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2011-12-16

カストロ氏、暗殺企てられた回数世界一 ギネスが認定


「暗殺を命じた国」としてアメリカもギネス認定すべきだろう。

 暗殺されそうになった回数が世界一として、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が、ギネスブックに掲載されることになった。複数の同国メディアが伝えた。キューバ政府によると、米中央情報局(CIA)の文書に基づく記録で、暗殺の企ては2006年までに638回に上るという。

 暗殺方法は、狙撃、葉巻への毒の注入、野球のボールに仕込まれた爆薬など様々だが、いずれも政府が事前に情報をキャッチし、失敗に終わった。

 キューバの情報機関のトップを長年務めたファビアン・エスカランテ氏は昨年、前議長に対する暗殺の試みについての本を出版。最も深刻だったのは、61年にニューヨーク市内で企てられた爆弾計画だったと回想する。ミルクセーキに毒入りカプセルを入れられたこともあったが、幸運にものみ込まなかった。「フィデルは、待ち伏せを直感する能力がある」と話している。

asahi.com 2011-12-16

Fidel Castro

フィデル・カストロ――みずから語る革命家人生(上)フィデル・カストロ――みずから語る革命家人生(下)冒険者カストロ (集英社文庫)カリブ海のドン・キホーテ フィデル・カストロ伝

カストロ暗殺未遂の大半はCIAによるもの
若きカストロの熱弁

2010-05-08

経済侵略の尖兵/『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス


『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー

 ・経済侵略の尖兵
 ・「世界各国の指導者たちを、アメリカの商業的利益を促進する巨大なネットワークにとりこむこと」がエコノミック・ヒットマンの目的

Zeitgeist/ツァイトガイスト(時代精神)
CIA:戦争とフェイクニュース(1986年)
『動物保護運動の虚像 その源流と真の狙い』梅崎義人
『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン
『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹

必読書リスト その二

 戦争の形は軍事に限らない。経済的に、学術的に、文化的に、心理的に行われているのだ。戦争の本質は「システマティックな侵略」にある。

 エコノミック・ヒットマンという職業があるそうだ。ヒットマンとはご存じのように「狙撃手=殺し屋」を意味する言葉だ。つまり他国の経済を狙い撃ちすることを目的としている。ジョン・パーキンスはエコノミック・ヒットマンであった。彼は悔恨の中から本書を執筆し、自らの体験を赤裸々に綴っている。

 エコノミック・ヒットマン(EHM)とは、世界中の国々を騙して莫大な金をかすめとる、きわめて高収入の職業だ。彼らは世界銀行や米国国際開発庁(USAID)など国際「援助」組織の資金を、巨大企業の金庫や、天然資源の利権を牛耳っている富裕な一族の懐(ふところ)へと注ぎこむ。その道具に使われるのは、不正な財務収支報告書や、選挙の裏工作、賄賂、脅し、女、そして殺人だ。彼らは帝国の成立とともに古代から暗躍していたが、グローバル化が進む現代では、その存在は質量ともに驚くべき次元に達している。
 かつて私は、そうしたEHMのひとりだった。

 1982年、私は当時執筆していた『エコノミック・ヒットマンの良心』(Conscience of an Economic Hit Man)と題した本の冒頭に書いた。その本は、エクアドルの大統領だったハイメ・ロルドスと、パナマの指導者だったオマール・トリホスに捧げるつもりだった。コンサルティング会社のエコノミストだった私は、顧客である二人を尊敬していたし、同じ精神を持つ人間だと感じてもいた。二人は1981年にあいついで飛行機の墜落で死亡した。彼らの死は事故ではない。世界帝国建設を目標とする大企業や、政府、金融機関上層部と手を組むことを拒んだがために暗殺されたのだ。私たちEHMがロルドスやトリホスのとりこみに失敗したために、つねに背後に控えている別種のヒットマン、つまりCIA御用達のジャッカルたちが介入したのだ。

【『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス:古草秀子〈ふるくさ・ひでこ〉訳(東洋経済新報社、2007年/『エコノミック・ヒットマンの世界侵略 米中の覇権が交錯するグローバル経済のダークサイド』権田敦司〈ごんだ・あつし〉訳、二見書房、2023年)】

 白羽の矢が立てられる国は石油などの天然資源が豊富な発展途上国である。ここにIMFや世界銀行などから資金が流れる仕組みをつくった上で、開発援助という名目のもとにアメリカ企業が参入する手筈を整える。実際のマネーはアメリカ国内の金融機関同士で完結する。種を明かしてしまえば、懐(ふところ)から鳩を出すよりも簡単な話だ。

 西水美恵子の著作を読んだ人は必ず本書を読むべきだ。

世界銀行の副総裁を務めた日本人女性/『国をつくるという仕事』西水美恵子

 彼女が何も知らなかったのか、あるいは知っていながら広告塔を買って出たのかそれはわからない。だが本書を読めば、西水が描いたのは世界銀行のわずかに残された美しい部分であることがわかる。大体、「世界」だとか「国際」と名のつく団体は、おしなべて先進国の論理で運営されているものだ。

 私はジョン・パーキンスが嫌いだ。この人物は吉川三国志の劉備(りゅうび)と同じ匂いがする。弱さを肯定する延長線上に善良さを置いている節がある。「告白すれば罪が赦(ゆる)される」というキリスト教的な欺瞞を感じてならない。だから文章もそこそこ巧みで読ませる内容にはなっているものの、底の浅さが目につく。煩悶(はんもん)、懊悩(おうのう)、格闘が足りないのだろう。私を魅了するだけの人間的な輝きが全く感じられなかった。

 大体最初に告白本を出版しようとした際に、様々な圧力を掛けられたにもかかわらず、その後はテレビにまで出演しているのもおかしな話だ。彼の話が正真正銘の事実であるなら、とっくに消されているのではあるまいか。「よもや、エコノミック・ヒットマンとして新しいステージの仕事をしているんじゃないだろうな」と疑いたくもなる。

 暴力は様々な形で存在する。世界中の貧困が放置されているのも暴力の一つの形に他ならない。多様な暴力の形態を知るために広く読まれるべき一冊である。読み物としては文句なしに面白い。

 尚、既に紹介したが、ジョン・パーキンスは『Zeitgeist Addendum/ツァイトガイスト・アデンダム』にも登場している。

 

ヒロシマとナガサキの報復を恐れるアメリカ/『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎
モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『ザ・コーポレーション(The Corporation)日本語字幕』
なくならない飢餓/『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会
アメリカ礼賛のプロパガンダ本/『犬の力』ドン・ウィンズロウ
誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか?/『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム

2021-10-31

農業の産業化ができない日本/『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹、藤原肇


小室直樹
藤原肇

 ・農業の産業化ができない日本

『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原丈人

藤原●アメリカのCIAは、インテリジェンスをうたっているけど、内閣調査室を「日本のCIA」と呼ぶ場合には、あれは日本のセントラル・インフォメーション・エージェンシーの略だと思えばいい。どうせインテリジェンスのやれる人材なんかがいるわけないですから。

小室●インテリジェンスというのは数学的な発想が基礎になっています。ところがそれが日本人にはない。私は、かつて、役人相手に数学の基礎理論を手ほどきしたことがあるけど、その実情に驚いたことがある。

藤原●それは生態環境としての生活圏の問題が多いに関係しているせいです。それもインテリジェンスのレベルまで行かずに、インフォメーションのレベルで決定的な役割を演じています。くわしいことは『情報戦争』や『日本が斬られる』という本で論じたが、情報に対しての理解の仕方と構えで見ると、農耕民族と遊牧民は本質的に異なっているんです。農耕民の情報は蓄積し発酵して知恵にしている。それに対して、遊牧民の情報はオンタイムでとらえ、的確に選択し行動に移すことで、そのグループの生存に結びつける。そうなると、リーダーシップが関係してきて、遊牧民はリーダー中心の社会で、いうならば、男の世界です。

小室●たしかに、農耕社会は大地と結びついているから女性的です。日本も天照大神が一番偉いし、かつ女性上位だし……。

藤原●トップの性別はあまり関係なくて、たとえ男であっても女性型支配をするのです。それが長老であり、農耕民族は蓄積だから長老が一番偉い。情報も新しさよりも知恵と結びついた古さのほうが重要視される。その辺にリーダー型の西欧や中東と、長老型のアジアの違いがあります。

小室●一般にヨーロッパ的、アジア的と区分する人が多いが、中国やインドのほうが日本よりはるかにヨーロッパに近い。実は、世界中で日本だけが例外中の例外です。たとえば、牧畜を例にとってみても、牧畜をまったくやらないのは日本ぐらいで、中国もインドも農業と牧畜の二本建(ママ)てです。それに日本の驚くべき特徴として指摘していいのは、どんなに見かけ上近代化したように観察されても、日本では農業が絶対に産業化されない点です。こういうことはアジアでもめずらしい。

藤原●日本語では術語が十分にないので、議論がむずかしいから英語を借りて話すと、日本にはファーミングもアグリカルチャーもなくて、あるのはガーデニングだけです。ガーデニングは技術集約化がむずかしいから産業化するところまでは行かない。

小室●日本軍がフィリピン作戦をしたときに、フィリピンは農業しかないから、農村地帯では食糧が自給できるはずだと思い込んでいたら、それはとんでもないことだった。タバコ地帯ではタバコだけしかないし、麻を作るところには麻しかなかった。いわゆるモノカルチャーです。農村地帯は食糧があるはずだと期待したいのに、食糧はない。だがタバコや麻を食べるわけにいかないので、作戦は大混乱してしまったそうです。

藤原●ベトナムだってブラジルだって同じです。農業が労働力集約型から技術集約型への進化の系列の中で動いているので、産業が可能になる。それを植民地主義がプランテーション化を通じてやったわけです。

小室●フィリピンは遅れている、と日本人は頭から決めつけてかかる癖があるが、農業でみる限りでは、産業の組織化という点で、返っらのほうがはるかに進んでいる。日本の農業なんて何でも作るし、それも主な目的は家族が食べるところにある。

藤原●インダストリアライズして剰余価値を生み出すところまで行っていない。

小室●農業に見る限り、日本は世界で最も遅れた状態を維持している。しかも、この農業地帯を地盤にした政党が農本的な政治をやってきたのだし、これからも続けようとしているので救いがありません。

藤原●そこに日本の政治が近代以前のパターンでしか機能しない理由もあるし、日本人が情報一般に関して非常にニブイ原因もあると思います。その当然の帰結として、インテリジェンスの問題がいかに重要であるかについて誰も気がつかないし、また、それを論じようともしないのです。(中略)

藤原●とてもじゃないが、日本の農業社会を見る限りでは、近代資本制などの水準には達していないといえます。

小室●とてもキャピタリズムじゃない。

藤原●じゃあ、前に話したように原始(グラスルーツ)共産制ですね。

小室●農業だけでなく企業や産業界までが同じであり、労働力は労働と分化しないまま、労働者は会社という一種の共同体の所属物になってしまっている。古典的な資本主義では労働市場が存在して、そこでは完全な自由競争が行なわれるのに、日本ではそれさえなくて、賃金でさえ、生きる上で必要な給与を分配してもらう形をとっている。

藤原●原始共産制における分け前だから、交通費や厚生費の現物支給があったり、年功序列の手当てが給料の形をとるのです。

小室●それに〈生産者と生産手段が分離する〉という、資本主義にとって最も基本的なこの性格が欠けている日本の経済システムは、中世的な共同体のままといえます。

藤原●中世じゃなくて古代以前だと思いますね。政治を見ればわかるけれど、どう考えても呪術的ですよ。だから、情報以前なのは当たり前かもしれない。

【『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹〈こむろ・なおき〉、藤原肇〈ふじわら・はじめ〉(ダイヤモンド社、1982年)】

大東亜戦争はアメリカのオペレーションズ・リサーチに敗れた/『藤原肇対談集 賢く生きる』藤原肇

「オペレーションズ・リサーチ」が本書に書かれていたと思い込んでいて、三度も画像を確認する羽目となってしまった。これ、と思った情報はメモ書き程度で構わないから残しておく必要がある。はてなブログを使うか。

「インテリジェンス」という言葉は佐藤優〈さとう・まさる〉が嚆矢(こうし)と思いきや、本書の方がずっと早かった。藤原、小室、そして倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉あたりを嚆矢とすべきか。

 農業の産業化ができない日本という指摘は納得できる。近頃、農業本を数冊読んできたのだが「工夫次第では儲かる」というレベルで、大規模化を農地法が妨げている現状だ。安倍政権が何とか改革したが、まだまだ道半ばである。

 日本の政治は食料安全保障の意識が欠如している。食とエネルギーこそ国家の生命線である。自民党にとって農家は票に過ぎない。農業のグランドデザインを描く政治家を私は見たことがない。日本の食料自給率はカロリーベースで37%まで低下した(令和2年/日本の食料自給率:農林水産省)。国防もさることながら食料においても有事を想定していないことがわかる。

 小室と藤原は合理性をそのまま人間にしたような人物である。ただし、今読むとどこか新自由主義の臭いがして、すっきりと頷けないところがある。

2011-12-17

カストロ暗殺未遂の大半はCIAによるもの


カストロ氏、暗殺企てられた回数世界一 ギネスが認定

2014-04-18

呼吸法(ブリージング)/『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英


『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成

 ・恐怖心をコントロールする
 ・呼吸法(ブリージング)
 ・呼吸をコントロールする

武の思想と知恵 平直行✕北川貴英
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖
『BREATH 呼吸の科学』ジェームズ・ネスター
『釈尊の呼吸法 大安般守意経に学ぶ』村木弘昌

悟りとは


 1.楽な姿勢で座ります。
 2.肩の力を抜いて手の平(ママ)を上向きにして膝に載せ、息が手のひらに伝えるように意識しつつ、普段より強く長めに呼吸をします。
 3.これを繰り返すと、手のひらがぽかぽかして来たり、呼吸による圧力が伝わってくるのがわかるでしょう。
 4.5分ほどかけて続けて終了です。首に力が入っていると、のぼせたり、立ちくらみになったりすることがあります。そういう時はすぐに休み、気分が落ち着いてから首や肩を回したりして、凝りをほぐすようにしましょう。

【『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英(マガジンハウス、2011年)以下同】

 基本的なことだが呼吸とは鼻から吸って口から吐くことをいう。北川は「口をすぼめる」と書いているが、あまり気にすることもあるまい。大口を開ける必要はない。色々な呼吸法が示されているが、一番手っ取り早く効果を感じられるのがこれだ。寒い時にやってみるといい。意識を手のひらに向けることが大事だ。続けて足の裏も同様に行う。

 仏教の瞑想のひとつに数息観(すそくかん)というのがある。これは鼻から吐いても構わない。ただひたすら息を勘定するのだ。焦った場合にやるとわかるが中々効果がある。確か米軍かCIAでも教えているはずだ。

数息法(気功の呼吸法)
数息観について

 病気や怪我などで痛みを感じる場合にも効果があると思われる。

 1.吐きながら1歩歩きます。
 2.止めながら1歩歩きます。
 3.吸いながら1歩歩きます。
 4.止めながら1歩歩きます。
 5.これを1~3分続けたら、同じことを2歩のペースでやります。つまり2歩吐き、2歩止め、2歩吸い、2歩止めるサイクルを繰り返すのです。
 6.1~3分ほど続けたら、3歩、4歩~10歩と徐々に歩数のサイクルを増やし、10歩まで行ったら9歩、8歩と徐々に歩数を戻します。
 7.1歩まで戻ったらおしまいです。

 歩数が増えるほど息を止めるのが苦痛になってきます。吸い過ぎでも吐き過ぎでもない、一番楽に息を止めていられる空気の量を見出しましょう。するとこれまでよりも厳密に自分の呼吸と姿勢をチェックすることができるはずです。息を止めることで緊張が生まれたら、その部位を軽く動かしたりして緊張を分散させるようにしましょう。息を止めるという負荷の中で快適さを保ち、かつ冷静に回復するのがこのエクササイズのポイントです。

 私はこれを実践して瞑想のコツをつかんだ。階段の昇り降りで行ったところ走る姿勢まで変わった。「生きる」とは「息する」ことの謂(いい)である。呼吸を見つめることは生を実感する行為でもある。

 我々は日常生活で身体を意識することが殆どない。意識に上るのは違和感や痛みであって身体そのものではない。明らかに身体を見失っているといってよい。呼吸を意識することは身体を調(ととの)える第一歩なのだ。



歩く瞑想/『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール

2020-07-06

日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好への告発状 その正体は、北京政府の忠実な代理人(エージェント)/『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一


・『書斎のポ・ト・フ』開高健、谷沢永一、向井敏
・『紙つぶて(全) 谷沢永一書評コラム』谷沢永一
『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一

 ・進歩的文化人の正体は売国奴
 ・日本罪悪論の海外宣伝マン・鶴見俊輔への告発状 「ソ連はすべて善、日本はすべて悪」の扇動者(デマゴーグ)
 ・日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好(たけうち・よしみ)への告発状 その正体は、北京政府の忠実な代理人(エージェント)

『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

 ところで、近代シナ文学の研究者に竹内好(よしみ)という魁偉(かいい)な人物がいました。この人はシナ学を志したくせに、肝心なシナの古典については無学であり、無関心でしたが、それはともかくとして、自分の専攻である近代シナ文学に執着するあまり、近代シナが格別に秀でた国であると信じるようになりました。これまた一向に珍しくもない、ありふれた自然な経過です。
 ところが竹内好の場合は、近代現代のシナを崇敬し高く持ちあげるにとどまらないで、現代シナを尊重し称賛する思い入れを梃(てこ)に用いて、ひたすら、わが国を罵倒する放言に熱意を燃やしました。なにがなんでも、常に悉(ことごと)くシナは正しく清らかであり、そのご立派な尊敬すべきシナに較べて、なにがなんでも、すべて、必ず日本は劣っており間違っている、という結論が一律に導きだされました。
 その生涯を通じて竹内好は、日本に対して肯定的な評価を下したことがなく、彼にとって日本はあらゆる面において否定と非難の対象にしかすぎませんでした。反日的日本人という言葉ができるより遙(はる)か遙か昔、半世紀以上も前から、竹内好は筋金入りの反日的日本人でありました。

【『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉(クレスト社、1996年/改題『反日的日本人の思想 国民を誤導した12人への告発状』PHP文庫、1999年/改題『自虐史観もうやめたい! 反日的日本人への告発状』ワック、2005年)】

 私はつくづくこの12人の著作を読んでこなかったことを感謝した。加藤周一の「夕陽妄語」(せきようもうご/朝日新聞連載)に目を通した程度である。とにかく掴みどころのない文章で後に谷沢と向井敏が腐していたのを読んで溜飲を下げた憶えがある。丸山眞男の『現代政治の思想と行動』を読まねばと思ったのは30代になった頃だ。マルティン・ニーメラー牧師の言葉が引用された「現代における人間と政治」は避けて通れないと感じた。が、ついぞ読む機会がなかった。丸山については進歩的文化人の代表であることは動かないが、小室直樹が師事しており政治学者としては優れた見識の持ち主なのだろう。最後は学生運動に愛想を尽かした

 他人の悪口を読むのは後味の悪いものである。感情を一旦突き放して見つめる冷静さを欠くと醜悪な文章になりやすい。「この人はシナ学を志したくせに」は書き過ぎだ。抑制が利いていない。それでも本書が教科書本であるのは確かで、彼らの正体を知らずに著書と親しんでいる人も多いことと思われる。

 竹内好の本は何冊か持っていた。あまり記憶にないので多分売れたのだろう。悪い印象は持っていなかったので本書を読んで吃驚仰天(びっくりぎょうてん)した。中国人は客をもてなすのが巧い。たとえそれがカネや女であったとしても、誰に何を与えればどう動くかをきちんと読んでいる。毛沢東や周恩来が生き抜いてきた政争は日本の比ではない。周恩来の養女・孫維世〈そん・いせい〉は留置所で惨殺されている。

 文化大革命時代には、女優としての名声の高さと毛沢東との男女関係から江青の嫉妬を買い、迫害を受けた。孫維世は養父である周恩来が署名した逮捕状を以って、北京公安局の留置場に送られ、1968年10月14日に獄中で死亡した。遺体は一対の手枷と足枷のみ身に付けた全裸の状態であった。一説には江青が刑事犯たちに孫維世の衣服を剥ぎ取らせて輪姦させ、輪姦に参加した受刑者は減刑を受けたと言う。また、遺体の頭頂部には一本の長い釘が打ち込まれていたのが見つかった。これらの状況から検死を要求した周恩来に対し、「遺体はとうに焼却された」という回答のみがなされた。

Wikipedia

 周恩来には表の顔と裏の顔があったが、そうでもしなければとっくに失脚していたことだろう。

 アメリカと中国は、表面的には対立していても裏の情報世界ではもともとツーカーなんです。そもそもCIAの前身OSS時代には、長官ドノバンの命令でOSS要員が延安の共産党根拠地に出向いて、対日抗戦を支援していた。60年代の中ソ対立時代も米中はあらゆる場面で結託してソ連に対抗していたし、79年のソ連アフガニスタン侵攻で、ムジャヒディンを支援しタリバン政権を後押ししたのも、米中の情報機関です。スパイマスター周恩来によって育まれた中国共産党の情報機関、中央委員会調査部は胡耀邦総書記の時代、公安部の一部と合併、国家安全部として、現在では、かつてのソ連のKGBをしのぐ巨大組織になっています。

【『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘(徳間書店、2006年)】

 中国の手に掛かれば政治家はもとより作家・ジャーナリスト・学者などはイチコロだろう。子供に飴を与えるようなものだ。中国へ渡ると親中派になって帰国する人が多いのも当然だ。細君を伴わない政治家は確実に女を充てがわれていると見てよい。

 左翼は国家の伝統を破壊し漂白した後に社会主義の樹立を目論む。人権・平等・ジェンダーといった綺麗事に騙されてはならない。彼らは単なる破壊者なのだ。

2015-03-26

「何が戦だ」/『神無き月十番目の夜』飯嶋和一


『汝ふたたび故郷へ帰れず』飯嶋和一
『雷電本紀』飯嶋和一

 ・「サンリン」という聖なる場所
 ・「何が戦だ」

『始祖鳥記』飯嶋和一
『黄金旅風』飯嶋和一
『出星前夜』飯嶋和一
『狗賓童子(ぐひんどうじ)の島』飯嶋和一

 そのコウが、立ちすくんだまま藤九郎を見ていた。表情を強張らせてはいたが、コウもまたそんな場所で藤九郎に会おうとは思ってもみなかったらしく、ただ戸惑っているのがわかった。
「おれがお前の犬を何匹殺(あや)めたか知っているか」
 藤九郎がいきなりそんなことを言った。
「……いいえ」
 常日頃から心の内で思い続けていたことを、当の藤九郎の口からいきなり聞かされ、思わずそう答えた。
「十と四匹だ。お前が子犬の時から育てた犬を、十四匹もこの手で殺(あや)めた……。
 彦七覚えてるか、宿(やど)の」
「この間の戦で亡くなられたとか……」
「矢を二本、鉄砲弾(だま)を二発もくらわされて……。六さんも喜八っつあんも、亡骸(なきがら)どころか、形見の品さえ何一つ持ち帰れなんだ。
 それに、お前の犬たち……。ここに葬られている犬たちは、何のために死んだんだ? 馬射(うまゆみ)の犬追い物など、単なる遊戯。無益な殺生以外の何でもない。
 何が戦だ。佐竹の御大将も、月居の騎馬頭(がしら)も、誰も信じられん。そもそも城にこもって戦うのは、敵を引きつけておいて、後詰(ごづめ)の援軍がその背後から襲うのを待つためだ。ところが後詰など初めから来やしなかった。彦七や六郎太や喜八は、何のために死んだんだ。あんな須賀川くんだりまで出かけて……。騎馬頭も須賀川城があんな内情だと知っていてもよさそうなものだ。いや、知っていたのかもしれん。城を守らねばならないはずの、二階堂の重臣たちが伊達と内通していた。難儀したのは須賀川城下の民ばかりだ。しまいには、城にたてこもっていた守谷何とかという二階堂の老臣が須賀川の町家に火を放った。
 あんな城など守るに値しなかった。初めから落とされるに決まっていたようなものだ。それを何も知らず、百八十もの月居軍騎馬、足軽が、須賀川までわざわざ出向き、むざむざ討(う)たれた。……何が戦だ。あんなことは畜生もやらん」
 家の中でさえ、とても口にできないことを、なぜかコウには平気で話すことができた。

【『神無き月十番目の夜』飯嶋和一〈いいじま・かずいち〉(河出書房新社、1997年/小学館文庫、2005年)】

 文章の香りが失われるため数字を漢字表記にした。無為な戦がやがて小生瀬(こなませ)の農民一揆につながる。経済の本質はいつの時代も変わらない。戦争をするためには、まず戦費が必要となる。そのために増税が行われ、民の利益が収奪される。

 藤九郎とコウは幼馴染みであった。身分の違いから10歳を越えたあたりから疎遠になっていた。コウは自分が育てた犬を殺す武士に憎悪を抱いていた。だが藤九郎の話に耳を傾け、武士もまた不憫(ふびん)な存在であることを初めて知った。

 実は先日再読した『ランボー/怒りの脱出』に登場するベトナム人ヒロインの名前も「コー」であった。不思議な感慨がひたひたと押し寄せる。

 私はかつて平和主義者であったが、プーラン・デヴィの『女盗賊プーラン』を読んで自分の甘さを思い知らされた。暴力が避けられない時代にあっては自己防衛が必要となる。それ以降、私は武力を部分的に容認したスーザン・ソンタグよりも右側に足位置を定めた。

 環境文明史的に捉えると寒冷期に人類は戦争を行う。作物が取れやすい温暖な地へと人々が移動するためだろう。いずれにせよ自然環境であれ国際環境であれ一定のプレッシャーがのしかかった時に人類の暴力衝動は現実化する。政治家が賢明であれば勝てる戦争しかしないはずだ。現代社会においては経済もまた戦争の様相を帯びている。

 クリントン大統領が「冷戦は終わった。真の勝者はドイツと日本だ」と語った。そして存在価値が低下したCIAは日本をターゲットに経済戦争を仕掛けた。これがバブル崩壊のシナリオだった。自公政権は国富をアメリカに奪われ続けた。その期間は20年以上にも及んだ。民主党政権もこの状況をひっくり返すことができなかった。

 愚かな指導者は国民から財はおろか命まで奪う。消費税増税もその一環である。奪われることに鈍感な国民は必ず政治家の選択を誤る。藤九郎が吐き捨てるように語った「何が戦だ」の言葉の重みを思う。

 

2016-09-07

マッカーサーが恐れた一書/『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ


 ・マッカーサーが恐れた一書

『パール判事の日本無罪論』田中正明

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むことはできない。
   ――ダグラス・マッカーサー(ラベル・トンプソン宛、1949年8月6日付書簡)

【『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ:伊藤延司〈いとう・のぶし〉訳(角川ソフィア文庫、2015年/角川文芸出版、2005年『アメリカの鏡・日本 新版』/アイネックス、1995年『アメリカの鏡・日本』)以下同】

 新書で抄訳版も出ているが、「第一章 爆撃機からアメリカの政策」と「第四章 伝統的侵略性」が割愛されており、頗(すこぶ)る評判が悪い。完全版が文庫化されたので新書に手を伸ばす必要はない。むしろ角川出版社は新書を廃刊すべきである。

 マッカーサーが恐れた一書といってよい。ミアーズは東洋史の研究者で、戦後はGHQの諮問機関である労働政策委員会の一員として二度目の来日をした。原書は1948年(昭和23年)に刊行。戦前のアメリカ政府による主張とあまりに異なる内容のためミアーズの研究者人生は閉ざされた。

 私は打ちのめされた。アメリカに敗れた真の理由を忽然と悟った。アメリカにはミアーズがいたが、日本にミアーズはいなかった。近代以降の日本は「アメリカの鏡」であった。遅れて帝国主義の列に連なった日本は帝国主義の甘い汁を吸う前に叩き落とされた。本書を超える書籍が日本人の手によって書かれない限り、戦後レジームからの脱却は困難であろう。


なぜ日本を占領するか

 日本占領は戦争行動ではなく、戦後計画の一環として企てられたものである。私たちは勝利に必要な手段として、日本を占領したのではない。占領は日本に降伏を許す条件の一つだったのだ。この方針は1945年7月27日のポツダム宣言で明らかにされている。同宣言は日本民族が絶滅を免れる最後のチャンスとして、不定期の占領に服さなければならない、占領は日本の文明と経済の徹底的「改革」をともなうが、もし、これに服さなければ、日本は「即時かつ完全な壊滅」を受け入れなければならない、というのだった。
 この厳しい条件は日本の態度を硬化させた。そして、宣言発表から10日後、私たちは1発の原子爆弾を投下して、この条件が単なるこけ脅しではないこと、日本を文字どおり地球上から消し去ることができることを証明してみせた。私たちは、もし日本がすぐさま惨めにひれ伏して降伏しなければ、本気で日本を消滅させるつもりだったのだ。

 ポツダム宣言が発表されたのは「7月27日」ではなく26日である(アメリカ時間か?)。日本政府は8月14日にこれを受諾した。広島への原爆投下が8月6日で、長崎が9日である。ミアーズはアメリカ人なので致し方ないが、日本政府がポツダム宣言受諾を決定した最大の理由はソ連対日参戦(8月9日)であった。そして8月14日には陸軍エリートが宮城事件を起こし、埼玉では川口放送所占拠事件(8月24日)が発生する。

 尚、ポツダム宣言に署名したのは米・英・中華民国であって中華人民共和国ではない。巷間指摘される通り「中国3000年の歴史」という言葉はデタラメなもので、中華人民共和国の歴史は70年にも満たない(1949年建国)。シナという地理的要件がたまたま一致しているだけで国家としての連続性はなく、王朝がコロコロ変わるのがシナの歴史であった。「中国」という幻想をしっかりと払拭しておく必要があろう。

 つまり、日本占領はアメリカの戦争目的の一つだったのだ。では、いったい、日本を占領する私たちの目的は何なのか。その答えは簡単すぎるほど簡単だ。この疑問に悩んで眠れなくなったアメリカ人はいまい。答えはたったひと言「奴らを倒せ、そして倒れたままにしておけ」である。これ以上のことをいうにしても、せいぜい、日本人が二度と戦争を起こさないよう「民主化」しよう、ぐらいのものなのだ。
 国民の考えは、カイロとポツダムの両宣言から、占領後のホワイト・ハウス声明、ポーリー報告、マッカーサー将軍をはじめとする軍、政府首脳が出した数多くの通達にいたるまで、公の、あるいはそれに準ずる文書の中でいわれてきた戦争目的と見事に一致していた。
 すべての文書が、断固として日本を「懲罰し、拘束する」といっていた。懲罰によって「野蛮な」人間どもの戦争好きの性根を叩き直し、金輪際戦争できないようにする。そのために、生きていくのがやっとの物だけを与え、あとはいっさいを剥ぎ取ってしまおうというのだった。占領の目的は1945年9月19日、ディーン・アチソン国務長官代行が語った言葉に要約される。
「日本は侵略戦争を繰り返せない状態に置かれるだろう……戦争願望をつくり出している現在の経済・社会システムは、戦争願望をもちつづけることができないように組み替えられるだろう。そのために必要な手段は、いかなるものであれ、行使することになろう」

 ソ連参戦によって日本政府が恐れたのは共産主義化が国体を滅ぼすことであった。ゾルゲ事件(1941-42年)で近衛内閣のブレーンを務めた尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉までもがソ連のスパイであることが発覚した。

 中華民国の蒋介石は既に反共から容共に転じていた。そしてアメリカもまた共産党勢力に冒されていたのである(『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫)。GHQは分裂していた。占領初期~民主化~マッカーサー憲法を推進した民政局(GS)はニューディーラーと呼ばれる左派(社会民主主義者)の巣窟であった。一方、チャールズ・ウィロビー少将が率いる参謀第二部(G2)は保守派であり、GSとG2は激しく対立していた。

 世界恐慌(1929年)からブロック経済への移行が第二次世界大戦の導火線となったわけだが、大統領選挙でニューディール政策を掲げたフランクリン・ルーズベルトは社会民主主義色が強く、「ルーズベルトは民主主義者から民主主義左派・過激民主主義者を経て、社会主義者、そして共産主義支持者へと変貌していった」(ハミルトン・フィッシュ)との指摘もある(『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』深田匠)。

 日本政府が最後通牒と受け止めたハル・ノートには二案あり、採用されたのはモーゲンソー私案である。これを作成したハリー・デクスター・ホワイトはソ連のスパイであった(『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男)。第一次世界大戦後、世界中を共産主義の風が吹いていた歴史の事実を忘れてはなるまい。

 敗戦が確定した時点で国体の命運は定まっていなかった。GSが支援した片山社会党内閣(1947-48年)に続き、芦田民主党内閣(1948年)を挟んで第二次吉田内閣(1948-49年)が誕生する。GHQの主導権はGSからG2へと移り変わり、レッドパージ(1949年)の追い風を受けた吉田内閣は第五次(1953-54年)まで続いた。吉田首相は国家の自主防衛を捨てても国体を護る道を選んだ。その功罪を論(あげつら)うのは後世の勝手である。しかし吉田が天皇制を護ったのは事実である。辛うじて国体は護持し得たが国家としての日本は破壊された。

 大東亜戦争は日本の武士道がアメリカのプラグマティズムに敗れた戦争であったと私は考える。大日本帝国の軍人は軍刀を下げていた。対面を重んじて実質を軽んじた。開戦そのものが見切り発車で、石油の備蓄は2年分しかなかった。つまり最初から2年以上戦うつもりはなかったのだ。明治維新の会津藩と日本の姿が重なる(会津藩の運命が日本の行く末を決めた)。規範を疑うことを知らず、視線は常に内側に向けられたまま、外部世界との戦いに翻弄された。

 GHQによって日本は「二度と戦争のできない国」に改造された。GSとG2の分裂による迷走は今尚、日本を二分している。冒頭に掲げたマッカーサーの言葉は意味深長である。多くの日本人が本書を読んでないのだから、GHQの占領はまだ続いていると思わざるを得ない。

アメリカの鏡・日本 完全版 (角川ソフィア文庫)
ヘレン・ミアーズ
KADOKAWA/角川学芸出版 (2015-12-25)
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世界史対照年表の衝撃/『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編

2019-11-28

『悪魔の飽食』事件の謎/『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通


『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編
『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通
『新・悪の論理』倉前盛通
『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘編
『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
『自然観と科学思想』倉前盛通

 ・『悪魔の飽食』事件の謎

『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通

 レフチェンコが表情の撮影を拒否していると聞いた時、思い出したのは“『悪魔の飽食』ニセ写真事件”の時の記者会見の様子だった。
 57年夏にニセ写真の使用が暴露された際、『悪魔の飽食』の著者・森村誠一氏は、取材パートナーと称する下里正樹氏と共に、写真提供者A氏なる人物を正面に出して、弁明の記者会見を行なった。その時のA氏の様子たるや、珍妙さを通り越して異様な印象を与えるものであった。
 ホテルの室内にもかかわらず、ハンチングをかぶり、黒いサングラスにガウン姿、ボクサーやレスラーではあるまいに、こんな奇妙な姿で記者会見に臨んだ人物が、かつてあっただろうか。森村氏らは、石井部隊(旧関東軍の細菌部隊で別名731部隊)関係者にA氏の身許が割れて危険が及ばないための措置としているが、そこに大いなる作為を感じるのである。(中略)
 そもそも、『悪魔の飽食』の誕生からして、マインド・コントロールの臭いがぷんぷんしているのである。日本共産党の幹部党員のもらしたところによれば、『悪魔の飽食』の赤旗日曜版への連載は、当時の宮本顕治委員長(現・最高幹部会議長)の一存で決まったという。
 当時、森村誠一氏は赤旗日曜版に小説『死の器』を連載中であった。連載開始は55年6月22日で、完結は56年9月27日である。この完結直前の56年7月19日から、74回にわたる『悪魔の飽食』の連載が突如開始される。
 同じ紙面に同じ筆者の連載が2ヵ月半にわたって続く形になるのだが、これはいかに党機関紙とはいえ、ブルジョワ・マスコミにできるだけ近い紙面形態を採ろうとしている赤旗にしては、異常なことである。ある幹部党員は、その背後の事情を“ミヤケンのツルの一声”と説明していた。
 日共にとって、『悪魔の飽食』の空前のヒットは、日本国民に対するマインド・コントロールという意味から、絶大なる効果を持つ戦略兵器となり得る存在であった。日米同盟の強化と“日本の右傾化”に対して、日本国民に戦時中の悪夢を思い起こさせ、警戒の念を抱かせるのに、これほどの効果的な“紙爆弾”はないと考えていたのだろう。
 この一大戦略に従って、流行大衆作家であり日共シンパの森村氏に白羽の矢が立てられたのである。しかし森村氏には泣所があった。取材力に乏しく、ノンフィクションを書く素養があまりないという点である。
 そこで、取材パートナーという形で、筋金入の党員が実質的な筆者として送り込まれた。それが下里正樹氏である。日共内での正式な肩書は、赤旗特報部長とういレッキとした幹部党員で、囲碁、将棋の世界ではかなり有名な観戦記者でもある。

 しかし、日共の一大野望も“ニセ写真事件”によって破綻してしまった。否、破綻したというよりむしろ、アメリカ側のマインド・コントロールに乗せられて“悪魔の飽食作戦”を開始した日共が、アメリカ側のスケジュール通りに陥穽にはまったと見たほうが正確かもしれない。
 問題になった例のニセ写真は、終戦直後の戦犯裁判用に中国の国民党や共産党が大量に作成したという経緯がある。その大部分が、日露戦争のあと、満州でペストが大流行したとき、その救援活動を日本赤十字と日本軍が協力して行なった当時の写真を修正したものであった。それを森村・下里チームは、前述のA氏から提供されたと主張している。
 だが、日共の幹部党員によれば、取材開始時点での1ヵ月にわたるアメリカ取材旅行の際、下里氏が米軍関係者もしくはアメリカの情報筋から入手したものだという。日共としては“米軍提供”と書くわけにはいかず、提供者A氏なる人物をデッチ上げたのではないか。
 それにしても、あの抜け目のない日共が、あんな粗悪なニセ写真にだまされたのか、あるいは知っていてもわざと使ったのかは別にして、この事実は、なによりも日共そのものがアメリカのマインド・コントロール下に置かれていたとでも考えるほかないのではなかろうか。日共は、米ソ双方からマインド・コントロールされているのかもしれない。
 また、森村氏自身についても、不審な点がある。ヒューマニズムと正義を売り物にしている森村氏にもかかわらず、「ああいう写真を見付け出すのが、ゾクゾクするほどうれしい」と語っている。これは異常な表現ではないか。人間なら心が痛むような写真である。ゾクゾクするとは尋常ではない。
 これには、焼跡左翼の野坂昭如氏も、「ゾクゾクするほどうれしいとは何事か」とカミついていた。これが当り前の人間の反応であろう。良心の痛みもなくあいいう発言をした森村氏自身、中国はソ連を旅行した際、なんらかの形でマインド・コントロールを受けた可能性はないか、自己点検してみてはいかがだろうか。

【『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉(太陽企画出版、1983年)】

 このテキストの直前にラストポロフ事件が紹介されている。佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉の著書も関連書として挙げておく。

『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行
『私を通りすぎたスパイたち』佐々淳行

 志位正二〈しい・まさつぐ〉の名を初めて知った。日本共産党の志位和夫委員長の伯父に当たる人物だ。ラストボロフ事件発覚後、志位正二は自首した。その後航空機内で急死する。親交のあった倉前は「殺(や)られた!」と確信する。それがKGBによるものかCIAによるものかは不明だ。

『悪魔の飽食』は私も若い頃に読んだ。当時は本多勝一〈ほんだ・かついち〉を読んでいたこともあり、若き精神は反日に傾いていた。本多の山本七平批判がカッコよく見えた。私の歴史館は『中国の旅』に染められていた。『週刊金曜日』も創刊号から購入していた。私が戦後史観の迷妄から覚めたのは数年前のことだ。

 本書は竹村健一が企画した「日本の進路シリーズ」の一冊で、軽めの読み物となっている。超心理学とはマインド・コントロールと超能力のことで、ヒカルランド系の内容だ(笑)。

 尚、下里正樹〈しもざと・まさき〉はかつて松本清張の秘書を務めた人物らしい。

2015-02-06

ロバート・ラドラム


 2冊読了。

 6、7冊目『暗殺者(上)』『暗殺者(下)』ロバート・ラドラム:山本光伸訳(新潮文庫、1983年)/「こんなものか」と思った。やはり歳月が目を肥やすのか。最初に読んだ時からもう30年以上が経つ。それから4回か5回読んでいる。映画の『ボーン・シリーズ』3部作も3回ほど見ている。ま、そうは言っても下巻は風呂で読み終え、気がついたら3時間半も入っていたことになる。国際謀略ものといえば、ラドラムとデイヴィッド・マレルの二大巨匠が直ぐ思い浮かぶが、その後に続く作家が見当たらない。クライブ・カッスラーはスケールが劣るし、スティーヴン・ハンターは肌が合わない。本作は舞台回しと細部は実にいいのだが、人物造形が平板で陰影に欠ける。せめてビリエール将軍ほどの個性を主人公にも施してもらいたかった。「その物腰はいかにも軍人然としていて、彼が動くにつれて周囲の空間にひび割れが生じ、見えない壁が次々にくずれ落ちていくかのようだった」(下巻、104頁)。CIAの古参であるアレクサンダー・コンクリンが米国の病理を体現している。彼はジェーソン・ボーンと直接会い、記憶喪失だと聞かされても耳を貸さなかった。それどころか更にボーンの命を奪おうと躍起になった。映画『ボーン・アイデンティティ』は翻案作品ともいうべき代物で、映画作品としては駄作である。しかし本書の雰囲気を実によく表現している。大体、カルロス(イリッチ・ラミレス・サンチェス)が出てこない上、ボーンの恋人であるマリーの背景も全く違う。そしてやたらとカーチェイスが続く品のない作風だ。

2012-03-16

正力松太郎というリトマス試験紙


【福島原発事故 その時私は】双葉病院長 鈴木市郎さん(77)

 続きを書く。情報の吟味、精査、検討という観点から正力松太郎〈しょうりき・まつたろう〉をリトマス試験紙にすべきである。

 元読売新聞社社主にして「原子力の父」と謳(うた)われた人物だ。

原発導入のシナリオ 冷戦下の対日原子力戦略
戦後、CIAは正力松太郎氏と協力して日本で原子力の平和利用キャンペーンを推進

 福島原発事故以降、国民感情としては反原発・脱原発に傾いていると思われるが、如何せん国民の意志を表明するシステムがない。解散総選挙となった場合、政治家は原発が争点になることをずる賢く回避すると思う。

 また国民投票や住民投票が実施されそうな気配もない。

 とすれば、だ。反原発・脱原発を表明する最も現実的で効果が高い行動は、読売新聞の購読を中止することだと私は考える。併せて日本テレビを見ないようにする。たったこれだけで日本の現状を動かすことは可能だ。

 関東大震災(1923年)が起こった際、朝鮮人が「井戸に毒を入れ、また放火して回っている」という流言が飛び交った。このデマを流布した首謀者が、時の警視庁官房主事で後に読売新聞社主となる正力松太郎であった。

関東大震災の日
読売新聞 3月11日付「編集手帳」

2017-12-14

巧妙に左方向へ誘導する本の数々/『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優


『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 2』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 3』小林よしのり
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『戦争論争戦』小林よしのり、田原総一朗

 ・巧妙に左方向へ誘導する本の数々

『打ちのめされるようなすごい本』米原万里
佐藤優は現代の尾崎秀実

 ――つまらない本の見分け方を教えてください。
 その前に、どうしてつまらないスカ本が出版されると思いますか?
 ――書き手に才能がないからですか?
 それもありますが、重要なのは、本は「有価証券」だということ。出せばお金に換えられるということです。
 出版社で社員が20人を超えると、編集者が作りたくなくて、営業も売りたくなくて、取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)もありがたがらない、本屋も起きたくない本がどうしてもできてしまう。資本主義ですから。
 だから、読者は「スカ本と、そうでない本を見分ける方法」をちゃんと学んでおかなくてはいけません。
 どうするかというと、本の「真ん中」をまず読むのです。
 ――本のど真ん中を開いて、何を確かめるのですか?
 なぜ真ん中を読むか。時間が足りずに雑に作って出している本は、真ん中あたりに誤植が多い。
 それから、自分が知っている分野の固有名詞がでたらめな場合もダメ。そんな本を出している出版社は、いい加減な本を作る傾向があるから、警戒した方がいいでしょう。(聞き手 小峯隆生)

【『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優(PHP文庫、2014年)】

 冒頭で佐藤が推す「本読み」巧者として松岡正剛〈まつおか・せいごう〉、斎藤美奈子鹿島茂立花隆佐高信〈さたか・まこと〉の5人を挙げる。松岡・佐高は言わずと知れた極左で、斎藤はフェミニズム左翼である。

 私程度の読書量でも「巧妙に左方向へ誘導する本の数々」とわかる。山口二郎や大田昌秀の名前を見て読むのをやめた。

 佐藤優が山口二郎を絶賛したのは新党大地が立ち上げた直後の講演であったと記憶する。当時、山口は北大教授だった。その後、山口は半安倍の急先鋒となり、佐藤は巧妙に沖縄の世論形成をリードしてきた。2015年に行われた辺野古基地反対の沖縄県民大会でのスピーチこそが佐藤の行ってきた工作の目的であろう。

「東京の窓から」は石原慎太郎が都知事をしていた時の番組である。YouTubeからは削除されている。私はこれを見て佐藤優という人物が信用できなくなった。


 石原慎太郎が4歳年上である。佐藤優とよく比較してもらいたい。菅沼光弘はまさしく国士である。インテリジェンスに通じた二人だが決定的な違いだ。私は菅沼の著書は全て読んできたが国士であるという一点がブレることはない。尚、菅沼がCIAに殺害されないのは山口組がガードしているため。戦後、東大を卒業しドイツに留学。ゲーレン機関(連邦情報局)で諜報教育を受ける。ラインハルト・ゲーレンにも一度会っている。








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2018-04-06

誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか?/『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム


『暗殺者』ロバート・ラドラム

 ・誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか?

『メービウスの環』ロバート・ラドラム

ミステリ&SF
必読書リスト その一

 強烈な光線が闇を切り裂いた。その中に、必死に逃げまどう女の姿が浮かび上がる。次の瞬間、銃声が鳴り響いた――テロリストがテロリストに向けて放った銃弾。1発目が背骨の低部に命中したのだろう。女は大きくのけぞり、金髪が滝のようにはじけて流れ落ちた。つづいて3発、狙撃手(そげきしゅ)の自信のほどを示すように間を置いて発射され、襟首(えりくび)と頭部に命中した。女は泥と砂の小山のほうへ吹っ飛び、その指が地面をかきむしる。血に染まった顔はしかし、地面に突っ伏しているためによく見えない。やがて断末魔の痙攣(けいれん)が女の全身を走り抜け、と同時に、すべての動きが停止した。
 彼の恋人は死んだ。彼は自分がやらねばならないことをやったのだ。ちょうど、彼女が自分のしなければならないことをしたように。彼らはお互いに正しく、お互いに間違っていた。

【『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム:山本光伸訳(新潮文庫、1985年)】

「必読書リスト」は折に触れて変更している。コレクションは常に取捨が問われる。精査し厳選することで磨きが掛かるのだ(『子供より古書が大事と思いたい』鹿島茂)。中にはどうしても好きになれない人物もいるが――左翼の三木清や高橋源一郎、親左翼だった松下竜一、誤解した仏教観を西洋世界に広めたショウペンハウエルなど――そこは読み手の判断に委(ゆだ)ねよう。

 ロバート・ラドラムの作品はほぼ全部読んできた。映画「ボーン・シリーズ」の原作『暗殺者』はもちろん傑作なのだが、シリーズ全体となるとやや評価は落ちる。読み物としては本書の方が優れていると判断し「必読書」に入れた。

 エスピオナージュや国際謀略ものは基本的に「不信が渦巻く世界」である。上司が工作員を騙すのも朝飯前だ。そして極秘のスタンプが捺(お)された任務を遂行する中で極秘をいいことに腐敗や行き過ぎが生まれる。世界最大のテロ組織はCIAである。かつて大英帝国がそうだったように覇権国家は必ず他国を侵略する。覇権とは侵略を正当化するキーワードなのだ。

 マイケル・ハブロックは愛するジェンナ・カラスを殺害した。それが任務だった。ジェンナは敵国のソ連と通じていたのだ。裏切り者は敵よりも憎しみの対象となり下される罰は厳しさを増す。ところが全てが嘘だった。

 誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか? そして彼女はまだ死んでいなかった。既に四読しているが多分また読み直すことが何度かあるだろう。

 尚、具体的な経済侵略については『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンスが実体験を綴っている。『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルムも参考書として挙げておく。

狂気のモザイク (上) (新潮文庫)
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狂気のモザイク (下) (新潮文庫)
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2015-03-12

小室直樹、デイヴィッド・マレル


 3冊読了。

 17冊目『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹(講談社、2000年/講談社+α文庫、2001年)/こういう本が読みたかったのだよ。日本がなぜ大東亜戦争に敗れたのか、そしてどうすれば勝てたのかを緻密に検証する。組織論・システム論・戦術論からゼロ戦に至るまでが考察されている。検証はロシア戦争にまで及び、かの戦争が奇蹟的な勝利であったことまで明かす。小室直樹はゴリゴリの合理主義者であってイデオロギーとは無縁の人物だ。文章の臭みは相変わらずだが、天才的な観察力を遺憾なく発揮している。『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』で示した小室理論がわかりやすく展開されている。

 18冊目『一人だけの軍隊 ランボー』デイヴィッド・マレル:沢川進訳(ハヤカワ・ノヴェルズ、1975年/ハヤカワ文庫、1982年)/再読。20年以上前に一度読んでいる。電車に持ち込み、あまりの面白さに降りる駅を通り過ぎてしまったことを覚えている。マレルが大学教授だったとはね。今読むとそれほどでもないのだが、1972年刊行(原著)という時期を思えば、やはり後続に与えた影響は大きい。ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』だってランボーのスケールを小さくしたようなものと見えなくもない。ティーズルという片田舎の警察署長は昔のシェリフ(保安官)そのものであり、アメリカを体現しているように感じた。特筆すべきはランボーが「禅の精神」を会得していることで、ラストに至りティーズルとの奇妙な一体感が生まれる。それでも尚、神の物語から脱却できていないところにアメリカの宿痾(しゅくあ)が見える。

 19冊目『ランボー/怒りの脱出』デイヴィッド・マレル:沢川進訳(ハヤカワ文庫、1985年)/こちらも再読。2冊とも1日で読了。映画『ランボー/怒りの脱出』のノベライゼーション。巧みだ。荒唐無稽な展開を支える材料がしっかりしている。ランボー独特の瞑想シーンまで描かれている。ま、映画が先行しているため細かいことは言うまい。大体、ランボーは前作で死んでいるのだから(笑)。プロットはCIA官僚vs.ランボーである。トラウトマン大佐が組織人の哀しさを象徴している。だがランボー自身も最後はマードックを殺さなかった。ここは絶対に殺さなければいけない場面である。自分になされた仕打ちへの報復ではない。この人物がいる限り犠牲者が出るためだ。舞台はベトナムで前作同様、アジアへの憧れが匂い立つ。

2011-11-03

「アメリカ 世界独裁の戦略と現状」ミシェル・コロン


 2008年12月、ベルギー人ジャ-ナリスト、ミシェル・コロン。


・中東ではアメリカが解決法なのではなく、彼ら自身が問題である。
・アメリカはイランで何をしたか? クーデターを起こし、政権を転覆させた。
 ・イラン革命を起こしたアメリカ
 ・石油の歴史No40 中東地域と世界石油市場を独占したセブンシスターズ
 ・モサデクのリバイバル
 ・イランの歴史
・世界で最も人種差別的な国であるイスラエルは、パレスチナ人を彼らの土地から追い出し、国連の全ての決議に違反している。
・イスラエルはアメリカの拒否権のおかげで毎回切り抜ける。さもなければ世界中から有罪判決を受ける。
・この問題をイスラエルとアメリカが解決することはない。彼ら自身が問題なのだから。
・ブッシュ大統領は戦争前も戦争中も嘘をつき、現在も嘘をついている。
・ブッシュ大統領はイラク戦争を望んでおり、石油支配のために戦争をすることはずっと以前から決まっていた。
・石油はアラブ諸国のものではなく、エクソンなどの多国籍企業のものだとアメリカが決めた。
・アメリカが世界各地で石油を支配したがっていることに気づくべきだ。チャベスに対してもクーデターを起こし、暗殺をしようとした。
・ボリビアのエボ・モラレスに対しても同じことを企てた。
・今度はアフリカだ。石油を発見するやいなや5分以内にアメリカはやってきて、軍事基地が必要だ、軍艦を送ろうと言う。
・問題はアメリカが世界中の石油を自分のものだと決めたことだ。
・その理由は第一に莫大な利益を得るため。第二に恐喝の方法として利用するため。ヨーロッパや日本や中国、インドなど全ての大国に対して、エネルギー資源による恐喝で妨害するため。
・繰り返して言うが、アメリカは彼らが駐屯する世界各地で石油を支配しようとしている。
ダヴィド・ベン=グリオンの言葉を引用しよう。1948年にイスラエルを建国した人間だ。彼はこう言っている。「私がアラブ人指導者だったら、イスラエルとの合意には決して調印しないだろう。当然のことだ。私たちは彼らの国を奪った。彼らには一つのことしか目に入らない。私たちが来て彼らの土地を盗んだことだ。なぜこのようなことを許せるだろうか」。これがイスラエルの指導者が現実に考えていたことだ。
・オバマ大統領は副大統領に執拗なシオニストを選んだ。大統領主席補佐官も執拗なシオニストだ。
・オバマはエルサレムがイスラエルの首都になるべきだと言った。しかしエルサレムは盗まれた首都である。
・オバマはまた、イスラエル軍字援助金を300億ドル増加する提案を行った。
・私はオバマに言いたい。アメリカでは4000万人の人々が貧困水準以下で生活している。この大金をその人々のために使う方がいいのではないか?
・アメリカには多くの社会問題が存在する。何よりも問題なのはホワイトハウスに権力がないことだ。
・権力は多国籍企業にあり、彼らが戦略を決め、誰が大統領になるかを決める。
・私が言いたいのは、アメリカは世界を支配する必要はないということだ。



オバマ大統領、53年イラン軍事クーデターへの米国関与を認める

 中東歴訪中のバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は4日、1953年にイランのモサデク(Mossadegh)政権を転覆させた軍事クーデターに米政府が関与していたことを、任期中の米大統領として初めて認め、米・イラン間の和解に向けた姿勢を明確に打ち出した。

 オバマ大統領はエジプトのカイロ(Cairo)で行ったイスラム世界に向けた演説の中で、「冷戦中、民主的に選出されたイラン政権の転覆に米政府が関わっていた」と述べた。

 モサデク政権は、それまで英資本のアングロ・イラニアン石油会社が独占していたイラン石油産業の国有化を進めていた。米中央情報局(Central Intelligence Agency、CIA)は53年、英政府の協力を得てパーレビ国王(Shah Mohammad Reza Pahlavi)派によるクーデターを画策、モサデク政権は崩壊した。米国はその後、パーレビ国王を積極的に支援したが、国王は79年のイラン革命で失脚した。

 53年のクーデターはイラン国民の間では、米国が自由の擁護者を自任する一方で、自国の経済的・戦略的利益のためには民主的に選出された他国政府を不正な手段で排除することもいとわない、二重基準に基づいた国だということを露呈した象徴とみなされている。

AFP 2009-06-05


BBCが1953年のイランのクーデター関与を認める

 BBCが、1953年のイランでのクーデターに、BBCのペルシャ語ラジオ放送が関与していたことをついに認めました。

 プレスTVによりますと、BBCペルシャ語放送が、1953年のイランのクーデター記念日に放送したドキュメンタリー番組の中で、このクーデターに、イギリス政府のプロパガンダの道具として、BBCラジオ放送が関与していたことを指摘しました。

 この番組によりますと、イギリス政府は、1953年のクーデターで当時のモサッデグ政権を弱体化させるためにBBCペルシャ語ラジオ放送を利用していたということです。

 この政権はこのときのクーデターで転覆しました。

 1953年のクーデターは、アメリカとイギリスの諜報機関が計画し、資金面や実践面で支援を行うことにより、モサッデグ政権に対して仕組まれました。

 このクーデターは、イランの石油産業の国有化に対抗することを目的に実行され、その結果、モサッデグ政権が崩壊し、イランの最後の独裁者、パフラヴィー王朝のモハンマドレザー国王がイランに帰国することになりました。

イランラジオ日本語 2011-08-21

2016-04-23

デイヴィッド・バットストーン、他


 2冊挫折、1冊読了。

中国はいかにチベットを侵略したか』マイケル・ダナム:山際素男〈やまぎわ・もとお〉訳(講談社インターナショナル、2006年)/山際訳とあって期待したのだが構成が悪い。半分ほど飛ばし読み。挿入されている写真はいずれも小振りだが、チベット人の風にさらされた風貌が実によい。チベットは戦わずして中国共産党に屈したわけではなかった。チベット人は勇猛であった。彼らは馬を駆り、銃を手にしてある時は中共軍を蹴散らした。インドのネルー首相はダライ・ラマの要請を無視。アメリカはCIAを送り込んで支援するも、ケネディ大統領の懐刀で新任の駐インドアメリカ大使ジョン・ケネス・ガルブレイスが邪魔をする。インド政府から圧力をかけられたダライ・ラマは降伏を促す声明を発表する。行き場を失った抵抗勢力は次々と自殺した。まるで会津藩や『セデック・バレ』を見ているようだ。

生物から見た世界』ユクスキュル/クリサート:日高敏隆、羽田節子〈はねだ・せつこ〉訳(岩波文庫、2005年)/意外と難しい内容で驚いた。後回し。イラストが多い。

 50冊目『告発・現代の人身売買 奴隷にされる女性と子ども』デイヴィッド・バットストーン:山岡万里子訳(朝日新聞出版、2010年)/サンフランシスコ大学の教授が近所のレストランに奴隷がいた事実を知る。彼は世界中を駆け巡り、奴隷となった人々にインタビューをする。そして数多くの支援者とも出会う。彼は「人間は売り物ではない」(Not For Sale)というキャンペーンを開始。今では世界各国にまで広がる運動となった。現在、この世界には3000万人以上の奴隷が存在するという。その大半が女性と子供である。甘言で騙し、外国へ連れてゆき、暴力と借金で支配し、売春を強要する。権力の腐敗ぶりは具体的には警察の腐敗となって現れる。警官を見て助けを求めた少女たちが、その場で警官に強姦される。精神的にタフな私が何度となく本を閉じた。そして何日も悪夢にうなされた。中途半端な覚悟で本書を読み終えることはできない。一方に神の如き善良な支援者が存在する。本書は絶望と希望の書だ。国家も国連も無視する奴隷たちを一個人で助ける人も現実にいるのだ。資本主義におけるグローバル化は犯罪をもグローバル化する。むしろ犯罪にこそ資本主義の劣悪な需給関係が象徴されるのだろう。経済基盤の弱い国では人間が売り物にされる現実を忘れてはなるまい。日本における非正規雇用の増加は「柔らかな奴隷化」と受け止めるべきだ。搾取の程度が異なるだけのこと。

2014-11-22

中丸薫、菅沼光弘


 1冊読了。

 93冊目『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘(徳間書店、2013年)/中丸の部分はすっ飛ばした。ヒカルランドのは二人の話が章立てとなっているが、こちらはもっと短くて対話っぽい雰囲気を出している。中丸は自慢話と霊言が多すぎて辟易させられる。菅沼は宗教についても詳しい。大統領候補であったロムニーがモルモン教徒であったことに触れ、モルモン教が教団として社会的地位を上げる目的で信者を米軍に送り込んでいるそうだ。矢吹一夫、児玉誉士夫、大西瀧治郎〈おおにし・たきじろう〉中将にまつわるエピソードが出てくる。松下政経塾がダメな理由。安部首相もダメだと切り捨てている。亀井静香も「CIAから命を狙われている」とビビりまくっているとのこと。命を捨てる覚悟の政治家は一人もいないようだ。