2022-01-03

病と闘う少年の高貴な優しさ/『傑作将棋アンソロジー 棋士という人生』大崎善生編


『真剣師 小池重明 “新宿の殺し屋"と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯』団鬼六
『聖(さとし)の青春』大崎善生
「女性は男性より将棋が弱い」
『将棋の子』大崎善生
『泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ』瀬川晶司

 ・病と闘う少年の高貴な優しさ

・『女流棋士』高橋和
『決断力』羽生善治
『フフフの歩』先崎学
『先崎学の浮いたり沈んだり』先崎学
『まわり将棋は技術だ 先崎学の浮いたり沈んだり2』先崎学
・『赦す人』大崎善生

 今、思い出してみても、まるで天使が舞い降りたような日々であった。
 一昨年の浅い春の日に、私たちの生活の中に突如一人の少年が舞い降りてきた。将棋ファンの9歳の少年は、どこで知ったのか私の妻の熱烈なファンだった。妻は高橋和(やまと)という女流棋士だ。子供のころに交通事故に遇い、何度も手術を繰り返していることを知っていた少年は、手紙の最後に必ず“高橋先生の足が痛くならないようにお祈りしています”と書き添えてくれたものだった。
 その言葉は少年の清潔さと、高貴な優しさに満ち溢(あふ)れていた。

 少年の父親からも、お礼のメールが届いた。そしてその手紙の中で、少年がほとんど快復する見込みのない病気に冒されていることを知らされた。医者からはいつどうなっても覚悟しておけといわれているような状況であることを。
 妻と少年の手紙による交流は桜の季節に盛んなものとなった。妻は旅先から手紙や絵葉書を送り続け、少年は夢を書き付けてきた。まるで形見分けするように、父親から貰(もら)った宝物が次々と我が家に贈られてきたりもした。純白のテディベアやたまごっちなどなど。
 少年は10歳の誕生日を迎え、大きな喜びに包まれた。本人を含めて、誰もがその歳(とし)まで生きることは不可能と考えていたからだ。
 その直後に体調を崩し、最後に悲痛な手紙を妻宛(あて)に送ってきた。大きな乱れた字で、痛いです、助けてくださいと書かれてあり、末尾には最後の力を振り絞って書いたであろう“足が痛くならないようにお祈りしています”の言葉があった。
 それから間もなく少年はこの世を去った。
 わずか3カ月ではあったが、妻と少年の心の交流はまるでひとつの奇跡を見せらているようだった。(守られている  大崎善生)

【『傑作将棋アンソロジー 棋士という人生』大崎善生〈おおさき・よしお〉編(新潮文庫、2016年)以下同】

 妙な音が聞こえた。私が漏らした嗚咽(おえつ)だった。苦しみのどん底で息も絶え絶えに喘(あえ)ぎながらもペンを執る少年の心を想った。高橋女流との交流は生きる糧だったのだろう。生の焔(ほのお)を燃やし尽くすように彼は文章を綴った。いかなる状況にあっても人は人を思うことができるのだ。その立派な生きざまに涙が溢れた。

 高橋女流は四分六分の確率で切迫流産の可能性が高いとの診断が下った。だが彼女は産むことを決意した。

 人の死とは新しい生のための場所を空けることなのだと、誰かから聞かされた。
 いつの日かわが子に伝えようと思う。
 君の場所を空けてくれた優しい少年の話を。10歳までしか行きられなかった少年が君のお母さんを守ってくれていたんだ。臨月を迎え、体重が増加し、おそらく持ちこたえられないのではないかと思われていたお母さんの傷だらけの足は、奇跡的にただの一度も痛むことはなかったんだ。本当に奇跡的に。あの心優しい少年が守ってくれていたんだ。

 人生には少なからず不思議なことがある。それを「豊かさ」と言うのだ。起承を転じる不思議なドラマが確かにある。悲しみが深いほど喜びの大きな人生を歩むことができる。少年の短すぎた一生を悼(いた)むよりも、完全燃焼した人生を寿(ことほ)ぐべきだろう。

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 明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。

 先月の24日午後からネット回線が不通となり、元旦に工事を行いやっと復旧した。水道工事の職人がメーターボックス周りの配線を引っこ抜いた模様。修理費は16390円。プラス光回線使用量の日割り(8日分)を賠償請求する予定である。

 今年読んだ本は500冊ちょっと。読了本は150冊程度だと思う。長時間勤務が続いた割にはよく読んだ方だと思う。まだ老眼がないので助かっている。1位は清水ともみの2冊にした。私からすれば現在進行形のルワンダ大虐殺といってよい。ただし、ルワンダやナチスドイツでも「生きながら臓器を抜かれる」ことはなかった。個人的には、「ジェノサイドの根拠が不明」として対中非難決議案を骨抜きにした公明党が、衆院選で得票数を伸ばしたことを忘れることができない。日中国交回復の露払いをしてきた公明党にとっては、日中友好そのものがある種の利権であり、同等の誉(ほま)れになっている。宗教者としての慈悲や思いやりよりも党勢拡大を優先し、それに唯々諾々と従う創価学会員や支持者が“増えた”事実に衝撃を受けた。

 からだ本に関しては、血管マッサージ~自律神経刺激を経て口に至ったのは自然の流れか。しかも嚥下(えんげ)機能、舌、唾液、咬合(こうごう)と実に奥が深い。私は40代で扁桃炎を患っており、無呼吸症候群とも相俟(ま)って喉が弱い(※睡眠時に口呼吸となるため)。昨今は嚥下障害気味になることも度々あり、飲み込む力が明らかに衰えてきた。

 ざっと紹介するが、ベスト10は厳密なものではなく、それ以外のものも含めて順不同と考えていただいて宜しい。

・『オガトレの 超・超・超かたい体が柔らかくなる30秒ストレッチ』オガトレ
・『免疫力を上げ自律神経を整える 舌(べろ)トレ』今井一彰
・『あなたの老いは舌から始まる 今日からできる口の中のケアのすべて』菊谷武
・『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』西山耕一郎
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『長生きは「唾液」で決まる! 「口」ストレッチで全身が健康になる』植田耕一郎
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔
『レディ・ジョーカー』高村薫
・『まわり将棋は技術だ 先崎学の浮いたり沈んだり2先崎学
『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
『こうして、思考は現実になる』パム・グラウト
・『ゆだねるということ』ディーパック・チョプラ
『愛国左派宣言』森口朗
・『売国保守』森口朗
『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠
『五・一五事件』小山俊樹
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール
・『SYNC なぜ自然はシンクロしたがるのか』スティーヴン・ストロガッツ

 10位 『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
 9位 『群衆の智慧』(旧題『みんなの意見は案外正しい』)ジェームズ・スロウィッキー
 8位 『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克
 7位 『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
 6位 『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
 5位 『データ資本主義 ビッグデータがもたらす新しい経済』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ
 4位 『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア
 3位 『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート
 1位 『命がけの証言』清水ともみ、楊海英
 1位 『私の身に起きたこと とあるウイグル人女性の証言』清水ともみ

 

『FLINT フリント・無敵の男』


 ロシア版ランボー。「2」がオススメ。ただし、「1」はパートナーと出会う物語なので、やはりどちらも視た方がいいだろう。「2」は主役のウラジミール・エピファンチェフが監督も務める。日本語訳が時々オネエ言葉になっているのはご愛嬌ということで。視聴はYou Tubeで。