2020-01-18

テロリストでも公務員になれる日本/『自治労の正体』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹

 ・テロリストでも公務員になれる日本

『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗
『知ってはいけない 金持ち 悪の法則』大村大次郎

 自治労は過激派の巣窟(そうくつ)です。こう断言すると不思議に思う人が多いかもしれません。
 日本は自由な国だから変な公務員もいるだろうけど、確か過激派は公務員になれないという決まりがあったんじゃなかったか、と。確かに地方公務員には次のように定めがあります。

(欠格条項)
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
三 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

 私は不覚にもつい最近まで、過激派たち、暴力革命を目指す団体に所属するメンバー、あるいはかつて所属していた者は、地方公務員法第16条5号に該当し公務員になることができない、と信じていました。もちろん、現実には多くの元過激派や現過激派が公務員として潜伏していることに気づいている人は少なくありません。でも、それは公安調査庁と自治体の情報共有不足や自治体の怠慢が理由に過ぎないと考えていたのです。
 しかし、日本の公務員組織の暴力に対する鈍感さは、私の常識をはるかに凌駕していました。本章では、どれほど日本の公務員制度が暴力集団に甘く、様々な極左集団が公務員社会に潜伏しているか、その実態を明らかにしたいと思います。

【『自治労の正体』森口朗〈もりぐち・あきら〉(扶桑社新書、2017年)以下同】

 自治労とは地方公務員の組合組織である。「日本の教育をダメにしたのが日教組で、日本の政治をダメにしたのは自治労である」と森口は言い切る。そんな話は初耳だ。誰も言ったことがないとすれば、それだけこの国の闇は大きいのだろう。

 白タク行為をしていた加須(かぞ)市役所の課長が逮捕された。この人物は中核派のメンバーだった。森口が加須市に電話取材すると中核派課長はその後異動となっていた。懲戒処分はない。「第16条5号に該当しないのか?」と尋ねたところ、担当者は「中核派がこれに該当するとは、どこにも書いていません。加須市としては、該当しないと判断しました」と答えた。次に森口は総務省に問い合わせをする。

担当官「地方公務員法第16条5号にいう『政党その他の団体』とは、『破壊活動防止法による活動の制限又は解散の指定を受けた団体』を指しているというのが総務省の見解です。詳細は公安調査庁に聞いてほしいのですが、おそらく中核派はこの指定を受けていないと思います」

森口「つまり中核派の構成メンバーでいること、構成メンバーでいたことは、地方公務員の欠格条項に該当しないという事ですね」

担当官「はい、そういう事になります」

 更に公安調査庁とのやり取り。

担当官「現在のところ、破壊活動防止法による活動の制限や解散の指定を受けた団体はありません」

 つまりオウム真理教でも、中核派でも、イスラム国のメンバーでも公務員になることができるのだ。JR東労組と同じ構図だ。

革マル派に支配されているJR東日本/『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』西岡研介

 振り返れば戦時中も政権中枢に左翼が浸透していた(『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫)。この国に学習能力はないのだろうか? 自民党の不作為が国を滅ぼしつつあると思えてならない。

 地下鉄サリン事件が起こっても破防法を適用することができなかった事実を思えば、とてもじゃないが自民党に憲法改正は不可能だろう。果断の時を逸すれば、社会はまずい方向に流れてしまう。地下鉄サリン事件における麻原彰晃の罪状は殺人罪と殺人未遂罪だった。

 組合が本来の目的を離れて社会や国家の分断を目指すものであるならば、それを罪とすることに国民は決して反対しないだろう。拉致被害が解決することなく、日本の海域や空域が日常的に侵されている今、自民党に変わる新しい政党が必要だ。

左翼に侵食される地方政治/『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
小野寺まさる:北海道が日本で無くなる日~中国の土地爆買いとアイヌ新法の罠[R2/5/4]
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸

 ・左翼に侵食される地方政治

『実子誘拐ビジネスの闇』池田良子
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

 要するに自治基本条例の目的は次の通りである。
一、自治体を国家から切り離す。
二、自治体の市民により憲法を制定し独立共和国とする。
三、そこまでできなくても、プロ市民を、議会を経ずに市政に直接アクセスさせる経路を開く。
 この革新政治理論的指導者松下圭一氏の著作をバイブルとして、多くの学者や自治体職員(自治労)が自治基本条例を育み広めてきたのである。

【『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹(青林堂、2018年)以下同】

日本乗っ取りはまず地方から!恐るべき自治基本条例!』(青林堂、2014年)を書き換えたもので改訂・新訂版ではない。「篤志家がいて全国の自治体に贈ってくださった」とネット番組で村田が語っていた。数百万円のカネを出さしめた危機感を想わずにはいられない。

 江田五月、菅直人、仙谷由人ら所謂左派政治家が松下圭一の理論を実現するべく地方自治に力を注いできたという。更に「民主党内閣の理論面でのバックボーンであった」とまで村田は言い切る。ソビエト崩壊によって社会主義が低迷する中、左翼は暴力革命から地方自治に目を転じた。彼らの目的は国家の破壊・分断を工作することである。その国の歴史や文化を否定することで政治システムの変革に誘(いざな)おうと目論む。

 地方政治といえば大阪維新の会が注目されがちだが、我々の知らぬ間に地方は左翼に侵食されていた。しかも彼らは人権や平等といった誰も反対し得ない美しい文句を口にする。心の中で天皇制打倒を叫んでいることに一般人は気づかない。

「私たちは」
 豊中市自治基本条例は、豊中市に住む人だけでなく、豊中市で働き、学ぶ人、あるいはNPO活動に従事しる人や団体などを幅広く対象としています。


 一見すると何も問題がないように思える。たしかに市民の定義を市内に住所を置く住民・国民・有権者だけに限定せず、豊中市で働き、学ぶ人、あるいはNPO活動に従事する人を幅広く対象とするのはいかにも民主的で開放的である。そこで私は豊中市役所に電話で以下の通り訊いてみた。

一、豊中市に一度も住んだことはない人を市民とするのか。
二、住民税を豊中市に一円も払ったことがない人を市民とするのか。
三、豊中市議会・市長に対しての選挙権を有しない人も市民とするのか。
四、未成年、小中学生も市民とするのか。
五、外国人も市民とするのか。
六、広域指定暴力団〇〇組員も、市内でみかじめ料徴収とか恐喝とか覚醒剤を売買している人も市民とするのか。
七、オウム真理教アーレフ等のカルト宗教団体も、事務所を置いていてもいあんくても活動していれば市民とするのか。
八、朝鮮総連等破防法適用が云々されている団体の構成員も市内で活動していれば市民とするのか。
九、朝鮮学校も市民とするのか。
十、華人(中国人)参政権推進団体も市民とするのか。
十一、政党はじめ政治活動している人たちも市民とするのか。

 市役所は私の質問すべてに対し「イエス」との回答であった。
 豊中市だけではない。すべての自治基本条例は上記の十一項目に対してイエスである。

 つまりこれらの人々にも住民投票が認められるのだ。左派政党の支持率は全く伸びる様子がない。それをプロ市民の運動量でカバーしようとする企(たくら)みだ。

 市区町村議会議員の数は29839人で所属政党の割合は以下の通りである(平成30年〈2018年〉12月31日現在、総務省)。

・公明党 2729人(9.1%)
・共産党 2611人(8.8%)
・自民党 2041人(6.8%)
・社民党 239人(0.8%)
・日本維新の会 55人(0.2%)
・国民民主党 45人(0.2%)
・立憲民主党 34人(0.1%)
・自由党 4人(0.0%)
・諸派 1123人(3.8%)

 都道府県議会議員は自民党が圧倒的に多い。公明党と共産党は組織政党であり、党の代表選挙がない点や、候補者選出の経緯がブラックボックス化しているところに共通点がある。また手弁当で働く運動員が多いのが強味となっている。両党とも市民相談を精力的に行っており、真面目に仕事をする議員が多い。組織力は断然創価学会の方がリードしており、高齢化が進んでいるとはいえ日常的に若い人々を育てる努力をしている。一方の共産党は団塊の世代を中心とする老人党員が目立つ。興味がある人は赤旗まつりに行ってみればいい。

 創共協定(1974年)が直ぐに破綻してから両者は犬猿の仲となる。共産党は選挙前になると創価学会のデマビラをまき、創価学会は反共学習会を開くといった具合だ。ところが彼らには外国人参政権という共通の目的がある。ここが怖い。なにかの拍子で手を握ることがあれば地方自治は瓦解することを避けられない。しかも揃って親中派である。

 公明党はかつての政敵であった自民党と手を結んで政権与党入りした(1999年)。トップの判断で右にも左にも動くのが組織政党の恐ろしいところである。村田春樹の孤軍奮闘によって自治基本条例の流れは止まったが、決して油断してはならないと思う。

2020-01-17

国民皆兵がデモクラシーの正当性を基礎付けた/『戦後教育で失われたもの』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗

 ・国民皆兵がデモクラシーの正当性を基礎付けた

『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗
『知ってはいけない 金持ち 悪の法則』大村大次郎

 デモクラシーの本質とは、「国民皆兵がデモクラシーの正当性を基礎付けた」という歴史的事実です。
 我々はなぜ、一人一票ずつ投票権を与えられ、国政や地方政治に参加できるのか。納税者だからではありません。納税者であるがゆえに国政に口を出せるのならば、制限選挙か納税額一万円につき一票といったシステムの方が合理的です。
 しかし、そうではない。フランス革命によって完成した近代デモクラシー国家において国民軍は不可欠な要素でした。有事になれば、たった一つしかない命を国家に預けて戦う。これが国民国家の基本型です。だから平時にだって国民は平等に国政に口を出す。命の重みに金持ちも貧乏人もありません。それゆえの「一人一票」なのです。
 ついでに言うと、じゃあなぜ婦人参政権が認められたのでしょう。それは、第一次世界大戦により戦争のあり方が、軍事力勝負から政治経済を含めた国力すべてを費やして戦う「総力戦」に変わったからです。これによって、「銃後」が極めて重要な存在になりました。これが、婦人参政権が認められた最大の根拠です。
 戦後教育は、この最も重要な点を隠蔽(いんぺい)しました。日本弱体化が目的であったGHQにとって、「民主主義」と「戦争」はどこまでも対立的でなければならなかったのです。

【『戦後教育で失われたもの』森口朗〈もりぐち・あきら〉(新潮新書、2005年)】

 森口朗の名前を知らない人でも、以下の記事を目にした人は多いはずだ。

この「いじめ対策」はすごい! - 森口朗のブログ

 森口は元東京都職員の教育評論家である。今のところ外れなし。どれもお勧めできる。実に頭の柔らかな人で左翼を昂然と批判しながらも、保守派の甘さを突くバランス感覚が好ましい。歴史認識についてもかなり慎重な姿勢で好感が持てる。中道を歩む人物と見た。

 小林節〈こばやし・せつ〉のコラム(大阪日日新聞掲載)によって私は参政権が国防と直結していることを知った。10年ほど前のことだ。それまで蜜月関係にあった創価学会および公明党は小林と袂を分かつ。公明党は外国人参政権に賛成の立場だ。無論深い考えがあるわけではない。在日創価学会員を得票につなげたいだけのことだ。

 外国人参政権を推進するのは左派政党で、自治基本条例を制定し住民投票という形で実現している地域もある(神奈川県大和市など)。巧妙な破壊工作は功を奏しており、様々な地域で混乱を招いている。こうした動きに対して立ち上がったのが村田春樹で自治基本条例はその後鎮火に向かう(『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』)。

 もともと西洋のシチズン(市民)は城壁に囲まれた都市に住むことと引き替えに戦争となれば闘うことを義務づけられていた。権利と義務はセットである。

 2016年から18歳選挙権が適用された。さて、兵役に就く覚悟を決めた若者はどのくらいいただろうか?

インディアンは「真の人間」か?/『世界史とヨーロッパ ヘロドトスからウォーラーステインまで』岡崎勝世


『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世

 ・インディアンは「真の人間」か?

・『4日間集中講座 世界史を動かした思想家たちの格闘 ソクラテスからニーチェまで』茂木誠
『科学vs.キリスト教 世界史の転換』岡崎勝世
『世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界』川北稔

キリスト教を知るための書籍
世界史の教科書

 他方、「発見」された「人間」について、さっそくヨーロッパで論議が巻き起こりました。それは、新大陸で「発見」されたアメリカのインディオたちが「真の人間」であるか否かといった議論です。これに一つの決着を与えたのが、ローマ教皇パウロ3世でした。かれは1537年の教書で次のように宣言したのです。
〈アメリカ・インディアンも私たちと同様、真の人間である。彼らはカトリックの教えを理解できるだけでなく、またそれを受け容れようと熱望している〉(筆者訳)
 ローマ教皇が断言したようにインディオが「真の人間」、アダムの子孫であるとしても、なお残された問題をめぐって、16世紀ヨーロッパで、普遍史の根幹に関わる二つの論戦が引き起こされています。
 一つは、インディオが「アダム」の子孫だとしても、【直接の祖先】はだれか、【「新大陸」への経路】はなにかという問題に関する論戦でした。(中略)
 もう一つの論戦は、笑ってはすまされない問題を含んでいます。それは、1550年、スペインで行われた【「バリャドリードの論戦」】です。この論戦では、インディオが真の人間であるとしても、いかなる意味で真の人間なのかが公開論争で争われたのです。ヨーロッパ人と全く同様な真の人間と主張したのは、インディオ保護法制定のために闘った、有名なラス・カサスでした。これに反対したのが、セプルベダというアリストテレス学者で、かれはアリストテレスの先天的奴隷論に依拠しながら、かれらを先天的に劣った人間であると主張したのです。

【『世界史とヨーロッパ ヘロドトスからウォーラーステインまで』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、2003年)】

 先ほど読み終えたのだが画像ファイルを調べたところ再読であることを知った。完全に記憶から欠落している。3年前に読んでいた。岡田英弘と岡崎勝世に外れはない。どれを読んでも新しい発見がある。

“インディアンは「真の人間」か?”との問いそのものにヨーロッパの傲慢がある。つまり有色人種が人間かどうかを判断するのはヨーロッパ人なのだ。根はユダヤ教の選民思想にあるのだろう。その思い上がりに唯一抵抗したのが極東の日本であった。

 日本は世界最大の軍事力を背景に鎖国をした(『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』平川新)。開国後もわずか数十年で産業革命の技術を自家薬籠中(じかやくろうちゅう)のものとした。速やかに文明国になるべく国軍を創設し、義務教育を施行し、憲法を制定した。日清戦争に打って出るとヨーロッパで黄禍論(おうかろん)が唱えられた。「黄色い猿は人間の真似をするな」というわけだ。

 東亜百年戦争で武士は亡んだ。軍事力も奪われた。日本は今も尚国家として独立することを許されていない。“日本は「真の国家」か?”と問われれば、「否」と答える他ない。

国を賊(そこな)う官僚/『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一


・『書斎のポ・ト・フ』開高健、谷沢永一、向井敏
・『紙つぶて(全) 谷沢永一書評コラム』谷沢永一
『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一

 ・国を賊(そこな)う官僚

『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

必読書リスト その四

谷沢●都会の人は「そんなカネ、銀行に預ければいいじゃないか」と思うでしょうが、農民に対する農協の圧力はすごいんです。
 田んぼを売ったカネは農協に預けなくてもいいわけです。本来なら、普通の都市銀行でいいんです。ところが、農協に預けなければいかんような無言の圧力があるんです。
 それは農機具だって、肥料だって、みんな農協が独占販売しているでしょう。もう農村を完全に抑え込んでいます。農協以外に預けるなんて、考えられない。
 中世のころに荘園(しょうえん)の領主が農民を囲い込んだわけですが、それと同じことを農協はやっているんです。だから、日本の農村は農協の「荘園」なんです。一種の搾取(さくしゅ)ですね。農協を通じなければ事実上、コメを売ることもできないし、肥料や種籾(たねもみ)を買うこともできない。しかも、儲けたカネは農協に預けろ。農村は農協の「城下町」です。日本中のどこの農村に行っても、そのど真ん中には農協城の天守閣が聳(そび)え立っている。

渡部●だから、農協は農民の味方だなんて、真っ赤なウソなんです。

谷沢●農協はそもそも、農民を守るということから出発していたわけです。一種の社会運動が背景にあった。
 そもそも社会運動というものには、かならず二律背反の宿命が付きまとうんです。
 昔の日本農民組合の最高責任者であった杉山元治郎〈すぎやま・もとじろう〉は、「われわれ日農の運動家は、日農という存在がこの世からなくなることを最高目標として頑張らなければならない」という趣旨のことを言いましたが、日本の社会運動家で、これだけ明晰(めいせき)に社会運動の持っている根本的矛盾を喝破(かっぱ)した人はいないと思います。
 同じ社会運動が何十年も続くというのは、おかしいんです。あってはならないことなんです。続いているとしたら、二つの可能性しか考えられない。
 一つは、その活動でやっていることが、まったく何の実も結んでいないということです。つまり、そもそもの運動方針が間違っていたということです。
 あとのもう一つは、途中でその活動が変質してしまったということです。すなわち、自分らの運動を続けるために、解決すべき社会問題が解決されないよう、社会問題そのものを再生産しているということ。
 どちらにしても、社会改良運動が長く続いているということは、何の自慢にもならないことなんです。
 農協の場合はまさに後者の例です。本当なら農協は、自分自身が消滅することを至上(しじょう)目的として活動しなければいけなかった。ところがいったん組織が作られてしまうと、どんどん肥大化していって中味が変わってしまった。

渡部●そして、今や専業農家よりも、農協職員のほうが多くなった。
 これはまさにパーキンソンがイギリス海軍について語ったのと同じことですよ。

【『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一(クレスト選書、1996年/文春文庫、2000年)】

 なぜバブル崩壊に至ったのか。日本経済の舵取りはどこで誤ったのか。土田正顕〈つちだ・まさあき〉を始めとする大蔵官僚の罪に迫る。私は住専問題について数百人の前でレクチャーしたこともあって当時のことはよく憶えている。総量規制の通達が出てから、わずか1~2ヶ月で日本の不動産価値は660兆円(※億円ではない)下がり、15年後には1200兆円も下落(櫻川昌哉、櫻川幸恵)した。ロッキード事件で田中角栄首相に渡ったとされる賄賂が5億円である。土田正顕は何の責任も取ることなくその後「国税庁長官で退官後、国民金融公庫(現 株式会社日本政策金融公庫)副総裁を経て2000年5月に東京証券取引所理事長に就任。2001年11月には東証の株式会社化を実現し初代社長となった」(Wikipedia)。大東亜戦争末期における軍部と同じ無責任の構造が国家に深刻なダメージを与えた。昨今少しばかり景気は上向いてきたが、官僚や政治家そして国民が1990年代の過ちをしっかり反省したとは思えない。またいつの日か同じ失敗を繰り返すことだろう。

 農協の実態については全く知らなかった。尊い初志が薄汚れた商売になるところが宗教と似ている。

噴水のように噴き上がる怒り/『北の大地に燃ゆ 農村ユートピアに賭けた太田寛一』島一春

 太田寛一〈おおた・かんいち〉はホクレンや農協の会長を務めた人物で、よつ葉乳業の創業者でもある。

 谷沢の最後の指摘が重い。特に左翼系の社会運動や組合運動は社会問題を再生産して寄生虫のような存在となっている。