2019-02-02

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2019-01-29

天皇は祭祀王/『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり


『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
・『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 2』小林よしのり
・『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 3』小林よしのり

 ・少国民世代(昭和一桁生まれ)の反動
 ・天皇は祭祀王

『戦争論争戦』小林よしのり、田原総一朗
・『ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論』小林よしのり
『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄
『〔復刻版〕初等科國史』文部省

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 日本人はほとんど無自覚に天皇と繋がっている。

 自覚なき天皇尊崇だからこそ、日本の歴史の中でこの長きに亘って存続してきたのかもしれない。

【『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり(小学館、2009年/平成29年 増補改訂版、2017年)】

「天皇陛下はエンペラーに非ず」(『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖)の続きである。

 小林のペンが冴えている。ゴー宣シリーズは、まず『ゴーマニズム宣言』(全9巻)があり、『新・ゴーマニズム宣言』(全15巻)に続き、『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL』(27巻)へと続く。その他にも10冊ほど刊行されているようだ(Wikipedia)。

 天皇陛下に対する小林の変化、なかんずく自然発生的に湧いた親愛の情が共感を誘う。私自身、日本人の血のようなものを自覚したのは数年前のことだ。「自覚なき天皇尊崇」が伝統や風習の各所に通い、流れているのだろう。

 古今東西に「国王」などの世俗的君主はあまた存在する。

 そして民を虐げ私利私欲に走った王の話もまた枚挙にいとまない(ママ)。

 そのような歴史の中で滅びた王制も数多い。

 しかし日本においては、「民」が「天皇」の存在を滅ぼそうとしたことは歴史上いまだかつてない。

 それは天皇が世俗的君主と異なり、祭祀を司る存在だからである。

 公のため、民のために祈る存在であり、私利私欲とは全く無縁だからである。

 世俗の行き着くところが経済と軍事である。世俗的君主は軍事力を背景にして酷税(こくぜい)を強いる。近代までは生殺与奪も好き勝手に行われていた。こうした人間の本能を思えば天皇という存在を継続し得た歴史はある種の奇蹟といってよい。

「公」よりも「私」。

 行き着く先は、米国・中国のようなウルトラ格差社会しかない。

「公」の心が失われたところには、安定した国家は築けない。

 国の中心に、公のために祈る無私の存在、「天皇」を置くというのは、国を安定させるために人類が考えうる最も賢明な策であり、他に類を見ない偉大な英知なのである。

 しかも天皇という存在の不思議は日本建国に先駆けている事実である。日本を日本たらしめている固有性がここに極まる。国家があって天皇がいるのではなく、初めに天皇ありきで後に国家が形成されるのだ。

 天皇はエンペラー(皇帝)ではない。

 祭祀王だ!(中略)

 天皇とは「祭祀王」であり、祭祀を行なうことこそが天皇の本質である。

 エンペラーは命令権者(司令)である。天皇陛下は祭祀を司る存在であり、その祈りは風のように国民を包む。不敬を恐れず申し上げれば天皇陛下は風呂敷のように柔らかく国民をくるむ。鎖の硬さはどこにもない。こうした「妙(たえ)なる関係性」こそ日本の伝統なのだろう。

「伝統」とは、歴史の積み重ねの中から醸成される「国民の安寧のための智慧(ちえ)・バランス感覚」のことであり、時代と共に柔軟に表現を変えながらも受け継がれていく「魂・エートス」こそが肝要なのだ。

 新嘗祭(にいなめさい)や大嘗祭(だいじょうさい)は古代から行なわれてきた祭祀であり、戦国時代以来、中断していたが、江戸時代、それぞれ復興し18世紀末の光格(こうかく)天皇が本格的に再興させた。

 その皇室祭祀の伝統を「明治に創られた」と言うのは完全に誤りであり、デマである。

 進歩史観の影響は絶大で払拭することが難しい。古代~中世~近代という区分けが脳に染み込んで離れない。人類の進歩や歴史の必然といった概念を我々は無意識のうちに前提としている。マルクス史観に基づけば大東亜戦争以前の日本の歴史は暗黒でなければならない。進歩の果てに社会主義が位置するわけだから闇が深ければ深いほど好都合となる。江戸300年の歴史は長らく貶(おとし)められ、封建時代は前近代を悪し様に表現する言葉となってしまった。

 明治期に天皇を神格化したのは、憲法の基軸にキリスト教の代わりとなる絶対性を据(す)えるためだった(『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹)。この基軸を欠くゆえにアジア諸国の民主政は機能しないのである。

 進歩主義の根幹にはキリスト者以外は蒙昧(もうまい)とする思想が横たわっているように思う。明治日本は文明化を欧米にアピールすべく鹿鳴館(ろうめいかん)で夜を徹して踊りまくり、伊藤を初めとする政治家たちはキリスト教に改宗までした。

 天皇陛下がおわしますればこそ日本の存在がある。これを知悉(ちしつ)するがゆえに左翼は天皇制を破壊しようと試みるのである。

大久保利謙


明治政府 その政権を担った人々』大久保利謙〈おおくぼ・としあき〉編(新人物往来社、1971年)/編者は維新三傑の一人である大久保利通〈おおくぼ・としみち〉の孫。明治という時代が見渡せる好著だが、不思議なくらい政局や閥(ばつ)を重視している。日本人の史観には拭い難いまでの村意識があるのだろう。近代史を振り返って薩長という藩閥や昭和の軍閥が色濃く描かれるのも、日本人の閥好きによるものか。マルクス史観全盛期に刊行されたためか軍事的な視点を欠いている。日本近代化の最大の目的は国軍創設と税制改革(地租改正)および統一経済の確立であった。

2019-01-28

天皇陛下はエンペラーに非ず/『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖


・『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』伊藤祐靖

 ・天皇陛下はエンペラーに非ず
 ・日本国憲法の異常さ

『とっさのときにすぐ護れる 女性のための護身術』伊藤祐靖
・『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』岩田清文、武居智久、尾上定正、兼原信克 2021年
『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克

日本の近代史を学ぶ

「何て書いてあるの? 訳してよ」
「本気で訳すから、一日待て」
 翌日、その詔書を英語に翻訳したものを印刷し、仰々しく額に入れて渡した。読み終えた彼女は、「この時の日本の人口は、何人?」と訊いてきた。
「6000万弱かな」
「これ、本当にエンペラーが書いたものなの?」
「そうだよ。エンペラーというか、TENNOU・HEIKA」
「あぁ、HIROHITOね」
「違う。先代だ」
「すごいね、本当にすごい」
「何がすごいんだ?」
「あなたの国は、すごい」
「だから何が、すごいんだ?」
「あなたは、これは、エンペラーが書いた命令文書だと言った。でも、違うわよ」
「何を言ってんだ。これは確かにエンペラーが書いたものだ」
「でも、命令なんかしてないじゃない。願ってるだけじゃない。“こいねがう”としか言ってないわよ」
「そういう言葉を使う習慣があるんだよ」
「エンペラーは、願うんじゃなくて、命令するのよ。エンペラーが願っても、何も変わらないでしょ。願うだけで変えられるのは、部族長だけよ」
「部族長? 天皇陛下は部族長だって言うのか?」
「“こいねがう”と言ってるんだから、これを書いた人は部族長なの。これは、部族長が書いた、リクエストなのよ」
「部族長か……、願うだけで変えられるか……」
「6000万人全部が一つの部族で、それに部族長がリクエストを出すっていうのがすごい。私のところとは、規模が違う」
 あまりのショックで、私はしばらくしゃべれなかった。
 6000万人全部が一つの部族――。エンペラーではなくて部族長――。エンペラーが願っても何も変わらない――。“こいねがう”と言っているから部族長――。
 すべてが腑に落ちた。
 同時に激しい自己嫌悪を感じた。
 なぜ、ミンダナオ島の二十歳そこそこの奴から、詔書の真意と日本という国の本質を教えられてしまうんだ。日本に生まれて、日本語を母語としていて、40年以上日本で生きていたのに、なぜ、それが見えなかったのだろう。どうして、こいつは一瞬で見抜いたのだろう。“こいねがう”というたった一つの単語で、彼女は断言した。部族長であってエンペラーではないし、命令文書でもない、と。
 だが、自己嫌悪の裏側には、喜びと高ぶりもあった。この島にいることで、自分の祖国の実相が見えてくるかもしれないという予感が、正しかったのだ。(中略)
 つい最近まで国家元首が“こいねがう”ことによって、国家が動いていた。ここに私の祖国日本の本質があるように思えた。

【『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖〈いとう・すけやす〉(文春新書、2016年)】

 弟子のラレインが海底60メートルで拾ったのは額入りの「国民精神作興ニ関スル詔書」であった。「関東大震災などによる社会的な混乱を鎮(しず)めるために大正天皇が発したもの」と書かれているが、社会的な混乱とは「民本主義や社会主義などの思想」を指す(小学館 日本大百科全書〈ニッポニカ〉)。

 エンペラーの語源はインペラトルで「インペリウム(命令権)を保持する者」(Wikipedia)との意。司令との訳語が実際的であるが「司」だと少し弱い。我々日本人にとって命令権者という概念を理解するのは難しい。

 ラレインは詔勅から「日本の呪術性」を見抜いた。私がいう呪術性とは合理性の埒外(らちがい)にあるものを指す。呪術性と聞いて直ちに否定する輩は合理性の奴隷で人の感情(情動)を理解していない。何歳であろうと人が人生を振り返った時に心の中を流れるのは感情だ。合理性ではない。ここに人間理解の鍵がある。

 天皇は祭祀王(さいしおう)である(『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり)。神と人の間に立って祭祀を司(つかさど)り、ひたすら祈りを捧げる存在が天皇なのだ。その天皇の「願い」に国民が身を寄せるところに日本の民族性がある。もちろん明治維新が天皇を神格化した歴史的経緯は見逃せないが、代々続いてきた天皇システムを軽んじるのも誤っている。

 呪術性とは以心伝心であり阿吽(あうん)の呼吸である。民族特有の「気」といってもよい。理窟よりも意気や気魄(きはく)を重んじるのが日本のエートス(気風)であろう。

 当時は既に詔勅で世の中が動く時代ではなかった。いつの時代も自由とは過去の否定を意味する。大正デモクラシーも例外ではなかった。政党政治という大輪の花は咲いたがかつての王政復古を支えた志や武士道は廃(すた)れた。昭和に入るとその空隙(くうげき)を軍政が衝(つ)くのである。

 東日本大震災を通して天皇は再び日本の中心に据(す)わった感がある。この事態に逸(いち)早く反応したのが左翼勢力で団塊の世代を中心に日本を貶(おとし)める工作活動が激化して今日に至る。

「兵隊は国家の意思を具現化するために命を捨ててもいいと自ら志願してきた人です」(小林よしのり×伊藤祐靖 新・国防論 日本人は国のために死ねるのか 2)と伊藤は言い切る。憲法9条が自衛隊の軍事性を否定する以上、命を捨てる覚悟が強ければ強いほど不毛な結果が見えてくる。日本が普通の軍隊を持つことができないのは「守るに値する国民」がいないためだ。

2019-01-26

ミステリ&SF


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・クリシュナムルティ著作リスト
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『サクリファイス』近藤史恵
『テロリストのパラソル』藤原伊織

マークスの山(上) (新潮文庫)
高村 薫
新潮社 (2011-07-28)
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マークスの山(下) (新潮文庫)
高村 薫
新潮社 (2011-07-28)
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『レディ・ジョーカー』高村薫
『神々の山嶺』夢枕獏
『13階段』高野和明
『隠蔽捜査』今野敏
『果断 隠蔽捜査2』今野敏
『犯罪者』太田愛
『イノセント・デイズ』早見和真

『緊急深夜版』W・P・マッギヴァーン
ゴッドファーザー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
マリオ プーヅォ
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ゴッドファーザー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
マリオ プーヅォ
早川書房
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『初秋』ロバート・B・パーカー
『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー

本命 (ハヤカワ・ミステリ文庫 12-4 競馬シリーズ)
ディック・フランシス
早川書房
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『A型の女』マイクル・Z・リューイン
『鷲は舞い降りた』ジャック・ヒギンズ
『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン
『暗殺者』ロバート・ラドラム
『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム
『ブラック・プリンス』デイヴィッド・マレル
『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』ジョージ・ジョナス

消されかけた男 (新潮文庫)
ブライアン フリーマントル
新潮社
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『裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー
ベルリン 二つの貌 (創元推理文庫 (204‐2))
ジョン・ガードナー
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沈黙の犬たち (創元推理文庫 (204‐3))
ジョン・ガードナー
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『マエストロ』ジョン・ガードナー
『静寂の叫び』ジェフリー・ディーヴァー
『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー
『守護者(キーパー)』グレッグ・ルッカ
『チャイルド44』トム・ロブ・スミス
『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド
『罪』カーリン・アルヴテーゲン
『喪失』カーリン・アルヴテーゲン
『裏切り』カーリン・アルヴテーゲン
・『催眠(上)』『催眠(下)』ラーシュ・ケプレル
『湿地』アーナルデュル・インドリダソン
『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン
・『』アーナルデュル・インドリダソン
『前夜』リー・チャイルド
『生か、死か』マイケル・ロボサム
『許されざる者』レイフ・GW・ペーション



『通りすぎた奴』眉村卓
『総門谷』高橋克彦
・『2001年宇宙の旅』アーサー・C・クラーク
・『百億の昼と千億の夜』光瀬龍
『木曜の男』G・K・チェスタトン
『われら』ザミャーチン:川端香男里訳
『「絶対」の探求』バルザック
『絶対製造工場』カレル・チャペック
『すばらしい新世界』オルダス・ハクスリー:黒原敏行訳
『一九八四年』ジョージ・オーウェル:高橋和久訳
『華氏451度』レイ・ブラッドベリ
『とうに夜半を過ぎて』レイ・ブラッドベリ
『聖者の行進』アイザック・アシモフ
『数学的にありえない』アダム・ファウアー
『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハッドン
『くらやみの速さはどれくらい』エリザベス・ムーン