選ばれた者の発言力が大きければ大きいほど、その社会は民主的だということになり、選挙で選ばれてもいない者の圧力が幅を利かせるような社会は、極めて非民主的だということになる。国王であれ貴族であれ資本家であれ労働組合であれ宗教団体であれ市民団体であれ、選挙で選ばれてもいない者が、選挙で選ばれた者たち以上の発言力を持つのであれば、そもそも普通選挙で代表者を選ぶ意味など全くないのである。
 もちろん、それらの意見や立場を無視してよいというのではない。だが、選挙で選ばれた者たちが決定し、全体の奉仕者がそれを実行するという原則だけは、最大限に尊重されなければならないのである。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 それを書いた薬師院仁志が朝まで生テレビで橋下徹大阪市長(当時)に噛み付いたのには驚かされた(【朝生】に見る左翼知識人の無知と無恥 橋下改革断固支持: 依存症の独り言)。薬師院は左翼である。著書に『社会主義の誤解を解く』(2011年)があることからも明らかだ。

 薬師院が民主政を説くところに彼の二段階革命を推進する意志を見る。つまり共産党支持者であることが自動的に導かれる。

「社会主義の誤解を解く」のは勝手だが、社会主義国家が数千万単位で同胞を殺戮してきた事実は動かない。スターリン、ヒトラー、毛沢東、ポル・ポトの罪を彼はどう捉えているのか?

 社会主義は失敗した。左翼はその失敗から何一つ学ぼうとしない。その硬直した思考が時代から取り残されてゆく最大の原因だ。

 上記テキストは正しいのだが、薬師院の立ち位置からすると「党の方針に逆らうな」という共産党的エトスに過ぎない。