2019-08-12

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韓国の呪い―広がるばかりの日本との差 (カッパ・ビジネス)
小室 直樹
光文社
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でっちあげの徴用工問題
西岡 力
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世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)
中野 剛志
集英社 (2014-09-17)
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「筋肉」よりも「骨」を使え! (ディスカヴァー携書)
甲野善紀 松村卓
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2014-05-22)
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湖の男
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アーナルデュル・インドリダソン
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特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
ユッシ・エーズラ・オールスン
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クライム・マシン (河出文庫)
ジャック・リッチー
河出書房新社
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天上の葦 上
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太田 愛
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天上の葦 下
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太田 愛
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呉越春秋 湖底の城 一 (講談社文庫)
宮城谷 昌光
講談社 (2013-07-12)
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呉越春秋 湖底の城 二 (講談社文庫)
宮城谷 昌光
講談社 (2013-07-12)
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湖底の城 三 呉越春秋 (講談社文庫)
宮城谷 昌光
講談社 (2014-09-12)
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呉越春秋 湖底の城 四 (講談社文庫)
宮城谷 昌光
講談社 (2015-09-15)
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嗤う伊右衛門 (中公文庫)
京極 夏彦
中央公論新社
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メッセージ―告白的青春論 (1980年)
丸山 健二
角川書店
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内気な人々が圧制を永続させる/『服従の心理』スタンレー・ミルグラム


 ・服従の本質
 ・束縛要因
 ・一般人が破壊的なプロセスの手先になる
 ・内気な人々が圧制を永続させる
 ・アッシュの同調実験

『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス
『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ
『マインド・コントロール』岡田尊司
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー

権威を知るための書籍
必読書リスト その五

 圧制を永続させるのは、自分の信念を行動に移せない内気な人々である。

【『服従の心理』スタンレー・ミルグラム:山形浩生〈やまがた・ひろお〉訳(河出書房新社、2008年/河出文庫、2012年/同社岸田秀訳、1975年)】

 すなわち倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉が言うところの小善人である(『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』)。「寄らば大樹の陰」という生き方は消極的になることで遺伝的優位性を確保する戦略なのかもしれない。戦乱の中で勇気を発揮する者はほぼ確実に死ぬ。戦時であれば臆病者の方が生存率が高まる(『病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解』ランドルフ・M・ネシー&ジョージ・C・ウィリアムズ)。

 近代において最も圧制(圧政)・服従に成功したのは社会主義国家であった。ナチスドイツ、ソ連、中国に共通するのは粛清の嵐である。ヒトラーは600万人の大量殺戮を行ったが、スターリンや毛沢東に至っては数千万単位で自国民を虐殺している(※中国は政策ミスによる餓死も含む)。

 去る参議院選挙でNHKから国民を守る党が1議席を取った。これは強制的に受信料を徴収するNHKの【圧制】に「ノー!」という声を上げた国民が一定数存在した事実を物語る。かつてNHK受信料を拒否していたのは左翼であった(『NHK受信料拒否の論理』本多勝一、1977年)。ところが放送終了時に流していた国旗国家放映の阻止に成功すると今度は番組が反日に傾いた。その後、NHK本局内には中国共産党の中央電視台日本支部が同居するに至った。これは中共の謀略機関である。他にも韓国放送公社、アメリカABCテレビ、オーストラリア放送協会にスペースを貸しているようだがスパイ防止法のない日本で外国メディアとの協力関係は情報漏洩の危険が高すぎる。

 NKHK受信料の支払いが国民の義務であればそれは税と考えてよかろう。一特殊法人に徴税権があるのはどう考えてもおかしいし、一特殊法人のための法律(放送法)があるのはもっとおかしい。


2019-08-10

「日本の未来を考える勉強会」ーMMT(現代貨幣理論) 中野剛志、藤井聡、三橋貴明










一般人が破壊的なプロセスの手先になる/『服従の心理』スタンレー・ミルグラム


 ・服従の本質
 ・束縛要因
 ・一般人が破壊的なプロセスの手先になる
 ・内気な人々が圧制を永続させる
 ・アッシュの同調実験

『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス
『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ
『マインド・コントロール』岡田尊司
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー

権威を知るための書籍
必読書リスト その五

 おそらくこれが、われわれの研究の最も根本的な教訓だろう。特に悪意もなく、単に自分の仕事をしているだけの一般人が、ひどく破壊的なプロセスの手先になってしまえるということだ。さらには、自分の作業の破壊的な効果がはっきり目に見えるようになっても、そして自分の道徳の根本的な基準と相容れない行動をとるよう指示されても、権威に逆らうだけの能力を持つ人はかなり少ない。権威に服従しないことに対する各種の抑止力が働くために、その人物は自分の立ち位置を変えることはない。

【『服従の心理』スタンレー・ミルグラム:山形浩生〈やまがた・ひろお〉訳(河出書房新社、2008年/河出文庫、2012年/同社岸田秀訳、1975年)】

 朱に交われば赤くなる。村にはしきたりがあり、企業には社内文化がある。教団にはタブー(禁忌)があり、学校には校則がある。組織や集団には人々を額づかせる力がある。自分の自由を制限することと何らかのリターン(報酬)を交換するところに帰属の理由があると考えられる。

 あらゆる組織には必ず目的(理想)がある。そして目的(結果)のために手段を選ばないことが往々にして見受けられる。運動部で行われる体罰やしごき、成績不振の営業マンに浴びせられる上司の罵声、大手企業から中小企業に突きつけられる無理な値引き交渉。集団内で生き延びるためには順応する必要がある。

 これを「権威に逆らうだけの能力」で判断することは難しい。またこの記述自体が当該研究の古さを示すものだ。もう一つの可能性としては遺伝子の関与を挙げるべきだろう。つまり「権力に逆らう」ことは生まれつきの資質と見ることもできるのだ。正義感は教えられるものではない。どれほど多くの情報を与えたところで人の感受性を変えることは難しい。

 いじめを支えているのは傍観者である。「やめろよ!」と声を挙げる同級生が一人でもいればいじめから救われる。とすれば90%程度の人々は傍観者と考えてよかろう。ヒトラーの下(もと)でユダヤ人大虐殺を遂行したアイヒマンは1961年に行われた裁判で自分の行為を「命令に従っただけ」と述べた。彼は極悪非道の殺人鬼ではなかった。普通の真面目な公務員(中佐)であった。

 ミルグラム実験(アイヒマンテスト)は「一般人が破壊的なプロセスの手先になる」ことを証明した。ナチスの罪は万人の罪となって開かれた。


原爆から小倉を守った「八幡製鉄所職員」


2019-08-08

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ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき
フィリップ・ジンバルドー Philip Zimbardo
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「学力」の経済学
「学力」の経済学
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中室 牧子
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目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】
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交通事故学 (新潮新書)
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増補版 これでも公共放送かNHK! :君たちに受信料徴収の資格などない
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読んだら忘れない読書術
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Mr.都市伝説 関暁夫のファーストコンタクト バシャール対談
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2019-08-07

【経済討論】MMT(現代貨幣理論)は日本を救うか?


 ・【経済討論】MMT(現代貨幣理論)は日本を救うか?

 やはり池戸万作の説明が一番わかりやすい。チャンネル桜が番組を挙げて安倍政権批判をした事実に驚いた。


目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】
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全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】
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『知識ゼロからわかるMMT入門[現代貨幣理論]』三橋貴明

2019-08-04

小賢しい宗教批判/『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』岸見一郎、古賀史健


『アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために』岸見一郎
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健

 ・小賢しい宗教批判

・『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル

青年●わかります。人間の「心」にまで踏み込んでいくのが哲学であり、宗教である、と。それで両者の相違点、境界線はどこにあるのです? やはり「神がいるのか、いないのか」という、その一点ですか?

哲人●いえ、【最大の相違点は「物語」の有無】でしょう。宗教は物語によって世界を説明する。言うなれば神は、世界を説明する大きな物語の主人公です。それに対して哲学は、物語を退(しりぞ)ける。主人公のいない、抽象の概念によって世界を説明しようとする。

青年●……哲学は物語を退ける?

哲人●あるいは、こんなふうに考えてください。真理の探究のため、われわれは暗闇に伸びる長い竿(さお)の上を歩いている。常識を疑い、自問と自答をくり返し、どこまで続くかわからない竿の上を、ひたすら歩いている。するとときおり、暗闇の中から内なる声が聞こえてくる。「これ以上先に進んでもなにもない。ここが真理だ」と。

青年●ほう。

哲人●そしてある人は、内なる声に従って歩むことをやめてしまう。竿から飛び降りてしまう。そこに真理があるのか? わたしにはわかりません。あるのかもしれないし、ないのかもしれない。ただ、【歩みを止めて竿の途中で飛び降りることを、わたしは「宗教」と呼びます。哲学とは、永遠に歩き続けることなのです】。そこに神がいるかどうかは、関係ありません。

【『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』岸見一郎、古賀史健〈こが・ふみたけ〉(ダイヤモンド社、2016年)】

 文章の巧みな詭弁で小賢しい宗教批判といってよい。そもそも「竿の上を歩く」という喩えが悪い。竿で想起されるのは釣り竿や物干し竿でその上を歩くという行為がピンと来ない。そもそもあんたが書いている対話自体、物語だろーが(笑)。

 多分頭のどこかに「哲学は神学の婢(はしため)」という言葉があったのだろう(河野與一『哲学講話』)。もちろん心理学はそれ以下だ。

 古賀史健は「抽象の概念」もまた物語であることを見落としている。すなわちアドラーが行う心理療法は「物語の書き換え」に過ぎない。しかも岸見はアドラーに依存し、古賀は岸見に依存しているのである。そこを見過ごしておきながら宗教の物語性を否定するとは片腹痛い。

 社会心理学はアッシュやミルグラムによって巧みな実験が行われてきた(『服従の心理』スタンレー・ミルグラム)。だが心理学や心理療法の世界で厳密な検証やフィードバックが行われているとは言い難い。フロイトは無意識を発見して西洋でもてはやされたが仏教では2000年前からの常識である。何でもかんでもリビドーや性欲に結びつける考え方は拙劣極まりなく、既に過去の人物といった印象が強い。

 一片のデータすら示さずに宗教を批判する姿勢は、新興宗教が既成宗教を批判する手口と一緒だ。マシュー・サイド著『失敗の科学』ではカール・ポパーによるアドラー批判が紹介されている。

津久井湖 × 昆虫写真家・安川源通〈やすかわ・もとみち〉




2019-08-01

スズキバーディー50 エンジントラブル


【症状】毎日乗っているにもかかわらずエンジンが掛からなくなる。当初は押しがけで掛かっただが、やがては数十メートルの坂道を下ってもエンジンが掛からなくなった。

 2りんかんに持ってゆくと、「メーカーがエンジンの圧縮比を教えてくれないのでスズキショップで修理をした方がよい」とのアドバイス。地元のスズキショップに依頼。以下がその詳細である。「次に修理が必要な場合は新しいバイクを買った方がいいですよ」と言われる。

 ハーネス修理(バッテリーヒューズ、レギュレーター、分岐点)
 各配線、点検、カプラ部腐食修理含む レギュレーターカプラ部、メインカプラ部
 レギュレーター点検(部品代3800円)
 工賃 15000円

 発電点検含む
 ショートパーツ(ギボシ等/部品代1000円)

 バッテリー 台湾YUASA(部品代4800円)

 キャブレター少分解、清掃、測定、点検、調整
(スロージェット清掃、油面、フロートレベル点検)
 圧縮比圧力測定、キャブレター点検、フューエルポンプ作動点検
 工賃 7000円

 エアクリーナー、アウトレットチューブ交換(部品代940円)

 パーツクリーナー等 油脂材料費(部品代1000円)

【合計金額 部品代11540円+工賃22000円+部品送料・データ通信費400円+消費税2715円=36655円】

2019-07-31

「原因論」と「目的論」の違い/『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健


『アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために』岸見一郎

 ・「原因論」と「目的論」の違い

『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』岸見一郎、古賀史健
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『NLPフレーム・チェンジ 視点が変わる〈リフレーミング〉7つの技術』L・マイケル・ホール、ボビー・G・ボーデンハマー
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり
『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石ゆかり監修、今谷鉄柱作画
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル

必読書リスト その二

哲人●そこでアドラー心理学では、【過去の「原因」ではなく、いまの「目的」】を考えます。

青年●いまの目的?

哲人●ご友人は「不安だから、外に出られない」のではありません。順番は逆で「【外に出たくないから、不安という感情をつくり出している】」と考えるのです。

青年●はっ?

哲人●つまり、ご友人には「外に出ない」という目的が先にあって、その目的を達成する手段として、不安や恐怖といった感情をこしらえているのです。アドラー心理学では、これを「【目的論】」と呼びます。

青年●ご冗談を! 不安や恐怖をこしらえた、ですって? じゃあ先生、あなたはわたしの友人が仮病(けびょう)を使っているとでもいうのですか?

哲人●仮病ではありません。ご友人がそこで感じている不安や恐怖は本物です。場合によっては割れるような頭痛に苦しめられたり、猛烈な腹痛に襲われることもあるでしょう。しかし、それらの症状もまた、「外に出ない」という目的を達成するためにつくり出されたものなのです。

青年●ありえません! そんな議論はオカルトです!

哲人●違います。これは「原因論」と「目的論」の違いです。あなたのおっしゃる話は、すべてが原因論に基づいています。【われわれは原因論の住人であり続けるかぎり、一歩も前に進めません】。

【『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎〈きしみ・いちろう〉、古賀史健〈こが・ふみたけ〉(ダイヤモンド社、2013年)】

 読む量が多すぎて書く量が少なすぎると書評した本がわからなくなる。挙げ句の果てには自分で検索して「おかしいな」を連発する有り様だ。本書は古賀史健が岸見一郎の『アドラー心理学入門』を対話という形式でわかりやすく解説したものである。にもかかわらず軽々と岸見本を凌駕している。古賀は言うならばリライト名人なのだろう。ただ、丁寧や端正が行き過ぎて鼻につく嫌いがある。

哲人●【アドラー心理学では、トラウマを明確に否定します】。ここは非常に新しく、画期的なところです。たしかにフロイト的なトラウマの議論は、興味深いものでしょう。心に負った傷(トラウマ)が、現在の不幸を引き起こしていると考える。人生を大きな「物語」としてとらえたとき、その因果律のわかりやすさ、ドラマチックな展開には心をとらえて放さない魅力があります。
 しかし、アドラーはトラウマの議論を否定するなかで、こう語っています。「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショック――いわゆるトラウマ――に苦しむのでやなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。【自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである】」と。

 私の頭が悪くてスッと入ってこないのだが、ブッダやクリシュナムルティに通じる価値観の転換がある。特に最後の一言は重要だ。これをもっと簡明かつダイナミックにしたのがバイロン・ケイティである。


 意味とは妄想である。不幸も幸福も妄想だ。脳という錯覚装置が織り成す感情のタペストリーを我々は人生と名づける。

 妄想は無明から生まれる。本書は無明を自覚させてくれる良書である。

アルツハイマー病に効く薬は存在しない/『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン


『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス

 ・アルツハイマー病に効く薬は存在しない

・『Dr.白澤の アルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる』白澤卓二
『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン

必読書リスト その二

 さようなら、
 アルツハイマー病。
 薬に頼らない治療と
 予防する時代へ。

【『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン:白澤卓二〈しらさわ・たくじ〉監修、山口茜〈やまぐち・あかね〉訳(ソシム、2018年)以下同】

 原書は2017年。ミヒャエル・ネールスを必ず先に読んでおくこと。専門用語が多いがそれほど難しい内容ではない。やはり正確な知識を広く知らしめるところに眼目を置いたのだろう。上記テキストは表紙見返しにある。

 本書で紹介されている「リコード法」は、ブレデセン医師らによって、この研究結果に基づき、アミロイドβが蓄積する原因となる「3つの脅威」(※炎症、栄養不足、毒素)を取り除くために考案された、画期的な治療法である。
 このリコード法が革命的である理由は、なんといっても、まずその非常に高い成功率にある。
 2014年にブレデセン博士らが、この方法により、アルツハイマー病の約9割に回復が認められたことを医学雑誌『Aging』で発表すると、このニュースは瞬く間に全世界に広がった。
 これは世界で初めて、人間のアルツハイマー病が回復したことを報告した論文だった。(山口茜〈訳者〉)

 リコード(ReCODE)法とは「回復(REverse)+認知機能の低下(COgnitive DEcline)」の造語。「再暗号」とも読める秀逸なネーミングだ。

 アルツハイマー病患者の脳内ではアミロイドβが沈着してアミロイド斑を形成する。2002年、アミロイドカスケード仮説が提唱され広く支持を集めた。製薬会社の標的はアミロイドとなった。アルツハイマー病の原因がアミロイド斑ならばアミロイドを退治すればアルツハイマー病は治癒するはずだった。ところが見事にこの目論見は頓挫した。


 政府機関や製薬企業、バイオテクノロジーの専門家たちにより、この治療薬の開発と試験には莫大な費用がつぎ込まれた。しかし、99.6%は見るも無残に失敗し、試験段階を終えることすらなかった。
 市場に出た0.4%の薬に期待して、「結局、効果がある薬が1剤あればいいじゃないか」と思った人は、もう一度考えてほしい。なぜなら米国アルツハイマー病治療薬は2003年以来、承認されておらず、現在承認されているアルツハイマー病治療薬4剤については「物忘れや混乱症状は軽減されるかもしれないが、その効果は期間限定的」だという厳しいものだからだ。

 すなわちアルツハイマー病に効く薬は存在しない。何ということか。衝撃の事実である。それでも何がしかの薬が処方されているのは需要の大きさに魅了された製薬会社のしみったれた戦略なのだろう。

 実際、アルツハイマー病と呼ばれるこの病気の原因は、べとべとしたアミロイド斑が生成されたためというより、むしろ脳の防御反応の結果なのだ。
 このことは繰り返し述べる必要がある。
 アルツハイマー病は、脳がうまく機能しないために起こるのではない。

 発想を転換すると新たな地平が見えてくる。脳は何を防御しようとしているのか?

 特に、アルツハイマー病は、脳が次の3つの代謝と毒物の脅威から身を守ろうとするときに起きる。

【脅威1 炎症(感染、食事またはそのほかの原因による)】
【脅威2 補助的な栄養素、ホルモン、その他脳の栄養となる分子の低下や不足】
【脅威3 金属や生物毒素(カビなどの微生物が産生する毒物)などの有害物質】
(中略)
「アルツハイマー病は、脳が炎症から身を守ろうとしたり、有益な物質が不足しているにもかかわらず機能しようとするときや、有害物質の流入と闘っているときに起こる」。
 ひとたびこう認識してしまえば、病気を予防し、治療する方法ははっきりする。

 つまりアルツハイマー病は生活習慣病であり文明病なのだ。特に1の炎症が注目されており、アルツハイマー病は「脳の糖尿病」とまで言われるようになった。簡単に言えば糖尿病は高血糖によって血管に炎症を起こしボロボロにする病気だ。とするとアルツハイマー病は糖尿病の合併症と考えることも満更的外れではあるまい。

 日本の認知症患者数は462万人(2012年)で前段階の軽度認知障害は400万人と推計されている(認知症の人はどれくらいいるのですか? | 認知症フォーラムドットコム)。そして糖尿病患者数は328万人となっている(2017年/糖尿病患者数が過去最多の328万人超に増加 【2017年患者調査】| 糖尿病リソースガイド)。認知症と糖尿病は国民の二大疾病であり、認知症の半分程度をアルツハイマー病が占めている。

 3の金属は水銀・ヒ素・鉛など。水銀濃度が比較的高い水産物にはマグロ・サメ・深海魚・鯨がある(魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A)。海藻やヒジキにはヒ素が含まれている。有害金属が蓄積されると疲労が抜けなくなる(その不調「有害金属」が原因かも?: 日本経済新聞)。

 生活習慣病・文明病の最大の原因は運動不足である。「椅子に坐る」行為が健康を蝕む。人体は基本的に「歩く・走る」ことを目的に設計されている。ヒトが世界中に棲息しているのは他のどの動物よりも長距離の移動が可能であったからだ。認知症と糖尿病は人類に「動け」と命じている。

アルツハイマー病 真実と終焉
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アルツハイマー病の原因は不明/『人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』ビル・ブライソン

2019-07-30

武田邦彦「日本は独立国ではない」


読み始める

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃
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偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る
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プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
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「豆朝日新聞」始末 (文春文庫)
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誰が国賊か―今、「エリートの罪」を裁くとき (文春文庫)
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虜人日記 (ちくま学芸文庫)
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流転の海 第9部 野の春
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失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!
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いつもの料理にかけるだけ おからパウダーダイエット
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音と文明―音の環境学ことはじめ ―
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2019-07-28

金儲けのための策略/『正義で地球は救えない』池田清彦、養老孟司


『やがて消えゆく我が身なら』池田清彦
『ほんとうの環境問題』池田清彦、養老孟司

 ・金儲けのための策略

・『生物にとって時間とは何か』池田清彦

 あるタイプの前立腺がんは手術も何もしないで、様子を見るのが最善だそうだが、これでは医者は儲からない。儲けたい医者は手術を勧めるだろう。京都議定書を守って、CO2削減に莫大な税金を注ぎ込んでも、温暖化を止めるための貢献度はほぼゼロに等しい。しかし、税金は誰かのふところに入るわけだから、特定の人だけは儲かる。そう考えれば、CO2の削減キャンペーンは誰かの金儲けのための策略に決まっている。誰かとは、排出権取引で儲けたいトレーダー、脱炭素利権に群がる官僚、学者、起業家などである。
 ほんとうの危機が来れば、偽問題の化けの皮がはがれてしまう。洞爺湖サミットでCO2の削減が実質的にどうでもよくなったのは、石油と食糧の価格高騰により、CO2の削減などという瑣末(さまつ)な問題にかまけているヒマはないことが、自明になったからである。(池田清彦)

【『正義で地球は救えない』池田清彦、養老孟司〈ようろう・たけし〉(新潮社、2008年)】

 計上された予算は分配される。一部の人々に。特定の利権は国民にとって損失を意味する。ところがそこに政治家が口を挟むと襲撃されることがある(『襲われて 産廃の闇、自治の光』柳川喜郎/石井紘基刺殺事件動画)。

 国や自治体が「分別せよ」と命じるとゴミの分別が新たな常識となる。唯々諾々(いいだくだく)と従う国民は指定された有料のゴミ袋を購入し、ペットボトルやプラスチック容器を洗浄する。つまり自治体はゴミ袋という新たな税金と余分な水道料金をまんまと手に入れることができたわけだ。

 私は当初上手く行くはずがないと楽観していた。至る所ににゴミが散乱し結局元通りになると踏んでいた。ところがそうはならなかった。

 環境問題は大衆の善意につけ込んだ悪行を許す大義名分となってしまった。しかも行き場を失った左翼勢力が新たな飯の種にした経緯がある(『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男)。

 医療や介護が保険報酬で動くように学問の世界もまた予算で動く。その結果多くの科学者は京都議定書に沿った研究を行う。初めに地球温暖化というドグマ(教条)が設定されているわけだから後は都合のよいデータを集めるだけだ。

 国際的には気候変動と言われるのだが、なぜか日本では地球温暖化という言葉が大手を振って歩いている。京都議定書は現代のワシントン海軍軍縮条約であるというのが私の見立てだ。目覚ましい日本の近代化に恐れをなしたアングロ・サクソンは米・英・日の主力艦の総トン数比率を5:5:3にすることを決めた。この数字には何の根拠もない。何の根拠もなくルールを変えるのがアングロ・サクソン流の手口である。そして散々口を挟んだアメリカが京都議定書を批准しなかったのは国際連盟の設立を思わせる。いずれにせよ21世紀を睨んだ米英の戦略であることは間違いない。

 武田邦彦は「ヨーロッパ諸国はアジア諸国にエネルギーの使用制限をかけることによって経済発展を抑制しようとした」と指摘する(武田教授が暴く、「地球温暖化」が大ウソである13の根拠 - まぐまぐニュース!)。EUの厳しい排ガス規制はトヨタのハイブリッド潰しを目的にしているのではないか?

 日本では一方的な情報しかメディアは伝えないが、イギリスでは国営放送のBBCが「地球温暖化詐欺」なる番組を放映した。


正義で地球は救えない
池田 清彦 養老 孟司
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チャーチルを冷やかした辻政信はラオスで殺害された/『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編


 ・チャーチルを冷やかした辻政信はラオスで殺害された

『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通
『新・悪の論理』倉前盛通
『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
『自然観と科学思想 文明の根底を成すもの』倉前盛通
『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通
『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通

小室●だから、イギリス軍というのは、日本軍だけに関しては口惜しがって怒るわけね、そうでしょう。

倉前●シンガポールで、英国軍10万人、日本軍3万人で、3万の軍隊に10万の軍隊が降伏したんだから。今までの英国の歴史ではそういうことはあり得ないですよね。それで、それをチャーチルは『第二次大戦回顧録』に、10万の英国軍が3万の日本軍に降伏したと書いていないですよ。それを辻政信が言わんでもいいのに、おまえさんの回顧録には、10万のイギリス軍が3万の日本軍に降伏したことが書いていないじゃないか、とひやかしの手紙を出したんです。それでチャーチルが怒ったそうです、ものすごく。
 そのときに辻政信と同期生の特務機関長だった人が、おまえ、いらんことをするな、イギリスはこわいんだぞ、何されるかわからんぞ、イギリスは何十年後でも仕返しするんだからと忠告したそうですが、辻政信は、そんなこと大丈夫だと言っていましたら、案の定、ラオスで行方不明になったでしょう。あれはそういうことからすると、イギリスの特務機関に殺されたんだとその筋の人は言っている。イギリスという国は必ず仕返しをする。その辻政信と同期だった人も、わしはイギリスがやったと思っとる、それはチャーチルをひやかしたからだ、と言っています。

小室●イギリスは普通、相手が何百倍だって勝つんだから。ところが、日本軍に関しては何分の一かの日本軍に……。

倉前●負けて降参しちゃった(笑)。

【『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編(世界戦略研究所、1985年)】

 ハイレベルな床屋談義といった内容である。大東亜戦争の戦略ミスに関しては驚くほど見解が一致している。

 多分読み返すことはないと思うが、本書によって倉前盛通を知ったのは大きな収穫であった。あの小室直樹が「先生」と呼ぶのだからその学識に間違いはなかろう。

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2019-07-27

小善人になるな/『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通


『昭和の精神史』竹山道雄
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』水野和夫
『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編

 ・小善人になるな
 ・仮説の陥穽
 ・海洋型発想と大陸型発想
 ・砕氷船テーゼ

『新・悪の論理』倉前盛通
『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
『自然観と科学思想 文明の根底を成すもの』倉前盛通
『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通
『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 悪人とは何も邪悪な人間という意味ではなく、国際社会の非情冷酷さを知らず、デモクラシーとか人権とか人民解放なぞというような上っ面の飾り文句で、国際社会が動いているかのように思いこんでいる善人に対比して、人間と社会、ことに国際社会のみならず、力関係の入り乱れた社会の狡智と冷酷さを十分わきまえた上で、それに対応する手をうつことのできる強い人間のことを悪人と称してみただけのことである。

【『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉(日本工業新聞社、1970年/角川文庫、1980年)以下同】

 小室直樹との対談本で倉前盛通を知った。あの小室御大が「先生」と呼ぶ人物である。そこそこ本を読んできたつもりであったが見落としている人物の大きさに気づいて愕然とした。学生運動のピークが1969年(昭和44年)であったことを踏まえれば、地政学を説いた先見の明に畏怖の念すら覚える。「人民解放」という言葉が古めかしく感じるが当時の大学生は大真面目でこれを叫んでいた。

 巻頭のドキュメント・フィクションはロッキード事件を仕組んだCIAの手口を推察したもので「さもありなん」と思わせる説得力がある。

 日本人は昔から「悪」という言葉に、強靭で、しぶとく不死身という意味を持たせていた。つまり「ええ恰好しい」ではなく、世の毀誉褒貶や、事の成否を意に介せず、まっすぐに自己の信念を貫いた人の強烈な荒魂を、崇め安らげる鎮魂の意味で「悪」という文字を使用してきた。これは日本人の信仰の深淵に根ざすものかもしれない。
 日本の社会は昔から女性的で優美な「もののあはれ」という美学を、生活の規範としてきた社会であり、男性的な硬直した儒教論理や、キリスト教、マホメット教のような一神教的男性原理によって支えられている社会ではない。それゆえ、男性的な行動原理に身をおくとき、日本の伝統美学から、やや遠ざかっているという美意識が生じてくる。それゆえ、一種の「はにかみ」をもって、「悪」とか、「醜(しこ)」と自称したのであろう。

 明治の男たちが愛した「狂」の字と同じである(狂者と狷者/『中国古典名言事典』諸橋轍次)。現在辛うじて残っているのは力士の呼び名である「醜名(しこな)」くらいか。「醜(しこ)」については、「本来は、他に、強く恐ろしいことの意もあり、神名などに残る」(デジタル大辞泉)。

 よく指摘されることだが日本のリーダーに求められるのは母親的要素が強く、度量や鷹揚さが示すのは優しさに他ならない。これは親分や兄貴分を思えば直ちに理解できることだ。原理原則で裁断する男性性は日本人の精神風土と相容れない。

「愛」という言葉も元々は小さなものに対する感情で「可愛い」という表現と同じ心理である。日本人の美的感覚が雄大なものより繊細に向かったのは当然というべきか。

 脆く、はかないものを美しいとする日本の伝統的美学の中では、強靭で不死身なものは、醜になり、悪になるのである。ここのところの日本の美学的発想がまだ外国の人々には、よく理解されてないようである。
 たとえば30年間、南海の小島のジャングルの中で戦い続けていた小野田少尉のような人こそ「醜の御楯」であり「醜のますらを」とよばれるにふさわしい人物といえよう。地政学は、その意味で、まさしく「悪の論理」であり、「醜の戦略哲学」である。
 これからの国際ビジネスマンは、人の見ていないところで、国を支えてゆく「醜のますらを」であり、「悪源太」であることを、ひそかに誇りとすべきであろう。そして小善人になり上がることをもっとも恥とすべきである。

 万葉集に「今日よりは顧みなくて大君の醜(しこ)の御楯(みたて)と出で立つわれは」とあるようだ。小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉の帰還は1974年(『たった一人の30年戦争』小野田寛郎)なので増補された内容か。「悪源太」とは源義平〈みなもと・の・よしひら〉のことらしい。楠木正成〈くすのき・まさしげ〉も悪党と呼ばれた。こうして見るとはかなさの対局にある太々(ふてぶて)しい様を示すのが「悪」や「醜」であることがよくわかる。

 1970年(昭和45年)に三島由紀夫が割腹し、その4年後に小野田寛郎が帰ってきた。私はこの二人を心より敬愛する者であるが、それを差し引いても二人のあり方は「潔さからしぶとさへ」という精神性の変化を象徴する事件であったと思われてならない。つまり腹を切って責任を取るよりも、もっと難しい選択を迫られる時代に入ったのだ。しかもこの「難しい選択」は容易に避けることが可能で、避けたとしても後ろ指をさされることがない。

 だからこそ「小善人になるな」とのメッセージが胸に突き刺さる。真面目や善良は尊ぶべき資質ではあるが、世間に迎合することを避けられない。真面目な官僚は省益のために働き、善良な組員は鉄砲玉となって抗争する組長の殺傷に手を染める。

 要は世間の評価や他人の視線を歯牙にも掛けない「悪(にく)まれ役」が求められているのだ。山本周五郎著『松風の門』で池藤八郎兵衛〈いけふじ・はちろべえ〉は主君の命に背いて百姓一揆の首謀者3人をあっさりと斬り捨てた。八郎兵衛は謹慎(閉門)を言い渡された。彼は言い訳一つせず、ただ畏(かしこ)まっていた。八郎兵衛の深慮が明らかになるのは後のことである。義を前にして己を軽んじてみせるのが武の魂であろう。いつ死んでもよいとの覚悟が壮絶な生きざまに表れる。



内気な人々が圧制を永続させる/『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

2019-07-24

死ぬ覚悟があるのなら相手を倒してから死ね/『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』西尾幹二


『国民の歴史』西尾幹二
『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃』西尾幹二、中西輝政
『三島由紀夫の死と私』西尾幹二

 ・「戦争責任」という概念の発明
 ・岡崎久彦批判、「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動
 ・死ぬ覚悟があるのなら相手を倒してから死ね

岡崎久彦

 一般に戦後のある時期まで、社会の中にある野生の暴力が役立っていた。必ずしも非合法組織の事ではない。村には青年団があり、上級生は生意気な下級生に鉄拳制裁を加えた。教師の体罰も有効な抑止力だった。街角で「いじめ」を見て、普通の市民が介入し、叱責した。
 いつの頃からか「刺されるから止めておこう」に変わった。教師も見て見ぬ振りで、事なかれ主義になった。その頃から「いじめ」は学校の中で密室化し、陰惨になり、何が起こっているのか見えにくくなった。
 昔は「いじめ」はいくら激しくても、それで自殺する者はいなかった。「いじめ」は子供が大人になる通過儀礼のようなものであった。そこで心が鍛えられ、友情や裏切りを知り、勇気や卑劣の区別も悟り、社会を学ぶ教育効果もあった。
 暴力を制するには暴力しかない。教師の体罰を許さないような今の学校社会が「いじめ」による自殺を増加させている。「いじめ」の密室化を防ぐには社会の中の野生の暴力をもう一度甦らせるしかなく、「生命を大切にしてみんな仲良く」といったきれいごとの教訓では、見て見ぬ振りの無責任と同じである。
 追い込まれた子供が自殺するのは復讐のためであると聞く。一度死んだら蘇生できないという意識がまだ幼くて希薄で、死ねば学校や社会が騒いでくれて仕返しができると考えての自殺行為であるという。
 であるとすれば、死んだら仕返しも何もないということを広く教育の中でまず教える事である。それから、これが何より大切だが、死ぬ覚悟があるのなら相手を倒してから死ね、と教える事である。
 仕返しや復讐の心に囚われている子供、しかも社会の中に自分を助けてくれる有効な暴力がない子供に(だから自殺に追い込まれたのだろうが)、仕返しや復讐はいけないことだという人道主義や無抵抗主義を教えるのは、事実上自殺への誘いである。
 まずは正当防衛としての闘争心を説く。学校の先生がそれを教える。いじめられっ子に闘争心が芽生えれば、もう自殺はしない。防衛は生命力の証である。

【『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』西尾幹二〈にしお・かんじ〉(徳間書店、2007年)】

 私は1963年(昭和38年)生まれで中学生の時に校内暴力が社会問題化し、二十歳(はたち)になる頃は新人類と呼ばれた世代である。昭和40年代に入ると三世代同居がなくなり核家族化が進んだ。共働きの家はほとんどなかったと記憶するが、片親で家の鍵を持つ児童は「鍵っ子」という寂しい蔑称で呼ばれていた。西尾幹二は1935年(昭和10年)生まれだから私の父親よりも年上である。

 今時は殴り方も知らないような教師がいるので体罰を容認するのは危険だ。介護と同様、閉ざされた世界で振るわれる暴力はちょっとした弾みでどんどん過激になる。私の世代だと拳骨やビンタは珍しいことではなかったが教育効果があったようには思えない。あまり怖くもなかったし、かえって大人のくせにみっともないなと見下していた。

 高校の先生は大半が運動部OBということもあってそれは恐ろしかった。「オウ、大人をナメてんじゃねーぞ!」と言うなりボコボコにされることもあった。運動部の1年生はほぼ毎日ヤキを入れられるのでこれは堪(たま)ったものではない。OBと先輩には絶対服従というのが運動部の伝統であった。

 私の父親も手が早かった。二十歳を過ぎても殴られていたよ。友人の前でやられたことも何度かある。確かにブレーキにはなるのだがただ怖いだけだ。警察につかまるよりもオヤジにバレるのが怖いというのが本音だった。それくらい怖かった。10年ほど前に死んだが今でも怖いよ(笑)。

 当然ではあるが私は外で喧嘩をし、家では弟妹をいじめた。こうなるから暴力はダメなんだよね。

 江戸時代までは武士道があった。幼い頃から死ぬ覚悟を叩き込まれ、責任を取る時は腹を切るのが当たり前とされた。柴五郎〈しば・ごろう〉の幼い妹は懐剣を見せて「いざ大変のときは、わたしもこれで黄泉路(よみじ)に行くのよ」と語った。その妹は会津戦争のさなか母親に胸を突かれて7歳で死んだ(『守城の人 明治人柴五郎大将の生涯』村上兵衛)。

「死ぬ覚悟があるのなら相手を倒してから死ね」とのメッセージはまったくもって正しい。どんな手を使っても構わない。知恵と悪知恵の限りを尽くして悪人を叩き伏せることが社会の向上につながる。「理不尽ないじめをすれば殺される可能性がある」となれば、いじめは激減することだろう。



大阪産業大学付属高校同級生殺害事件
両親の目の前で強姦される少女/『女盗賊プーラン』プーラン・デヴィ

2019-07-23

岡崎久彦批判、「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動/『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』西尾幹二


『国民の歴史』西尾幹二
『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃』西尾幹二、中西輝政
『三島由紀夫の死と私』西尾幹二

 ・「戦争責任」という概念の発明
 ・岡崎久彦批判、「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動
 ・死ぬ覚悟があるのなら相手を倒してから死ね

岡崎久彦

 この日は珍しい来賓があった。岡崎久彦氏である。
 岡崎氏は私が名誉会長であった間は(※「新しい歴史教科書をつくる会」の)総会に来たことがない。多分気恥かしいひけ目があったからだろう。彼は「つくる会」創設時にはスネに傷もつ身である。すなわち最初の頃はずっと理事に名を出していたが、会発足の当日に会に加わるものはもの書きの未来に災いをもたらすと見て、名を削ってくれと申し出て来た。つまり夏の夜のホタルのように甘い水の方に顔を向けてフラフラ右顧左眄(うこさべん)する人間なのだ。それならもう二度とつくる会に近づかなければいいのに、多少とも【出世した】つくる会は彼には甘い水に見えたらしい。こんど私が会場に姿を見せなくなったら、厚かましくも突然現れた。

【『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』西尾幹二〈にしお・かんじ〉(徳間書店、2007年)以下同】

「必読書」から「資料本」に変えた。カテゴリーとしての資料本(しりょうぼん)とは必読書を鵜呑みにしないためのテキストである。謂わばワクチン本といってよい。

(※米議会で靖国神社遊就館の展示に変更を求めたハイド委員長〈共和党〉の意見は)靖国とナチスの墓地を同列に置くような低レベルの内容であるが、戦史展示館「遊就館」の展示内容を批判し、「次期首相」の参拝中止を求めている記事(毎日新聞、9月15日付)内容は、岡崎久彦氏が8月24日付産経コラム「正論」で、「遊就館から未熟な悪意ある反米史観を廃せ」と先走って書いたテーマとぴったり一致している。やっぱりアメリカの悪意ある対日非難に彼が口裏を合わせ、同一歩調を取っていたというのはただの推理ではなく、ほぼ事実であったことがあらためて確認されたといってよいだろう。岡崎久彦氏は「親米反日」の徒と昔から思っていたが、ここまでくると「媚米非日」の徒といわざるを得ないであろう。

 政治的な意味のリベラルは地に落ちた。かつては是々非々を表したこの言葉は既に左翼と同義である。ポリティカル・コレクトネスという牙で日本の伝統や文化を破壊するところに目的がある。その後、リアリズム(現実主義)という言葉が重宝されるようになった。そしてリアリズムが行き過ぎると岡崎久彦のような論理に陥ってしまうのだろう。国家の安全保障を米軍に委ねるのが日本国民の意志であるならば、用心棒に寄り添い、謝礼も奮発するのが当然という考え方なのだろう。

 かつてのコミンテルン同様、CIAも日本人スパイを育成し第五列を強化している。大学生のみならず官僚までもが米国留学で籠絡(ろうらく)されるという話もある。学者や評論家であれば米国内で歓待して少しばかり重要な情報を与えれば感謝感激してアメリカのために働く犬となることだろう。日本人には妙なところで恩義を感じて報いようとする心理的メカニズムがある。

 岡崎久彦がアメリカに媚びるあまり歴史の事実をも捻じ曲げようとしたのが事実であれば売国奴といってよい。しかも日本民族の魂ともいうべき靖国神社に関わることである。リアリストというよりは第五列と認識すべきだろう。

 中西輝政氏は直接「つくる会」紛争には関係ないと人は思うである。確かに直接には関係ない。水鳥が飛び立つように危険を察知して、パッと身を翻(ひるがえ)して会から逃げ去ったからである。けれども会から逃げてもう一つの会、「日本教育再生機構」の代表発起人に名を列(つら)ねているのだから、紛争と無関係だともいい切れないだろう。(中略)
 中西氏は賢い人で、逃げ脚が速いのである。いつでも「甘い水」を追いかける人であることは多くの人に見抜かれている。10年前の「つくる会」の創設時には賛同者としての署名を拒んだだけでなく、「つくる会」を批判もしていたが、やがて最盛時には理事にもなり、国民シリーズも書き、そして今度はまたさっと逃げた。

 本書には「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動にまつわる詳細が書かれている。月刊誌に掲載された記事が多いこともあるが、よくも悪くも西尾幹二の生真面目さが露呈している。私の目には政治に不慣れな学者の姿が映る。それゆえに西尾は不誠実な学者を許せなかった。自分との距離に関係なく西尾は批判を加えた。

 西尾はチャンネル桜でも昂然と安倍首相批判を展開している。年老いて傲岸不遜に見えてしまうが、曲げることのできない信念の表明である。そこには周囲と巧く付き合おうという姿勢が微塵もない。

国家と謝罪―対日戦争の跫音が聞こえる
西尾 幹二
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