2020-03-07

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杖歩行は二動作で行う/『やさしい図解 「川平法」歩行編 楽に立ち、なめらかに歩く 決定版!家庭でできる脳卒中片マヒのリハビリ』川平和美監修


『脳から見たリハビリ治療 脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方』久保田競、宮井一郎編著
『リハビリテーション 新しい生き方を創る医学』上田敏
『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三
『リハビリテーション・ルネサンス 心と脳と身体の回復 認知運動療法の挑戦』宮本省三

 ・杖歩行は二動作で行う

『わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか』多田富雄

 川平法では、下肢にマヒが残った人には、歩く時は杖と下肢装具を必ず使用すること、そして、「二動作」での歩行をすすめています。なぜなら「二動作」歩行のほうがスムーズに歩くことができ、マヒ足にかかる負担が少ないからです。
 なかには、再発作後の両側のマヒや運動失調のために立位バランスが悪いなどの理由から「①杖をつく→②マヒ足を振り出し着地させる→③健足を蹴り出す」の「三動作」歩行のほうが、適している人もいますが、多くの「三動作」歩行では、健足でしっかり立ってマヒ足を浮かすことが不十分になり、また健足で蹴り出す力も弱くなります。そのため、マヒ足を引きずったり、遠心力で外側へ振り回したり、かえってマヒが目立つような歩き方になるのです。
「三動作」歩行に慣れてしまうと「二動作」への移行が難しくなりますから、先のような特別な理由がない限りは、「川平法」のリハビリテーションでは、はじめから「二動作」でのトレーニングを行います。

【『やさしい図解 「川平法」歩行編 楽に立ち、なめらかに歩く 決定版!家庭でできる脳卒中片マヒのリハビリ』川平和美〈かわひら・かずみ〉監修(小学館、2014年)】

 川平法(促通反復療法)についてはよくわからないが、本書を読む限りでは一定の効果があると思われる。テキストではわかりにくいので図を引用する。




 左脳にダメージがあれば右半身が麻痺し、右脳だと逆になる。右麻痺には失語症が伴い、左麻痺だと半側空間無視を伴うケースが多い。症状が軽ければ杖歩行が可能だ。

 麻痺側(まひそく)の体の重さは健常者には理解し難い。「重い砂袋がぶら下がっているような感じ」という表現をよく聞く。バランスを取るためには健側(けんそく)側に傾かざるを得ず、体を真っ直ぐにすることができなくなる。

 健康を害した時、人は「動く意味」「動ける可能性」に気づくのだろう。時折、体の不自由なお年寄りが歩いているのを見掛けることがある。外へ向かうバイタリティこそ健康の証である。五体満足でも動かない人々は既に病人といってよい。

 リハビリには技術と知恵が必要だ。理学療法士や作業療法士・言語聴覚士の言いなりになることがリハビリではない。体の声に耳を傾けながら新たな運動能力を開拓してゆくのがリハビリであり、千差万別の症状を自分で読み解きながら工夫を凝らし改良を加えてゆくのが王道だ。

 俗に「同病相哀れむ」と言うが、同じ症状の人々が情報交換できるコミュニティがあれば医療依存・介護任せの現状を打開できることだろう。

2020-03-04

ビッグバン理論の先駆者ジョルジュ・ルメートル/『宇宙が始まる前には何があったのか?』ローレンス・クラウス


『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング
『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー
『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド
『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック

 ・ビッグバン理論の先駆者ジョルジュ・ルメートル

『宇宙を織りなすもの』ブライアン・グリーン

 ビッグバン・モデルの原型となるモデルを初めて提唱したのは、ベルギー人のカトリック司祭にして物理学者でもある、ジョルジュ・ルメートルという人物だった。いくつもの分野でひとかどの仕事をするという境域的な才能の持ち主だったルメートルは、はじめに工学を学び、第一次世界大戦では砲兵として従軍して叙勲された。1920年代になって司祭になるための勉強を始め、同時に専門を工学から数学に切り替えた。やがて宇宙論の分野に進み、著名なイギリスの天体物理学者サー・アーサー・エディントンのもとで研究を行ったのち、アメリカのハーバード大学に移り、最終的にはマサチューセッツ工科大学で物理学の博士号を取得した。それは彼にとって二つ目の博士号だった。
 1927年、まだ二つ目の博士号を取得する前のこと、ルメートルはアインシュタインの一般相対性理論の方程式をじっさいに解き、この理論が予想する宇宙は、静止していないということを示したばかりか、われわれが住むこの宇宙は、現に膨張しているという説を唱えたのである。それは途方もない話に思われたので、アインシュタインも、「あなたの数学は正しいが、あなたの物理学は忌まわしい」という強烈な言葉で反対を表明したほどだった。
 しかしルメートルは挫けず、1930年代には、膨張しているわれわれの宇宙は、無限小の点から始まったという説を提唱した。その点のことを彼は、「原初の原子」と呼び、おそらくは創世記の物語を念頭に置きながら、その始まりの時のことを、「昨日のない日」と呼ぶことができるだろうと述べた。

【『宇宙が始まる前には何があったのか?』ローレンス・クラウス:青木薫訳(文藝春秋、2013年/文春文庫、2017年)】

 人間の叡智は現実に先駆けて科学原理を見出すことがある。例えばルメートルが指摘した宇宙膨張説、相対性理論による時空の歪み、ブラックホールも観測される前から既に予想されていた。更に面白いのは発見した科学者の思惑を超えて原理が自己主張を始めることだ。

 アーサー・エディントンについてはよく知られた有名なエピソードがある。

 1920年代のはじめに、あるジャーナリストが(アーサー・)エディントンに向かって、一般相対論を理解しているものは世界中に3人しかいないと聞いているが、と水を向けると、エディントンはしばらく黙っていたが、やがてこう答えたそうだ。「はて、3番目の人が思い当たらないが」。

【『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング:林一訳〈はやし・はじめ〉訳(早川書房、1989年/ハヤカワ文庫、1995年)】

 時空の歪みを最初に観測したのもアーサー・エディントンその人であった。

 猿も木から落ち、アインシュタインも誤る。ただし科学の誤謬は観測によって常に修正され、次の新たなステップへと力強く前進してゆく。


アーサー・エディントンと一般相対性理論/『ゼロからわかるブラックホール 時空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム』大須賀健