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2021-10-30

主な動脈の位置/『別冊Newton 人体の取扱説明書』


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎
・『別冊Newton 人体完全ガイド

 ・主な動脈の位置

・『別冊Newton 40代からの人体の取扱説明書

 なぜ、糖尿病患者にうつ病の症状が発症しているのでしょうか。さまざまな理由が考えられています。
 糖尿病は血液中のエネルギー源である糖(血糖)をうまく利用できなくなる病気です。そのため、食事療法や運動療法などを通じて意識的に血糖をコントロールする必要があります。(中略)
 一方、うつ病の患者が糖尿病を併発するリスクは、うつ病でない人と比べて60%も高いといわれています。主な原因は、うつ病に伴う生活習慣の変化です。2018年に国立精神・神経医療研究センターなどのグループが調査した「生活習慣とうつ病の調査」では、うつ病患者は間食や夜食を食べることが多く、引きこもりで運動不足になることが多いため、糖尿病をさらに悪化させてしまうことがわかっています。さらにはストレスを解消するために喫煙量やアルコール量が増えるなど、さらなる悪循環へと繫がる傾向も少なくありません。

【『別冊Newton 人体の取扱説明書』(ニュートンプレス、2020年)】


 これこれ。これが知りたかったのよ。何となく揉んでいると筋肉のマッサージになってしまうのだ。「動脈」で検索すると意外とヒットする書籍が少ない。そこで「人体」で検索して見つけた一冊。

 再三書いてきたように私は『Newton』誌のレイアウトが好きではない。図が大きすぎて相対的にフォントが小さく見えてしまう。行幅もバランスが悪く読み手への配慮を欠いている。しかも横書きで漢字の香りを失わせている。つくづくセンスのない雑誌だと思う。

 そのため同誌を熟読したことは一度もない。っていうか読む気が起こらない。いつもつまみ食いに終わる。

 見出しに名文句があったので紹介しよう。

「肥満は血管にダメージをあたえ、命に関わる病気を発生させる」
「意外な関係。肥満は『がん』もひきおこす」
「アルツハイマー病も肥満が原因?」
「睡眠負債と『肥満』は、となりあわせ」

 ダイエットの本来の意味は食習慣・食事制限である。そこをすっ飛ばして「痩せる」と思い込んでいる人が多い。つまり「ダイエットする」とは食習慣を見直し、食事に制限やを加え、規定を設けることなのだ。一番手っ取り早いのは時間である。一日二食でも三食でも構わない。ただ「8時間以内に摂取する」のだ。朝食を7:00に食べた場合、夕食は15:00だ。二食の場合、正午に昼食、夕食は20:00までとなる。要は16時間に及ぶ空腹が体の様々なスイッチを入れるのだ。どんなに空腹でも人は寝ることができる。肥料を与えすぎた植物は必ず腐る。肥満は腐敗と心得よ。

2021-08-11

クエン酸は万能薬/『新健康法 クエン酸で医者いらず』長田正松、小島徹


 ・クエン酸は万能薬

『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之

必読書リスト その二

 クエン酸の有機酸としての働きは酢の3倍です。しかも「酢の強さ」は酢の3分の1と弱いので、酸っぱい味が苦手な人にもたいへん飲みやすく感じられるのです。
 これが、クエン酸が酢よりも健康効果が得られやすい理由の1つです。

【『新健康法 クエン酸で医者いらず』長田正松〈おさだ・しょうまつ〉、小島徹〈こじま・とおる〉(日東書院本社、2003年)以下同】

 クエン酸だけだと飲みにくいので私は重曹を混ぜている。便の色が黄色っぽくなってきたので効果はあるのだろう。水に浮くまでには至っていない(食物繊維不足はこれでチェック!|大塚製薬)。

 クエン酸と重曹は元々掃除のために買ったのだが、飲めるとなれば一石二鳥だ。効果が実感できない人は掃除に使えばよい。

 ところが、野菜や果物よりも酸性体質改善に効果的なアルカリ食品があるのです。それが酢、つまりクエン酸です。

 クエン酸は「酸」という文字が入っているものの、実はたいへんに優れたアルカリ性食品なのです。その字の示すようにクエン酸そのものは確かに酸性です。ところが、クエン酸を服用すると、胃に到達するまでは酸性なのですが、十二指腸に入ると膵臓から出た強いアルカリ性の重曹と化学反応を起こし、クエン酸ソーダとなってアルカリ性になるのです。クエン酸を身体が吸収すると、すべてアルカリ性として働くのです。
 つまりクエン酸を効果的にとっている限り、私たちの身体は弱アルカリ性に保たれやすくなるのです。

 少し調べたのだがエビデンスが見つからず。「胃からくる酸を中和するのに必要な大量の炭酸水素ナトリウム(重曹の成分)を十二指腸に分泌する」(膵炎の概要 - 03. 消化器の病気 - MSDマニュアル家庭版)。膵液は弱アルカリ性なので、「強いアルカリ性」が何を意味するのかが判らず。

 最初から最後に至るまで「クエン酸は万能薬である」と主張している。自分で試してみるのが一番であろう。尚、長田正松は薬事法違反と公職選挙法違反で有罪となっている。

2021-07-15

自然派志向は老化を促進する/『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン


・『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス
・『盲目の時計職人』リチャード・ドーキンス
・『遺伝子の川』リチャード・ドーキンス
・『赤の女王 性とヒトの進化』マット・リドレー
・『ゲノムが語る23の物語』マット・リドレー
・『やわらかな遺伝子』マット・リドレー
『遺伝子 親密なる人類史』シッダールタ・ムカジー

 ・自然派志向は老化を促進する

身体革命
必読書 その五

 わたしたちのほとんどは、「自然派志向」の商品がブームになる以前の時代を思い起こすことができない。しかし、50年前にはテクノロジーが王様で、わたしたちは自然を改良することになんの良心の呵責(かしゃく)も感じなかった。1950年代、子供はまだ幼い頃に扁桃腺(へんとうせん)を切られた。喉頭感染症のときに赤くなる傾向があるため、医師は自然がミスを犯したと考えたのだ。1950年代、スポック博士は母乳よりも乳製品を推奨していた。もちろん、「12の方法で体を強くする」と宣伝されたワンダーブレッドも忘れてはならない。
 その後の半世紀にわたって、わたしたちは自然食品や化粧品、石鹸、漢方薬、さらには自然素材の洋服などを勧められてきた。自然=健康。医学界は――とても立派なことに――体の働きを第一に考えることを学び、壊れてもいないものをあわてていじくりまわすのではなく、体に協力して自然治癒を推奨するようになった。こんにち、あらゆる病気に対する自然療法は、それが可能であるときはより好ましいと見なされている。
 そこまではいい。しかし、つぎのステップに進むには、すこし考える必要がある。わたしたちは老化に関するべつの現実に順応しなければならない。自然食や天然のハーブ、自然療法などは、老化を防ぐとは思えない。
 本書は「老化は進化のプログラムの欠陥ではなく、自然に正しく選択された設計特性である」と主張してきた。老化はごく深い意味において“自然”なものであり、進化によって生みだされ、遺伝子に組みこまれたものなのだ。
 自然なものへの崇拝は、そもそも進化への信仰から生まれたものだ。自然なものとは、わたしたちの祖先である生物や人間が進化してきた環境の一部である。ゆえに、わたしたち地震も自然なものに適応していると考えられる。自然食がよいものだとすれば、それは進化がわたしたちの体に合わせて授けた食物だからだ(この論理をさらに推し進めると、原始時代の食事をそっくりそのまま再現しようとする「パレオ・ダイエット」に行きつく)。自然選択はジェット機時代の生活のペースや、スモッグを吸いこんだりコカ・コーラを飲んだりする生活に合わせて人間をつくったわけではない。とすれば、現代生活の不満の多くは、わたしたちが送っている生活と、進化がわたしたちに準備した生活がマッチしていないことから起こるのではないか?
 そして実際、わたしたちの病気の多くが現代という時代の産物であるのは正しいように見える――喫煙や都会のスモッグによる肺癌、ジャンクフードによるメタボリック・シンドローム(脂肪の増加、高血圧、高血糖といった要因による2型糖尿病)、過剰な刺激による神経病、分裂した社会に生きることからくる鬱病。

 人は金をかけて使うことばかりにあくせくし、
 自分たちを取り巻く自然に目を向けようとしない。

 詩人のワーズワースがこの一節を書いたのは、1802年のことだ! 21世紀のわたしたちの生活モードを見たら、ワーズワースはなんというだろうか? 現代の西欧文明が生んだ孤独によって人間が負った傷、化学汚染、レトルト食品、人間の心理的欲求やバイオリズムを無視して押しつけられたスケジュール――これらはすべてすごくリアルで有害だ。しかし、老化とはあまり関係がない。
 老化は現代社会が生んだ疾病ではない。きのう生まれたものではなく、古くから伝わってきたものだ。19世紀の人々の写真を見たり、ヴィクトリア時代の小説に描かれた人たちの年齢を考えてみればいい。こうした人たちは、タバコや農薬やジャンクフードやコミュニティの崩壊以前の世界を生きていた。こんにちの標準からすれば、19世紀の人たちはみな自然食を食べていたにもかかわらず、現代の同年齢の人間より、容姿も感覚もふるまいもずっと年寄りじみている。19世紀の小説では、40代の登場人物はバイタリティを失っているし、50代の登場人物は現代の老人のように描かれている。そしてもちろん、当時は60代まで生きる人はごくまれだった。19世紀の平均余命はいまよりずっと短かったのだ。これは、出産で命を落とす母親が多かったとか、壮年の人々が伝染病で死ぬことが多かったとかいった理由からではない。当時の人たちは、現代のわたしたちが人生の最盛期と考えている年齢で、すでに健康を害し、バイタリティを失い、認知機能が低下していたのである。

 自然が体にいいという説は、「進化はわたしたちを組み立てるにあたって、最高の健康が得られるように設計したはずだ」という考えに由来する。「自然食を摂取することは、自然選択によって設計されたとおりに体を機能させる手助けをしていることであり、わたしたちは一歩うしろの退いて、体がわたしたちを癒すためにしていることを勝手にやらせたほうがいい」――この仮定は、若者の病気にはよく合致する。しかし、本書をここまでお読みになった方なら、老化は遺伝子に組み込まれた自己破壊プログラムであることを理解しているはずだ。この場合、体は自分を癒すためにベストをつくしたりはしない――それどころか、反対に自分自身に対して害をなすことをしている。
 自然食や自然療法は、体が自分自身を破壊する手助けをするのである。

【『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン:矢口誠訳(集英社インターナショナル、2018年)】

 マット・リドレーを読んだのは2年前である。まだ書評を書いていなかったとは……。小難しい本を後回しにするのは悪い癖である。

 本書はネオダーウィニズム批判を旨としており、読みやすい上に豊富なトピックで飽きさせることがない。訳文も平仮名の多用で読むスピードに配慮している。ドリオン・セーガンはカール・セーガンの息子。

 文句なしの面白さだが結論に異議あり。寿命を伸ばすことに固執しすぎだ。もっときれいにスパッと死ぬ準備をするのが進化の道理だろう。

 そもそも健康を意識すること自体が不健康な証拠である(三木清)。菜食主義者は植物の毒を省みることがない。そういう意味では健康もスタイルと化した感がある(石川九楊)。

 19世紀どころの話ではない。磯野波平が54歳と知った時の驚きは今でもありありと覚えている。当時私は52歳だった。『サザエさん』の連載が始まったのは昭和21年(1946年)のこと。昭和40年代あたりまでは特に違和感がなかったように思う。つまり年寄りが若々しくなったのは終戦前後に生まれた世代と考えてよさそうだ。

 栄養学が散々デタラメを流布してきたのも戦後の特徴である。しかしながら、その一方で平均寿命は確実に伸びた。私が二十歳(はたち)の時分は30代の女性が熟女で、40代は年増(としま)と呼称していた。ところが今時と来たら、40代で結婚したり出産することは特段珍しくない。バブルの頃は女性の年齢がクリスマスケーキになぞらえ、26歳になると「売れ残り」みたいな言われ方をしていた。

 社会全体が高齢化することで周囲から「年寄り扱い」をされることが少なくなったのが最大の要因かもしれない。

「19世紀はヨーロッパ――とくに英国――の時代で、地主階級が存在の正当性を失いつつあるときだった。地主階級はその特権的な地位を正当化するために、社会ダーウィニズムの原理に飛びついた」。私の乏しい知識ではネオダーウィニズムと社会ダーウィニズムの違いもよくわからない。

 マット・リドレーを読むとどことなく新自由主義と同じ体臭がする。以前からネオダーウィニズムを批判している人物に養老孟司と池田清彦がいる。灯台下暗しであった。

2021-06-15

現代の小麦は諸病の源/『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス


アメリカの穀物輸出戦略
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー

 ・現代の小麦は諸病の源

西田昌司×吉野敏明 参政対談 ・『病気がイヤなら「油」を変えなさい! 危ない“トランス脂肪”だらけの食の改善法』山田豊文
・『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』奥山治美
・『危険な油が病気を起こしてる』ジョン・フィネガン
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット

身体革命

 わたしたちが日々食べているブランマフィンやオニオンチャバタなどに巧妙に形を変えているものは【かつての小麦ではなく】、20世紀後半に行われた遺伝子研究によって形質転換されたものです。現代の小麦が本物の小麦なら、チンパンジーは人間だと言うようなものです。
 50年代の運動をしないやせた人たちと、トライアスロン選手を含めた21世紀の太った人たちの違いは、穀類――もっと正確に言うと、遺伝子操作された現代の小麦と呼ばれるもの――の消費量の増加だとわたしは考えています。
 小麦を体に悪い食物だと言えば、ロナルド・レーガンを共産党員と言うに等しいことは、わかっています。伝統的な主食を有害食品呼ばわりするとは、ばかなことを言うと思われるでしょうし、非国民とさえ言われることでしょう。それでも、世界で最も人気のある穀物が世界で最も破壊的な食品成分であることは、これから証拠を挙げて説明していきます。
【小麦による人体への奇妙な影響】として、食欲増進、エクソルフィン(脳内麻薬のエンドルフィンと同等の外因性の物質)による脳の活性化、食欲と満腹のサイクルを繰り返す引き金となる血糖値の大幅な亢進、病気や老化の原因となる糖化反応、軟骨をむしばみ、骨を破壊する炎症やpHバランスの破壊、免疫反応疾患の活性化が記録されています。
 小麦を消費することで、セリアック病――小麦グルテンの摂取による破壊的な腸管疾患――から、さまざまな神経障害、糖尿病、心臓疾患、関節炎、奇妙な発疹、統合失調症のおぞましい妄想まで、さまざまな病気が引き起こされます。

【『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス:白澤卓二〈しらさわ・たくじ〉訳(日本文芸社、2013年)】

 上記リンクの油本3冊は既に読んだのだが書評を書いてないため参考情報として挙げておく。一応言いわけしておくと、当ブログ内で書籍にリンクを貼ってあるものは、「既に読んだかこれから読むか」という作品に限っている。それが最低限の誠実さというものだ。

 大衆消費社会を先導するのは広告である。すなわち新聞・雑誌・ラジオ・テレビ、そしてインターネットとマスメディアは発達してきたわけだが、心理学や行動経済学を駆使して様々な仕掛けを施す。感情を操作し、欲望に点火し、消費という行動を促す。現代における幸福とは購買の異名である。

 個人的な話で恐縮だが私は宗教と科学についてはそこそこ知識がある。日本近代史はここ数年間、集中的に学んできた。近代とは西洋化の異名であるから世界史も参照せざるを得ない。経済の原理についてはいささか昏(く)いが、一般人よりは金融を知っている。そんな私でも、こと食べ物や健康に関しては素人同然で批判し得るだけの基準がない。「物は試し」の精神で臨んでいるが、知識や思考が身体に与える影響は決して少なくない。

 例えばこんなことがあった。随分前のことだがテレビで野口五郎が「卵の黄身を食べられない」と語っていた。それを聞いた私は、「馬鹿だなあ。白身だけじゃ栄養が少ないだろーよ」と思った。ところが数日後、目玉焼きの黄身を食べていたところ、突然気分が悪くなったのだ。頭に刺すような感覚が走り、胸が悪くなった。それ以降、しばらく卵の黄身を食べることができなくなった。今でも半熟は駄目だ。私は野口五郎のファンでもなければ教祖と崇めているわけでもない。それでも何気なく耳に入ってきた情報は体を変えることがあるのだ。

 もう一つ書いておかねばならないことは、現代人の不健康な食事を論(あげつら)う書籍は山のようにあるわけだが、寿命が伸びたことを無視しているような気がする。もちろん長寿の原因が幼児の死亡率低下にあることは明白だが、日本は2007年に超高齢社会となった。2030年には日本人の平均年齢は51.5歳になると予測されている。


 平均寿命と健康寿命の差分は「闘病あるいは要介護の期間」となる。1990年代後半から老老介護という言葉が表面化した(中村律子:PDF)。「1995年9月15日の読売新聞で鵜飼哲夫が佐江衆ー著『黄落』の評として用いており、1996年2月22日第136回国会衆議院予算委員会公聴会にて公述人として樋口恵子東京家政大学教授が質問に立ちこの語を用いた」(Wikipedia)。厚生労働省は2006年から介護殺人の件数をカウントしている。「2015年(平成27年)度までに247件、250人の被害者が出ている」(Wikipedia)。特に世間の耳目を集めたのは京都伏見介護殺人事件(2006年)であった。

 そして2006年真冬のその日、手元のわずかな小銭を使ってコンビニでいつものパンとジュースを購入。母親との最後の食事を済ませ、思い出のある場所を見せておこうと母親の車椅子を押しながら河原町界隈を歩く。やがて死に場所を探して河川敷へと向かった。

「もう生きられへんのやで。ここで終わりや」という息子の力ない声に、母親は「そうか、あかんのか」とつぶやく。そして「一緒やで。お前と一緒や」と言うと、傍ですすり泣く息子にさらに続けて語った。「こっちに来い。お前はわしの子や。わしがやったる」。  その言葉で心を決めた長男は、母親の首を絞めるなどで殺害。自分も包丁で自らを切りつけて、さらに近くの木で首を吊ろうと、巻きつけたロープがほどけてしまったところで意識を失った。それから約2時間後の午前8時ごろ、通行人が2人を発見し、長男だけが命を取り留めた。

「地裁が泣いた介護殺人」10年後に判明した「母を殺した長男」の悲しい結末 | デイリー新潮

 具体的な数字はわからないが、報道される介護殺人は情状酌量で無罪となるケースが多いように思う。確かによんどころない事情があるのはわかる。だが「無罪」はまずいだろう。これだと「介護で行き詰まったら家族が処理せよ」とのメッセージを放っているようにすら見える。例えば上記事件だと、生活保護を拒んだ役所の人間の責任ぐらいは問うて然るべきだろう。

 話が思い切り横道に逸れてしまった。健康寿命を伸ばすのは食事と運動である。あとは何でも語れる友達がいればいい。地域で新しい年寄りのコミュニティを作ることを数年前から思案中である。


2021-03-11

新型コロナウイルスへの対処法/『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修


『臓器の急所 生活習慣と戦う60の健康法則』吉田たかよし
『医学常識はウソだらけ 分子生物学が明かす「生命の法則」』三石巌
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

 ・新型コロナウイルス対処法

身体革命
必読書リスト その一

 ところが、その「あり得ないこと」のうちのひとつが、
 どうやら事実であるために
 新型コロナウイルスの根絶は非常に難しいものとなっています。

【それは「重症患者ほど、抗体の値が高かった」ということ。】

「抗体」は、体内の免疫細胞がウイルスを認知して
 そのウイルスを効果的に排除するために産生(さんせい)する分泌物(ぶんぴつぶつ)です。
 ふつう、わたしたちの身体のなかで起こる
 免疫細胞とウイルスとの戦いは
 抗体という最終兵器がつくられることで決着します。

 ところが、ウイルスを効果的に駆逐(くちく)するはずの抗体が
 感染しても無症状の患者や軽症者には少なく
 重症患者には多く検出されるのは、大きな矛盾です。
 抗体が多くつくられたのなら、
 それだけ新型コロナウイルスを撃退しているはずなのに、
 実際は重症化している――。
 つまり、「抗体は新型コロナウイルス感染症からの回復にあまり役に立っていない」と考えざるを得ません。
 さらに、もうひとつ驚くべき事実が解明されました。

【「回復した患者の体内から、抗体が消えていく」】

 抗体をつくる細胞は、いちどつくられれば一生、体内に残り続けます。
 そしてミサイル防衛システムのように、
 次に同じウイルスが身体に入ってきたら
 即座に撃ち落とす準備がなされているのです。

 そして、その声質を利用し、
 事前に身体のなかにこの抗体による防衛システムをつくることが
 一般的な「ワクチン」の目的です。

 しかし、新型コロナウイルスの抗体はあまりウイルスの撃退に寄与せず
 しかも1カ月から2カ月で消えてしまう。
 それはつまり、

【「抗体をつくるワクチンでは、感染予防が困難である」】

ということを意味しています。

「ワクチンを開発すれば感染拡大は収束する」という
 従来のウイルス感染症に対する根絶への勝ちパターンが
 新型コロナウイルスには通用しない可能性が判明したのです。
 さらに、「重症者は抗体が高い値を示している」という事実は
 もうひとつの恐るべき新型コロナウイルスの特徴をあらわしています。

【それは、免疫の暴走、
「サイトカインストーム」を引き起こすこと。】

 新型コロナウイルスは、主に肺や気管支などの
 呼吸器の細胞に感染して入り込み、
 細胞を、ウイルスを複製するあための増殖装置に変えてしまいます。

【『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸〈こばやし・ひろゆき〉、玉谷卓也〈たまたに・たくや〉監修(プレジデント社、2020年)】

 入魂の一冊である。飾り気のない装幀(そうてい)、「新型コロナウイルス」をタイトルに謳わない素っ気なさ、参考書のような色刷り、読みやすい文章、そして1100円という価格がプレジデント社の本気を示している。本書は「新型コロナウイルスへの対処法」を明快に説いた一冊である。ありふれた健康本と同じ作りなので「おかしいな?」と思いながら読んでいたのだが、小林は順天堂大学の医学部教授で、玉谷は日本免疫学会評議員で同大学の非常勤講師だ。

 新型コロナウイルスを取り巻く報道は「始めにワクチンありき」という姿勢が見え見えで、重症者や死者の多い欧米の実態を衝撃的に取り上げて、日本国内の実情を意図的に隠蔽してきた。既に世界各国で投与されているワクチンは動物実験を行うこともなく、長期毒性の影響も検証されていない。また陰謀論界隈を賑わす事実がある。ビル・ゲイツが2015年にTEDでパンデミックを予想した講演を行い、2019年には「次に起きるパンデミックはコロナウイルスによる」と想定し、「イベント201」という公開演習を実施したのだ(ビル・ゲイツと新型コロナウイルス)。

 またイタリア人医師のロベルト・ペトレラ博士が告発した動画は1分後に削除されたという。


イタリア人医師の告発:こちらは、ロベルト・ペトレラ博士です。彼が言わなければならないことに耳を傾け、そして大いに広く共有しよう - さてはてメモ帳
恐怖の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン:人類の大量絶滅のプログラム : 花子のブログ

 問題は新型コロナウイルス感染に関するデータが出てこないところにある。学術論文が次々と書かれているのにメディアが紹介することもない。テレビは感染者の数で不安を煽り、視聴者をワクチン接種に誘導するだけだ。

 かような言論情況を思えば何らかの統制が働いているものと考えてよかろう。学者や研究者が本気で正義を叫べば研究費や助成金を失う。功成り名を遂げようとする若手の学者は牙を抜かれている。もはや噛む力さえ残っていない。

「抗体をつくるワクチンでは、感染予防が困難である」との一言には千鈞(せんきん)の重みがある。結局自分の体は自分で守るしかない。そんな当たり前の事実に気づかされる。免疫、自律神経、腸内細菌、食事法などについてもしっかりとした内容が書かれていて目から鱗が落ちる。

2021-02-07

背骨を自由に解き放つ/『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏


『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』ロビン・マッケンジー
『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』

 ・背骨を自由に解き放つ

【肩甲挙筋の圧痛を調べて、右が痛かった場合は右側から、左が痛かった場合は左側からゆらしましょう】。どちらかわからない場合は、僧帽筋の圧痛がある側からゆらしましょう。

【『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏(現代書林、2018年)】

 著者が開発したDRT(ダブルハンド・リコイル・テクニック)という療法の解説書である。手技は画像だとわかりにくい。そもそも実際に見たとしても素人目では何をどうするのかが理解できないことだろう。職人技と一緒である。

「頭痛、腰痛、肩こり、手のこわばり、関節痛(ひざ、ひじ、股)をはじめ、ギックリ腰、椎間板ヘルニア、頚椎ヘルニア、O脚、顎関節症、むち打ち、ひざ痛、腱鞘炎、リウマチ、四十(五十)肩、神経痛、自律神経失調症、めまい・耳鳴り、ゴルフエルボー、テニスエルボー、産後の骨盤矯正、内科的症状等々」に効果があるという。健康本の「効果」と「体験談」は眉に唾(つば)をつけるのが私の習い性となっている。個別が普遍につながるとは限らない。梅干しを額に貼りつければ頭痛が治る人も1万人に一人くらいはいることだろう。ただし梅干しを貼らずとも治るタイミングであった可能性は否定できない。我々の思考は時間の前後で因果関係をとらえる癖があるから厄介だ。

〈手の当て方〉
 両手の指を少し曲げた状態にして受け手の体(2カ所)に当てます。その際、手のひらの下に指一本程度入るほどの隙間を開け、手のひらの付け根部分で背骨に直接コンタクトする(接触させる)のがポイントです。

 上原本人の動画もあるのだが撮影者が喧しいので、もっと見やすい動画を紹介しよう。


 たぶん効果はある。背骨を自由に解き放つ動きである。首、背骨、腰は絶えず重力に逆らおうとして力が加わっている。体を支える骨をしっかりと使えれば問題はないのだが、骨には感覚がないためどうしても筋肉を楽にしようとして姿勢が悪くなる。我々が楽だと思っている姿勢は骨に対して強い負荷をかける。もう一つは日本人の場合、床に坐ることが多いため骨盤が後傾してしまうのだ。

 私が背骨ゆらしを評価するのは、ゆる体操と動きが似ているためだ(『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫)。もう一つ思い出したのは紙屋克子である(『紙屋克子 看護の心そして技術/別冊 課外授業 ようこそ先輩』NHK「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ、KTC中央出版編)。NHKの番組では植物状態の患者を丸いトランポリンに載せて、周囲で看護師たちがトランポリンを押して上下運動をしていた。身体障碍者についてはプールなども効果があるとされている。浮力で体が軽くなるため身体の自由度が増す。

 健康な体であれば本来は睡眠によって疲労を恢復(かいふく)するのだろう。重力を逆利用するという点では逆立ちも効果があると思う。ひょっとすると海で波に揺られているだけでも体が目覚めるかもしれない。

2020-02-26

歯磨きは朝晩の2回/『あなたの人生を変えるスウェーデン式歯みがき 1日3分・ワンタフトブラシでお口から全身が健康になる!』梅田龍弘


 ・歯磨きは朝晩の2回

『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之

 歯垢は、食べてすぐにはできません。4~5時間経ってからできます。そして歯垢は、寝ている間に増えます(寝ている時には唾液の分泌が少ないからです。【唾液には殺菌抗菌作用があります】)だから【寝る前の歯みがきが一番大事で、時間をかける必要があります。】そして朝起きてすぐ(朝、口がねばつくのは細菌が増えているからです)はカンタンに。合計2回のみです。いつも食べかすが詰まる方は、必ずむし歯、歯周病になっています。

【『あなたの人生を変えるスウェーデン式歯みがき 1日3分・ワンタフトブラシでお口から全身が健康になる!』梅田龍弘〈うめだ・たつひろ〉(自由国民社、2013年)以下同】

 痛くなってから歯科医に行くのは雨漏りをしてから家の修理をするようなものだ。わかっている。わかってはいるのだが重い腰を上げるためには痛みに背中を押してもらう必要がある。歯周病と診断されたのは去年のことだ。私は潔く老人に仲間入りすることを決意した。痛む歯についてはややこしい説明を聞きながら、二つ三つの質問をして、「要は前の修理が手抜きってこと?」と訊くと、「手抜きではないのだが後のことを考えてないのは確かだ」という返答だった。

 歯科助手が歯磨きの仕方を教えようとした。「知ってるよ。小刻みに動かすんでしょ」。中年の歯科助手がマスク越しに微笑んだ。帰宅して直ぐ本書を取り寄せた。読書とは思考を上書きする行為だ。やり慣れた行動を変えることで私の可能性は広がることだろう。たとえそれが小刻みな幅であったとしても。

 食後の歯磨きは唾液の分泌を阻害するのでやめた方がいい。子供の頃、小さな傷を舐めた経験は誰にでもあるだろう。我々は本能で唾液に殺菌作用があることを知っているのだ。歯の内側が虫歯になりにくいのも唾液と接触しているためだ。

【なぜ「95%歯垢を取る除菌治療」で口呼吸が治る・鼻が通るのか?
 ――それは患者さんが教えてくれた】
 口と鼻は、すごく近い距離にあります。【口腔内の細菌(歯垢)が鼻粘膜に炎症をもたらしているのです。
 これが治ると必ず免疫力が上がります。】鼻が詰まっている(鼻炎がある)方の口の中を見てください。必ず歯垢だらけで、むし歯、歯周病になっています。

「口呼吸の人は猫背になる」とも書かれている。無呼吸症候群以外にも口呼吸の原因があったとは驚いた。鼻毛というフィルターを通さないのだから口呼吸が不健康なのは容易に想像できるだろう。更に口が乾くことで雑菌が繁殖しやすくなる。

 私の歯磨きはほぼ完璧となった。定期検診でも褒められている。歯と歯茎の間を磨くのがコツだ。歯茎の隙間に突っ込んでも構わない。丁寧に磨いてゆくと隙間がなくなる。尚、歯ブラシはありふれた柔らかめのデンタル歯ブラシ一択だ。先細である必要はない。



2019-12-31

肥田春充の色心不二/『鉄人を創る肥田式強健術』高木一行


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
・『幻の超人養成法肥田式強健術 腰腹同量正中心の鍛錬を極めよ!』佐々木了雲

 ・肥田春充の色心不二

・『肥田式強健術2 中心力を究める!』高木一行
『表の体育裏の体育 日本の近代化と古の伝承の間(はざま)に生まれた身体観・鍛錬法』甲野善紀
『武術の新・人間学 温故知新の身体論』甲野善紀
『惣角流浪』今野敏
『鬼の冠 武田惣角伝』津本陽
『会津の武田惣角 ヤマト流合気柔術三代記』池月映
『透明な力 不世出の武術家 佐川幸義』木村達雄
『日本の弓術』オイゲン・ヘリゲル
・『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英

身体革命
悟りとは
必読書リスト その二

 しかるにどうだ。それからわずか数年でこの虚弱(きょじゃく)な体が鋼鉄(こうてつ)の身に一変されてしまったのである。その間の経緯(けいい)を記(しる)した春充〈はるみち〉の著書が後に刊行されると、たちまち全国から講演、実演の依頼が殺到(さっとう)した。
 春充が上半身裸体となって壇上(だんじょう)に立つやいなや、会場は突如(とつじょ)として一変してしまう。触(ふ)れることさえできそうなほどの緊張感が全聴衆(ちょうしゅう)を支配する。まばたきする者もなく、身動きする者もない。
「裸体となって壇上に現れた氏の体格は、古代ローマの彫像(ちょうぞう)を見るが如(ごと)く、実に男性美を発揮したるものなり。殊(こと)にその腹胸(ふくきょう)式呼吸法における腹胸部膨張(ぼうちょう)力の旺(さか)んなること、3、4升(しょう)の鍋(なべ)を飲(の)みこみたる観(かん)あり。体格の調和せる、動作の敏捷(びんしょう)なる、気力の充実(じゅうじつ)せる、思わず驚嘆(きょうたん)の目を見張らしめたり」(大阪毎日新聞の一部)
「不思議といわんか、至妙(しみょう)といわんか、神の舞踏(ぶとう)といわんか。人間業(わざ)とは思われぬ優観(ゆうかん)、美観、否、壮観……瞬間我等(われら)は頭上より足の爪先(つまさき)まで電流を通じたるが如(ごと)く、或(あ)る力に撲(う)たれたり……」(東洋大学哲学科生)
「先生の体全体が力の泉の如くに見えた。四隣(しりん)に響き渡る気合いの発生はわれわれの心肝(しんかん)を突き、覚えず茫然自失(ぼうぜんじしつ)、ただ偉大(いだい)なる魅力に圧倒されてしまった」
「私は水が滴(したた)るような裸体姿の美しいのに見惚(みほ)れてしまいました。艶(つや)があって滑(なめ)らかで、緊張すれば鉄の如くに締(し)まる筋肉が自然のままでゆったりと肥(こ)えているところは実に見事なものでした……」(中里介山〈なかざと・かいざん〉、小説『大菩薩峠』の著者として有名)
「……その結果、以前の茅棒(かやぼう)は実に絶美(ぜつび)の体格を獲得し、この道に造詣(ぞうけい)の深い二木(ふたき)医学博士も理想的自然の発達よと嘆賞(たんしょう)するに至(いた)った」(「実業之日本誌」より)
 二木医学博士とは、玄米菜食(げんまいさいしょく)を唱導(しょうどう)し、桜沢如一〈さくらざわ・にょいち〉とならんで日本の食餌(しょくじ)法における草分け的存在である二木謙三〈ふたき・けんぞう〉のことだ。彼は春充の身体を「今まで見たなかでいちばん立派(りっぱ)な体だ」「即身即仏」といい、また強健術に関しては「それこそ真の理想的方法である」と絶賛(ぜっさん)した。このほか大隈重信〈おおくま・しげのぶ〉や東郷平八郎〈とうごう・へいはちろう〉などをはじめとする各界の名士も春充の肉体美を讃(たた)えている。
 春充の次なる著者(ママ)『心身強健術』は非常な売れ行きで重版(じゅうはん)また重版、ついに100版を突破するに至った。

【『鉄人を創る肥田式強健術』高木一行〈たかぎ・かずゆき〉(学研プラス、1986年)】

 日野晃の著書で肥田式強健術を知った。創始者の肥田春充〈ひだ・はるみち〉は明治16年(1883年)生まれで生来の虚弱体質であった。幼い頃は茅棒(かやぼう)と渾名(あだな)され、死の宣告を受けたことも一度ではなかった。春充が風邪に伏していた時、父親が仏壇の前で泣きながら祈っている姿を見た。春充は不甲斐のなさに声を上げて泣いた。ここから一念発起して後の強健術が生まれるのである。17歳の少年は物に取り憑かれたように鍛錬を重ねた。

 肥田の相貌と肉体は人間離れしている。日本の武術においては筋肉よりも骨が重視される。腹部は柔らかくなくてはいけない。



 威風が吹いてくるような体である。「」(からだ)と旧字で書くのが相応(ふさわ)しい。

 肥田春充は悟った人物であり、生をコントロールした彼は死をもコントロールした。日本仏教が開いた禅的アプローチは後に「道」(武道、茶道、華道、歌道など)となるが、それを可能ならしめたのは「術」であった。すなわち仏道修行の「行」を「術」に変換することで「業」(ぎょう、ごう)へと昇華したところに独創の花が咲いた。それにしても武術の深さは際立つが、仏道修行の浅さはどういうわけか。

2019-12-15

玄米の解毒作用/『がん患者は玄米を食べなさい 科学が証明した「アポトーシス&免疫活性」のすごい力』伊藤悦男


 ・玄米の解毒作用

玄米菜食療法を行ったが癌が悪化
玄米毒
煎り玄米と揚げ玄米

 研究は三十数年にも及びました。
 その結果、私たちが解明したのが、玄米のうちのいわゆる米ぬかの部分に含まれるRBFという物質の作用機序です。このRBFは、がん細胞が生きていくために必要なエネルギーを熱に変えてしまい、無駄に使わせることで、エネルギーを補給できなくする機能を持っています。つまり、がん細胞を“兵糧攻(ひょうろうぜ)め”にするわけです。これによってがん細胞はDNAが断ち切られ、分裂できなくなります。こうしてがん細胞の自己死(アポトーシス)を導くプログラムが働くのです。
 また、玄米にはもうひとつ、RBAという抗がん成分が含まれていることも、私たちが解明しました。このRBAは多糖類(α-グルカン)の一種ですが、免疫系統を活性化してがんを縮小させる作用を持っています。多糖類のうち、キノコ類に多く含まれるβ-グルカンが免疫細胞を刺激し、免疫能(ママ)を向上させることはよく知られていますが、α-グルカンに同じ作用があることを初めて解明したわけです。

【『がん患者は玄米を食べなさい 科学が証明した「アポトーシス&免疫活性」のすごい力』伊藤悦男〈いとう・えつお〉(現代書林、2009年)】

 友人が肺癌になった。腫瘍の大きさは3cmほどだという。50代という年齢も腫瘍の大きさも微妙だ。早速本書を贈った。

 癌が厄介なのは自分で作った細胞のためで免疫が機能しない。健康な人でも日に3000~5000個の癌細胞が作らているという。これが増殖し始めると手をつけられなくなる。恐るべきスピードでコピーされ、やがて死に至る。最も不可解なのは癌が生き延びられないことである。なぜ敢えて生存に不利な増え方をするのかが判明していない。

 著者は琉球大学の名誉教授である。上記テキストを読めば明らかだがとにかく文章が酷くて説明能力が劣っている。特に「免疫系統を活性化してがんを縮小させる作用」というのは滅茶苦茶な話だ。なぜ自分の細胞に免疫が働くのか? 「私たちが解明した」を三度も書くのは浅はかさを通り越して愚かにさえ見える。

 というわけで私はこの著者を全く信用していない。だが玄米の解毒作用が癌に働く可能性は高いと考えている。植物は移動できないため外敵から身を守るために毒物を発する。この毒性が病気や患部に対して薬となる。毒をもって毒を制するわけだ。野菜を煮て食べるのは毒(灰汁〈あく〉)を抜くためだ。毒は味覚を通して苦味と認識される。良薬口に苦しとはよくいったものである。

歯の構造に適した食べ物/『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆

 上のページでも紹介したが、玄米食と癌については以下のブログが参考になる。

5年以上再発なしのガン患者が明かす!玄米食のデメリットとは?

 健常者が玄米を食べると解毒作用が強すぎて健康被害が出る可能性が高い。

2019-11-09

給食革命/『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平


『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
・『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』北野幸伯

 ・給食革命

『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『タネが危ない』野口勲
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

 子どもたちの、こんな現状(※朝食抜き、コンビニ弁当、レトルト食品、菓子パンなどが中心の食生活)が分かってきました。(中略)
「家庭で難しいなら、学校で食を変えるしかない」と、私は一大決心せざるをえなくなりました。家庭で食べないものを、学校で食べさせるしかありません。ともかく子どもたちのためには、食を変えなければならないのです。

【『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平(コスモトゥーワン、2012年)以下同】

 北野本で知った一冊。印象が深かったようで近著でも取り上げられている。安部司著『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(本書では「阿部司」と誤表記)を引用しているあたりが危ういが(松永和紀〈まつなが・わき〉著『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』で論破されている)感動的な手記である。大塚貢は長野県の中学校で校長を務めた人物。

 校内の廊下がオートバイのブレーキ痕だらけで、教員が1時間も広い続けると煙草の吸い殻がバケツ一つ集まったというのだから、相当荒れた中学である。大塚はまず授業改革から手をつけた。あまりにも魅力に乏しい授業がまかり通っていた。次に子供たちの食生活を調べた。そしてここから給食革命を起こすのである。

 それで私は、1週間の5食すべてを米飯に切り替えることを決断しました。

 すると少しずつ、やがてはっきりと、子どもたちに変化が見えてきたのです。
 まずは「読書の習慣」です。荒れているときには、子どもはとうてい本を読む気になりません。ところが給食内容を変えてしばらくしたころ、休み時間になると、子どもたちがみな図書室に行って本を読むようになりました。
 給食が済むと、争うようにして本を読んでいます。図書室に120ある椅子が、瞬く間に生徒で一杯になりました。
 椅子が満席になると、床に腰を下ろして読んでいます。床が一杯になれば、廊下に出ても読んでいます。これは、なかなか感動的な光景でした。食の改善による影響が大きかったと思います。(中略)
 ところで1951年に始まった読売新聞社の「全国小・中学校作文コンクール」をご存じの方も多いでしょう。米飯給食に変えてから起きたもう1つの変化は、生徒がこのコンクールに参加して、特に指導もしないのに、毎年のように全国で1位か2位に入選するようになったことです。
 子どもたちの文章力がしっかり向上していました。1位、2位に入選した子どもの作文は高度で、大人の私が読んでも筋がじつに複雑でした。

 何気ない文章で驚くべき事実が記されている。にわかには信じ難いという人も多いことだろう。だが噛む力が脳を活性化させ、栄養分が体に行き届けば情報に対する感度が上がることは何となく理解できよう。食は人を変える。なぜならマイクロバイオータ(微生物叢)が生まれ変わるためだ。

 大塚は詳しいことは書いていないが、給食革命は生易しい仕事ではなかったことだろう。父兄からも反対され、中には教育委員会に密告する人もいたようだ。そして荒れた生徒たちが大人しく従うはずもない。しかし校長の子供を思う一念が岩をも貫いた。その後花壇作りも推進し、学校全体が生まれ変わってゆくのである。

 本書はパンや出来合いの食品に批判的な姿勢を堅持しているため、製パン企業や食品メーカーの広告を掲載する新聞やメディアからは無視されたことと推察する。既に品切れとなっているが再販も難しいように思う(Kindle版はある)。それでも心ある教育者は本書を入手し、給食をパンから米に変える努力を惜しむべきではない。もともと給食でパンが提供されるようになったのはGHQがアメリカの余剰小麦を無償提供したことから始まる。アメリカは余剰農産物に困り果てていた。敗戦後の日本はこれを断るはずがない。そして数年後、無償提供を打ち切りまんまと日本政府にアメリカ産の小麦を買わせるようになった。アングロサクソンの手口はことごとくこのようなものだ(『アメリカ小麦戦略 日本侵攻』高嶋光雪、1979年/『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』鈴木猛夫、2003年)。

 食料安全保障の視点からも米の消費を増やすことは喫緊の課題である。給食すべてを米飯にすれば相当改善できることだろう。



2019-08-18

歯の構造に適した食べ物/『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆


 ・歯の構造に適した食べ物

『がん患者は玄米を食べなさい 科学が証明した「アポトーシス&免疫活性」のすごい力』伊藤悦男
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
・『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三

 なぜ米6:野菜3:肉(魚・卵)1が「きれいに代謝される」黄金比かというと、それは私たちの体が教えてくれます。
 まず歯の構造に注目してみましょう。みなさんは自分の歯が何本で、何種類あって、それぞれどんな働きを持つか分かりますか?
 歯はその動物が食べるべきものを食べやすい構造に設計されています。
 肉食動物は獲物を殺し、肉を引きちぎるために犬歯という尖った歯を持ち、草食動物は草や穀物を噛み切るために前歯の門歯があり、すりつぶすためにほとんどが臼歯を持ちます。
 では人間はどうでしょうか?
 人間は肉も草も穀物も食べる雑食ですが、その割合は【穀物をすりつぶす臼歯が62.5%、植物を噛み切る門歯が25%、肉を噛みちぎる犬歯が12.5%。】
 つまり、このバランスで食べるべきだというのが、長い歴史の中ででき上がった自然界のルールなのです。

【『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆〈おぎの・よしたか〉(マイナビ、2013年)】

 50歳を過ぎて健康オタクになることを決意した。私は果断に富む男だ。何でも決断が早い。で、何から手をつけようかと思案していた時に玄米を思いついた。早速調べた。そして「結わえる 寝かせ玄米 レトルトパック」を見つけた。


 私が購入した時は一食あたり250円くらいだと記憶するが今は300円を超えている。確かに美味かった。しかし体調の変化は全く感じられなかった。その後、別会社の商品も試したが「別にどうってことはねーな」という感想に落ち着いた。

 自分で炊いた方が手っ取り早いし、安上がりだろうと考えた。玄米ご飯は玄米を発芽させる手間がかかる。理想を言えばガス釜でご飯を炊いて、更に保温する必要があった。面倒だ。しかも玄米そのものが白米よりも値段が高い。玄米だけ食べて生きてゆけるのであればやってみる価値はあるが、料理もまともにできない中年男がそこまで打ち込むのは疑問だった。

 念には念を入れて更に調べた。マクロビオティックという宗教じみた食事法も知った。玄米食が癌に効果があることもわかった。そして玄米のデメリットも。

 ざっと紹介しよう。

 玄米には胚芽の部分にミネラルがたくさん含んでいるのに何故ミネラル不足になるのか?という質問をよく受けます。それは玄米の胚芽や表皮にフィチン酸という強力な排泄作用を持つ物質が多くあり、毒素を出して病気を治していく作用がありますが同時にミネラルも出していくのです。体内毒素とミネラルは別々の所に存在しているのではなく、毒素とミネラルはいっしょに存在しているのです。玄米食で体内毒素を出す時にミネラルも出ていくのです。

玄米食はなぜミネラル不足になるのか|間違いだらけの健康常識

玄米や灰汁(アク)の害について|間違いだらけの健康常識
野菜や果物、肉、魚介類はアクを抜かないと短命になる|間違いだらけの健康常識

そろそろ玄米が「健康食」か「不健康食」かに決着をつけようと思う
5年以上再発なしのガン患者が明かす!玄米食のデメリットとは?

 私は決断するのも早いが断念するのも早い。植物が昆虫などの外敵から身を守るために毒を発することは知っていた。その毒を以て体内の毒を制するのが薬草だ。薬とは毒の異名なのだ。

 荻野芳隆は株式会社結わえるの経営者である。本書も当然ながらマーケティングの一貫として受け止めるべきだろう。「穀物をすりつぶす臼歯」というのは間違いだ。島泰三著『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』によれば、古代の人類は骨を食べていたと考えられる。

 玄米が健康によいのであればご飯に煎り糠(ぬか)を振りかければ同じだろう。実際に私はやってみたが、やはり効果は感じられなかった。

2019-05-18

栄養学の無責任を嗤(わら)う/『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子


・『「食べもの情報」ウソ・ホント 氾濫する情報を正しく読み取る』高橋久仁子

 ・栄養学の無責任を嗤(わら)う

『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

 食べものが健康や病気に与える影響を誇大に評価したり信奉することを「フードファディズム:Food faddism」といいます。もちろん、食と健康は深く関連しますが、それを過大評価することです。ただし、どこまでは適正で、どれ以上が過大なのかを判断することもむずかしいですし、過小評価もまた問題です。(中略)
 この言葉は私の造語ではありません。れっきとした英語です。

【『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子〈たかはし・くにこ〉(ブルーバックス、2003年)】

 悪い本ではない。狙いはいいのだがバイアス(認知科学)や行動経済学、はたまた心理学的アプローチを駆使する企業広告や宗教に関する知識が乏しい。

 この手の本を読むたびに思うのは、「散々デタラメを広めてきた栄養学の無反省ぶり」である。戦後はキッチンカーで油炒めを推奨し、肉・卵・牛乳の摂取を推し進め、1日30品目という馬鹿げた数を示して国民の食生活を混乱させてきた。その栄養学が今になってフードファディズムを語っているのである。

 高橋の文章はどっちつかずで腰が据(す)わっていない。ファディズムとは「流行へののめり込み」(Wikipedia)を意味する。その最大の原因は栄養学がきちんとした情報提供を怠ったことにあるといってよい。しかも高橋は居丈高にエビデンス(検証結果)を口にするが、食品メーカーの巨大さを思えば科学が厳密に食品を調べることはまずない。

 簡単な例を示そう。骨粗鬆症の原因は牛乳を始めとする乳製品摂取によるカルシウム・パラドックスである。骨粗鬆症は戦後になってから目立つようになった病気であり、牛乳を飲むようになったのもまた戦後のことである。

悪いとされる食品・調味料・食品添加物」を見てみよう。私が避けているものが列挙されている。例外はうま味調味料くらいだ。「実際に科学的な根拠に基づいたリスクがあるかどうかとは無関係である」とご丁寧に書いてあるが、重要なことは「健康によい」という科学的根拠も示されていない点である。このリストを見る限りでは、むしろフードファディズムに軍配を上げてもいいだろう(笑)。

 五十の坂を越えると体力は衰え病気がちになり食に対する意識が高まる。我々は無知を自覚すればこそテレビや書籍の情報に飛びついてしまうわけだが、もっともっと自分自身のセンサー(味覚)を信頼すべきだろう。ただし加工食品は避けるのが賢明だ。

 もしも私に幼い子供がいれば、人工甘味料・マーガリン・小麦やトウモロコシを原料とするお菓子・ファストフードは忌避する。現在でもそうだが食用油は胡麻油しか使わない。

2019-03-03

タンパク質と鉄分を摂り、糖質を控える/『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク

 ・タンパク質と鉄分を摂り、糖質を控える

『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
・『自律神経どこでもリセット! ずぼらヨガ』崎田ミナ、福永伴子監修

「増やす編」のトップバッターはタンパク質を含む食品です。タンパク質の英語 Protein (プロテイン)は、ギリシャ語の「第一となるもの」に由来しています。いってみれば、生命活動の第一人者、まずもって増やす必要がある栄養素です。

【『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美〈ふじかわ・とくみ〉(方丈社、2018年)以下同】

 厚生労働省は22日、65歳以上の高齢者が1日に摂取するたんぱく質の目標量を引き上げる食品摂取基準に関する報告書案を示した。「フレイル」(虚弱)の発症予防を目的とした場合、65歳以上の高齢者は体重1キログラム当たり少なくとも1グラム以上のたんぱく質の摂取が望ましいとした。体重50キログラムの人ならば1日50グラム以上となる(日本経済新聞電子版 2019年2月22日)。

 たまたまプロテインに興味を持ち、あれこれ情報収集している時に見つけた書籍である。私の場合、今のところうつ病とは無縁である。基本的に精神的な落ち込みを感じることがほぼない。元々幼い頃から自己評価がそれほど高くないので軽んじられたところで「ま、仕方ないか」という程度に受け止めている。更に多少の修羅場をくぐり抜けてきたこともあり少々の苦労なら「これくらいはどうにでもなる」という心の余裕がある。ついでに言っておくと私には「寂しい」という感情が欠落している。30代で6人の後輩を喪った時に涙が涸(か)れ果ててしまった。

 そんな私ですら読んでいるのだから、うつ病あるいは気質のある人は直ちに実践するべきだ。食生活を変えるだけで精神疾患を乗り越えられるとすればこんな安上がりな方法はない。

 必須アミノ酸は、9種類のうち一つでも必要量に満たないものがあると、もっとも少ないアミノ酸に準じた量しかタンパク質がつくられません。偏って多量に摂取したアミノ酸は、すべて無駄になってしまうのです。
 このしくみは「桶の理論」として知られています。


 タンパク質はアミノ酸でできている。「桶の理論」は初耳であった。このように食事のバランスを具体的に指摘されると実に説得力がある。以下のアミノ酸スコアを冷蔵庫に貼っておくとよい。


 日本女性が鉄不足になる原因は食生活です。土壌のミネラルが減少したため、農作物から摂れる鉄分も減少してしまいました。
 一方、他国の女性、特に欧米の女性は日本女性のような鉄不足はありません。欧米では、鉄分を含む肉を日本人の3倍ほど食べます。また、欧米を中心とした50カ国以上の国では、小麦粉にあらかじめ鉄が添加されるなどの鉄補給対策がなされています。その理由は、1940年代に鉄欠乏性貧血が多く発症し、その対応に困ったという時代があったのです。この対策のおかげで、鉄不足の頻度は減少したということです。
 米国、英国、カナダ、トルコ、タイ、スリランカなどの国々で、同様の鉄不足対策がとられており、メキシコではとうもろこし粉、モロッコでは塩、フィリピンでは米、中国ではしょう油、東南アジア諸国ではナンプラーに、鉄が添加されています。

 そこはかとなく陰謀の臭(にお)いが漂ってくる。やがて訪れる高齢化社会の問題が介護であることを有吉佐和子が指摘したのは1972年のことであった(『恍惚の人』新潮社)。女性解放を謳(うた)ったウーマンリブ運動(1960年代後半から1970年代前半)をバックアップし資金提供したのはロックフェラー財団である。その目的は納税者を増やすことと、子供の教育を母親の手から学校に奪い家族を破壊することであった。これはアーロン・ルッソ監督が直接聞いた話として公言している。

 女性のための鉄分対策すら行おうとしない国家は何らかの意志で人口減少を目指しているのだろう。日本は食品に関する規制が甘くマーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸も野放し状態である。「我が家はバターだから大丈夫」というのは通用しない。飲食店や菓子類に含まれるマーガリンを避けることは不可能だ。

 よくよく振り返ってみよう。この国は自殺、交通事故死、拉致被害を漫然と見過ごし、古きよき会社制度を破壊して短期間で低賃金労働者という階層をつくることに成功した。主要上場企業の株式は外国資本に買い漁られ、会社は株主のものとなり、社長がべら棒な報酬をせしめ、従業員と家族は蔑(ないがし)ろにされてしまった。

 家族や会社内の関係性が断絶された頃から人権の名の下にステレオタイプの正義が先進国で声高に叫ばれるようになった。このポリティカル・コレクトネスを西尾幹二は「衛生思想」であり「消毒の思想」と喝破している(『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』2007年)。

 国家が国民を守る時代は終わった。自ら知恵を尽くして我が身を守れ。

2016-10-24

ストレッチで腰痛解消/『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』ロビン・マッケンジー


 ・ストレッチで腰痛解消

『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』
サルコペニア肥満を恐れよ
『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』橋本馨
『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏

 かつては腰痛や首の痛みに対しては、カイロプラクターやオステオパス(欧米の徒手療法士)による脊椎の徒手矯正がもっとも一般的な治療法であり、20世紀中ごろから理学療法士も徒手的脊椎矯正を活用するようになってきました。手による治療・徒手的脊椎矯正を主な治療手段として用いているのは、現在ではこの3つの職種です。
 しかし、ここ10年くらいの研究で、徒手的脊椎矯正の効果はあまりないことが明らかになっています(Koes の研究、1991年、1996年)。
 徒手療法は受け身の治療法で、患者の依存心を作り出してしまうことからも医療における価値は低下しています。現在注目されているのは、運動や姿勢の矯正で、これらは問題を自己管理し、治療の専門家からの自立を促してくれます。
 普通の腰痛であれば、約80パーセントの人たちは自分で矯正を行うことができ、専門家による脊椎矯正が必要な人は10パーセント程度にすぎません。

【『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』ロビン・マッケンジー:銅冶英雄〈どうや・ひでお〉、岩貞吉寛〈いわさだ・よしひろ〉訳(実業之日本社、2009年)以下同】

 私の場合、48歳になってから明らかに体のバランスが崩れ始めた。最初に現れたのは肩凝りであった。これはネット情報を調べて1週間で治した。そして昨年、ぎっくり腰になった。前屈みにならないと歩くこともできなかった。腰痛は人類の業病である。先進国では国民の7割が腰痛になるといわれている。やはり座る時間が長いことと、その姿勢に問題があるのだろう。「ヒトがまだ二足歩行に慣れていないため」とする説まであると柔道整復師が語っていた。一番重い頭が上にあるってのが、そもそも間違いの元だ。

オステオパシーは効果がある。足の痛みがなくなった」と近所のご婦人から聞いたことがある。初耳だったのでテレパシーを使ったインチキ宗教かと勘違いした。オステオパシーは体を全体的に捉える手技療法である。

 著者のロビン・マッケンジーは理学療法士で、ある失敗からマッケンジー・エクササイズが生まれた。「徒手療法は受け身の治療法で、患者の依存心を作り出してしまう」という指摘には本音が滲み出ているように思う。

 ぎっくり腰二日目に私は38冊の書籍をピックアップした。その1冊目が本書で実に運がよかった。

 悪い姿勢が習慣となってしまっており、それが腰痛の原因となっていることに気づかなければ、根本的に解決するための方法がわからないということですから、一生腰痛から逃れられません。

 人は概念の中で生きている。ブレイクスルーとは自分の既成概念を打ち破ることを意味する。私は腰痛のメカニズムを解明し、腰痛博士となって腰痛に悩む人々を救うことを決意した。

 何分か一定の姿勢のままで座っていると、腰の筋肉は疲れてゆるんできます。
 すると体が椅子(いす)に沈んで、猫背になります。この猫背の姿勢で長時間座り続けると、靭帯(じんたい)が引き伸ばされて痛みが出てくるのです。猫背が習慣になり多くの時間を過ごすようになると、椎間板のゆがみを引き起こし、座っていなくても痛みを感じるようになります。
 事務仕事をしている人は、何時間も背中を丸めて座っているため腰痛になりやすく、姿勢を改めなければ、徐々に腰痛が悪化していくでしょう。

 つまり腰痛は「姿勢を改めよ」というサインなのだ。

 私の腰痛はマッケンジー法で解消した。同時に腰痛対策として一本歯下駄を購入した。こちらは大腰筋を鍛えるためである。どちらも効果はあったと思われるが、ストレッチを行ってから痛みは減少した。

 やり方は簡単である。俯(うつぶ)せになり、最初は肘をついて上体を起こす。そう、スフィンクスと同じ姿勢である。次に腕を伸ばして上体を反らす。主要なストレッチはこれだけである。あまりにも簡単すぎてやる気が起こらないと思うので、やはり本を買うべきだ。具体的なメソッド(方法)よりも概念を変えることが重要なのだ。

 以来、腰痛に悩まされることはなくなった。私の姿勢は正しい(←自慢)。