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2012-08-03

米証券仲介ナイト、株価が6割安 誤発注で巨額損失


 2日のニューヨーク株式市場で、米証券仲介大手ナイト・キャピタル・グループの株価が前日比63%安の2.58ドルまで急落した。前日の誤発注による巨額損失で、経営の先行きを懸念した売りが止まらない。ナイト・キャピタルは同日朝の声明で「資本基盤を強化するため戦略的な選択肢を検討している」とし、身売り先探しなどに着手したもよう。同社の経営は深刻な局面に入っている。

 ナイトは2日、売買システムの誤発注で4億4000万ドル(約340億円)の損失が出たと発表した。取引システムへの懸念から、この日は投資信託など大手の機関投資家で同社との取引を手控える動きが広がった。

 米メディアによると、ナイトは資金繰りのために米銀大手と交渉している。身売りも視野に同業他社との協議も急いでいるが、今のところメドは立っていない。

 米証券業界の自主規制機関の金融取引業規制機構(FINRA)は2日、誤発注の影響を調べているとの声明を発表。そのうえで「現時点で(ナイトは取引を続けるのに必要な)資本基準は満たしている」とした。

 ただ、巨額損失でナイトの自力再建は難しいとの見方もある。資金繰りや資本提携の協議が不調に終われば、同社の経営は正念場を迎える。

日本経済新聞 2012-08-03



米ナイト・キャピタル、前日の取引障害で340億円の損失

 米証券仲介大手のナイト・キャピタル・グループ(KCG.N: 株価, 企業情報, レポート)は2日、前日に発生したコンピューターによる自動注文の障害により4億4000万ドルの資本が失われたことで、会社の存続を賭けて資金集めに奔走した。

 ナイト・キャピタルの主要な顧客だったTDアメリトレード、フィデリティー・インベストメントなどは現在、ナイト・キャピタルを通して注文を出していない。小規模な顧客も他社を経由して注文を出している。

 ナイト・キャピタルの株価は、この2日間で70%以上下落した。

 同社は「戦略的、財政的な代替手段を積極的に追求している」とする声明を発表。これを受け、市場では同社が身売りもしくは破産に追い込まれるとの懸念が出ている。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、ナイト・キャピタルはシルバーレーク・パートナーズ傘下のバーテュ・フィナンシャルと協議に入った。またフォックス・ビジネス・ネットワークは、ナイト・キャピタルがJPモルガン・チェースに支援を要請したと報じている。

 JPモルガンの広報担当者はこの報道についてコメントを控えた。ナイト・キャピタルの広報担当者もコメントを控えている。

 ナイト・キャピタルの取引障害により、1日のニューヨーク株式市場で約140銘柄が寄り付き直後に乱高下する事態が発生。ニューヨーク証券取引所は特に値動きが激しかった6銘柄の売買を停止した。

ロイター 2012-08-03

2011-08-28

勝敗を分ける決定的な要素は「姿勢」


 しかし同時に、姿勢が結果に果たした重大な役割を理解している人は多くはない。たいていの競技・競争では、参加者は戦略的に、身体的技術だけでなく精神的技術を向上させなければならない。もし対戦者が対等の技術レベルでなければ、普通は(必ずしも絶対ではないが)技術的に上のほうが勝つ。しかし、弱者が強敵を倒したとしたら、何がその要因となるのか。あるいは同レベルの二人が戦ったとき、勝敗を分ける決定的な要素は何か。どちらの場合もその答えは「姿勢」なのだ。

【『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス:世良敬明〈せら・たかあき〉訳(パンローリング、2002年)】

ゾーン — 相場心理学入門

2011-07-31

テクニカル分析の前提


 テクニカル分析の前提は三つある。
A 市場の動きはすべてを織り込む。
B 価格の動きはトレンドを形成する。
C 歴史は繰り返す。

【『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー:日本興業銀行国際資金部訳(金融財政事情研究会、1990年)】

先物市場のテクニカル分析 (ニューファイナンシャルシリーズ)

2011-06-15

マネーゲームの作法/『騙されないための世界経済入門』中原圭介


 ・マネーゲームの作法

『2025年の世界予測 歴史から読み解く日本人の未来』中原圭介

 投資本は大仰(おおぎょう)なタイトルで人目を惹きつけ、欲望を煽り立て、甘く囁く。「一攫千金(いっかくせんきん)を願うならば、まずはこの本に投資しなさい」と。「普通預金の金利が0.02%だから、それ以上のリターンがあるなら一つやってみるか」となりやすい。

 こうしてカモのご来店となる。「いらっしゃいませ、賭場(とば)へようこそ」。ビギナーズラックは強烈な快楽となって脳内に刻印される。性的快感と同じ部位が反応することが医学的に明らかになっている。

 詐欺まがいの投資本が多い中で、中原圭介はいぶし銀のような光を放っている。経済の原則から合理性を追求する姿勢は信頼に値する。わけのわからん勝率や利益率とも無縁だ。彼は2007年のサブプライムショックを事前に予測した人物の一人でもある。

 住宅ローンの不良債権化が一服し、貸倒引当金の計上を減らしたことが好決算を支えています。
 これを明るい材料と見なし、あたかも米国の危機は去ったかのように報じられることが多いのですが、私はそうではないと考えています。
 なぜなら、【金融機関の業績回復は、単に民間の赤字が政府へ移転された結果にすぎない】からです。

【『騙されないための世界経済入門』中原圭介(フォレスト出版、2010年)以下同】

 これを「リスクの付け替え」と称する。簡単にいえば政府の赤字は国民の黒字ということであり、アメリカの借金は世界の財産を意味する。

日本は「最悪の借金を持つ国」であり、「世界で一番の大金持ちの国」/『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ』廣宮孝信

 つまりサブプライムショック、リーマンショックを経てアメリカは金融緩和政策を行ってきたが、リスクが政府に移動しただけで問題解決になっていないという指摘だ。すると、世界経済そのものがサブプライム化していると考えるべきなのだろう。これぞ、資本主義のインフレマジック。

 1980年代初頭には、米国の企業収益に占める金融機関の割合は全体の10%にすぎませんでしたが、2000年には全体の45%を金融機関が稼ぎ出すまでになりました。

 絶対におかしい。いつの間にか昔は株屋と蔑まされた証券会社がいっぱしのエリート面をしている時代になっている。銀行だって所詮金貸しだ。他人の褌(ふんどし)で相撲を取っているだけで、何ひとつ生産しているわけではない。右から左へお金を動かすだけで利益が出る商売なのだ。

 堀江貴文村上世彰〈むらかみ・よしあき〉が世間の耳目を集めた頃、「マネーゲームはダメだ。やはり額に汗して稼ぐことが正しい」という声がメディアに溢れた。

 馬鹿丸出しである。しかも、スタジオのスポットライトで額に汗する連中が市民面をして言うのだから、開いた口が塞がらない。経済行為はその全てがマネーゲームだ。労働と賃金を交換しようが、先月買った株を売却しようが本質は一緒である。経済行為とは交換の異名であることを弁える必要があろう。

 ヨーロッパを見ればもっとわかりやすい。富豪とは働かない人々を指すのだ。彼らは先祖から譲り受けた資産を運用しているだけだ。

 更に具体的に申し上げよう。我々が労働で得た賃金は預金となって必ずどこかへ投資されているのだ。だからマネーゲームを批判するのであれば、まず最初に銀行を槍玉に挙げることが正しい。

 話を戻そう。では1980年代に何があったのか? アジア諸国で準固定相場制度が普及したことと、プラザ合意(1985年)が大きな要因だと思われる。プラザ合意は日本をバブル景気へと導いた。1980年代後半には東京都の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるという話まで出たが、失われた10年で資産はアメリカに全部持っていかれた。実は日本から流れたマネーがアメリカの住宅インフレを支えていたのだ。

固定相場制以前、固定相場制時代、変動相場制時代の主な出来事

 財政を引き締めるということは、その国の経済が弱まることを意味しますから、通貨安の要因となります。
 また、金融緩和で市中に供給されるマネーの量が増えれば、需要と供給の関係で通貨の価値は下がります。
 よって、2011年に入っても、ごく自然な形でドル安傾向が維持されることになるわけです。

 これはアメリカの話。ま、貧血みたいな状態と考えてよかろう。円高ドル安は止まらない。

 ほかの国々は、このままの一方的なドル安を容認しないでしょう。
【今後は新興国を中心に、ドル買い自国通貨売りの為替介入が進み、ドル安を押し戻す動きが強まる】はずです。

 実際に世界的な通貨安競争となったわけだが日本は何もしなかった。指をくわえて眺めていただけだ。

【「経済の本質」から言って、物価が上がらない最大の原因は、労働者の賃金が上がらないところにあります】。私は「この本質」が、他のあらゆる経済理論に対して優先されるべきであると確信しています。
 健全なインフレは「労働者の賃金上昇→消費の拡大→物価の上昇」というプロセスで起こります。悪性のインフレは論外ですが、年2%程度の物価上昇が続く健全なインフレは、持続的な経済成長するためには不可欠なものです。

 中野剛志〈なかの・たけし〉が散々指摘しているように日本経済の最大の問題はデフレである。供給過剰で物が売れない状態がデフレだ。で、売れないものだから値下げ競争に拍車がかかる。当然、賃金も下がる。企業は安い労働力(派遣労働者、外国人労働者など)を確保する。軽自動車、ユニクロ、100円ショップが国内を席巻する。

【経済の本質では、財政再建を進めれば、景気は悪くなります。】
 それがわかっていれば、「景気が上向く」という予測などできないはずなのです。

 カンフル剤を打つべき時に政府は国民に献血しろと促している。TPPや増税は「臓器を提供しろ」と言っているようなものだ。

600兆円の政府紙幣を発行せよ/『政府貨幣特権を発動せよ。 救国の秘策の提言』丹羽春喜

【経済が成熟した国では、通貨安がインフレを招くことはありません】。輸入物価が上昇しても、消費減少による物価下落圧力が相殺してしまうからです。

 これはTPPへの反論にもなっている。

 私が高度情報化社会の弊害だと感じているのは、【人々のマインドの振れを大きく、かつ深化させてしまう】という点です。要するに、溢れるように流れ込んでくる情報の洪水が私たちの頭の中に蓄積され、いつしかそれが概念そのものになってしまう危険性があるということです。

 これは違う。なぜなら概念は情報であるからだ。行動情報化社会の弊害は、政府や広告代理店による情報操作だ。ディスクロージャー(情報公開)を問うべきであって、スピードを戒めるべきではない。

 総じて中原はマネーゲームの作法を誠実に教えいてる。

2011-06-05

40代後半の人口構成が景気を左右する/『最悪期まであと2年! 次なる大恐慌 人口トレンドが教える消費崩壊のシナリオ』ハリー・S・デント・ジュニア


「歴史は繰り返す」と喝破したのは古代ローマの歴史家クルティウス=ルーフスであった。人間の愚かさをものの見事に衝いている。更に人間が過去に束縛されることをも示している。

 歴史とは権力者の事跡である。私が結婚したとか、ウチの親父が死んだとかは全く関係がない。これが文化や学問、宗教などの場合は「権威の移り変わり」と見ればよい。つまり過去の権力者の政治手法、経済体制、軍事行動を学んでいるうちに思考がパターン化してしまうのだろう。将棋でいえば定跡だ。

 歴史は繰り返すとなれば、そのサイクルに注目するのは当然の流れだ。ハリー・S・デント・ジュニアは人口トレンドによって景気サイクルを読み解こうとしている。

【だが、人間はやがて、世の中のいろいろな場面で一定のパターンが繰り返されていることに気がついた。そして、そのサイクルを理解することで将来を予測する能力を高め、以前よりも人生をコントロールできるようになった。社会が複雑になり、人口が増えて都市化が進み、コンピューターやナノテクノロジーが発達し、グローバル化が進むようになっても、この過程は続いている。】

【『最悪期まであと2年! 次なる大恐慌 人口トレンドが教える消費崩壊のシナリオ』ハリー・S・デント・ジュニア:神田昌典監訳、平野誠一訳(ダイヤモンド社、2010年)以下同】

 一言でいえば「お金のコントロール」である。貯蓄を始め、保険や投資によって人生の経済リスクをコントロールできるようになった。戦後、先進国においては避妊によって出産も制限可能となった。

【つまり私は、長期的な成長とサイクルの変化を生み出しているのはシンプルなトレンドであること、そして事業や経済のトレンド予測では人口と科学技術(テクノロジー)のサイクルが決定的に重要であることをこの仕事で学んだのである。】

 補足しておくと著者は、全体の複雑さはシンプルなサイクルが数多く集まって形成されているとしている。トレンドとは傾向や趨勢(すうせい)を意味する言葉であるが、川の流れに例えるとわかりやすい。中央の流れは速く岸辺は遅い。上と下でも速度や温度が微妙に異なる。しかし川全体としては海を目指して下ってゆくのだ。

 ここにいたって私は、経済の最大の原動力は「人口トレンド」であると、そしてその経済の基礎を変えるのが「画期的な新技術」であり、そうした事実は「革新(イノベーション)─成長─淘汰─成熟」という4段階から成るライフサイクルに従うことを理解しはじめた。また消費者がしだいに裕福になってきた結果、消費者の行動が経済に及ぼす影響は昔よりはるかに大きくなっており、それを背景に人口統計学的な要因が新技術の革新と普及をますます推進しているように見えることにも気がついた。

 人口トレンドとは消費者数で、イノベーションは消費性向を示す。「新しいものが欲しい」というストレートな欲望が景気を上昇させる。例えばミシン、自動車、ラジオ、三種の神器(じんぎ/白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機)など。最近だと携帯電話やパソコン、ゲーム機器といったところ。そして高度情報化社会となりメディアが視聴者を扇動し、広告会社が人々の欲望に火を点ける。

 過去のバブル・ブームから教訓を学ぶとしたら、それは「すべての資産が値下がりして銀行が巨額の不良債権を抱え込み、それが償却されることで不況になるというパターン」でかならず終わるということである。

 不況とは供給過剰によって物価が下落することだから必ず不良債権が発生する。というよりは、むしろ「債権の不良化」が進むと見るべきなのだろう。物の価値が下がるので相対的にお金の価値は上がる。しかし賃金も下がるのでお金は貯蓄に回される。で、みんなが買い物をしなくなるからデフレスパイラルに陥る。

 若者たちは何かとコストがかかるうえに、たいした生産活動は行わないため、現代社会ではそれをもたらす最大の要因になっている。一方、40代後半の働き盛りは先進国では最も生産性が高く支出も多いため、生産性向上や経済成長のけん引役となっている。
 米国のベビーブーム世代のように人口の多い新世代は、年を重ねるごとに世帯所得や支出、生産性といった予測可能なサイクルを押し上げ、好況を長期化させる。1942年から68年にかけての好況の背景にはボブ・ホープ世代がいたし、1983年から2008年までの好況期にはベビーブーム世代がいる。

 これが骨子となっている。つまり40代後半の人口構成が景気を左右するというのだ。単純にいってしまえば、大学生の子を持つ親と考えてよろしい。

 日本のバブル景気を支えたのも実は団塊の世代(1947-1949年生まれ)であった。だからハリー・S・デント・ジュニアの予測は当たっている。

 米労働省の調べによれば、平均的な世帯がポテトチップスに最もお金を使うのは、親が42歳のときである。なぜか。平均的に言えば、親は28歳の時(ママ)に第一子をもうける。そして複数の研究によれば、子どものカロリー摂取量は14歳のときにピークを迎える。したがって、子どもは親が42歳のときに最も多くため、親の財布に最も大きなダメージを与える傾向があるのだ。

 技ありのネタ(笑)。ま、エンゲル係数的視点といってよい。

 本書の後半において世界各国の未来予想図が描かれている。一人っ子政策を実施してきた中国は翳(かげ)りを見せ始め、2050年に向けて世界を牽引(けんいん)するのはインドとブラジルらしいよ。また世界経済は2023年まで不況と予測している。長期的視野に立てば、人口が多いアジア・アフリカ地域に発展の可能性があるとも。

 このイノベーションと人口トレンドという視点は、歴史を分析する場合にも有効だと思う。

2011-05-23

ファイナンシャル・リテラシーの基本を押さえる


 これは左から順番に読むこと。『金持ち父さん 貧乏父さん』はシリーズ化されているが1冊読めば十分だ。

バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか金持ち父さん貧乏父さん世界にひとつしかない「黄金の人生設計」なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方

2009-07-03

帝国主義による経済的侵略/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン


 ・信用創造のカラクリ
 ・帝国主義による経済的侵略

『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代

 ポーカーとトレードに共通する心理に迫りながら、「経済とはギャンブルに過ぎない」と断言している。具体的なポーカーネタが多いのだが、無視してもお釣りが来る内容だ。とにかく文章が闊達で警句の趣がある。

 私は以下のテキストを帝国主義による経済的侵略の姿として読んだ――

 昔ながらの生活を送っているある先住民が、10枚の鹿皮と引き換えに、20頭の鹿を殺せるだけの銃と弾薬の提供を受けたとしよう。
 これは素晴らしい取引のように思われる。銃を使えば弓矢を使うよりも狩りがずっと簡単になる。これだけの鹿肉があれば村中を一冬養えるし、取引の後に残った10枚の鹿皮を使って、金属製のナイフや毛布や、そのほか手作業で作るのは骨が折れるか不可能な物品を買うこともできる。
 問題なのは、鹿皮に換算した弾薬の価格がどんどん上がっていくことだ。彼はほどなくして、働きどおしても何とか生きていけるだけの物品しか得られないことに気づく。もはや村中を養うどころか、一家族を養うことすらできない。彼は弾薬の提供者のなすがままになり、飢え死にしたくなければ、いかなる屈辱にも甘んじなければならない。
 とはいえ、元の生活に簡単に戻れるわけでもない。そもそも伝統的な生産環境は複雑で、長い時間をかけてものを収集し、植え付け、乾かしたり風味を付けたりなどして加工する必要がある。こうしたことをおろそかにすると、一からやり直すことは難しい。技術は忘れ去られ、専門家も散ってしまった。
 獲物も捕らえにくくなった。集中的な銃猟が鹿の頭数を減らし、鹿を用心深くさせてしまったからだ。そしておそらく何よりも重要なのは、今や隣人たちが銃を持っているということだ。つまり銃を持たなければ、自分の身を守れない。

【『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン:櫻井祐子訳(パンローリング、2008年)】

 経済的発展が伝統文化を破壊する。それだけではない。今まで仲良く暮らしていた人々の間に、不信感を渦巻かせ、敵意を抱かせ、遂には反目させ合うまでに至るのだ。内部に撹乱(かくらん)要因をつくるという手口は、現在のアメリカが中東に対して行っているものだ。

 麻薬や覚醒剤の類いだってそうかも知れない。エシュロンがあるにもかかわらず、いまだに撲滅することができないのは、やる気がないという問題などではなく、大国を動かす権力者のコントロール下にあることを示しているのではないか? きっとアヘン戦争で味を占めたのだろう。販売窓口となっているギャングや暴力団の類いは、完全な支配化に治められている。

 資本主義というシステムの問題は銀行にある。銀行が行っているのは、レバレッジ1000倍の貸付業務なのだ。

 だが、アーロン・ブラウンの指摘を踏まえると、お金そのものが問題なのかも知れない。尚、著者はインチキギャンブラーではなく、モルガン・スタンレーの常務取締役である。

 貨幣は等価交換を可能にした。だが、「等価」とは何なのだろう? それを誰が判断するのか? 等価の代表選手といえば金融マーケットである。株式にせよ、為替にせよ、売買が成立するには必ず一対の合意が形成されている。上げ相場だろうが、下げ相場だろうがそれは変わらない。最終的には同じ数だけの売り手と買い手が存在する。だから、「トレード」(交換)というのだ。

 つまり、マーケットが自由競争というルールで機能していれば、価格には根拠があると考えられる。しかし、だ。自由競争で動いているのかね? 例えば、国家単位の年金運用なんぞが恣意的な売買をしちゃいないだろうかね? しているよ。間違いなくしている。それが証拠に、日本は米国債を絶対に売れない。売らないのではなく、「売れない」のだ。

(※1997年)6月23日、米コロンビア大学で講演した橋本首相が「私は何回か、日本政府が持っている財務省証券を大幅に売りたいという誘惑に駆られたことがある」と発言、これを受けてニューヨーク市場の株価が急落した。

【「橋龍『米国債発言』の真意」高尾義一(野村総合研究所研究理事)】

 もちろん、橋本龍太郎は本気で言ったわけではない。所詮ブラフだよ。だが彼はその後どうなったか? 日歯連からの闇献金(※2004年7月に発覚)で葬られてしまった。そして2006年に死去。田中角栄同様、CIAが動いたという噂がある。

 等価交換によって、アメリカは他国を手なずけるのが巧みだ。米国債を保有しているのは、1位が中国で、2位が日本という現状。アメリカを滅ぼすことは簡単だが、心中する覚悟が必要となる。しかも、だ。アメリカが崩壊すれば、「これからは誰が物を買ってくれるんだ?」ってな話になってしまう。

 人類の未来を長期的に見渡せば、物々交換にした方がいいのかも知れない。



信用創造の正体は借金/『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎

2009-04-24

ランダムな報酬が“嬉しい驚き”となる/『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス


『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
『規律とトレーダー 相場心理分析入門』マーク・ダグラス

 ・ランダムな報酬が“嬉しい驚き”となる
 ・思想はエネルギーである

『タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門 スーパートレーダーになるための自己改造計画』バン・K・タープ
『なぜ専門家の為替予想は外れるのか』富田公彦

 評価の高い投資本だ。ただし、翻訳が拙い。随分と損をしていることだろう。具体的な手法については何一つ書かれていない。リスク・テイカーとしての覚悟、心理、概念、思想とはどうあるべきかを追求している。

 売買の厳密なルールを決めていなければ、相場はギャンブルと変わりがない。「流れ」といったところで、いかなるスパンのチャートを見るかで、上げ下げは異なる。5分足チャートでは上がっていても、1時間足で下げていることなどザラにある。マーケットに参加する以上は、キャッシュポジションの比率と、ストップ(損切り)のポイントを決めておく必要がある。これができない人は、あっと言う間に丸裸にされる。というよりも、丸裸にされて当然だ。

 ギャンブルも相場もビギナーズラックというケースがある。ここで勘違いをして図に乗ると、必ず痛い目に遭う。また、儲けが大きくなるほどポジションを膨らませてしまう悪癖がつく。初めから損をしようと思っているプレイヤーは一人もいない。であるにもかかわらず、大半の人々が損をしている現状を重く受け止めねばなるまい。

 サルにランダムな報酬を与え、その心理学的効果を分析した研究が幾つかある。例えば、サルにある調教をし、それをするたびに褒美を与え続けた結果、サルはすぐにその努力が特別な褒美と結びついていると分かる。しかし今度はその作業をしても褒美を与えるのをやめてしまうと、非常に短期間のうちにサルはまったくその作業をしなくなる。褒美がもらえそうにもないのに、やるだけ労力が無駄だと分かるからだ。
 ところが褒美を一貫して与えるのではなく、完全にランダムなスケジュールで与えた場合、褒美がもらえなくなったサルの反応はまったく異なってくる。褒美を与えるのをやめても、その作業をしてももう二度ともらえないとは、サルにはわからない。そして褒美が与えられるたびに、その褒美はサルにとって嬉しい驚きとなる。その結果、サルの頭から仕事をサボる理由がなくなるのだ。たとえそれをしても褒美がもらえなくても、サルはひたすらその作業を続ける。場合によっては、永久的に続けるだろう。
 なぜランダムな褒美にのめり込みやすいのか、はっきりとは分からない。想像するに、予想外の嬉しい驚きがあったとき、脳内に自己陶酔をもたらす化学作用があるからではないだろうか。褒美がランダムだと、いつそれを受け取れるか、はっきり分からない。しかし素晴らしい喜びの感情を期待して、労力と能力を費やすのが苦にならない。事実、こうしたものにおぼれてしまいやすい人は多い。

【『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス:世良敬明(せら・たかあき)訳(パンローリング、2002年)】

 ここでいう「ランダムな報酬」とは、「相場で勝った」ことを意味する。「嬉しい驚き」が相場にのめり込ませる原因となる。そして、トータルでは損をしこたま抱える羽目になるのだ。

「ランダムな報酬」は、岡本浩一著『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』(PHP新書、2001年)に書かれている「ひかえ目な報酬」とよく似た概念だ。

 予測していなかった利益が期待値を高める。一度でもぼろ儲けした経験があると、その記憶に束縛される。中々利益を確定できずに、結局相場は戻してしまう。それどころかチャートは反転する。「ここまで下げれば、そろそろ戻すはずだ」と思ったところから、二段下げ、三段下げと続く。挙げ句の果てに、追証(おいしょう/追加証拠金)寸前で損切りに追い込まれる。で、決済した途端、まるで見計らったかのようにチャートが元に戻る。そんな経験をしたことのある人は多いことだろう。

 一般投資家の基本は中長期にわたる取引である。日計り(デイトレード)で稼ごうなんて思うのは100年早い。既に、頻繁な売買をすれば損をすることが科学的に証明されているのだ。中途半端な気持ちで飛び込めば、間違いなく大火傷する世界である。

 損得に微動だにすることなく、淡々と売買をする明鏡止水の境地を、本書では「ゾーン」と名づけている。素人からすれば神がかりとしか思えないが、マーク・ダグラスの説得力は確かにそうした領域があることを見事に示している。



ギャンブルは「国家が愚か者に課した税金」/『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希

2009-04-11

信用創造のカラクリ/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン


 ・信用創造のカラクリ
 ・帝国主義による経済的侵略

『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代
『円の支配者 誰が日本経済を崩壊させたのか』リチャード・A・ヴェルナー

 我々の社会における「信用」とは何であろうか? 本来であれば人柄が織りなす言葉や行動に対して向けられるべきものだが、実際は違っている。資本主義社会における信用とは、「どれだけのお金を借りることができるか」という一点に収斂(しゅうれん)される。信用=クレジット(credit)。つまり、“与信枠”を意味する。もちろん、ヒエラルキーの構成要素もこれに準じている。

 資本とはお金のことだ。で、お金は銀行にある。資本主義経済において銀行は心臓の役目を担っている。続いて銀行の機能を紹介しよう。

 一言でいえば、「銀行とは、準備預金制度のもとで信用創造を行う業態」のこと。話を単純にすれば、「銀行が日銀に金を預ければ、その1000倍貸し出しても構わないよ」(※「準備預金制度における準備率」〈500億円超〜5,000億円以下〉を参照)という仕組みになっている。上手すぎる話だ。私にも一口乗らせて欲しい。

 すると理論的には以下のようなことも可能となる――

 例えば、銀行は1ドルの資本につき、12ドルの貸付をするかもしれない。なぜこれが可能かと言えば、貸し出された資金は使われるか、再び銀行システムに預けられるのかの、いずれかだからだ。使われた場合、その資金は再び使われるか、再び預けられる。貸し出された資金はすべて預金として戻ってくるため、再び貸し出すことができる。理論的には、1ドルの資本で世界中の貸付金を賄うことも可能だ(実際にこれを試みる人たちもいる)。

【『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン:櫻井祐子訳(パンローリング、2008年)】

 2007年7月27日からマーケットにサブプライムショックが襲い掛かった。そして昨年9月15日に米大手証券会社のリーマン・ブラザーズが破綻し、世界最大の保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が危機に見舞われた。

 一連の出来事を、「週刊スモールトーク」のR.B氏が絶妙な例えで解説している――

 ここで、今回の問題を整理しよう。個々は複雑だが、全体はいたってシンプルだ。身なりのいいセールスマンが、「100円+50円」と書かれた紙切れを売りさばいていた。曰く、
「この証書を100円で購入すると、1年後には150円になりますよ」
「集めたカネで宝くじを買って、それで支払うつもりです」
「大丈夫かって?」
「ご心配無用。保険をかけてありますから」
「宝くじにはずれても、保険会社が払ってくれますよ」

 こうして、セールスマンはこの紙切れを、世界中に売りさばいたが、運悪く? 宝くじははずれてしまった。ところが、あてにしていた保険会社は、額が多すぎて払えないという。金融世界を守る最後の砦が、いとも簡単に崩壊したのである。

【「世界恐慌I ビッグ3ショック」】

 結局のところ、問題の本質は「信用バブル」にあったという鋭い指摘だ。

 色々とネットを調べていたところ、物凄い動画を発見した。私がダラダラと何かを書くより、こちらを見た方が100倍以上も有益だ。タイトルは「Money As Debt」(負債としてのお金)。メディアが絶対に指摘しない資本主義システムの欺瞞が暴かれている。→「Money As Debt


学校の先生が絶対に教えてくれないゴールドスミス物語
ロスチャイルド家
「ロックフェラー対ロスチャイルド」説の研究
ある中学校のクラスでシャーペンの芯が通貨になった話
マネーサプライ(マネーストック)とは/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人
『アメリカ:自由からファシズムへ』アーロン・ルッソ監督
『モノポリー・マン 連邦準備銀行の手口』日本語字幕版
・『Zeitgeist/ツァイトガイスト(時代精神)』『Zeitgeist Addendum/ツァイトガイスト・アデンダム』日本語字幕
・ファイナンシャル・リテラシーの基本を押さえるための3冊
・サブプライム問題と金融恐慌
モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
マネーと民主主義の密接な関係/『サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 なるほど!「マネーの構造」がよーく分かった』天野統康