2021-10-31

親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 リクルート事件で首相を辞任した竹下が、キングメーカーとして擁立した海部俊樹首相に対し、小泉は宮澤派(宏池会)の加藤紘一、中曽根派の山崎拓〈やまさき・たく〉と組んで海部続投阻止を訴え、3人の頭文字からYKKと呼ばれました。
【YKKは親米派の小泉、親中派の加藤紘一、親北朝鮮派の山崎と政治信条はばらばらですが、72年初当選の同期で、経世会支配の中で干されてきたという被害者意識が共通】していました。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】


「自民党大阪府連は辻元氏を応援した山崎氏を問題視。除名処分を求める上申書を党本部に提出した」(10月29日:今西憲之 AERAdot.編集部)と報じられているが、自民党執行部はどのような判断をするのか。

 辻元清美といえば関西生コン事件で名前が上がった。

辻元清美議員に“ブーメラン”? 生コン業界の“ドン”逮捕で永田町に衝撃(1/2)〈週刊朝日〉 | AERA dot. (アエラドット)

 関生(正式名称は「連帯ユニオン関西地区生コン支部」)は沖縄の基地反対運動でも激しい活動を行っており、背後には北朝鮮の影がちらつく。関生とは保守系政治活動家の瀬戸弘幸が早い時期から戦ってきた。関生は組合の仮面をつけた北朝鮮系暴力集団と考えてよさそうだ(Vol.1 暴かれた虚像 - 近畿生コン業界情報サイト 結)。

 共産主義者は暴力革命の前提があるため血腥(なまぐさ)い行為には免疫が働く。かつては内ゲバで仲間同士を凄惨なリンチの末に殺害してきた歴史がある。

 山崎拓が狙っている北朝鮮利権は川砂、鉱物資源、労働力などであろう。実は宝の山なのだ。世界のレアアースの2/3が北朝鮮にあり、10兆ドルの価値があると試算されている。

 特に書きたいことはない。単なる時事ネタだ。今日は衆議院選の投票日。

奴隷貿易で栄えた欧州/『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克


『村田良平回想録』村田良平岡崎久彦
『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖
・『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』岩田清文、武居智久、尾上定正、兼原信克 2021年

 ・奴隷貿易で栄えた欧州

 イギリスはじめ欧州の国々が大西洋貿易を開始すると、ヨーロッパ、アフリカ大陸、カリブ及び新大陸を結ぶ三角貿易が始まる。三角貿易と言えば普通に聞こえるが、実態は奴隷貿易である。新大陸のインディオは、銀鉱山などの激しい奴隷労働で夥しい数が死に、人口が激減していた。カトリック僧たちはその非道を訴えたが、絶滅しかけたインディオの代わりに目を付けられたのがアフリカ人であった。三角貿易の主力商品はアフリカの黒人奴隷である。アフリカから黒人を奴隷として連れていって、カリブ海諸島や新大陸のプランテーション農場で働かせたのである。
 プランテーションで栽培したのは、砂糖や煙草や綿花である。イギリスの砂糖成金は有名で、奴隷農場でとれた砂糖をイギリス本土で売り、そのお金で武器を買ってまたアフリカに行き、アフリカで武器を売りさばいて、そのお金で奴隷を買って新大陸やカリブ海諸島に売りさばいていた。国情のジョージ3世が「何で彼らは国王の自分より金を持っているんだ」と嘆いたとされるぐらい、三角貿易は儲かったのである。

【『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克〈かねはら・のぶかつ〉(新朝新書、2020年)】

農業の産業化ができない日本/『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹、藤原肇

 16~18世紀にかけてアフリカから連れ去られた奴隷の数は1000万人にも上る。

大英帝国の発展を支えたのは奴隷だった/『砂糖の世界史』川北稔

 イギリス資本主義の原動力となったのはアフリカ人奴隷であったという指摘がある(『資本主義と奴隷制』エリック・ウィリアムズ)。資本と労働力の問題は一筋縄ではいかない。

農業の産業化ができない日本/『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹、藤原肇

 産業化の前提が安い労働力にあるとすれば安易な資本主義論は危うい。個人的には原丈人〈はら・じょうじ〉の公益資本主義に軍配を上げる。



ラス・カサスの立ち位置/『インディアスの破壊についての簡潔な報告』ラス・カサス

農業の産業化ができない日本/『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹、藤原肇


小室直樹
藤原肇

 ・農業の産業化ができない日本

『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原丈人

藤原●アメリカのCIAは、インテリジェンスをうたっているけど、内閣調査室を「日本のCIA」と呼ぶ場合には、あれは日本のセントラル・インフォメーション・エージェンシーの略だと思えばいい。どうせインテリジェンスのやれる人材なんかがいるわけないですから。

小室●インテリジェンスというのは数学的な発想が基礎になっています。ところがそれが日本人にはない。私は、かつて、役人相手に数学の基礎理論を手ほどきしたことがあるけど、その実情に驚いたことがある。

藤原●それは生態環境としての生活圏の問題が多いに関係しているせいです。それもインテリジェンスのレベルまで行かずに、インフォメーションのレベルで決定的な役割を演じています。くわしいことは『情報戦争』や『日本が斬られる』という本で論じたが、情報に対しての理解の仕方と構えで見ると、農耕民族と遊牧民は本質的に異なっているんです。農耕民の情報は蓄積し発酵して知恵にしている。それに対して、遊牧民の情報はオンタイムでとらえ、的確に選択し行動に移すことで、そのグループの生存に結びつける。そうなると、リーダーシップが関係してきて、遊牧民はリーダー中心の社会で、いうならば、男の世界です。

小室●たしかに、農耕社会は大地と結びついているから女性的です。日本も天照大神が一番偉いし、かつ女性上位だし……。

藤原●トップの性別はあまり関係なくて、たとえ男であっても女性型支配をするのです。それが長老であり、農耕民族は蓄積だから長老が一番偉い。情報も新しさよりも知恵と結びついた古さのほうが重要視される。その辺にリーダー型の西欧や中東と、長老型のアジアの違いがあります。

小室●一般にヨーロッパ的、アジア的と区分する人が多いが、中国やインドのほうが日本よりはるかにヨーロッパに近い。実は、世界中で日本だけが例外中の例外です。たとえば、牧畜を例にとってみても、牧畜をまったくやらないのは日本ぐらいで、中国もインドも農業と牧畜の二本建(ママ)てです。それに日本の驚くべき特徴として指摘していいのは、どんなに見かけ上近代化したように観察されても、日本では農業が絶対に産業化されない点です。こういうことはアジアでもめずらしい。

藤原●日本語では術語が十分にないので、議論がむずかしいから英語を借りて話すと、日本にはファーミングもアグリカルチャーもなくて、あるのはガーデニングだけです。ガーデニングは技術集約化がむずかしいから産業化するところまでは行かない。

小室●日本軍がフィリピン作戦をしたときに、フィリピンは農業しかないから、農村地帯では食糧が自給できるはずだと思い込んでいたら、それはとんでもないことだった。タバコ地帯ではタバコだけしかないし、麻を作るところには麻しかなかった。いわゆるモノカルチャーです。農村地帯は食糧があるはずだと期待したいのに、食糧はない。だがタバコや麻を食べるわけにいかないので、作戦は大混乱してしまったそうです。

藤原●ベトナムだってブラジルだって同じです。農業が労働力集約型から技術集約型への進化の系列の中で動いているので、産業が可能になる。それを植民地主義がプランテーション化を通じてやったわけです。

小室●フィリピンは遅れている、と日本人は頭から決めつけてかかる癖があるが、農業でみる限りでは、産業の組織化という点で、返っらのほうがはるかに進んでいる。日本の農業なんて何でも作るし、それも主な目的は家族が食べるところにある。

藤原●インダストリアライズして剰余価値を生み出すところまで行っていない。

小室●農業に見る限り、日本は世界で最も遅れた状態を維持している。しかも、この農業地帯を地盤にした政党が農本的な政治をやってきたのだし、これからも続けようとしているので救いがありません。

藤原●そこに日本の政治が近代以前のパターンでしか機能しない理由もあるし、日本人が情報一般に関して非常にニブイ原因もあると思います。その当然の帰結として、インテリジェンスの問題がいかに重要であるかについて誰も気がつかないし、また、それを論じようともしないのです。(中略)

藤原●とてもじゃないが、日本の農業社会を見る限りでは、近代資本制などの水準には達していないといえます。

小室●とてもキャピタリズムじゃない。

藤原●じゃあ、前に話したように原始(グラスルーツ)共産制ですね。

小室●農業だけでなく企業や産業界までが同じであり、労働力は労働と分化しないまま、労働者は会社という一種の共同体の所属物になってしまっている。古典的な資本主義では労働市場が存在して、そこでは完全な自由競争が行なわれるのに、日本ではそれさえなくて、賃金でさえ、生きる上で必要な給与を分配してもらう形をとっている。

藤原●原始共産制における分け前だから、交通費や厚生費の現物支給があったり、年功序列の手当てが給料の形をとるのです。

小室●それに〈生産者と生産手段が分離する〉という、資本主義にとって最も基本的なこの性格が欠けている日本の経済システムは、中世的な共同体のままといえます。

藤原●中世じゃなくて古代以前だと思いますね。政治を見ればわかるけれど、どう考えても呪術的ですよ。だから、情報以前なのは当たり前かもしれない。

【『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹〈こむろ・なおき〉、藤原肇〈ふじわら・はじめ〉(ダイヤモンド社、1982年)】

大東亜戦争はアメリカのオペレーションズ・リサーチに敗れた/『藤原肇対談集 賢く生きる』藤原肇

「オペレーションズ・リサーチ」が本書に書かれていたと思い込んでいて、三度も画像を確認する羽目となってしまった。これ、と思った情報はメモ書き程度で構わないから残しておく必要がある。はてなブログを使うか。

「インテリジェンス」という言葉は佐藤優〈さとう・まさる〉が嚆矢(こうし)と思いきや、本書の方がずっと早かった。藤原、小室、そして倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉あたりを嚆矢とすべきか。

 農業の産業化ができない日本という指摘は納得できる。近頃、農業本を数冊読んできたのだが「工夫次第では儲かる」というレベルで、大規模化を農地法が妨げている現状だ。安倍政権が何とか改革したが、まだまだ道半ばである。

 日本の政治は食料安全保障の意識が欠如している。食とエネルギーこそ国家の生命線である。自民党にとって農家は票に過ぎない。農業のグランドデザインを描く政治家を私は見たことがない。日本の食料自給率はカロリーベースで37%まで低下した(令和2年/日本の食料自給率:農林水産省)。国防もさることながら食料においても有事を想定していないことがわかる。

 小室と藤原は合理性をそのまま人間にしたような人物である。ただし、今読むとどこか新自由主義の臭いがして、すっきりと頷けないところがある。

GHQはハーグ陸戦条約に違反/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 GHQは、敗戦後の日本国民がいまだ昭和天皇に尊崇の念を抱き、秩序を保っていることに注目し、【天皇を元首とする大日本帝国の形を残したまま、間接統治をする】ことにしました。政府や国会の上に置かれたGHQから、超法規的な「GHQ指令」が発せられ、日本政府にこれを実行させたのです。【ナチス国家を完全に解体し、直接軍政を敷いたドイツとは対照的】です。
 GHQの統治下で内閣を組織したのは、皇族出身の東久邇宮稔彦王〈ひがしくにのみやなるひこおう〉、元外交官の幣原喜重郎〈しではら・きじゅうろう〉、同じく元外交官の吉田茂〈よしだ・しげる〉の順番です。
 幣原は、大正デモクラシー期に長く外相を務め、ワシントン海軍軍縮条約をまとめて軍と対立したことが、GHQに評価されました。この「英語ができる平和主義者」幣原のもとで、日本の交戦権を制限する新憲法を制定させることになりました。
 戦時国際法の基準とされるハーグ陸戦条約は、こう定めています。

「第43条 国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限り、【占領地の現行法律を尊重】して、なるべく公共の秩序および生活を回復確保するため、施し得べき一切の手段を尽すべし」

 アメリカの日本占領は、1951年のサンフランシスコ平和条約発効まで続きました。この間、占領者アメリカには、ハーグ陸戦条約に基づいて【占領地日本の現行憲法を尊重する、】という国際法上の義務があったのです。
 したがって、GHQが日本の憲法を制定することはできません。そこで【マッカーサーは、幣原内閣に圧力をかけ、日本政府自らの意思で新憲法を起草したように見せかけた】のです。
 この「圧力」とは、つまり公職追放と検閲(プレスコード)です。
 公職追放は、戦時下の軍と政府の要人、思想家など「軍国主義者」に始まり、GHQを批判する者すべてを公職から解雇しました。空襲で産業が壊滅し、戦地からの帰還兵がどっと戻ってきたため、失業率が異常に高かった当時の日本で職を失うことは飢餓(きが)と直面することを意味します。幣原内閣は、組閣の直後に幣原首相、吉田外相ら3名を除く全閣僚を公職追放され、親英米派の幣原も「マックのやつ、理不尽だ」とうめきます。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

 こうした屈辱の歴史を教えない限り、自民党の変節も見えてこない。

日本国憲法の異常さ/『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖
憲法9条に埋葬された日本人の誇り/『國破れてマッカーサー』西鋭夫
GHQは日本の自衛戦争を容認/『いちばんよくわかる!憲法第9条』西修
憲法9条に対する吉田茂の変節/『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温
国民の国防意志が国家の安全を左右する/『「日本国憲法」廃棄論 まがいものでない立憲君主制のために』兵頭二十八

 ただし、日本は議会制民主主義を採用しているのだから、国民の意思が問われて然るべきだろう。「日本の近代史を知らなかった」という言いわけは通用しない。無知に甘んじてきた己を恥じるのが先だ。真珠湾攻撃から敗戦までは3年8ヶ月であったが、GHQの進駐は6年半にも及んだ。実は戦争そのものよりも占領期間の方が長いのだ。どう考えてもおかしい。この間、WGIPで日本国民を洗脳し、憲法を与え、アメリカ流の民主政を押しつけた。

 だがそれは既に遠い過去のことだ。現在にあっても安全保障についてはアメリカに依存しているが、国民が自立を望めば憲法改正はいつでも可能なはずだ。それをやろうともしないのは国民の意思が戦後レジームをよしとしている証拠である。

 近代化した日本は常にロシアの南下を警戒していた。韓国を併合したのも彼(か)の国がロシアの軍門に降(くだ)ることを防ぐためだった。日清戦争が起こった1894年(明治27年)の軍事費は国家予算の69.4%を占めた。日露戦争が勃発した1904年(明治37年)は81.9%にも及んだ(帝国書院 | 統計資料 歴史統計 軍事費(第1期~昭和20年))。国家存亡の危機意識がどれほど高かったかを示して余りある。

 1969年に国連の報告書で東シナ海に石油埋蔵の可能性があることが指摘されると、それまで何ら主張を行っていなかった中国は、日本の閣議決定から76年後の1971(昭和46)年になって、初めて尖閣諸島の「領有権」について独自の主張をするようになりました。

尖閣諸島|内閣官房 領土・主権対策企画調整室

 2010年には尖閣諸島中国漁船衝突事件が起こった。仙谷由人〈せんごく・よしと〉官房長官の独自判断で釈放されたと報じられた。sengoku38なる人物が衝突動画をYou Tubeにアップロードした。当時、海上保安官だった一色正春〈いっしき・まさはる〉の義憤に駆られた行動がなければ、日本国民の国防意識は今もまだ眠ったままとなっていたに違いない(尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件)。

尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向と我が国の対処|海上保安庁

 民主政が正しく機能するためには情報公開が前提となる。私が民主政を信用しないのは情報公開がなされていない現実と、たとえ公開されたとしても国民が正しく判断するとは到底思えないためだ(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)。

 国家は国民を欺(あざむ)き、歴史は嘘で覆われている。その最たるものが日本国憲法である。

2021-10-30

MASTRO DEFENCE SYSTEM


 Fred Mastroが開発した護身術。シラットがベースになっている。過去にMMAで敗れたことを嘲笑う向きもあるようだが、格闘技と護身術は全く次元が異なる。そのスピードと連続技に魅了される。











浮き指が進行すると腰が曲がる/『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』


『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』ロビン・マッケンジー
『自分で治す病気の数々 痔 膝痛 腰痛 肩こり 認知症 椎間板ヘルニア』谷幸照
『3万人のひざ痛を治した! 痛みナビ体操』銅冶英雄
『ひざ痛は99%完治する』酒井慎太郎
『半月板のズレを戻せばひざ痛は治る!』中村昭治

 ・ゴキブリ体操改めブルブル体操
 ・浮き指が進行すると腰が曲がる

『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏

身体革命

 そこで、手軽にできるO脚改善法、ひいてはひざ痛改善として、私がお勧めしているのが、「足の親指バンソウコウ」という方法です。
 これは、名称のとおり、足の親指にバンソウコウを巻くだけの、いたって簡単な方法です。なぜ、そんな簡単な方法で、O脚やひざの痛みが改善できるかというと、O脚の根本原因である外側重心の悪いクセを矯正する、意識付けとして役立つからです。
 ひざ痛の大きな原因となるO脚を改善するには、足の外側に偏っている重心を、意識的に足の親指寄りに戻し、「内側重心」にする必要があります。
 しかし、「内側に重心をかけよう」とただ意識するだけでは、すぐに忘れてしまうのが人間です。ところが、親指にバンソウコウを巻いておくと、歩行のさい、そこに普段とは違う圧力がかかるので、自然に親指に意識が向き、内側重心になるのです。
 また、足の親指にバンソウコウを巻いている感覚は、私たちの脳には一種の違和感として刻み込まれます。
 これを解消したいという意識下の働きによって、歩くときに、親指側をグッと踏み締め、けり上げる動きが強化されます。
 これにより、足裏のアーチ構造を強化でき、正常な土踏まずが再生されます。
 このことによって、O脚が改善していくのです。(勝野浩〈かつの・ひろし〉)

【『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』(マキノ出版、2013年)】

 絆創膏は親指の根元に巻く。きつ過ぎてもいけないようだ。蹴り上げる必要はない。足裏はフラットに着地するイメージで踵(かかと)~外側~拇指球へと体重移動をする。重要なのは拇指球の力を抜くことだ。歩行の推進力は飽くまでも踵である。アーチ構造を強化したいのであればスロージョギングか縄跳びをするべきだ。

 本書で蒙(もう)を啓(ひら)かれたのは以下のイラストである。


 そして膝が曲がり、バランスを取ろうとして上半身が前傾してくるのだ。腰が曲がる原因を見事なまでに描写したイラストである。

曲がった背中を伸ばす/『5秒 ひざ裏のばしですべて解決 壁ドン!壁ピタ!ストレッチ』川村明

 膝裏のばしストレッチを行ってから歩行改善に臨めば、曲がった腰はバランスを取り戻すことだろう。

 尚、「5本指ソックスが浮き指の原因」との指摘もある(『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓)。

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主な動脈の位置/『別冊Newton 人体の取扱説明書』


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎
・『別冊Newton 人体完全ガイド

 ・主な動脈の位置

・『別冊Newton 40代からの人体の取扱説明書

 なぜ、糖尿病患者にうつ病の症状が発症しているのでしょうか。さまざまな理由が考えられています。
 糖尿病は血液中のエネルギー源である糖(血糖)をうまく利用できなくなる病気です。そのため、食事療法や運動療法などを通じて意識的に血糖をコントロールする必要があります。(中略)
 一方、うつ病の患者が糖尿病を併発するリスクは、うつ病でない人と比べて60%も高いといわれています。主な原因は、うつ病に伴う生活習慣の変化です。2018年に国立精神・神経医療研究センターなどのグループが調査した「生活習慣とうつ病の調査」では、うつ病患者は間食や夜食を食べることが多く、引きこもりで運動不足になることが多いため、糖尿病をさらに悪化させてしまうことがわかっています。さらにはストレスを解消するために喫煙量やアルコール量が増えるなど、さらなる悪循環へと繫がる傾向も少なくありません。

【『別冊Newton 人体の取扱説明書』(ニュートンプレス、2020年)】


 これこれ。これが知りたかったのよ。何となく揉んでいると筋肉のマッサージになってしまうのだ。「動脈」で検索すると意外とヒットする書籍が少ない。そこで「人体」で検索して見つけた一冊。

 再三書いてきたように私は『Newton』誌のレイアウトが好きではない。図が大きすぎて相対的にフォントが小さく見えてしまう。行幅もバランスが悪く読み手への配慮を欠いている。しかも横書きで漢字の香りを失わせている。つくづくセンスのない雑誌だと思う。

 そのため同誌を熟読したことは一度もない。っていうか読む気が起こらない。いつもつまみ食いに終わる。

 見出しに名文句があったので紹介しよう。

「肥満は血管にダメージをあたえ、命に関わる病気を発生させる」
「意外な関係。肥満は『がん』もひきおこす」
「アルツハイマー病も肥満が原因?」
「睡眠負債と『肥満』は、となりあわせ」

 ダイエットの本来の意味は食習慣・食事制限である。そこをすっ飛ばして「痩せる」と思い込んでいる人が多い。つまり「ダイエットする」とは食習慣を見直し、食事に制限やを加え、規定を設けることなのだ。一番手っ取り早いのは時間である。一日二食でも三食でも構わない。ただ「8時間以内に摂取する」のだ。朝食を7:00に食べた場合、夕食は15:00だ。二食の場合、正午に昼食、夕食は20:00までとなる。要は16時間に及ぶ空腹が体の様々なスイッチを入れるのだ。どんなに空腹でも人は寝ることができる。肥料を与えすぎた植物は必ず腐る。肥満は腐敗と心得よ。

2021-10-29

意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 この状況(※大東亜戦争敗戦)において、国家再生のためには新しいモデルが必要でした。
【日本人はそのモデルを、恐るべき敵であったアメリカに求めた】のです。
ストックホルム症候群」という精神医学の概念があります。1973年にスウェーデンで起こった銀行強盗で、銀行員数名が人質として監禁され、死の恐怖に怯(おび)えて数日間を過ごした事件がありました。事件は結局、警察が突入して犯人を逮捕しますが、この間、人質となっていた被害者が、犯人を擁護するような言動を繰り返したのです。この事例から、極度の恐怖を体験した人間は、加害者を自分と同一視することで恐怖を免れるという心理的メカニズムがあることが理論化されました。日常的に夫から虐待を受ける妻、親から虐待を受ける子どもがなかなか被害を訴えようとしないもの、同じメカニズムによるものです。
 連日連夜の空爆を受け、原爆を投下され、米軍に軍事占領された日本人の深層心理に、同じメカニズムが働いたと私は見ています。アメリカという悪魔にこれ以上蹂躙(じゅうりん)されないためには、アメリカを理想国家として賞賛し、アメリカと一体になるしかない……。
 これは日本人の集団的な無意識として働いたものですから、文献として残っているわけではありません。しかし【この無意識は、意識化されない限り、戦後日本人に世代を超えて強迫的に受け継がれていく】のです。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

「意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく」――衝撃的な一言である。これを読むだけでも本書には必読書の価値がある。意識化とは「見る」ことだ。ありのままに真っ直ぐ見つめれば答えは自ずから導き出される。

 黒船襲来を「強姦」と位置づけたのは司馬遼太郎であった(『黒船幻想 精神分析学から見た日米関係』岸田秀、ケネス・D・バトラー)。ただ、歴史は振り返った時にしか見えてこない。当事者たちは川の流れの中で自分たちの位置すら理解できない。

 意識化されるのは一瞬である。「あ!」と気づけば違う世界が開ける。例えば私の場合、北海道で育ったこともあって長らく皇室制度を軽んじてきた。義務教育を苫小牧~帯広~札幌で受けてきたが、君が代を歌ったことは一度しかない。それも音楽の授業で習ったのだ。国旗に対する敬意を教わることもなかった。これが社会党王国の現状だった。もちろん道民が由緒正しい血筋と無縁であった背景にも由来しているのであろう。父方の祖父は戦争で樺太から引き揚げてきたと聞いている。北海道に家意識はない。「内の嫁」「内のしきたり」という言葉を聞いたことがない。このため全国で一番離婚が多い。家を背負っていないのだから当然だ。感覚はややアメリカに近いものがある。私は上京して「なんと因習が深いのだろう」と驚いた憶えがある。寺社仏閣も桁違いに多い。

 知人のライターが東日本大震災に対する天皇のメッセージをツイッターで紹介していた。彼は「陛下」と尊称をつけていた。それを見て、「へえー」と呟き、次の瞬間に「あ!」となった。胸の内に小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉の生きざまがまざまざと蘇った。尊皇の精神が息を吹き、血の中に流れ通った瞬間であった。様々な知識が線となってつながった。大東亜戦争の歴史的な意味合いもストンと腑に落ちた。私は日本人となったのだ。

 これは決して大袈裟な話ではない。若い時分から本多勝一や鎌田慧〈かまた・さとし〉、黒田清〈くろだ・きよし〉、浅野健一などを読んで、完全に頭の中はリベラルに洗脳されていた。彼らの反日感情を見抜くことができなかった。左翼が主張するポリティカル・コレクトネスは破壊工作の手段に過ぎない。

 日本近代史に関する書籍を読み漁り、菅沼光弘を経て、竹山道雄に辿り着き、小室直樹倉前盛通で完璧に補強した。武田邦彦の影響も大きい。

 民族的な自覚は危機の中から芽生える。戦争や災害の中で国家の輪郭が際立ってくるのだ。

尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

【専制君主・天皇親政ではなく、第4章でも挙げた天皇が「治(し)らす」姿が1000年以上つづてきた日本の伝統的統治体制であり、「国柄」「国体」というべきもの】なのです。

 その一方で、【神話とも紐づけながらその世界観への復古を理想とし、天皇を崇拝して死も厭(いと)わないという激烈な尊皇思想が、中世のある段階から登場】します。これを中国の朱子学の影響だと見抜いたのが山本七平〈やまもと・しちへい〉でした(『現人神の創作者たち』〔上・下〕ちくま文庫)(第3部393ページ参照)。(中略)
 朱子学は、【主君と臣下の区別を重んじる「大義名分論」、中華(文明)と夷狄(いてき/蛮族)を厳しく峻別(しゅんべつ)する「華夷(かい)の別」】という二つのキーワードで要約できます。
 謀反人や夷狄による政権奪取は天が定めた「大義に反する」から絶対に認めない、たとえ武力で屈しても精神において屈することはない、という不屈の精神は、モンゴルの侵略を受け続けた中国人の心をとらえました。
 南宋からの亡命者は鎌倉時代の日本にも来ており、彼らが日本にこの朱子学を伝えたのです。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

「治(し)らす」については後日紹介する。

 メモ書きしておくと、朱子学を重んじた明朝が滅ぶ→満州族が建てた清朝が中国全土を支配→長崎に来航した明朝の亡命者の中に朱舜水〈シュ・シュンスイ〉がいた→噂を聞いた水戸光圀〈みと・みつくに〉が江戸に招く→水戸藩の事業として『大日本史』を開始→「万世一系の天皇が日本を統治した」という朱子学的大義名分論で貫いた大著(1906年/明治39年完成)→水戸学の編纂に携わったグループが水戸学→尊皇攘夷思想の誕生、という流れになる。いやはや勉強になった。

 これが三島由紀夫の陽明学にまでつながるとすれば、朱子学の影響を決して軽んじてはなるまい。


オペレーションズ・リサーチの破壊力/『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール


『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ
『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』矢野和男
『パーソナルデータの衝撃 一生を丸裸にされる「情報経済」が始まった』城田真琴
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー
『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』ポール・シャーレ
『データ資本主義 ビッグデータがもたらす新しい経済』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓

 ・アルゴリズムという名の数学破壊兵器
 ・有害で悪質な数学破壊兵器のフィードバックループ
 ・オペレーションズ・リサーチの破壊力

『AI監獄ウイグル』ジェフリー・ケイジ
『快感回路 なぜ気持ちいいのかなぜやめられないのか』デイヴィッド・J・リンデン
『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング
『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原丈人

情報とアルゴリズム
必読書リスト その三

 営利大学のリクルーターも、怪しげな薬を売るいかさま師も、まずは相手の無知を確認する。そのうえで、つけ入りやすい弱みをもつ人を特定し、彼らのプライベート情報をうまく利用していくのだ。具体的には、相手にとって今一番の苦しみの元である「痛点」がどこにあるのかを探り出す。それは、自尊心の低さかもしれないし、暴力集団が対立を深める地域で子供を育てるストレスかもしれないし、ひょっとすると薬物中毒かもしれない。たいていの人は、グーグル検索で調べものをするときなどに、気づかないうちに自分の痛点を露呈させている。

【『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール:久保尚子〈くぼ・なおこ〉訳(インターシフト、2018年/原書、2016年)以下同】

「痛点」とは弱点である。その弱味に付け込んで期待させ、依存させ、契約させ、購買させる。古い広告は一方的なメッセージで本質的にはチラシの延長線上にある。テレビCMは声と動きのあるチラシに過ぎない。これからは違う。パソコンやスマホを通じてあなたの購買履歴、興味、関心、検索キーワード、どこにアクセスし、何分滞在していたか、といった情報をAIが読み解いて、あなたに最も適切な広告が表示される。行動ターゲティングという手法である。スマホの登場によって現実の行動も履歴化される。どの店で何を買ったか、だけではない。ゆくゆくはどの棚の前に長くいたかまでを掌握される。便利と言えば聞こえはいいが、解放された欲望がどんな社会を生み出すのかが明らかではない。

 チビ・デブ・ハゲは痛点である。昔の漫画誌の裏表紙にはシークレットブーツの広告が躍っていた。底上げシューズだ。かつらメーカーはハゲ頭に群がる(『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆)。デブは永遠の搾取対象である。昨今はBMI(ボディマス指数)というデタラメな指数が健康の根拠に格上げされたため、「より美しくより健康に」との二重奏をかなでるようになった。ま、脅し文句の強化だ。

 ブランド品、高級腕時計もわかりやすい。そもそも若者には不釣り合いだ。あるいは大排気量のクルマやバイクなど。これほど信号機が多く、渋滞まみれの日本でこれらのエンジン特性を発揮することは難しい。広告は欲望を刺戟し、切実なレベルにまで引き上げる。周りの人々が所持していれば自分も欲しくなってくる。社会的な動物である人間は欲望をも共有する。

 大半のスケジューリングテクノロジーのルーツは、実用性がきわめて高い、「オペレーションズ・リサーチ(OR)」と呼ばれる応用数学の領域にある。数学者らは、数世紀前からORの基礎を活用してきた。農家のために作物の植え付け計画を作成し、人や貨物の効率的な輸送を実現できる幹線道路地図を作成して土木技師を支えてきた。しかし、この学問領域が本領を発揮するようになったのは、第2次世界大戦が始まってからのことだった。米軍と英軍は、資源の使用を最適化するために、数学者チームを編成した。同盟国はさまざまな形で「交換比率」の記録をつけていた。味方の資源の投入量に対して、敵の資源をどれだけ破壊できたのか、その比率を計算したのだ。1945年3月~8月に実施された米軍の飢餓作戦では、食糧その他の物資が日本に無事に到着するのを妨げるために、第21爆撃集団が日本の商船を破壊する任務を負って飛び立った。この時、ORチームは日本の商船を沈めるのに要する1隻あたりの機雷敷設用航空機の数を最小限に抑えるために働いた。その結果、「交換比率」は40対1を上回った――日本の商船606隻を沈めるために失った航空機の数はわずか15機であった。これはかなり高い効率であり、その一端はORチームの功績だった。
 第2次世界大戦後、大手企業は(米国防総省も)膨大な資源をORに注いだ。ロジスティクスの科学は、商品の製造方法も市場への流通方法も一変させた。
 1960年代に入ると、日本の自動車会社がさらなる大きな飛躍を生んだ。「ジャスト・イン・タイム(かんばん方式)」と呼ばれる生産システムを考案したのだ。ハンドル部分や変速機の在庫を大量に抱え、巨大倉庫から取り出すのではなく、組み立て工場で必要に応じて部品を注文し、部品の待機時間なしで使用する。トヨタとホンダは複雑な供給(サプライ)チェーンを確立し、連絡すれば絶えず部品が届くような体制を整えた。業界全体が1つの生命体のようであり、独自のホメオスタシス(恒常性)制御システムを備えているようだった。

大東亜戦争はアメリカのオペレーションズ・リサーチに敗れた/『藤原肇対談集 賢く生きる』藤原肇

 オペレーションズ・リサーチの破壊力は第二次世界大戦で最大限に発揮された。米軍は国際法を踏みにじって日本の非戦闘員を殺戮(さつりく)した。戦後、日本軍の残虐行為が国際社会で声高に主張されたのは自分たちの非道を隠蔽(いんぺい)するためだった。南京大虐殺というフィクションの犠牲者を30万人としたのも原爆犠牲者と釣り合いをとるためだった。

 オペレーションズ・リサーチこそはアルゴリズムの時代を告げる鐘の音(ね)であった。人類は争うことでそれを見出したのだ。

 合理化の風は止(や)むことなく加速し続ける。コンピュータとWebという約束の地に辿り着いたアルゴリズムは永遠の生命を手にしたも同然だ。フィンテックはマネーの意思を解き放ち、あらゆる決済・取引・交換が低コストで円滑に行われる。銀行や国会運営が過去の遺物となるのは時間の問題だ。一部のトップが行う意思決定はビッグデータに置き換えられる。

 それが薔薇色になるかどうかはわからない。便利になるのは確かだ。

岡田英弘、島田和幸、渡部悦和、佐々木孝博


 3冊挫折。

誰も知らなかった皇帝たちの中国』岡田英弘(WAC BUNKO、2006年)/70ページあたりで挫ける。今読む必要はなさそう。再読するかも。

一生切れない、詰まらない「強い血管」をつくる本 内皮細胞が活性化する食習慣で』島田和幸(永岡書店、2011年)/今まで読んだ中では最低の血管本である。その辺の医者が言うところと変わりがない。玉石混淆という言葉があるが石以下だ。永岡書店の見識を疑う。

現代戦争論 超「超限戦」 これが21世紀の戦いだ』渡部悦和〈わたなべ・よしかず〉佐々木孝博〈ささき・たかひろ〉(ワニブックスPLUS新書、2020年)/400ページ超のボリューム。文章が硬く、長大なレポートという印象。読み物としてはかなり苦しい。

2021-10-28

大東亜戦争はアメリカのオペレーションズ・リサーチに敗れた/『藤原肇対談集 賢く生きる』藤原肇


『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹、藤原肇

 ・大東亜戦争はアメリカのオペレーションズ・リサーチに敗れた

『ジャパン・レボリューション 「日本再生」への処方箋』正慶孝、藤原肇

藤原●日本人は太平洋戦争の敗因を米国の物量作戦だと考えがちです。だが、アメリカが英国から導入して完成させたオペレーションズ・リサーチによって、日本流その場しのぎの大福帳のやり方が破綻させられて、徹底的に打ち負かされた事実をいまだに気づいていない。
 要するに、数理発想に基づく計算されたリスク管理によって、太平洋戦争は頭脳戦で日本が完敗したということです。

【『藤原肇対談集 賢く生きる』藤原肇〈ふじわら・はじめ〉(清流出版、2006年)以下同】

「オペレーションは作戦、リサーチは検証、という意味です。互いに干渉しあう複数の作戦が最適な方法で、効率的に実行可能かどうか、リサーチ、つまり検証する、そういう目的で使われ始めた科学でした。様々な環境、次々に変化する状況において、 数学や統計学を用いた数理的なモデルに落とし込み、分析することで最適なアプローチを導きます」(オペレーションズ・リサーチとは? | ‐株式会社 構造計画研究所‐ オペレーションズ・リサーチ部)。

「オペレーションズリサーチ(OR)は、意思決定にかかわる科学的なアプローチと言われている。ある組織の運用問題に対して、さまざまな方法を用いて分析し、適切な解決法を見つけることである。そのため、しばしば経営学とも言われる。分析方法としては、数理モデル、統計的な手法、アルゴリズムなどがある」(オペレーションズリサーチ(OR):Operations Research:研究開発:日立)。

 マーケティング分野では「ランチェスター戦略」(ランチェスターの法則)と呼ばれる。それではと手始めに『まんが新ランチェスター戦略 1 新ランチェスター戦略とは』(矢野新一、まんが:佐藤けんいち、ワコー、1995年)を開いたが、敢えなく挫折した。

 本書で初めてオペレーションズ・リサーチという言葉を知った。日本の近代史及び大東亜戦争に関してはそこそこ読んできたつもりであったが、ORを敗因と指摘したのは藤原肇が嚆矢(こうし)ではあるまいか。藤原は石油コンサルタントで石油開発会社をアメリカで経営してきた人物である。彼にとってORは常識であったのだろう。石油精製には様々なプロセスがあり、不安定な国情や戦争、あるいは経済・金融など複合的なリスクが伴う。ORを欠けば金鉱を掘り当てるような博奕(ばくち)と化す。莫大な初期投資を可能にするのは精確なリスク・マネジメントである。

藤原●日本人はハード志向だから飛行機や軍艦を量として数え、主として戦闘の問題に全力を傾けてしまうから、システムとしての戦争を見忘れがちになる。

 これまた重要な指摘で、大東亜戦争では兵站(へいたん/ロジスティクス)を無視して南進したことが多くの餓死者を生んでしまった。日本には伝統的に輜重(しちょう)を軽んじる文化がある。どこか国土の感覚が関東平野の域を超えていないようなところがある。水が豊富なことも危機意識を鈍らせていることだろう。

 特に目に見えるものの増減に一喜一憂して、目に見えないものの変化に注目しないから、システム発想をしないという欠陥に支配されてしまうのです。
 そういった民族的な欠陥への反省を含めて、動態変化の重要性とサイバネティックスを結びつけ、それを資本と情報の流れとしてフローチャートにして、決算の機構を体系化したのが会計工学だと思います。

 システム思考ができない現実は今も変わらない。藩閥を打開したと思いきや、今度は陸軍と海軍が仲違いをし、戦局の正確な情報が首相にまで上がってこなくなっていた。東条英機首相はミッドウェー海戦の敗北を知らされていなかった。張作霖爆殺事件(1928年/昭和3年)で田中義一首相は天皇陛下に嘘をつき満州事変(1931年/昭和6年)では侍従武官長と若槻礼次郎首相が事実を伏せた(兼原信克)。昭和天皇は関東軍の暴走を「下剋上」と断じて厳罰に処さなかったことを悔やまれた(繰り返し戦争を回顧 後悔語る|昭和天皇「拝謁記」 戦争への悔恨|NHK NEWS WEB)。

 日本人の行動様式(エトス)が戦前も戦後も変わらないことを指摘したのが小室直樹の初著『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』(ダイヤモンド現代選書、1976年)であった。藤原肇と小室直樹の対談は自然な流れであった(『脱ニッポン型思考のすすめ』ダイヤモンド社、1982年)。



オペレーションズ・リサーチの破壊力/『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール

2021-10-26

有害で悪質な数学破壊兵器のフィードバックループ/『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール


『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ
『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』矢野和男
『パーソナルデータの衝撃 一生を丸裸にされる「情報経済」が始まった』城田真琴
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー
『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』ポール・シャーレ
『データ資本主義 ビッグデータがもたらす新しい経済』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓

 ・アルゴリズムという名の数学破壊兵器
 ・有害で悪質な数学破壊兵器のフィードバックループ
 ・オペレーションズ・リサーチの破壊力

『AI監獄ウイグル』ジェフリー・ケイジ
『快感回路 なぜ気持ちいいのかなぜやめられないのか』デイヴィッド・J・リンデン
『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング
『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原丈人

情報とアルゴリズム
必読書リスト その三

 本書で論じる数学破壊兵器の多くは、ワシントンDC学区の付加価値モデルも含めて、フィードバックがないまま有害な分析を続けている。自分勝手に「事実」を規定し、その事実を利用して、自分の出した結果を正当化する。このようなたぐいのモデルは自己永続的であり、きわめて破壊的だ。そして、そのようなモデルが世間にはあふれている。

【『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール:久保尚子〈くぼ・なおこ〉訳(インターシフト、2018年/原書、2016年)以下同】

フィードバックとは/『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』池谷裕二

 作成者の意図によって作られたモデルがアルゴリズムとなって走る。ここにおいてAIが為すのは単なる「振り分け」である。しかもビッグデータが示すのは相関性であって因果関係ではない。「相関関係が因果関係を超える」(『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ)こともあるが、因果関係を滅茶苦茶にする場合も出てくる。なぜならビッグデータはある種の擬似相関であるからだ。大袈裟に言ってしまえば答えが決まっていない連想ゲームみたいな代物だ。

 現在、ビジネスから刑務所まで、社会経済のあらゆる局面の細かな管理が、設計に不備のある数理モデルによって遂行されている。それらの数学破壊兵器には、ワシントンの公立学校でサラ・ウィソッキーのキャリアを狂わせた付加価値モデルと同じ特徴が多く備わっている。中身が不透明で、一切の疑念を許さず、説明責任を負わない。規模を拡大して運用されており、何百万人もの人々を対象に、選別し、標的を絞り、「最適化」するために使用されている。算出された結果と地に足の着いた現実とを混同することによって、有害で悪質な数学破壊兵器のフィードバックループを生み出しているものも多い。

 こうなると「業」(カルマ)と言っていいだろう。アルゴリズムは文明が織り成す業(ごう)なのだ。身口意(しんくい)から離れた業はモデル設計者が神となって下す恩寵と罰となって人々を分断する。信用スコアリングは貧富の固定化に寄与し、より貧困な者に鞭を振るう。合理が生んだ不合理を人類は取り除くことが可能だろうか? AIやビッグデータがインフラストラクチャー化すれば、もう後戻りはできまい。

 人々を苦しめる一番の要因は、有害な悪循環を生むフィードバックループにある。すでに見てきたように、生まれ育った環境に基づいて受刑者をプロファイリングする判決モデルでは、判決そのものが受刑者を追い詰め、判決を正当化するような結果を招いている。この破壊的ループは延々と繰り返され、その過程でモデルはますます不公平になっていく。

 透明性と異議申し立ての担保が不可欠なのは言うまでもないが、ビッグテックのような民間企業に対してどこまで規制できるのかが不明である。彼らは法整備よりも遥か彼方にまで進んでいる。また潤沢な資金でロビー活動も活発に行っている。政治はマネーに支配され、人間はアルゴリズムに従う時代の到来だ。

 要約すると、不透明であること、規模拡大が可能であること、有害であること――この3つが数学破壊兵器の三大要素である。

 私は原子爆弾、銀行の決済システム、そしてインターネットが、現代のラッダイト運動を不可能にしてしまったと考えている。これは民主政の根幹に関わる問題なのだ。例えば米騒動を起こすことは可能だろう。だが同様の目論見で銀行へ行ったところで銀行に現金はそれほどない。また、どれほどの国民が武装蜂起したとしても原爆にはかなわない。パソコン上の重要な情報はクラウドにアップロードされ、いつでも別の場所でダウンロードできる。つまり何かを破壊することで国家を転覆させることはもう不可能なのだ。

「そのために選挙というシステムがあるのではないか?」という声が聞こえてきそうだが、かつての民主党があっさりとマニフェストを放り投げて地に落としてからというもの、選挙公約に意味はなくなった。自民党の派閥は政策集団ではなく選挙互助会に堕している。国民もまた政策など気にもかけていない。会社の指示や、テレビで見た印象、マスコミの煽り方であっちへ入れたりこっちへ入れたりしているだけである。自分の政治信条に合致した政党を支持しているのは左翼だけだ。公明党は例外で教団益(税務調査回避)を目指している。

 我々は既にデバイスなしで生きてゆくことは難しい。スマホの次はウェアラブルな端末となり、やがては人体にデバイスが埋め込まれる。人類は進化を遂げてロボットになるのだ。