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2021-08-30

ネオコンのルーツはトロツキスト/『米中激突の地政学 そして日本の選択は』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠

 ・世界恐慌で西側諸国が左傾化
 ・ネオコンのルーツはトロツキスト

ジョン・バーチ協会の会長に就任したラリー・マクドナルド下院議員が、国家主権を解体し世界統一政府構想を進めるエリート集団を暴露
『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠

世界史の教科書
必読書リスト その四

 これまで見てきた保守やリベラルとは異質の、「ネオコン」と呼ばれる一派がアメリカにはいます。ネオコンとは「ネオ・コンサーバティズム」の略で、「新保守主義」と訳されます。(中略)
 さかのぼれば、ネオコンのルーツはロシア革命にあります。帝政ロシアはユダヤ人を迫害してきたので、ロシア革命には多くのユダヤ人が参加し、共産党の中にはユダヤ人が多数いました。そもそもマルクスがユダヤ人ですし、レーニンは母方の祖母がユダヤ人、トロツキーもユダヤ人です。
 ところが革命後、1924年にレーニンが死ぬと、共産党内でユダヤ人グループと反ユダヤ・グループが衝突します。ユダヤ人グループのリーダーがトロツキーで、赤軍の創始者として諸外国の干渉から革命政権を守った立役者でした。
 しかし反ユダヤ・グループを率いるスターリンの謀略(彼はジョージア人)によりトロツキーは失脚して国外追放され、共産党内部のユダヤ人たちは粛清されます。トロツキーは1940年、亡命先のメキシコで、スターリンの放った刺客に暗殺されました。
 アメリカにはロシア革命にシンパシーを持つユダヤ人がたくさんいたのですが、スターリンによってユダヤ人が粛清されたため、スターリンを敵視するようになります。その反動でトロツキーの思想を支持する「トロツキスト」を自称し、スターリンはロシア革命をねじ曲げた裏切り者であり、ソ連を打倒すべきだという考えを持つようになりました。彼らトロツキストこそが、ネオコンの始まりなのです。
 スターリンはヨーロッパで革命運動が次々に失敗するのを見て、「一国社会主義」に転換しますが、トロツキーは、赤軍による「世界革命論」を唱えていました。ですから、トロツキストであるネオコンは当然、「世界革命論」を支持するのです。
 この「世界革命論」は、世界に干渉して、アメリカ的価値を世界に浸透させるというウィルソンやF・ローズヴェルトの思想と共振します。実際、ネオコンはこの二人の大統領を高く評価しています。そしてローズヴェルトがアメリカでやったような、ニューディール的な社会政策を世界で実施していこうとします。こうして、民主党はネオコンの温床となりました。
 ネオコンはユダヤ人から始まっただけに、一貫して親イスラエルでした。1948年の建国以来、イスラエルは四次にわたる中東戦争をはじめ、アラブ諸国と紛争を繰り返しています。そのたびにネオコンは、イスラエル支持を表明しています。
 もともと共和党はイスラエルに冷淡でした。なぜなら、共和党のバックには石油産業がついているからです。ロックフェラー系のエクソンやモービルなど、石油産業はアラブ諸国に石油利権を持っているので、アラブに親米政権をつくることには熱心ですが、油田のないイスラエルには、関心がありません。そのことも、ネオコンが共和党ではなく民主党を支持した理由の一つでした(副島隆彦世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』講談社+α文庫)。

【『米中激突の地政学 そして日本の選択は』茂木誠〈もぎ・まこと〉(WAC BUNKO、2021年/ワック、2020年『「米中激突」の地政学』改題新書化)以下同】

 フランス革命にもユダヤ人が参画していた(「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン)。国民国家には人種を乗り越える力があった。ロシアで虐げられたユダヤ人をパレスチナの地へ送り込んだのがロスチャイルド家であった(『パレスチナ 新版』広河隆一)。「ロシア革命の実態はユダヤ革命」という指摘もある(『世界を操る支配者の正体』馬渕睦夫)。

 ウッドロウ・ウィルソンとフランクリン・ルーズベルトは民主党選出の大統領である。両者ともに国際主義者で新生ソ連にエールを送った人物だ(馬渕前掲書)。ウィルソン大統領はパリ講和会議(1919年)で日本が提案した人種的差別撤廃提案を廃案に導いた。F・ルーズベルトはアメリカの本当の敵(ソ連)と味方(日本)を見誤った。どうやら国際主義者の眼は曇っているらしい。あるいは遠くを見すぎて足元を見失っているのだろう。

 ネオコンはレーガン政権からクリントン政権を挟んでブッシュ(子)政権まで共和党を支配しました。その間、盛んにアメリカが中東に出兵したのは、すべてネオコンの影響です。

 ネオコンは共和党のジョージ・W・ブッシュに巣食ったことで広く知られるようになった。「ネオコンは元来左翼でリベラルな人々が保守に転向したからネオなのだ」(元祖ネオコン思想家の一人であるノーマン・ポドレツ)とは言うものの、新保守主義との看板には明らかな偽りがある。まるで中島岳志が唱える「リベラル保守」みたいな代物だろう。左翼と嘘はセットである。平然と嘘をつきながら正義を語るのが左翼の本領なのだ。 9.11テロ以降のアメリカによる戦争を主導したのがネオコンであった。

 私は人類の社会性は国家が限界であると考えている。国家を超えてしまえば言語や文化の差異もなくなることだろう。それがいいことだとは思えないのだ。人格形成やアイデンティティを考えると、やはり気候や風土、食べ物や環境に即した個性がある方が望ましいだろう。もっと具体的に言えば、それぞれの民族や地域に特有な宗教の存在を認めるということである。

 国際主義者の恐るべき欺瞞は「ルールを決めるのは自分たちである」との思い込みだ。自由と民主政は確かに貴重な財産だとは思うが、他の国に強制するようなものではあるまい。個人的には日本のように官僚支配が強くなり過ぎた国は、いっぺん独裁制を認めていいように思う。それくらいのことをしないとこの国が変わることはない。

2021-08-19

世界金融システムが貧しい国から富を奪う/『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

 世界をおおう金融システムとその上に乗って自己増殖しながら疾駆する「貨幣」は、人間労働の成果と自然を含む価値高い資源を、貧しい国から富める国へと移す道具となっている。
 本来の役割を終えた貨幣は「利が利を生むことをもって至上とするマネー」となった。この変質する貨幣の全体が『エンデの遺言』に凝縮されている。エンデは予言している。
「今日のシステムの犠牲者は、第三世界の人びとと自然にほかなりません。このシステムが自ら機能するために、今後もそれらの人びとと自然は容赦なく搾取されつづけるでしょう」(NHK番組『エンデの遺言』より)
 今日、世界をめぐるマネーは300兆ドルといわれる(年間通貨取引高)。地球上に存在する国々の国内総生産(GDP)の総計は30兆ドル。同じく世界の輸出入高は8兆ドルに過ぎない。
 この巨大な通貨の総体はそのままコンピューターネットワークを従僕とした世界金融システムと同義であり、その世界金融システムは「商品として売買される通貨」をこそ前提としている。
 そのゆえに「世界市場化」(グローバライゼーション)の本意は、自由奔放なる商品としてのマネーの襲撃から地域と社会を遮断(しゃだん)するいかなる防衛システムも機能不全に陥れるか、あるいはまたそのような防衛システム不在のバリアフリー社会を普遍化すべく、高度なノウハウを総動員しようとはかる強烈な意思のなかに見ることができる。
 言葉を換えていえば、いまや世界のすべての地域と人は、そのようなマネーの暴力の前に裸で身をさらすことを余儀なくされているのである。
(『エンデの遺言』 その深い衝撃/内橋克人)

【『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 行き過ぎた資本主義の形を戒めるとすれば社会主義的な色彩が強くなるのは当然なのだが、そこに党派性があれば話は少し変わってくる。ある政治信条を鼓吹する姿勢が隠されているならば批判は誘導のための道具と化す。今再読すれば印象はかなり変わることだろう。

 初版は2000年2月1日の刊行である。9.11テロの7ヶ月前だ。内橋克人〈うちはし・かつと〉の指摘は正確にグローバリゼーションの本質を衝いている。しかしながら、「だから地域通貨」とはならない。

 本来は巨大資本の暴力性に対抗すべく考案されたのがビットコインであった(『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー)。金融は既に融資から、コントロール~支配へと変貌を遂げた。

 マネーの歴史や意味を知る上では良書だが、ドル崩壊後の世界を見通せるほどの眼力はない。

2020-03-15

ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

「今日ではお金とは抽象的な大きさにすぎません。紙幣すらだんだんと姿を消し、今日動かされているのはコンピューターの単位、まったく抽象的な数字といえるでしょう。しかし本格的な経済の問題は紙幣の発明とともに起こったと思います。紙幣には物的価値はなく、価値のシンボルなのです。紙幣の発明で問題が生じるのは、紙幣が好きなだけつくれるからで、金塊ならば好きなだけ増やすというわけにはいきません。金銀に不足した王様は、軍隊に給金が払えず、弱小化しました。周知のようにローマ帝国の滅亡もこのことが主な原因です」

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 今考えると、やや社会主義的な印象が強い。ミヒャエル・エンデは1929年(昭和4年)11月12日生まれ。世界恐慌の引き金となったブラックサーズデイ(10月24日)の直後である。「マネーに裏切られた世代」といってよい。

 16歳の時に召集令状を破り捨て、「その後、近所に住むイエズス会神父の依頼でレジスタンス組織『バイエルン自由行動』の反ナチス運動を手伝い、伝令としてミュンヘンを自転車で駆け回った」(Wikipedia)。当時のレジスタンスは共産主義者の特許である(『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編)。総本山はフランス人民戦線だ(フランス共産党 - 世界史の窓)。

 1983年、河西善治が西ドイツ(当時)緑の党をモデルとした「東京緑派」(DIE GRUENEN) を結成し、参院選に東京都選挙区より出馬した。河西は人智学(シュタイナー思想)の研究家であり、西ドイツ緑の党がミヒャエル・エンデなど多くの人智学者によってできた経緯から、緑の党の思想を日本に広めることに注力していた。

Wikipedia > 緑の党 > 日本での試み

 同盟90/緑の党は「新左翼色の濃いエコロジー政党」のようだ。カール・マルクスやフリードリヒ・エンゲルスを生んだドイツである。エンデがその影響を受けたのはむしろ当然であろう。

 人智学とのつながりは初めて知った。ルドルフ・シュタイナーはもともと神智学協会のメンバーだったが、若きジッドゥ・クリシュナムルティを神の再誕とする見方に反発し、自ら人智学協会を設立した(『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール)。

 またエンデはベルトルト・ブレヒトから大きな影響を受けていたようだ(『ブレヒトの写針詩』岩淵達治編訳)。リベラルよりもやや左側に位置すると見てよい。言説にとらわれて思想的背景を見失うと、あらぬ方向に誘導されることがある。留意が必要な一書だ。

2020-02-18

「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

 フランス革命のスローガンである『自由・平等・博愛』は革命前からある言葉で、もとはフリーメーソンのスローガンにほかなりません。

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 悪夢の民主党政権で鳩山由紀夫首相は「友愛」を掲げた。祖父の鳩山一郎はフリーメイソンのメンバーだった(Wikipedia)。「フリーメイソンは、中世ヨーロッパの石工職人組合を祖にして生まれた秘密結社だが、その後、政財界や知識階級などのエリート達が集う、世界的な巨大組織に発展した」(ユダヤ=フリーメイソン説)。このくらいは大勢の人が知っていることだろう。

 フリーメイソンと陰謀がセットになっているのはその影響力の大きさによる。アメリカ合衆国大統領はジョージ・ワシントンを始めとする14人が会員だった。日本に縁のある人物だと黒船のマシュー・ペリーやダグラス・マッカーサーもフリーメイソンである。音楽界だとモーツァルト、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーンなど。ボーイスカウトやロータリークラブ、ライオンズクラブなども派生団体である。

 プロビデンスの目や原型であるホルスの目などを調べてゆくと、キリスト教が古代宗教の寄せ集めであることまで見えてくる。


【ホルスの左目】プロビデンスの目とは?由来と解説、さらに企業ロゴや身の回りに隠されているものをまとめてご紹介【万物を見通す目】 – Gossip Repository

 かつてのフリーメイソンから宗教色を取り除いたのはフランス大東社で、石工(いしく)の職人団体から知識人の友愛団体へと変貌を遂げた。実は歴史の潮流がここから変わるのだ。ピーター・F・ドラッカーが唱えた「知識社会」の源流を見出すこともできよう(ドラッカーの父親はフリーメイソンのグランド・マスターだった:『傍観者の時代』)。

 つまりだ、友愛団体となったフリーメイソンは超国家組織となって潰されたテンプル騎士団の生まれ変わりなのだろう。彼らは科学革命を背景に理神論を唱え、啓蒙思想を牽引し、フランス革命で近代の扉を大きく開いた。ナポレオン・ボナパルトもフリーメイソンの会員だった。

 国民国家となったフランスでユダヤ人は初めて国民として認められた。プロテスタントとは異なる第三の道が示されたわけだ。

フランス市民革命におけるメイソンとユダヤ人解放令

 フランス市民革命は、アメリカ独立革命の影響が旧大陸に波及したものである。ユダヤ人にとっては、アメリカにユダヤ人も自由に活動できる「自由の国」ができた後、フランスで市民革命を通じて、ユダヤ人の解放がされることになった。
 フランスでは、早くからロックの思想が摂取され、急進化していた。また、18世紀後半のフランスでは、フリーメイソンが活動していた。絶対王政やカトリック教会を批判した啓蒙主義者、百科全書の編纂者等には、メイソンがいた。また市民革命の指導者には、多くのメイソンがいた。
 フランス啓蒙思想は、イギリス啓蒙思想を源流として発達した。その発達には、フリーメイソンの組織と活動が関係している。
 フランス啓蒙思想の成果の一つが、『百科全書』である。1751年に第1巻が刊行された『百科全書』は、イギリスのチェインバーズ百科事典のフランス語訳を、ドゥニ・ディドロが行ったことを契機とする。チェインバーズ百科事典は、編纂者も版元もフリーメイソンだった。ディドロは不明だが、盟友のジャン・ル・ロン・ダランベールはメイソンだった。百科全書派は、総じてメイソンの影響を強く受けている。

ユダヤ42~フランス市民革命におけるメイソンとユダヤ人解放令 - ほそかわ・かずひこの BLOG

 ぶったまげた。こんなことは岡崎勝世ですら書いていない。近代の本質は「知識とマネー、そしてネットワーク」にあるのだろう。

「自由・平等・博愛」はフランスからカトリック色を漂白するための仕掛けか。この流れはアメリカに受け継がれ「民主政こそ正義」という概念に飛躍する。その後、フランスではドレフュス事件(1894年)が起こるのだがこれまた再考が必要だ。



フリーメイソンの「友愛」は「同志愛」の意/『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘
私の政治哲学 祖父・一郎に学んだ「友愛」という戦いの旗印:鳩山由紀夫
歴史という名の虚実/『龍馬の黒幕 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』加治将一
ネオコンのルーツはトロツキスト/『「米中激突」の地政学』茂木誠

2015-11-23

歴史という名の虚実/『龍馬の黒幕 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』加治将一


『逝きし世の面影』渡辺京二
『明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』原田伊織

 ・歴史という名の虚実

『武家の女性』山川菊栄
『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人
『守城の人 明治人柴五郎大将の生涯』村上兵衛
『國破れてマッカーサー』西鋭夫

 私はこの世に歴史はないと思っている。
 電車は通過しても線路の上に存在するが、事象は通過したとたんに消えてなくなる。残るのは、怪しげな書簡と危うい遺跡と心許(こころもと)ない口伝(くでん)だけだ。それもごくわずか、米粒のごときである。国の支配者はそれをいいことに好き放題料理する。虚を実にし、実を虚にして都合よく造っていくのだ。小説家もまたしかりだ。その陽炎(かげろう)にも似た米粒を拾い集めて、自分の歴史などというものを描くのである。

【『龍馬の黒幕 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』加治将一〈かじ・まさかず〉(祥伝社文庫、2009年/祥伝社、2006年『あやつられた龍馬 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』改題)以下同】

 E・H・カーが「すべての歴史は『現代史』である」とのクローチェの言葉を挙げ、「歴史とは解釈である」と言い切る(『歴史とは何か』1962年)。また「歴史は武器である」(『歴史とはなにか』2001年)という岡田英弘の指摘も見逃せない。つまり「歴史は勝者によって書かれる」(『中国五千年』陳舜臣、1989年)のだ。

 偽勅と偽旗(錦の御旗の偽造)によって成し遂げられた明治維新は薩長なかんずく長州の歴史といってよい。その後「陸の長州、海の薩摩」といわれ日本は戦争へ向かう。

 明治維新を決定づけたのが薩長同盟であり、その立役者が坂本龍馬であった。本書では龍馬暗殺についても驚くべき想像を巡らせている。龍馬を英雄に持ち上げたのは司馬遼太郎であるが、最近の明治維新ものでは極めて評価が低い。「グラバー商会の営業マン」「武器商人」といった見方をされている。余談になるが勝海舟もさほど評価されていない。

「薩摩藩など新政府側はイギリスとの好意的な関係を望み、トーマス・グラバー(グラバー商会)等の武器商人と取引をしていた。また旧幕府はフランスから、奥羽越列藩同盟・会庄同盟はプロイセンから軍事教練や武器供与などの援助を受けていた」(Wikipedia)。苫米地英人は「もっとはっきりいえば、当時の財政破綻状態のイギリスやフランスの事実上のオーナーともいえたイギリスのロスチャイルド家とフランスのロスチャイルド家が、日本に隠然たる影響力を行使するため、薩長勢力と徳川幕府の双方へ資金を供給したと見るべきなのです」(『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』2008年)と指摘する。

「ヨーロッパに銀行大帝国を築いたロスチャイルド家の兄弟の母は、戦争の勃発を恐れた知り合いの夫人に対して『心配にはおよびませんよ。息子たちがお金を出さないかぎり戦争は起こりませんからね』と答えたという」(『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』中丸美繪〈なかまる・よしえ〉、1996年)。戦争の陰にロスチャイルド家あり。

 本書はロスチャイルド家については触れていないが、イギリス諜報部が青写真を描き、フリーメイソンが志士たちをバックアップした様子が描かれる。

 この時代、すなわちボストン茶会事件からフランス革命までの間に、ゲーテが『若きヴェルテルの悩み』でドイツ人のハートをつかみ、ハイドンが「交響曲ハ長調」を発表。イギリスの歴史家ギボンが、かの勇名な『ローマ帝国衰亡史』を著(あらわ)し、モーツァルトが「交響曲39、40、41番」で、ヨーロッパの貴族たちを酔わせている。
 一見、なんの関係もない歴史的事実の羅列のようだが、そこにはある共通した結社が一直線に駆け抜けている。
 フリーメーソンである。
 ボストン茶会事件は、大勢のフリーメーソンが「ロッジ」と呼ばれる彼らの集会場から飛び出して引き起こしたものだし、意外かもしれないが、ゲーテ、ハイドン、ギボン、モーツァルト、彼らはみなまぎれもない、フリーメーソンである。
 アメリカの独立戦争、およびフランス革命。
 世界の二代革命の指導者層には、圧倒的多数のメンバーが座っており、ジョージ・ワシントンはフリーメーソン・メンバーの栄(は)えあるアメリカ初代大統領である。こう述べれば眉に唾を付ける人がいるが、私がフリーメーソンだという裏付は公式文書である。それ以外の人物は断言しない。

 ブログ内検索の都合上「フリーメイソン」と表記する。フランス革命のスローガンである「自由・平等・博愛」は元々フリーメイソンのスローガンであった(『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代、2000年)。

 本書によれば本来の石工組合を実務的メイソン、その後加入してきた知識人たちを思索的メイソンと位置づける。西洋社会を理解するためにはキリスト教と結社の歴史を理解する必要がある。フリーメイソンはキリスト教宗派を超えた結社であったという。となれば当然のようにユダヤ人的国際派志向が窺えよう(『世界を操る支配者の正体』馬渕睦夫、2014年)。キーワードは金融か。

 読み物としては十分堪能できたが、如何せん誤謬がある。本書ではグラバーをフリーメイソンと断定してはいないが、グラバー邸にあるフリーメイソンのマークが刻まれた石柱を傍証として挙げる。ところがこれは後に移設されたものである(Wikipedia)。瑕疵(かし)とするには大きすぎると思う。

2015-10-18

加治将一、岸見一郎、古賀史健、西尾幹二、藤原美子、溝口敦、小林よしのり、他


 8冊挫折、6冊読了。

眠りなき狙撃者』ジャン=パトリック マンシェット:中条省平〈ちゅうじょう・しょうへい〉訳(河出文庫、2014年)/中条翻訳ということで読んでみたが文体の癖についてゆけず。

毒になる親  生苦しむ子供』スーザン・フォワード:玉置悟〈たまき・さとる〉訳(講談社+α文庫、2001年)/良書。親子関係がすっきりしない人は読むといいだろう。私には必要なかった。

国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る』副島隆彦〈そえじま・たかひこ〉、植草一秀、高橋博彦(祥伝社、2012年)/二度の植草事件を検証する内容。個人的な印象としてはやはり冤罪の可能性が高いように思う。当時の小泉改革に反対する専門家として植草と紺谷典子〈こんや・ふみこ〉が有名だが二人ともテレビから締め出されている。

知られざる真実 勾留地にて』植草一秀(イプシロン出版企画、2007年)/こちらが事件後に刊行された第一号となる。大手出版社は忌避したのか? 冤罪を訴える内容と思いきや、短文のエッセイ集でびっくりした。巻末資料として50ページ余りで事件の経緯が記されている。冤罪や国策操作に興味のある人は必見のこと。

帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」』関岡英之(祥伝社、2010年)/ダライ・ラマの記述から始まり肩透かしを食らった。

日本近代史 「明治維新」という嘘』原田伊織監修(別冊宝島、2015年)/原田著『明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』の人気にあやかる宝島の商魂は不問に付す。冒頭に登場する原田の人相が悪すぎる。死神がダンディを気取っているようにしか見えない。絵の構図がさほどよくない。部分的な明治維新批判にとどまっている。加治将一(※後述)の足元にも及ばない。

祖父たちの零戦 Zero Fighters of Our Grandfathers』神立尚紀〈こうだち・なおき〉(講談社、2010年/講談社文庫、2013年)/「写真週刊誌『FRIDAY』のカメラマンとして報道の仕事に従事していた戦後生まれの私」(2ページ)という文章を読んで本を閉じた。『FRIDAY』が報道の仕事とは知らなんだ。

新編 知覧特別攻撃隊 写真・遺書・遺詠・日記・記録・名簿』高岡修編(ジャプラン、2010年/村永薫編、ジャプラン、1991年『知覧特別攻撃隊 写真・遺書・日記・手紙・記録・名簿』が旧版か)/本書は写真に価値がある。書籍としては構成が施されていないため息苦しさが延々と続く。しかし写真の笑顔が、そして雄渾なる筆致が胸を打ってやまない。

 127冊目『ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論』小林よしのり(小学館、2008年)/書くのを失念していた。中島岳志が『パール判事 東京裁判批判と絶対平和主義』で小林に喧嘩を売った。で、小林が「喧嘩上等」と買ったのが本書である。学者vs.漫画家の勝負は完膚なきまでに小林の勝利と見てよい。amazonレビューの低い評価がいずれも濃い内容となっていて注目に値する。更に中島は西部邁と『パール判決を問い直す「日本無罪論」の真相』を著すが的外れな議論を展開しているようだ。また第18章では田中正明の改竄問題(※『「南京事件」の総括』)を検証。意図的な改竄部分は少なからず散見されるが、資料誤読によるミスが多いとし、朝日新聞報道をミスリードと断じる。テキストがメインなので私のように小林の画風が苦手でも十分堪能できる。「日本の近代史を学ぶ」に追加。

 128冊目『池田大作 「権力者」の構造』溝口敦(講談社+α文庫、2005年/三一新書、1972年『池田大作 権力者の構造 堕ちる庶民の神』改題)/ペンに悪意があり、至るところに憎悪が垣間見える。「あとがき」で言いわけせざるを得なかったのも自覚があったためだろう。読み物としては二流三流のレベルだが引用文献などの資料的価値は高い。

 129冊目『我が家の流儀 藤原家の闘う子育て』藤原美子〈ふじわら・よしこ〉(集英社文庫、2007年)/結婚と子育てを巡るエッセイ集。秀逸。筆致の軽やかさが亭主の藤原正彦よりも抜きん出ている。毒のあるユーモアは五分五分。藤原美子は2冊読んだが外れがない。

 130冊目『GHQ焚書図書開封 1 米占領軍に消された戦前の日本』西尾幹二(徳間文庫カレッジ、2014年)/飛ばし読みするつもりであったのだが一気に読み終えてしまった。驚くほど読みやすい。それもそのはずチャンネル桜で放送した番組の文字起こしに加筆したもの。GHQは何と7000冊以上もの書籍を没収していた(個人所蔵は除く)。つまり焚書の内容にGHQが抹殺を目論んだ日本文化のエッセンスがある。老境に達した西尾の無謀な試みであるが、既に第5巻まで刊行されている。その学者魂に頭を垂れる。

 131冊目『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健〈こが・ふみたけ〉(ダイヤモンド社、)/一気読み。これは驚天動地の一書である。脳みそが激しく揺さぶられる。「どうせベストセラーだろ」と侮っていた。マズローの自己実現理論とは一線を画す。古賀のライティングが巧みすぎて最初は胡散臭さを感じるほど。だが一旦脳が撹拌(かくはん)されると次々と心地良い刺激が満ち溢れる。本書の後にバイロン・ケイティを読むといいだろう。昨日読み終えたのだが脳の痺れがいまだに止まらない。

 132冊目『龍馬の黒幕 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』加治将一〈かじ・まさかず〉(祥伝社文庫、2009年)/面白かった。巻を措(お)く能(あた)わずで一気読み。危うい文章が散見されるが歴史の暗部に迫る良書。「やりすぎ都市伝説外伝」は本書を叩き台にしている。加治は想像力を駆使しして龍馬の暗殺犯を断定する。私は坂本龍馬にさほど興味を持っていないが、それでも度肝を抜かれた。よくよく考えてみれば下級武士であった坂本や勝海舟が何の背景もなく活躍できたわけがない。若干物足りなかったのは幕府側を支持したとされるフランスのフリーメイソンについて触れていない点である。「日本の近代史を学ぶ」に追加。

2015-04-29

日本にとって危険なヒラリー・クリントン/『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年

 ・フリーメイソンの「友愛」は「同志愛」の意
 ・日本にとって危険なヒラリー・クリントン

『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 売国奴という言葉がありますが、国家観を持たない人間は平気で国を売ります。自分では国を売るという意識もないまま、「親米」だの「親中」だのと体(てい)のいい言葉の裏で、国を売って平然としています。私はこれまでどれほどそういう政治家を見てきたか。本当に嫌になるくらい見てきました。

【『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘(徳間書店、2012年)以下同】

 今から30年ほど前までは「愛国心」という言葉が右翼を示すキーワードであった。この国は戦争に敗れて以来、「国を愛すること」すら許されなかった。

 本多勝一〈ほんだ・かついち〉の「菊池寛賞を改めて拒否しなおす」(『潮』1983年11月号)に感激した私は、当然のように彼が批判する山本七平からは遠ざかった(『殺す側の論理』すずさわ書店、1972年)。浅見定雄の『にせユダヤ人と日本人』(朝日文庫、1986年)にも私は手を伸ばした。時代の風は左側から吹いていた。それに断固として異を唱えたのが渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉や谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉であった。彼らは「右翼」と目された。

 菅沼の指摘は右左の問題ではない。政治家が国益よりも私益を重んじたとの一点にある。新聞・テレビ・企業がこれに続くのは当然であろう。祖国は売り物と貶められた。

 日韓関係についてもそうです。例の従軍慰安婦の問題について、ヒラリー・クリントン国務長官が従来の「コンフォート・ウーマン(慰安婦)」という英語の呼称を「セックス・スレイブ(性奴隷)」にするしかないと言いはじめています。
 これは韓国の圧力によるもので、アメリカのニュージャージー州とニューヨーク州の2ヵ所には、旧日本軍従軍慰安婦の記念碑が建てられています。いずれも公共施設の中です。そこには「20万人の韓国の若い女性が日本帝国政府に拉致されてセックス・スレイブになった」と書かれている。せいぜい数万人とされていたのがいまや20万人になっているのです。
 日本政府はこれを撤去するように申し入れていますが、アメリカはまったく撤去しようとしません。
 この記念碑を見たアメリカ人は、これはひどい、日本は許せないとなるでしょう。それを受けてヒラリー・クリントンはセックス・スレイブと言い出した。
 李明博大統領は来年2月で任期は終りですが、韓国というのは政権の末期になると必ず反日の気運を高めることになります。まして李明博政権は身内の収賄事件などが発覚してボロボロですから、世論を反日に向けさせて自分に矛先が向かないようにしています。それにアメリカも加担しているわけです。


「米国は,アメリカ合衆国下院121号決議の成立と,ヒラリークリントンやバラクオバマの声明によって,韓国の売春婦(政府と売春婦の両方)をサポートした」(アメリカ人ジャーナリストのマイケル・ヨンさんの日本語のブログ)。

 バブル景気に酔い痴れる日本に対して「経済戦争」を仕掛けたのが夫君のビル・クリントンであった(『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘)。その妻女が親日家であるとは考えにくい。夫婦揃って左派的要素が強いことでも知られる。

 慰安婦問題を歴史的事実としないためにも、「いわゆる慰安婦問題」と表記することが望ましい。結果的に見ればアメリカにおける韓国のロビー活動に我が国が敗れたということだ。

 本来であれば朝日新聞の慰安婦虚報が明らかになった時点で、これをテコに全国民的な歴史検証を開始すべきであった。アメリカ議会に対するロビー活動も必要だとは思うが、まずきちんとした英語情報を書籍やウェブサイトの形で日本から発信すべきである。

渡部昇一の考える、いわゆる慰安婦問題について

 そもそもなぜ慰安婦が必要になったか? 兵士に強姦させないためである。こんな簡単な理屈もわからなくなっている。欧米やロシアの場合は徹底的な強姦を行う。ノルマンディー上陸作戦に参加した米軍兵士たちはフランス人女性を思う存分犯した(AFP 2013-05-27)。ヒトラー率いるナチス・ドイツを破ったロシア軍も手当たり次第にドイツ人女性をレイプした。老女までもが犠牲となった。

 東京裁判史観を完全に払拭することなしに戦後レジームからの脱却はあり得ない。現段階では正確な自国の歴史を述べる機会すら与えられていないのが日本の現状である。

この国はいつから米中の奴隷国家になったのか
菅沼光弘
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2014-12-23

フリーメイソンの「友愛」は「同志愛」の意/『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年

 ・フリーメイソンの「友愛」は「同志愛」の意
 ・日本にとって危険なヒラリー・クリントン

『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年
『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘:2014年

 それに彼の祖父の鳩山一郎さんがフリーメイソンだったということもあります。フリーメイソンの標語の一つに「友愛」というのがある。それで彼は友愛精神だとか友愛外交だとかやたらに「友愛」と言っていたのです。
 戦後の日本占領を指揮した連合軍最高司令官のマッカーサーはフリーメイソンです。それで鳩山一郎さんは、日本自由党総裁として首班使命を受ける直前に公職追放されたりしたものだから、マッカーサーの歓心を買うためにフリーメイソンに入った。
 ワシントン郊外に「コリングウッド」という有名な建物がある。現在はフリーメイソンの博物館として使われています。その2階がマッカーサーなど著名な軍人のフリーメイソンの展示室になっていて、そこにフリーメイソン日本支部に関する資料があり、その中に占領時代の日米両国の指導者たちの名前が並んでいます。幣原喜重郎〈しではら・きじゅうろう〉や星島二郎などの政治家とともに、ちゃんと鳩山一郎の名前があります。
 1955年の保守合同自由民主党を結成したときに、その綱領の最初に自主憲法の制定を掲げ、それまでの吉田茂内閣の対米従属路線を転換して日ソ国交回復を成し遂げたのは鳩山一郎さんです。
 孫の鳩山由紀夫さんがフリーメイソンかどうか知りませんが、お祖父さん以来のそういう関係があるものだから、アメリカとの強いパイプがあると彼は確信していたのです。
 それでお祖父さん譲りの対米自主路線ということを言ってもうまくいくと考えたのでしょう。アメリカにはフリーメイソンの「友愛の朋」がいる、彼らが助けてくれると。ところがうまくいかなかった。お祖父さんの一郎さんですらうまくいかなかったのですから、そう簡単にいくはずがありません。
 鳩山さんが言っている「友愛」というのは、フリーメイソンが掲げる「フラタニティ」という言葉を訳したものですが、「フラタニティ」というのは本来、フリーメイソンの仲間だけの「同志愛」という意味です。それを一般的な「友愛」という日本語に置き換えて自分のスローガンにしたのです。
 中国の「国父」と呼ばれる孫文もフリーメイソンでした。南京に中山陵という孫文の墓がありますが、そこに「博愛」の文字が刻まれています。これもおそらく「フラタニティ」を日本語訳したもので、誤訳か意訳かわかりませんが、孫文はそれをそのまま自分の思想にしたわけです。

【『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘(徳間書店、2012年)】

「フランス革命のスローガンである『自由・平等・博愛』は革命前からある言葉で、もとはフリーメーソンのスローガン」だった(『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代)。フリーメイソンについては以下のページが詳しい。

フリーメーソンの深層(PDF)

 元々は石工職人のギルド(組合)であったが、薔薇十字運動やテンプル騎士団が絡んでくるあたりから変質したのだろう(フリーメーソンとオカルティズム)。

 あるコミュニティから生まれた強い思想は伝染力をまとって外部にまで共感の輪を広げる。人々が「正しい」と認識し、心から納得すれば脳の構造まで変わる。つまり思考の枠組みに革命を起こすのだ。ナポレオンがフリーメイソンであったという証拠はないが、4人の兄弟は全員がフリーメイソンであった(フリーメイソンだった有名人一覧)。

 例えば仏教の因果応報、マルキシズムの進歩史観、ユダヤ教の契約、キリスト教の正義と愛など数え上げれば切りがない。脳は「合理」に逆らえない。たとえ錯覚であったとしても当人が「理にかなっている」と思い込んだ瞬間にアルゴリズムが変わるのだ。

 ある意味で信じることはたやすい。騙される人が多いのがその証拠だ。振り込め詐欺には引っ掛からなくても、政治家やメディアの嘘にまんまと騙される人々は多い。広告に煽られて買い物をしてしまう人は注意が必要だ。

 近頃、流布した価値観のひとつに新自由主義がある。限りない競争を是としながらも、先進国においては国が金融機関のケツを拭くというデタラメなものだった。ナオミ・クラインが『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』で徹底的に糾弾している。

 ある時代においては魔女狩りをすることが正しかったり、インディアンを虐殺することが正しかったり、黒人を奴隷にすることが正しかった。虐殺は正義の名のもとに行われる。今、我々に必要なのは欧米の価値観を疑うことである。特に一強となったアメリカの政治的目論みに与(くみ)しないことが重要だ。彼らは国益という本音を隠しながら、世界をダシにして議論を仕掛ける。

 2015年から2016年にかけて世界経済は再び混乱することだろう。長年にわたって行われてきた金融緩和でジャブジャブになったマーケットがコントロール不能な暴走に至る。その時、世界各国で国粋主義が台頭する。キリスト教に変わる価値観が出現するまで人類は混乱を繰り返す。

2014-02-07

資本主義経済崩壊の警鐘/『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン


『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー
『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス

 ・資本主義経済崩壊の警鐘
 ・人間と経済の漂白
 ・マンデラを釈放しアパルトヘイトを廃止したデクラークの正体

『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹

必読書リスト その二

 禁を破り、まだ読み終えていない作品を紹介しよう。第二次大戦後、アメリカが世界で何を行ってきたのかが理解できる。情報の圧縮度が高いにもかかわらず読みやすいという稀有な書籍。2冊で5000円は安い買い物だ。

 少なからぬ人々が中野剛志〈なかの・たけし〉の紹介で本書を知り、翻訳を心待ちにしていたことだろう。


【5分7秒から】

 ナオミ・クラインについては『ブランドなんか、いらない』を挫折していたので不安を覚えた。それは杞憂(きゆう)に過ぎなかった。

 書評の禁句を使わせてもらおう。「とにかく凄い」。序章と第一部「ふたりのショック博士」だけで普通の本1冊分以上の価値がある。CIAMKウルトラ計画で知られるドナルド・ユーイン・キャメロン(スコットランド生まれのアメリカ人でカナダ・マギル大学付属アラン研究所所長。後に世界精神医学会の初代議長〈※本書ではユーイン・キャメロンと表記されている。なぜドナルド・キャメロンでないのかは不明〉)と、マネタリズムの父にしてシカゴ学派の教祖ミルトン・フリードマンがどれほど似通っているかを検証し、同じ種類の権威であることを証明している。

ジェシー・ベンチュラの陰謀論~MKウルトラ

 枕としては巧妙すぎて私は首を傾(かし)げた。だが南米の国々を破壊してきたアメリカの謀略を読んで得心がいった。

 壊滅的な出来事が発生した直後、災害処理をまたとない市場チャンスと捉え、公共領域にいっせいに群がるこのような襲撃的行為を、私は「惨事便乗型資本主義」(ディザスター・キャピタリズム)と呼ぶことにした。

【『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン:幾島幸子〈いくしま・さちこ〉、村上由見子訳(岩波書店、2011年)以下同】

 フリードマンはその熱心な追随者たちとともに、過去30年以上にわたってこうした戦略を練り上げてきた。つまり、深刻な危機が到来するのを待ち受けては、市民がまだそのショック状態にたじろいでいる間に公共の管轄事業をこまぎれに分割して民間に売り渡し、「改革」を一気に定着させてしまおうという戦略だ。
 フリードマンはきわめて大きな影響力を及ぼした論文のひとつで、今日の資本主義の主流となったいかがわしい手法について、明確に述べている。私はそれを「ショック・ドクトリン」、すなわち衝撃的出来事を巧妙に利用する政策だと理解するに至った。

 ショック・ドクトリンというレンズを通すと、過去35年間の世界の動きもまるで違って見えてくる。この間に世界各地で起きた数々の忌まわしい人権侵害は、とかく非民主的政権による残虐行為だと片づけられてきたが、じつのところその裏には、自由市場の過激な「改革」を導入する環境を考えるために一般大衆を恐怖に陥れようとする巧妙な意図が隠されていた。1970年代、アルゼンチンの軍事政権下では3万人が「行方不明」となったが、そのほとんどが国内のシカゴ学派の経済強行策に版愛する主要勢力の左翼活動家だった。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の目的も「アメリカのための市場開放」であることは間違いない。しかもフリードマン一派が常に待望している惨事(東日本大震災)がこれ以上はないというタイミングで発生した。あとは枠組みを作って根こそぎ奪うだけのことだ。

 利権が民主主義を脅かしている。政治は経済に侵略され、思想よりも損得で動くようになってしまった。既に巨大な多国籍企業は国家を超える力をもつ。富は均衡を失い富裕層へと流れ、先進国では貧困化が拡大している。このまま進めば庶民は確実に殺される。

 本書のどのページを開いても資本主義経済崩壊の警鐘が鳴り響いてくる。

 私も以前からミルトン・フリードマンに嫌悪感を覚えていたが、そんな彼でさえクリシュナムルティを称賛していたことを付記しておく。(ミルトン・フリードマンによるクリシュナムルティの記事




資本主義の問題に真っ向から挑むマイケル・ムーアの新作 『キャピタリズム~マネーは踊る』(前編)
資本主義の問題に真っ向から挑むマイケル・ムーアの新作 『キャピタリズム~マネーは踊る』(後編)

キャピタリズム~マネーは踊る プレミアム・エディション [DVD]

『禁じられた歌 ビクトル・ハラはなぜ死んだか』八木啓代
環境帝国主義の本家アメリカは国内法で外国を制裁する/『動物保護運動の虚像 その源流と真の狙い』梅崎義人
モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『ザ・コーポレーション(The Corporation)日本語字幕版』
帝国主義大国を目指すロシア/『暴走する国家 恐慌化する世界 迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』副島隆彦、佐藤優
パレートの法則/『新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ
アメリカ礼賛のプロパガンダ本/『犬の力』ドン・ウィンズロウ
官僚機構による社会資本の寡占/『独りファシズム つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?』響堂雪乃
グローバリズムの目的は脱領土的な覇権の確立/『超マクロ展望 世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人
シオニズムと民族主義/『なるほどそうだったのか!! パレスチナとイスラエル』高橋和夫
汚職追求の闘士/『それでも私は腐敗と闘う』イングリッド・ベタンクール
ネイサン・ロスチャイルドの逆売りとワーテルローの戦い/『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵
TPPの実質は企業による世界統治
近代において自由貿易で繁栄した国家など存在しない/『略奪者のロジック 支配を構造化する210の言葉たち』響堂雪乃
ヨーロッパの拡張主義・膨張運動/『続 ものぐさ精神分析』岸田秀
新自由主義に異を唱えた男/『自動車の社会的費用』宇沢弘文
フリーメイソンの「友愛」は「同志愛」の意/『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘
「我々は意識を持つ自動人形である」/『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
ヒロシマとナガサキの報復を恐れるアメリカ/『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎

2011-12-27

フランス支配者層のイスラム教恐怖症 ブルカ禁止法


 2009年9月22日。イスラム教・イスラム教徒の悪魔化・侮辱的扱いはメディアだけでなく法律にも見られる。学校でのヴェ-ル禁止、ブルカ禁止法は、それに関する無数の­討論(番組も含め)や記事でイスラム教徒を強く問題視し貶める結果になった。この法律案の運動の裏にはフリーメイソンの存在が大きい。


ブルカ禁止法施行後、初の拘束 フランス

 顔全体を覆うベールの着用を禁止する法律が11日に施行されたフランスで同日、首都パリでの抗議行動中、体をすっぽりと覆い目だけを出す「ニカブ」を着用した女性2人が警察に一時拘束された。

 ただし女性たちはベールの着用ではなく、ノートルダム寺院(Notre-Dame Cathedral)前で発生したデモに参加したことが、無許可の抗議行動への参加とされ拘束された。しかし、同法の施行後であるため法律上では、公共の場で顔を見せることを拒否するイスラム女性に当局は罰金を科すことができる。

 拘束された1人、ケンザ・ドリデル(Kenza Drider)さん(32)は「わたしたちについてどうするか検察官が決めるまでの間、警察署に3時間半、拘束された。その後『いいでしょう。行っていい』と言われた」と語った。
 
拘束されるも罰金科されず

 ドリデルさんとは別に、実業家で活動家のラシド・ネッカ(Rachid Nekkaz)氏も、ニカブをかぶった女性の友人と一緒にいて、大統領府前で警察に拘束されたと語った。ネッカ氏はAFPの取材に「わたしたちはニカブをかぶっていたことで罰金を科されたかったが、警察のほうが罰金を科したがらなかった」と語った。

 ネッカ氏は今回の禁止法に反対しており、ベールをかぶっていて罰金を科された人の肩代わりするために、200万ユーロ(約2億4000万円)相当の自己資産を競売にかけ、基金を設立すると宣言している。

 一方、フランス警察は、同法に違反した人がいても強制的にベールをはがす権限は与えられておらず、さらにすでに緊張関係にある移民居住区で抵抗に遭う恐れもあり、施行はされたものの、同法の執行には困難があると懸念している。

AFP 2011-04-12

burqu

2011-06-19

利子、配当は富裕層に集中する/『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

 モノの価値は時間を経るごとに下がる。腐ったり、色褪せたり、時代遅れになってゆく。時は残酷に諸行無常のリズムを奏でる。

 ただ一つ例外がある。それがお金だ。マネー。お金は利子を生んで増殖する。まるで生き物のように。なぜお金は減ってゆかないのだろう? 本書は利子というマジックの種明かしをしている。待望の文庫化。

 すでに早く『アメリカの没落』(ドナルド・L・バーレットほか著)は21世紀初頭のアメリカにおいては、利子、配当などのキャピタルゲインのすべては上位4パーセントの富裕層に流れ込むことになろう、と予測している。IT革命を味方とした国際金融システムがそれを加速する。(『エンデの遺言』 その深い衝撃/内橋克人)

【『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 内橋克人が寄せた序文である。マネーの川は流れ、富裕層というダムによって堰(せ)き止められる。水は発展途上国の手前で干上がる仕組みになっている。

 経済の重力を阻害しているのは富裕層の強欲だ。競争原理が働けば「見えざる手」も機能するのだろうが、税金・国家予算・規制・広告などが幅を利かせているから無理だ。競争は常にコントロール下で行われている。

 アメリカや中国、そして日本でも貧富の差が拡大している。二極化は富の分配が不公平であることを示す。

 次に紹介するのは今月のニュースである。

◆世界の富の約4割を1%の「億万長者世帯」が保有、米調査

 世界の世帯数のわずか1%程度に過ぎない「億万長者世帯」が、世界の富の約4割を保有し、国際的不況の中で貧富の格差はさらに広がりつつある──。コンサルティング大手のボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)が5月31日に発表した2010年度の世界の資産などに関するレポートで、このような実態が示された。
 金融資産100万ドル(約8100万円)以上を保有する「億万長者世帯」の数は前年比で12%増え、この結果、億万長者世帯が世界の家計金融資産を保有する割合も、2009年調査の37%から39%に増えた。
 国別に見ると、米国は国際金融危機の震源地だったにもかかわらず、億万長者世帯数は群を抜いており、前年比1.3%増の520万世帯と世界で最も多かった。2番目に富裕世帯が多いのは日本で153万世帯、3位が中国で111万世帯だった。
 アジアではシンガポールを始めとする新興経済国の成長も目立ち、世界の富を保有するアジア地域の割合は前年比2.9%増だった。

AFP 2011-06-05

 使い切れないほどの富を独占している連中が存在する。世界中に転がっている飢餓や貧困は彼らが生んだものかもしれない。政治や経済が、あるいは科学や宗教が世界を救ったことは一度もない。我々は飢えに喘ぐ人々をテレビの画面越しに眺めた時だけ、ほんの少し哀れみを覚えるだけだ。

 コンピューターネットワークによって金融はグローバル化された。余ったお金がマーケットに溢れ、実体経済を翻弄する。

 経世済民が本当であるならば、貧困と飢餓をヘッジするファンドがあってしかるべきだ。IMF(国際通貨基金)と世界銀行支配から脱却することが南北問題解決の第一歩であると私は考える。



IMF(国際通貨基金)を戯画化するとこうなる
消費を強制される社会/『浪費をつくり出す人々 パッカード著作集3』ヴァンス・パッカード
アンシャン・レジームの免税特権/『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン

2011-06-11

宗教的ユートピアを科学的ディストピアとして描く/『絶対製造工場』カレル・チャペック


『「絶対」の探求』バルザック

 ・宗教的ユートピアを科学的ディストピアとして描く

『木曜の男』G・K・チェスタトン

 カレル・チャペックを初めて読んだ。私は長らく「庭仕事をやっているオヤジだろ?」くらいに思っていた。20代で刻印された先入観はそう簡単に消えるものではない。その後、「ロボット」という言葉をつくったのがチャペックであることを知った。

 本書はバルザック著『「絶対」の探求』に対するオマージュである。

 物語の後半が失速していて文学性や作品の完成度はバルザックに及ばないが、「絶対」というテーマを別角度から照らしていて一読に値する。脳機能を司る理性と感情は、外へこぼれ落ちて科学と宗教となる。人間が絶対や真理を求めずにいられないのは脳が二つに割れているためだ、というのが私の持論である。

 カレル・チャペックの柔軟さにベルトルト・ブレヒトと相通ずるものを感じた。

人間を照らす言葉の数々/『ブレヒトの写針詩』岩淵達治編訳

 チェコスロバキアと東独が隣り合っていたことと関係しているのだろうか? ただし文化的な共通点は少ないようだ。

チェコとドイツは人々も建物もなんとなく似ているように見えるのですが、具体的にどの辺が違うのでしょうか?

 硬い性質はわかりやすいものの反発力に変化がない。柔軟さの奥深いところは、ぶつかった力を受け入れた後に反動を加えて投げ返すところだ。チャペックやブレヒトには弓や鞭のような精神のしなやかさがある。この弾力性がユーモアの源だ。

 発明
 収益性の非常に高い、どの工場にも好適のもの 個人的理由により即時売却――問い合わせ先ブジェヴノフ 1651 R・マレク技師

【『絶対製造工場』カレル・チャペック:飯島周〈いいじま・いたる〉訳(平凡社ライブラリー、2010年)以下同】

 新聞広告にボンディの目が留まる。マレクは青年時代の親友であった。

「(※現代技術の問題が)ビジネスだなんて全然ちがうよ、わかるか? 燃焼だ! 物質の中に存在する熱エネルギーの完全な燃焼だ! 考えてみろよ、石炭からは燃焼可能なエネルギーの、ほんの10万分の1しか燃やしていないんだよ! ちゃんとわかってるか?」(マレク)

 戯曲『ロボット(R.U.R.)』が1920年、その次に発表されたのが本書で1922年(大正11年)のこと。オットー・ハーンが原子核分裂を発見したのは1938年である。カレル・チャペックは明らかに原子力発電の可能性を見越していた。正真正銘のサイエンス・フィクションといってよい。しかもハードSF。

「聞いてるかい、ボンディ? あれは何十億も何千億もの金をもたらすぞ。でもその代わり、良心に対する恐ろしい害毒を引き受けなきゃならない。覚悟しろよ!」

「ぼくの完全カルブラートルは、完全に物質を分解することで、副産物を作り出す――純粋な、束縛されぬ【絶対】を。化学的に純粋な形の神を。言ってみれば、一方の端から機械的なエネルギーを、反対の端から神の本質を吐き出すのだ。水を水素と酸素に分解するのとまったく同じさ。ただ、それよりおそろしく大規模なだけだ」

 原子力発電の着想もさることながら、有害物質ではなく有益物質としたところにチャペックの卓抜したアイディアが光る。厳密にいえば有益というよりは、多幸症(ユーフォリア)を惹き起こす物質であった。

「ぼくは信じているが、科学は神を一歩一歩閉め出している、あるいは少なくとも、神の顕現を制限している。そしてそれが、科学の最大の使命だとぼくは信じる」

 マレクは自ら製造したカルブラートルに対して否定的だった。幸福が「状態」を意味するのであれば、棚ぼた式の啓示や悟りでも一向に構わないはずだ。しかしマレクは飽くまでも科学的真理を求めた。

「でも想像してみろよ、たとえば、本当にどんな物質の中にも神が存在すること、物質の中になんらかのやり方で閉じ込められていることを。そしてその物質を完全に破壊すれば、神はぱりっとした格好で飛び出すのだ。神は完全に解放されたようになる。物質の中から、まるで石炭から石炭ガスが蒸発するように蒸発する。原子を一つ燃焼させれば、地下室いっぱいの【絶対】が一気に得られる。【絶対】があっと言う間に広がるのには、びっくりするぜ」

 目に見えぬ放射能のように絶対は拡散する。信仰者が目指す理想を状況として描くことで、チャペックは宗教の安易さを暴き立てている。つまり宗教的ユートピアを科学的ディストピアとして描画(びょうが)したのだ。まさに天才的手法。

「その間に、地下室にあの大きなカルブラートルを設置して、稼働させた。きみに話したように、もう6週間、昼も夜も動いている。そこではじめて、【こと】の全容を認識した。その日のうちに地下室には【絶対】が満ちあふれて裂けんばかりになり、家の中全体を徘徊しはじめた。いいかい、純粋な【絶対】はどんな物質にも浸透してくるんだ。固い物質の場合は少しゆっくりだがね。大気の中では光と同じくらい速く拡散する。ぼくが地下室へ入って行った時は、きみ、まるで発作のように襲ってきた。ぼくは大声でわめいた。逃げ出すだけの力が、どこから湧いたのかわからない。それからここ、上の部屋で、全部のことをよく考えた。最初の考えでは、それは新しい、気分を高揚させるさせるガスかなにかで、物質の完全燃焼から生じたのだ、ということだった。そこで、外からあの空調機を取り付けさせた。3人の工事人のうち2人が作業中に啓示を受け、幻影を見た。3人目はアル中だったから、たぶんそのせいでいくらか免疫があったのだろう。それはただのガスだ、と信じていた間は、それについていろいろ実験をした。興味深いことに、【絶対】の中では、どの光もずっと明るく燃える。【絶対】を梨の形のガラス器に密封できれば、電球にしたいところだがね。だが彼は、この上なく厳重に閉じられたどんな容器からでも蒸発してしまう。だからぼくは、彼は一種の超放射能物質だろうと考えた。しかし、電気の軌跡は一切ないし、感光板にもなんの痕跡もない。3日目には、家の管理人をサナトリウムに送らなきゃならなかった。管理人は地下室のうえに住んでたんだよ、それにその妻も」
「どうしたんだい?」ボンディ氏は尋ねた。
「人が変わってしまったんだ。霊感を受けて。宗教的な説教し、奇跡を行なった。その妻は預言者になった」

 大笑い。失礼。私が読んだのは福島の原発事故が起こる前だったのだ。許せ。

 スピリチュアル系の連中を嘲り笑うような場面である。現実離れした平和主義者も同じ俎(まないた)の上に載っている。

 マレクが逃げ出した姿が、映画『トゥルーマン・ショー』のラストシーンと重なり合う。自由が一切の束縛を拒絶するものであるならば、麻薬的な幸福感は隷属を意味する。

 チャペックは更に宗教を絡める。

「それはまちがってますよ、あなた」祝聖司教は快活に叫んだ。「まちがってますよ。教義(ドグマ)の欠けた学問はただの懐疑の集積です。もっと悪いのは、あなた方の【絶対】が教会の法律に反することです。真正さについての教えに対する抵抗です。教会の伝統を無為にするものです。三位一体の教えに対する乱暴な侵犯です。聖職者たちの使徒的な服従の無視です。教会の悪魔払い(エクソシズム)にさえも従わない、その他もろもろ。要するに、われわれが断固として拒否せねばならない振る舞いをしているのです」

 それまでは教会の専売特許であった啓示が工場で大量生産されるようになったのだから大変だ(笑)。ただし教会には神学という武器があるから理屈をこねくり回すのには事欠かない。彼らは現実よりもバイブル(聖書)を重んじるのだ。

 そしてほんのわずかな記述ではあるのだが、フリーメイソン神智学協会まで出てくる。恐るべき見識である。

 悪のない世界を描いたものとしては、福永武彦の「未来都市」(『廃市・飛ぶ男』所収)という作品があるが、両者に通い合うのは破壊の調べだ。

 カレル・チャペックは「絶対」という価値観に巣食うファシズム性をものの見事に暴いてみせた。



『カレル・チャペックの世界』
カレル・チャペック『絶対製造工場』
フリーメイソン

2009-08-15

紙幣とは何か?/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

 我が国における紙幣とは「日本銀行券」のことである。私はこれを小学生の時分にクイズで知った。よもや、こんな妙ちきりんな名前だとは夢にも思わなかった。「券」だと? じゃあ、映画のチケットと変わりがないことになる。しかし、流通の範囲がべらぼうに異なる。ただ、日本全国のお店、会社で取引可能な商品券と考えると腑に落ちる。

「紙幣(しへい)とは、広義には、公的権力(主に国家)により通貨として強制通用することが認められている紙片である」(Wikipedia)――何だ、この素っ気ない言い方は(笑)。まるで、大金持ちの坊っちゃんが「ケッ、こんなモンは所詮紙切れなんだよ」と捨てゼリフを吐いているように聞こえる。

 ミヒャエル・エンデは紙幣の意味を法律家に問い質(ただ)した――

「私は10人の法律家に手紙を書き、法律的見地から銀行券とは何かと尋ねました。それは『法的権利』なのか、国家がそれを保証するのか。もしそうなら『お金』は経済領域に属さず、法的単位ということになります。『法的単位』なら商いの対象にはできません。しかし、そうではなく経済領域に属するものなら、それは商品といえます。10人の法律家からは10通りの返答がきました。つまり、法的に見て、銀行券とは何なのかを私たちはまるで知らないわけです。定義は一度もされませんでした。私たちは、それが何か知らないものを、日夜使っていることになります。だからこそ、『お金』は一人歩きするのです」

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 何ということか。我々は紙幣の意味もわからずに紙幣を使い、紙幣を追い求め、紙幣のためにあくせくと生きていたのだ。もっと混乱させてあげよう。では、紙幣と貨幣はどのように違うのか? 紙幣は日本銀行が発行し、貨幣は国が発行する。で、発行元が異なる理由もわからない。

 疑問はどんどん膨らむ。国立印刷局が紙幣を印刷し、造幣局が貨幣を鋳造すると、どの程度の報酬が支払われているのであろうか? ちなみに、券種を問わず紙幣1枚あたりの印刷代は約16円である(廣宮孝信著『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ』彩図社、2009年)。これぞ錬金術(笑)。

 脳がそうした性質を持つことから、われわれがなぜお金を使うことができるかが、なんとなく理解できる。お金は脳の信号によく似たものだからである。お金を媒介にして、本来はまったく無関係なものが交換される。それが不思議でないのは(じつはきわめて不思議だが)、何よりもまず、脳の中にお金の流通に類似した、つまりそれと相似な過程がもともと存在するからであろう。

【唯脳論宣言/『唯脳論』養老孟司】

「国家」と「貨幣」は人間を超越する/『ナショナリズムという迷宮 ラスプーチンかく語りき』佐藤優、魚住昭

 ということは、だ。お金とは「情報」ということに落ち着く。つまり貨幣とは、交換媒介機能、価値尺度機能、価値保蔵機能を併せ持った情報なのだ。永井俊哉氏は貨幣の機能を「コミュニケーションメディアである」としている。

 この情報は、一般的に労働の対価として考えられている。多くの人々がそのように考えることは国家権力にとって甚だ都合がよい。では、目覚めた民衆となるべく二つの疑問を提示して今回は筆を擱(お)こう。

 労働の対価は正当に支払われているのか? 労働以外にお金を獲得する方法はないのか?

2009-08-13

貨幣経済が環境を破壊する/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二


 お金は不思議な存在だ。お金は本来であれば単なる約束事に過ぎない。ところが等価交換の物差しが、いつしか目的と化してしまっている。「金に物を言わせる」という表現があるように、お金は雄弁だ。そして言葉の如く流通する。

 お金の意味を我々は知っているようで知らない。学校で教わることもなかった。お金に関する何冊かの本を読んできたが、疑問は膨らむ一方だった。しかし、本書を読んで私の蒙(もう)は啓(ひら)かれた。貨幣の欺瞞、信用創造のインチキを本書は十全に暴いている。

 唯一の難点は、ミヒャエル・エンデの言葉にキリスト教的な臭みがあることだ。謙遜が慇懃無礼(いんぎんぶれい)のレベルに達している。ま、死者はいつだって美化されるということか。

 重要な内容を鑑み、何度かに分けて書く予定である。

 まずは、「貨幣経済が環境を破壊する」事実を示す――

「紙幣発行が何をもたらしたのか? 一つの実例が、ビンスヴァンガーの著書に出ています。たしかロシアのバイカル湖だったと思いますが、その湖畔の人々は紙幣がその地方に導入されるまではよい生活を送っていたというのです。日により漁の成果は異なるものの、魚を採り(ママ)自宅や近所の人々の食卓に供していました。毎日売れるだけの量を採っていたのです。それが今日ではバイカル湖の、いわば最後の一匹まで採り尽くされてしまいました。どうしてそうなったかというと、ある日、紙幣が導入されたからです。それといっしょに銀行のローンもやってきて、漁師たちは、むろんローンでもっと大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を採用しました。冷凍倉庫が建てられ、採った魚はもっと遠くまで運搬できるようになりました。そのために対岸の漁師たちも競って、さらに大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を使い、魚を早く、たくさん採ることに努めたのです。ローンを利子つきで返すためだけでも、そうせざるをえませんでした。そのため、今日では湖に魚がいなくなりました。競争に勝つためには、相手より、より早く、より多く魚を採らなくてはなりません。しかし、湖は誰のものでもありませんから、魚が一匹もいなくなっても、誰も責任を感じません。これは一例に過ぎませんが、近代経済、なかでも貨幣経済が自然資源と調和していないことがわかります」

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 これは、アーロン・ブラウンの主張と全く同じである。

帝国主義による経済的侵略/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン

 ブラウンが結論を人間不信に着地させたのに対し、エンデは環境破壊に結びつけている。

 貨幣経済は、将来の価値を先取りするために現在の環境を踏みにじる。人間は未来に生きる動物といえる。そして「未来=蓄え」を意味する時、人は現在を犠牲にする。

 ここで行われていることは「未来を先取りする競争」である。つまり、貯蓄を可能にした貨幣経済は、「未来を奪い合う」社会を招来する結果となる。しかもこの未来は、人類全体のものではない。ということは、「エゴの競争」である。

 エゴイズムは限りなく肥大する。肥大したエゴイズムを地球環境は支えることができない。「自分さえよければ」という生き方が、湖の魚を獲り尽くしてしまった。人間の未来が魚の未来を奪ったのだ。共存の崩壊。

 お金は未来である。とすると、蓄えられたお金は意志を持つようになる。エゴ未来は人間を、畜生道の下の餓鬼道に引き摺り込む。ここにおいて人間は動物以下の存在と化す。

 お金はエゴイズムに火を点ける。お金を持っている人は確かに幸せだ。だが、お金から離れられる人はもっと幸せではなかろうか。

 欲望は否定されるものではなくして、コントロールされるべきものである。「少欲知足の経済」を実現しなければ、地球の寿命は短くなる一方だ。



信用創造のカラクリ/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン
時は金なり/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ
信用創造の正体は借金/『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎