2020-01-06

桑の木は神木/『天空の舟 小説・伊尹伝』宮城谷昌光


 ・桑の木は神木
 ・民の声

・『太公望』宮城谷昌光
『管仲』宮城谷昌光
『重耳』宮城谷昌光
『介子推』宮城谷昌光
『晏子』宮城谷昌光
『湖底の城 呉越春秋』宮城谷昌光
『孟嘗君』宮城谷昌光
『楽毅』宮城谷昌光
『青雲はるかに』宮城谷昌光
『奇貨居くべし』宮城谷昌光
『香乱記』宮城谷昌光

 このころ、桑の木は神木で、「桑からなにが生れるか」と問われた者の十人中十人が、「日」(じつ)すなわち「太陽」とこたえたであろう。つまり太陽の数とは無限ではなく、十個あると考えられ、その一個ずつが、毎朝桑木から生れて、天に昇ると信じられていた。したがって、桑木とは太陽を生む木であり、そこから生れた児とは太陽でなくてなんであろう。

【『天空の舟 小説・伊尹伝』宮城谷昌光〈みやぎたに・まさみつ〉(海越出版社、1990年/文春文庫、1993年)】

 八王子を桑都(そうと)という。江戸期から養蚕業・絹織物業が盛んであったためだ。更に古くは「浅川を渡れば富士の影清く桑の都に青嵐吹く」と西行が詠んだ。桑が神木とはにわかに信じ難かった。それは私が低い桑しか知らないためだった。


 こりゃ神木だな、確かに。また日本を扶桑国(ふそうこく)とも称した。鎌倉時代の日蓮も「扶桑国をば日本国と申す」(「諌暁八幡抄」〈かんぎょうはちまんしょう〉)と書いている。更に雷除けの「くわばら、くわばら」という呪文も「桑原」に因(ちな)むものだ。

「子供の時分、下の部屋で布団に入ると2階の部屋からワサワサと音が聞こえたものだ」という話を何度か耳にしたことがある。蚕(かいこ)が桑の葉を食(は)む音だ。幕末から明治にかけて八王子~横浜間には「絹の道」が存在した(八王子のシルクロード~幕末から明治期に賑わった「絹の道」を歩く)。

 八王子駅近くの甲州街道沿いに荒井呉服店がある。ユーミンの実家だ。

巧妙な脅し文句/『コミック版 たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易


『「捨てる!」技術』 辰巳渚
『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵

 ・巧妙な脅し文句

『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
・『たった1分で人生が変わる片づけの習慣 実践編』小松易
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『人生を掃除する人しない人』桜井章一、鍵山秀三郎
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士
『手ぶらで生きる。 見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』ミニマリストしぶ

 片づけられないと生活だけでなく、心も体もうまくいかずに「詰まって」しまうのです。

 玄関が片づいていなければ、新しい出会いやチャンスに恵まれません。
 キッチンが片づいていなければ、余計な出費が多くなり食生活も安定しません。
 仕事場が片づいていなければ、残業が多いわりに良い仕事ができません。
 本棚が片づいていなければ、本当に欲しい情報がすぐに得られません……。

 片づけられないせいでうまくいっていない人生は、どんどん「負のスパイラル」に陥ります。その結果、さらに仕事や生活で失敗が続いたりします。

【『コミック版 たった1分で人生が変わる片づけの習慣』原作:小松易〈こまつ・やすし〉、脚本:青木健生、マンガ:小田ピンチ(KADOKAWA、2015年)】

 それは、ない。ただし人生が順調でない人はこの言葉を真に受けてしまうことだろう。巧妙な脅し文句である。

「コミック版」となっているが、マンガ+テキストなので活字が苦手な人はこちらを読むといいだろう。マンガの出来栄えは決してよくないが、内容はしっかりと踏襲している。

 ブッダの弟子で最も愚かなチューラパンタカ(周梨槃特)は拭き掃除で悟りを開いた。

 掃除という単純作業には、目の前のことだけに打ち込むという美点がある。最小限の努力で最大限の成果を得られる、進み続けるべき正道だ。

【『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド:駒月雅子訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2006年/ハヤカワ文庫、2008年】

 乱雑な部屋は風の通りが悪い。これが気に影響を与えることは理解できよう。神道のお祓(はら)いも埃(ほこり)のように積み重なった罪や穢(けが)れを払う営みだ。汚れは穢れに通じる。

 掃除をすれば気持ちがいい。これは真理である。気持ちがいいから掃除をするのだ。それでいい。

文脈


 肚(はら)の底からジワジワとせり上がってくる妙な感覚がある。衝撃ではない。むしろ鳥肌が立つような感覚に近い。文章の順番すなわち文脈が変わるだけで物語が逆転するのだ。言葉の魔術と言ってよい。あるいは詐術か。教科書や経典を重んじる人物はよくよく吟味すべき広告である。

2020-01-05

モノが少ないほど人生は充実する/『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易


『「捨てる!」技術』 辰巳渚
『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵
『コミック版 たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易

 ・モノが少ないほど人生は充実する

・『たった1分で人生が変わる片づけの習慣 実践編』小松易
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『人生を掃除する人しない人』桜井章一、鍵山秀三郎
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士
『手ぶらで生きる。 見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』ミニマリストしぶ

必読書リストその一

 片づけるということは、過去に経験したことや体験したことに【「かたをつける」】ということです。過去に「かたをつける」と現在の自分が変わり、「自分の思い描いている未来」を手に入れることができるようになります。

 片づけは、あなたが思い描いている人生を実現させることのできる身近な方法です。片づけができている人とできていない人の差は徐々に広がっていきます。

【『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易〈こまつ・やすし〉(中経出版、2009年/中経の文庫、2012年)】

 掃除が苦手である。もちろん全くしないわけではないが収納の仕方に戸惑い、考えながらも後回しにすることが殆どである。致命的なのは縦方向への意識を完全に欠いていることだ。引っ越した時の段ボールでまだ解いてないのがいくつもある。たぶん化石になっているか、ひょっとすると石油になっているかもしれない。

 200×60cmのパソコンデスクはマウスを動かすのも難儀するほど散乱しており、二つの観葉植物が机から落ちるのは時間の問題と思われる。当然ではあるが拭くことができない。っていうか拭くほどのスペースが残っていない。小ぶりのゴキブリにとっては逃げやすいジャングルと化し、壁に這い上がってくるのを待たねばならない。

 更に私は洗濯物を畳むのを省略する。「どうせ着るんだから畳もうが畳むまいが一緒だろ?」との言いわけが、いつしか確固たる信念となってしまった。でもって出番の少ない物は時折踏んづけてしまい、何度も踏んでいるうちにカンピョウや切り干し大根のような姿に朽ち果てる。

「片づけができている人とできていない人の差」は簡単明瞭だ。できている人は労力と時間が少なくて済む。そりゃそうだよ、だってきれいなんだからね。

 近藤麻理恵よりも文章が巧みで抽象度も高いため必読書を入れ替えた次第である。

「何を捨て」「何を残すか」で人生は決まる

 古本屋にとっては頂門の一針にしたいフレーズである。

 片づけないと「モノ」「スペース」「ヒト」が死んでしまう

 これは古本屋の常識。

 モノが少ないほど、人生は豊かで幸せで充実する

 出家僧が持つことを許されるのは三衣一鉢(さんねいっぱつ)とされる。私は今まで「最低限の所持品」と考えてきたが、「豊かな生のスペースを広げるための小道具」と思い直した。

 日本人が漂泊に対する憧れを抱くのも、物の豊かさが不幸につながることを心のどこかで自覚しているためか。工業製品は製造過程で原材料を必要とし、熱で加工するため必ず環境に負荷を与える。人類が最も森林を破壊したのは製鉄のためであり、硬貨の鋳造が更に拍車をかけた。つまり鉄(かね)とカネだ。

 時代を近代へと押し上げたのはイギリスの産業革命だが、同時に金融革命(ユダヤ資本の確立)・メディア革命(新聞~ラジオ)が起こったことも見逃せない。資本主義経済が高度に発達することで、それまでは欧州内部にとどまっていた戦争が世界に拡散され、やがて二度の大戦へとつながるのである。

「モノが少ないほど人生は充実する」のは真実だろう。ただし、「軍事力が少ないほど国家は侵略される」事実をどう考えるべきか。

2020-01-04

国旗国歌放映をやめてNHKは左傾化した/『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣

 ・国旗国歌放映をやめてNHKは左傾化した

三宅博(日本維新の会)「NHKの受信契約は憲法違反」総務委員会2014年2月21日
受信料支払い義務はNHKと受信契約を結んで初めて生まれる
NHK受信契約を解約する方法
NHK解約と民主政
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『実子誘拐ビジネスの闇』池田良子
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

 1990年代に入ると、NHKは草創期から続けていた放送終了時の国旗国歌放映を、24時間放送を理由に次々に止めてしまった。これは、後の国旗・国歌法(平成11年/1999年)に逆行する動きであるが、むしろ国家的支援によってなり立つはずの公共放送局のかかる行動が、当時の国家不斉唱、伴奏拒否事件などと相俟って、同法成立への言動力となる危機意識の創出に一役買ったのかも知れない。
 この国旗国歌放映こそ、左翼勢力による受信料不払いの言わば最大の理由であり、まさに国家主義的および国家権力との連繋の象徴として、執拗に非難の的とされてきた。かかる左翼陣営からの不払い闘争に屈し、あるいはおもねり、またあるいは便乗するかたちで、国旗・国歌放映をやめたのか否か、それは定かではないが、いずれにせよこれをひとつのターニング・ポイントとして、NHKの報道姿勢全般が左傾化し、反日化していったことは否めない。もちろん、左翼勢力による対NHK工作は、単なる不払い闘争のみならず、それなりの人材育成策を地道に積み上げきた点も看過することはできないであろう。

【『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸〈おやま・かずのぶ〉(展転社、2014年/増補版、2019年)】

 長らくテレビを所有していないため国旗国歌の放映をやめた事実を知らなかった。私がテレビを視なくなったのは17歳の頃である。バレーボール部の練習で体力を根こそぎ奪われ、テレビを視る気力は失せていた。もちろんNHKの受信料を支払ったことは一度もない。

 世界各国の放送局と交流をしているため、NHK本社には米中などを始めとする放送局の部屋が設けられているという。スパイが身を隠すのはメディア、ジャーナリスト、大学教授というのが相場だから、当然のように魑魅魍魎(ちみもうりょう)がウヨウヨしていることだろう。

 小山は大学教授だけあって当を得た批判をしている。が、これを放置している自民党の責任はどうか? 反日番組を見過ごし、脅迫まがいの受信料徴収を放置しているのは政権与党ではないのか?

 あるいは徴収員が殺害されるのを待っているのだろうか? それともNHK幹部にテロが仕掛けられるまで「国民はおとなしいもの」と高を括っているのだろうか?

『必殺仕掛人』や『必殺仕置人』が堂々と放映される日本は意外とテロに優しい国家だ。「弱きを助け強きを挫く」ためなら犯罪にも目をつぶる国民性がある。

 いつまで経ってもスパイ防止法ができないのは自民党内部にスパイがいるためだと囁かれる。個人的にはもう手遅れのような気がしてならない。北朝鮮による拉致被害を無視してきた罰(ばち)だろう。