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2019-11-15

国際法成立の歴史/『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠


『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹
『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹
『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹
『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『世界のしくみが見える 世界史講義』茂木誠
『ゲームチェンジの世界史』神野正史

 ・国際法成立の歴史
 ・無責任な戦争アレルギー

『「米中激突」の地政学』茂木誠
『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠

世界史の教科書
必読書リスト その四

 1856年、広州沖で海賊船アロー号が清朝官憲に拿捕されます。拘束された乗組員12名は中国人でしたが、イギリス領香港の船籍を示すため船尾に英国国旗ユニオン・ジャックを掲げていたのです。
 実はアロー号は船籍登録期限が過ぎており、ユニオン・ジャックを掲げること自体が違法だったのですが、清朝の官憲がこれを引きずり下ろしたとの報を受けたイギリスの広州知事パークスは、「英国国旗に対する侮辱である」として謝罪を要求。清朝側がこれを拒否すると、香港総督ボーリングは現地のイギリス艦隊を動員して広州一帯の砲台を占領します。
 首相となっていたパーマストン卿は本国から5000人を増派し、フランスも共同出兵しました。北京の外港である天津(てんしん)を占領した英・仏連合軍は、外国公使の北京常駐、賠償金の支払い、キリスト教の布教の自由などを認める天津条約を強要しました。大使・行使の相手国首都への常駐は、英・仏はもはや朝貢国ではなく、清朝と対等に扱われることを意味します。イギリスは、清朝をウェストファリア体制に引き込もうとしたのです。

【『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠〈もぎ・まこと〉(TAC出版、2019年)】

 国際法成立の歴史がよくわかる一冊。戦争といじめは人類の大好物であるがヒトという種が絶えてしまうことを防ぐ知恵が大きな戦争のたびに発揮されてきた。アロー号事件は第二次アヘン戦争に発展する。長らく愛国心を持つことを許されなかった我々は国旗の上げ下げが戦争の原因となり得る歴史をよくよく考える必要がある。朝貢国だった朝鮮はこうした歴史を知っていることだろう。その上で韓国人は日本国旗を切り裂き、燃やし、土足で踏みつけているのだ。彼らは戦争をしたがっている。そして日本が戦争できない事実を知悉している。少し前に日本人女性観光客が韓国で暴行された。挑発は限りなくエスカレートしてゆくことだろう。いつまで指をくわえて眺めているのだろうか。いつまで握り拳に力をこめながら「仕方がないさ」と冷笑しているのだろうか。国家の誇りを失えば国は必ず亡びる。

アトゥール・ガワンデ


『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている』山村武彦
『人が死なない防災』片田敏孝
『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド

 ・読書日記
 ・ハリケーン・カトリーナとウォルマート

『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

必読書リスト その二

「人」は誤りやすい。だが、「人々」は誤りにくいのではないだろうか。(79ページ)

【『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ:吉田竜〈よしだ・りゅう〉訳(晋遊舎、2011年)】

 内容に興味はなかった。ただガワンデを辿ってみただけだ。しかしながら彼の文才と着想に驚嘆した。凡庸なタイトル、意味不明な片仮名(アナタ)から受ける底の浅い印象が木っ端微塵となった。上に挙げた関連書は決して盛り込みすぎたわけではない。日本人に襲い掛かった現実問題として振り返り、本書まで読み進めば何らかの災害対応チェックリストの必然性が浮かび上がってくるのだ。ハリケーン・カトリーナに襲われた際にウォルマートがとった臨機応変の対応、そして「ハドソン川の奇跡」など、それぞれのエピソードが完成されたノンフィクションでありながら短篇小説の香りを放っている。ユヴァル・ノア・ハラリシッダールタ・ムカジー、そしてアトゥール・ガワンデはたぶん「進化した人類」に違いない。

2019-11-12

経済が宗教を追い越していった/『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一、小原克博


『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース:茂木健一郎訳
『なぜ、脳は神を創ったのか?』苫米地英人
『解明される宗教 進化論的アプローチ』 ダニエル・C・デネット
『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド
『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男

 ・経済が宗教を追い越していった
 ・キリスト教の教えでは「動物に魂はない」

キリスト教を知るための書籍
宗教とは何か?
必読書リスト その五

山極●貨幣が、モノの流通が宗教を追い越していった。(90ページ)

【『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一〈やまぎわ・じゅいち〉、小原克博〈こはら・かつひろ〉(平凡社新書、2019年)】

神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』(E・フラー・トリー:寺町朋子訳、ダイヤモンド社、2018年)がつまらなかったので、さほど期待してなかった。むしろ批判的に読もうとすら思っていた。ところがどっこい引きずり込まれた。これはキャスティングの勝利だろう。霊長類学者(山極)と神学者(小原)の組み合わせが弦楽器と鍵盤のようなハーモニーを生んでいる。若い小原が下手に出ているのが功を奏している(写真を見れば一目瞭然だ。顎の位置に注目せよ)。更に小原の正確なキリスト教知識が驚くほど勉強になる。『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』を直前に入れるのが私の独創性だ。

2019-11-08

衛生仮説から旧友仮説に/『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン


『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎
『免疫の意味論』多田富雄

 ・衛生仮説から旧友仮説に
 ・現代病(21世紀病)の原因はヒトマイクロバイオームの乱れ

・『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
・『失われてゆく、我々の内なる細菌』マーティン・J・ブレイザー
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー

 衛生仮説は「旧友仮説」に更新された。(149ページ)

【『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン:矢野真千子〈やの・まちこ〉訳(河出書房新社、2016年)】

 アトピーを始めとするアレルギー疾患は住宅の密閉度が高まったことと、過度の清潔な環境が原因と考えられてきた(衛生仮説)が、実は親から譲り受けるマイクロバイオータ(体内の微生物叢)の減少(旧友仮説)によることが判明しつつある。出産時の消毒や幼少期に抗生物質を投与することで減菌されることが原因だ。「飲食」のカテゴリーも「腸内細菌の活性化」というテーマで括ることができる。

 更に守備範囲を広げると、『土と内臓 微生物がつくる世界』デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー→『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』藤井一至まで手が届く。

 要はこうだ。現代人の腸内環境は農薬(殺虫剤)や化学肥料で汚染された土壌のように荒廃している。更に人体の政治システムが脳による独裁ではなく、マイクロバイオームの共生という民主政に支えられえていることまで明らかにしている。

 日本の文化でいえば幕府=脳、天皇=腸と言い得るかもしれない。




 本書で紹介されている「AO+リフレッシュ・コスミック・ミスト」の関連リンクを貼っておく。消臭剤を使う人ほど体臭が強くなるという。AO+は細菌を肌に吹きつけることで健康な状態を保つ。無臭。アメリカの許認可が化粧品となっているが薬品と考えてよかろう。皮膚の疾患・トラブルは免疫が過剰に反応している可能性が高い。値が張るのが難点だ。

風呂いらず?!「皮膚に吹きかけるバクテリア」で臭わなくなる
待ってたぞ!Mother Dirtから肌に付けるバクテリアが届いた! - ヒフ・ファイター
 米amazonだと49.95ドルだが、Qoo10だと8890円

2019-03-06

松本清張


新装版 昭和史発掘 1』松本清張〈まつもと・せいちょう〉(文春文庫、2005年)/単行本全13巻が文庫版は全9巻になっている。第13巻末尾の人名索引が文庫版にはない。松本清張の文章が昔から苦手でどうもすっきりと頭に入ってこない。二・二六事件を調べていて辿り着いたのだが途中をすっ飛ばしたところ、「芥川龍之介の死」で引き込まれる。かつて小説が読まれる時代があった。メディア(媒体)がラジオ~テレビ~録画と発達すると共に小説は読まれなくなった。1970年代半ばから2016年までは雑高書低の時代が続いた。ネット時代ともなると人々の興味は際限なく拡散する。こうして共有の文化が形成されなくなるのだろう。

2019-02-20

ジョン・ガードナー、徳岡孝夫、ミヒャエル・ネールス


裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー:後藤安彦〈ごとう・やすひこ〉訳(創元推理文庫、1981年)/数十年ぶりに再読。訳文に少々乱れあり。ま、責めは出版社の校正が負うべきだろう。ドイツがフランスを陥落した後、フランス人女性がドイツ兵と性的関係(具体的な記述はない)を結ぶことを「この種の『協力』」と書いている(180ページ)。またドイツが非戦闘員を殺傷する場面あり。フィクションだから嘘と考えるのは短絡的だ。こうした記述を受け入れるヨーロッパの世相を理解すべきだろう。

「戦争屋」の見た平和日本』徳岡孝夫〈とくおか・たかお〉(文藝春秋、1991年)/著者は三島由紀夫が最後に連絡を取った記者の一人。毎日新聞、サンデー毎日の元記者。「『ビルマの竪琴』と朝日新聞の戦争観」(313ページ)。1985年7月に書かれたもの。米軍の原子力空母エンタープライズの佐世保入港に賛成した竹山道雄を朝日新聞が叩きまくった出来事の概要がわかる。投書も紹介している。嘘と捏造(ねつぞう)を繰り返し、言論弾圧をしてきたのが朝日新聞の歴史といってよい。

アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス:鳥取絹子〈とっとり・きぬこ〉訳(筑摩書房、2018年)/翻訳がよくスリリングな内容だ。記憶を司る海馬は死ぬまで成長し続けるという。アルツハイマー病が海馬を破壊する原因は文明にありとしている。「食べ物、運動、知的活動、社会との接触」における欠乏を補うことで初期アルツハイマーは改善できる。

2019-01-29

大久保利謙


明治政府 その政権を担った人々』大久保利謙〈おおくぼ・としあき〉編(新人物往来社、1971年)/編者は維新三傑の一人である大久保利通〈おおくぼ・としみち〉の孫。明治という時代が見渡せる好著だが、不思議なくらい政局や閥(ばつ)を重視している。日本人の史観には拭い難いまでの村意識があるのだろう。近代史を振り返って薩長という藩閥や昭和の軍閥が色濃く描かれるのも、日本人の閥好きによるものか。マルクス史観全盛期に刊行されたためか軍事的な視点を欠いている。日本近代化の最大の目的は国軍創設と税制改革(地租改正)および統一経済の確立であった。

2019-01-22

五百旗頭真


 ローズベルトとハルの確執。アメリカは権力闘争が政治向上の機能として働いている(『米国の日本占領政策 戦後日本の設計図(上)』67ページ)。当時の日本は政党政治が力を失い藩閥・軍閥がまかり通っていた。日本における集団は共同体と化す(『日本人と「日本病」について』岸田秀、山本七平)。そこに初めてメスを入れたのが小室直樹だ(『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』『日本「衆合」主義の魔力 危機はここまで拡がっている』)。

2018-12-21

松岡完


 1冊挫折。

ベトナム戦争 誤算と誤解の戦場』松岡完〈まつおか・ひろし〉(中公新書、2001年)/好著である。にもかかわらず読む速度が遅いのは体調が合わないためか。80ページほどで中止する。年を取るとこういうことがしばしばある。『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タースの後に読むのがいいだろう。ほぼ1年振りに読書日記を復活するほどの内容である。『ベトナム症候群 超大国を苛む「勝利」への強迫観念』(中公新書、2003年)と併せて必ず読む予定である。

2018-01-05

ジャック・ヒギンズ、他


 さて今年は真面目に書こうか。やはり記録を付けておかないと後々困る羽目になる。同じ本を取り寄せてしまうことが少なからずあるのだ。

 2冊挫折、1冊読了。

聖(さとし)の青春』大崎善生〈おおさき・よしお〉(講談社、2000年講談社文庫、2002年/角川文庫、2015年)/文章が飾りすぎていて読みにくい。

ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語』ヴィトルト・リプチンスキ:春日井晶子〈かすがい・あきこ〉訳(早川書房、2003年/ハヤカワ文庫、2010年)/ニューヨーク・タイムズ紙日曜版の記事を長くしたもの。無理に長くしているため文章に締まりがなくダラダラ感が否めない。

 1冊目『鷲は舞い降りた〔完全版〕』ジャック・ヒギンズ:菊池光〈きくち・みつ〉訳(早川書房、1976年ハヤカワ文庫、1981年完全版、1992年/完全版文庫、1997年)/4度目の読了。意外と読みにくかった。主旋律はリーアム・デヴリンとモリイ・プライアの恋の物語である。菊池光の訳は例の如く「てにをは」の乱れがあるがさほど気にならない。この年になって読んでみると昔は気づかなかった様々なことが見えてくる。ヒギンズはドイツ落下傘部隊を好意的に描いた。それでもヒトラーやヒムラーを否定的に扱っている。ひょっとするとクルト・シュタイナ中佐と部下たちの崇高な姿を通して「悪の凡庸さ」(ハンナ・アーレント)を浮かび上がらせようとしたのかもしれない。男の背に厳しく鞭を加える一冊だ。

2017-07-19

エリザ・R・シドモア、他


 13冊挫折、1冊読了。

弱者の戦略 (新潮選書)
稲垣 栄洋
新潮社
売り上げランキング: 9,117

 良書。ヨーロッパの紋章には動物が多いが日本の家紋は植物が多い。天皇陛下を中心とする文化は強さよりも継続性という繁栄を好んだのだろう。弱者はニッチ(隙間)で生き延びる。

ヒマラヤ登攀史 (岩波新書 青版)
深田 久弥
岩波書店
売り上げランキング: 257,227

 これまた良書。ヒマラヤとは古いサンスクリット語のヒマ(雪)+アラヤ(居所)の合成後で「雪の居所」を示す。アラヤでピンと来る人もいるだろうが阿頼耶識の「アラヤ」である。再読する予定。

ドラゴン・オプション (小学館文庫)
中原 清一郎
小学館 (2016-08-05)
売り上げランキング: 735,376

「その昼下がり、マカオのホテル『イージス』の1階にある大ホールでは、大陸・香港・台湾の合作になる映画『義侠の園』の制作発表が行われた」という冒頭の文章で挫けた。「その」は不要だろう。

なっとく!数学通になる本
中宮寺 薫
インデックス・コミュニケーションズ
売り上げランキング: 1,205,190

 図が多くそのどれもが目を引く。「2匹の雉と2日とが、いずれも『2』という同じ数であることに気づくまでには長い年月を要したに違いない」バートランド・ラッセル。

戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)
吉田 満
講談社
売り上げランキング: 82,464

 あとわずかというところで放り投げる。「そういえば……」と検索したのが運の尽き。Wikipediaに詳細があるが本書にはフィクションが多く紛れ込んでいる。何か騙されたような気になって嫌になっちまった。


 悪書である。「姿かたちや体質だけでなく、知能や感情、つまり『こころ』を生み出す脳の作り方も書き込まれていると考えることが自然だと、私は思います」(4ページ)。科学者とは思えぬ文章だ。


 視点が低い。

職人衆昔ばなし (文春学藝ライブラリー)
斎藤 隆介
文藝春秋
売り上げランキング: 359,922

 私が持っているのは文藝春秋版続篇もある。読むのが遅すぎた。職人ものの古典である。

〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義
マイケル・S. ガザニガ
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 19,033

 ガザニガが苦手である。

文庫 近衛文麿「黙」して死す (草思社文庫)
鳥居 民
草思社
売り上げランキング: 383,596

 鳥居民〈とりい・たみ〉も苦手である。工藤美代子著『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』を補うためには必要か。

脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議
ジュリア・ショウ
講談社
売り上げランキング: 13,907

 著者は偽の記憶を埋め込む実験で有名らしい。文章が冗長で読むに堪えず。

理性の暴力~日本社会の病理学 (魂の脱植民地化 5)
古賀 徹
青灯社
売り上げランキング: 685,338

「いじめ、集団自決、ハンセン病の強制収容、水俣、原発。 理性の限界事例に即して徹底思考する理性の自己批判」(帯の惹句)。「叢書 魂の脱植民地化 5」である。安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉にはもう愛想が尽きた。沖縄の反基地活動家を煽るようになった時点でアウト。叢書に安冨がどのように関わっているのかはわからぬが読む気が失せた。そもそも暴力や集団性については進化科学的に解き明かすのが筋で、哲学や社会学は文学の域を脱していないように思われる。私は人権を決して軽視するつもりはないが人権を語ることに意味を感じない。語れば語るほど人権のフィクション性が浮かび上がってしまうためだ。

官賊と幕臣たち―列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート
原田 伊織
毎日ワンズ
売り上げランキング: 49,005

 偶然リアルタイムですんすけ(@tyuusyo)氏のツイートを読んで放り投げた。ブログ記事「Q&A 原田伊織のサムライエッセー批判まとめ」(随時更新)を参照せよ。

シドモア日本紀行: 明治の人力車ツアー (講談社学術文庫)
エリザ・R・シドモア
講談社
売り上げランキング: 52,652

 エリザ・ルアマー・シドモア(1856-1928年)はアメリカで生まれスイスで没した。ワシントンD.C.のポトマック河畔に桜並木を作ることを提案した人物として知られる。日本を褒められて悪い気がする人はいないと思うが、白人特有の人種差別意識から自由な女性であったようだ。文章もよく、古き日本の姿が目に浮かんでくる。「日本の近代史を学ぶ」に追加。

2017-04-14

福井義高、他


 読書日記も随分と怠ってきたが少しずつ書いておこう。5冊挫折、1冊読了。

零戦撃墜王 空戦八年の記録』岩本徹三(光人社文庫、2004年)/文章はいいのだが興味が続かなかった。

原始仏典 第一巻 長部経典1』中村元監修、森祖道・浪花宣明編集、橋本哲夫・渡辺研二訳(春秋社、2003年)/『ジャータカ全集 1』が先であった。



真説 毛沢東(上) 誰も知らなかった実像』ユン・チアン、ジョン・ハリデイ:土屋京子訳(講談社+α文庫、2016年/講談社、2005年『マオ 誰も知らなかった毛沢東(上)』改題)/どうもユン・チアンの文章は乗れない。体調をととのえてから再挑戦する予定である。

 8冊目『日本人が知らない最先端の「世界史」』福井義高(祥伝社、2016年)/必読書入り。一次資料に当たっていて信頼性が高い内容である。コミンテルンの謀略についても明記されており目を瞠(みは)った。第一次世界大戦から第二次世界大戦における日本の近代史は霧に包まれていて、調べれば調べるほど混迷の度合いが深まる。要はコミンテルンの思想戦がどこまで及んでいたかがわからないのだ。相次ぐ恐慌が人々をして社会主義的価値観に走らせた。二・二六事件も天皇制社会主義という色彩が強かった。

2017-02-08

大村大次郎、東京裁判研究会、他


 3冊挫折、1冊読了。

共同研究 パル判決書(上)』東京裁判研究会編(講談社学術文庫、1984年/東京裁判刊行会、1966年『共同研究 パール判決書 太平洋戦争の考え方』改題・改訂)/上巻が880ページ(巻頭解説が215ページ)、下巻が805ページある。ウェルマンの『反対尋問』を軽々と凌駕する厚さだ。想像以上に読みやすい文章で、大東亜戦争全体の流れをつかむ上で欠かせないテキストといってよい。何にも増して戦前の日本を正しく見つめ、東京裁判において異を唱えた英知に対し、尽きせぬ恩愛を感じずにはいられなかった。数世紀にわたって虐げられ続けてきた有色人種にあって、日本は軍事力をもって白人を打ち破り(米国にだけ敗れた)、パール判事は知性で白人を凌駕した。時間的なゆとりがなく550ページで挫けたが、日を改めて必ず読破したい。

読む年表 日本の歴史』渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉(WAC BUNKO、2015年)/少し大きめの新書サイズで見開きで1項目。文章に締まりがあってよい。パラパラとめくっただけで終わった。

システマを極めるストライク!』ヴラディミア・ヴァシリエフ、スコット・メレディス:大谷桂子訳(BABジャパン、2016年)/悪くはないのだが写真が少なすぎる。著者のスコット・メレディスはカナダで実際にヴラディミア・ヴァシリエフからシステマを学んでいる人物。ヴァシリエフはミカエル・リャブコの一番弟子らしい。

 7冊目『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が「古代~現代史」にガサ入れ』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(KADOKAWA、2016年)/『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』の続篇でどちらもオススメ。実にわかりやすい。「日本の近代史を学ぶ」の筆頭に掲げた。日本という国家が数千年に渡って安定してきたのは税制が上手く機能していたから、との指摘に目から鱗が落ちる。逆に言えば酷税ではなかったということ。「あとがき」も心がこもっていて大村は人間として信頼できる。

2017-01-26

中川八洋、鳥居民、他


 3冊挫折。

近衛文麿の戦争責任 大東亜戦争のたった一つの真実』中川八洋〈なかがわ・やつひろ〉(PHP研究所、2010年/PHP研究所、1995年『近衛文麿とルーズヴェルト 大東亜戦争の真実』より近衛に関する部分のみ再録。尚、同書には弓立社、2000年『大東亜戦争と「開戦責任」 近衛文麿と山本五十六』との改題版がある)/文章が危うい。肝心な箇所に推測・断定が混入している。近衛を左翼と断じているがすっきりしない。尚、佐々弘雄〈さっさ・ひろお/佐々淳行の実父〉をも共産主義者とするのは誤りである。ハリー・デクスター・ホワイトに関する記述が目を引いた。

近衛文麿「黙」して死す すりかえられた戦争責任』鳥居民〈とりい・たみ〉(草思社、2007年/草思社文庫、2014年)/こちらは近衛擁護派。鳥居は悪文だと思う。細部を想像力で補うことに異論はないが、文章の腰が定まらず何を言いたいのかがわからなくなる。「あろう」「かもしれない」の羅列がずっと続く。

罪人を召し出せ』ヒラリー・マンテル:宇佐川晶子訳(早川書房、2013年)/『ウルフ・ホール』が第一部で本書が第二部となる。2ページ読んでやめた。「彼の」「彼女の」が立て続けに出てきて読むリズムが失われる。ブッカー賞受賞作品だけにもったいないと思う。

2017-01-25

田中嫺玉


 1冊挫折。

インドの光 聖ラーマクリシュナの生涯』田中嫺玉〈たなか・かんぎょく〉(ブイツーソリューション、2009年)/田中は私と同じ旭川生まれである。結婚後、40代半ばでベンガル語『不滅の言葉』の翻訳を始めた。私からすればラーマクリシュナは密教の権化のように見えて仕方がない。田中の心酔を嫌った。あまりにも右脳が勝ちすぎると統合失調症的要素が強くなる。

2017-01-24

ユヴァル・ノア・ハラリ、高田かや、他


 3冊挫折、1冊読了。

フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』きたみりゅうじ(日本実業出版社、2005年)/内容が薄い。初心者向け。

夜明け前の朝日 マスコミの堕落とジャーナリズム精神の現在』藤原肇(鹿砦社、2001年)/朝日新聞にエールを送る内容。藤原は左翼ではないが共和主義者で天皇制には反対というスタンスの人物である。将来の見通しに失敗した感がある。

カルト村で生まれました。』高田かや(文藝春秋、2016年)/ヤマギシ会のコミューンで育った女性が来し方を振り返る漫画作品。親と離れて集団生活をするのだが、ビンタや食事抜きなど日常的な暴力が蔓延している。「なぜ仕返しに行かないのか?」が最大の疑問である。私なら金属バット片手に全員を血祭りにするところだ。一人でコミューンを破壊する自信もある。絵はほのぼのとしているのだが、異様な気圧を感じて放り投げた。どんよりとした天気が続いた後のような精神状態になる。子供を虐待するところがエホバの証人とよく似ている。正義に取り憑かれた連中は躊躇うことなく暴力を行使する。

 6冊目『サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ:柴田裕之〈しばた・やすし〉訳(河出書房新社、2016年)/あと10回くらい読むつもりだ。最後の結論の訳文に違和感を覚えた。ま、小さなことだが。

2017-01-22

ユヴァル・ノア・ハラリ


 5冊目『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ:柴田裕之〈しばた・やすし〉訳(河出書房新社、2016年)/下巻と合わせると500ページ強のボリュームで、内容を鑑みれば4000円は破格である。Kindle版だと1割引の価格だ。ユヴァル・ノア・ハラリは1976年生まれのイスラエル人歴史学者。天才といって差し支えない。マクロ歴史学という超高度の視点からホモ・サピエンス(賢いヒト)の歩みを辿る。7~5万年前にヒトは言葉と思考を獲得した。ユヴァル・ノア・ハラリはこれを認知革命と名づける(通常、認知革命とは認知科学の誕生〈ダートマス会議、1956年〉を意味する)。想像力を駆使して言葉というフィクションを共有することで人類は150人を超えるコミュニティを形成できるようになった。自動車メーカーのプジョーに具体的な存在はないが法人として人格を与えられている。法的擬制を通して著者はフィクションを暴く。続いて農業革命が起こる。これまた目から鱗が落ちる。一般的には農業革命によって富が創出されたと考えられているが、実際は貧困と死に覆われていた。そして大きなコミュニティと天候との戦いから宗教が生まれる。ここから貨幣の登場~帝国の誕生~産業革命という流れが下巻半ばにかけて描かれる。まあ度肝を抜かれるよ。金融・経済に関する記述も正確で、私が見つけ得た瑕疵(かし)は日本の近代化くらいなものだ(ヨーロッパのシステムを導入したと書かれているが、寺子屋という日本の教育システムに負うところが大きい)。何にも増してナチスに対する暗い感情が見受けられないところを個人的には最大に評価したい。特定の信条や思想が複雑な憎悪を生みだす。ユヴァル・ノア・ハラリは学問の力で軽々と感情を乗り越える。私が20代であれば本書を書き写したことだろう。まさしく驚天動地の一書である。併読書籍としては「物語の本質」「世界史の教科書」を参照せよ。必読書入り。柴田の名前の読みが「やすし」であることに初めて気づいた。翻訳はこなれているが校正が甘く、ルビの少なさにも不満が残る。河出書房新社の手抜きといっていいだろう。

2017-01-14

パスカル・ボイヤー


 1冊読了。

 4冊目『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー:鈴木光太郎〈すずき・こうたろう〉、中村潔訳(NTT出版、2008年)/「叢書コムニス 06」。amazonの古書だと13510円の高値が付いている。定価は3800円。原書は2001年刊行。「訳者あとがき」によればボイヤーは1990年と94年に本書と同じテーマで2冊著しているそうだ。宗教を「進化」という枠組みで捉えた嚆矢(こうし)はジュリアン・ジェインズ(1976年)であるが、それに続いた人物と見てよい。因みに『ユーザーイリュージョン』が1991年、リチャード・ドーキンスとダニエル・C・デネットが1996年である。いっぺん刊行順に読む必要がある。ニコラス・ウェイドは多分本書やデネットに対抗したのだろう。再読であるにもかかわらず難しかった。アプローチが慎重過ぎて何を言っているのかよく理解できないのだ。しかも430ページ上下二段のボリュームでありながら外堀を埋めるのに250ページを要している。それ以降本格的に宗教を論じるのかと思えば決してそうではない。認知機能の説明に傾いている。その意味から申せば認知心理学入門としては素晴らしいのだが宗教解説としては物足りない。ボイヤーは複合的・複層的な推論システムということを再三にわたって述べるが、信仰を推論システムに置き換えただけで終わってしまっているような印象を受けた。ボイヤーとニコラス・ウェイドの違いは心理的機能と社会的機能のどちらを重視するかという違いに過ぎない。最大の問題は「錯覚」を取り上げていないことである。更にデータらしいデータが皆無であることも本書の根拠を薄いものにしている。神はまだ死んでいないし、宗教もまた死んでいないのだ。その事実をやや軽視しているように感じた。既に書評済み。翻訳のてにをはに、やや乱れがある。

2017-01-10

ニコラス・ウェイド


 1冊読了。

 3冊目『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド:依田卓巳〈よだ・たくみ〉訳(NTT出版、2011年)/再読。既に書評済みである。二度目の方が勉強になった。やはりある程度の知識を必要とするのだろう。キリスト教とイスラム教に関する記述がやや冗長で仏教への言及が少ない。宗教は人々を結びつけ、社会に道徳的活力を与え、団結の源となった――と肯定的な視点に貫かれている。著者は科学ジャーナリスト。宗教が果たす機能に重きが置かれている。「進化論からみた」とあるが進化生物学ではなく社会学視点が強い。ここのところ再読している書籍については毎年読み返すつもりである。いくらケチをつけたところで100点満点の作品。

2017-01-09

三田村武夫


 1冊読了。

 2冊目『戦争と共産主義』三田村武夫:岩崎良二編(民主制度普及会、1950年、発禁処分/『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』自由社、1987年、改訂版・改題/呉PASS出版、2016年/Kindle版、竹中公二郎編)/私が読んだのは自由社版である。本文200ページ、資料100ページの構成。度肝を抜かれてしまったため資料は読んでいない。読み終えてびっくりしたのだが150ページ以上に付箋を付けていた。三田村武夫は戦前の内務省官僚でその後衆議院議員となった人物。大東亜戦争の生き証人といってよい。首相の近衛文麿を諌めたエピソードなどが生々しく描かれている。極めて実務的な文章で感情の澱(よど)みが少ない。政治家としての自らの責任についても端的に述べている。内務省で共産党を研究してきた三田村の結論は共産主義者が大東亜戦争のグランドデザインを描き、敗戦に導いたというものである。二・二六事件の背景についても詳しく書かれており、日本の社会が時流によってうねる様相が俯瞰できる。大きな閃きを得た。「必読書」入り。