ラベル 運動 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 運動 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019-09-19

内発動理論/『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス

 ・内発動理論

『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
・『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英

【 内発動的動きとは、肩甲骨、股関節など体幹部が主動。四肢は受動的に動くため、手足に力はいれません。
 これに対し、腕や足などの四肢に力を入れて動くものを外発動と呼んでいます。】

【『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑〈かわしま・ゆう〉(東邦出版、2018年)以下同】

「筋肉よりも骨」を重視したのは甲野善紀〈こうの・よしのり〉だ。ただ甲野の著書は理窟が勝ちすぎていてあまり好きではない。また部分的な動きに囚われすぎているような気がする。私の意識は体幹から骨へと向かった。ちょうどそんな頃に本書を読んだのだが、よもや空手本だとは思わなかったので肩透かしを食らった思いがした。だが今、再読の必要性を感じている。日野晃から伊藤昇に至って初めて意味が理解できるようになったためだ。

 人の意識は手足の指先という末梢に重きを置いて全身の筋肉を動かすことができなくなる。自転車に乗り始めた頃、ふくらはぎの筋肉が発達するのも足先を使ってハムストリング(大腿二頭筋)が動いていない証拠である。また歩行障害がある人を見ると殆どの人が爪先から脚を動かそうとしている。これがつまづきの原因となる。

 文明は人体から自然を奪った。我々の体は不自由だ。特に坐る時間が長くなるにつれて腰痛などの障害が露(あら)わになった。坐っている時は脚の筋肉が使われていない。先日、武田邦彦が虎ノ門ニュースで「女性の方が長生きするのは台所仕事で立っていることも一つの理由だ」と語っていた。

 空手には、前足の爪先を少し内に向けた三戦(さんちん)立ちという立ち方があります。この姿勢は、脚の内側に重心が乗せやすい立ち方です。
 この立ち方で、後ろ足を一歩前に出し、脚を無反動化したまま全身する練習をしてみましょう。【ポイントは、重心線が両足の中心に置かれたまま、左右にブレないで前進することです。】
 歩く際も同様、足裏を内側重心にし、地に着く脚を無反動化することで無軸歩行となります。
 誤解してはならない点は「膝を内側に向けて歩け」ということではないのです。
 脛骨が前方から見て垂直になるように心掛けると、必然的に足裏は内側重心になります。
 ちなみに【草履を履くと、親指と他の4本の指を分けるように紐が付いていることで、意識的に足裏が内側重心となります。】
 草履は、車も自転車もなく、長時間歩くことが多かった昔の日本人が、疲れずに長時間歩けるよう、脚の無反動化を促すために工夫された知恵なのかもしれません。

 私はギョサンを愛用しているので理解できる。要は足指(そくし)で地面を捉えようとすると自ずから爪先は内向きとなるのだ。

 川嶋がいう三戦(さんちん)歩行は大転子ウォーキングとは異なる。能の摺(す)り足に近い。大雑把に言ってしまえば大転子ウォーキングとナンバ歩きの中間である。日野晃の歩行もこれに近い。

 内発動理論とは鞭(むち)の動きである。内側を動かすことで遠心力を働かせるのだ。体幹から関節を動かせるようにならないと実感することが難しい。

運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動
川嶋 佑
東邦出版
売り上げランキング: 191,565

筋肉は螺旋状に動く/『カラダのすべてが動き出す!“筋絡調整術” 筋肉を連動させて、全身を一気に動かす秘術』平直行

2019-09-18

越境する武道/『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑

 ・越境する武道

『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
・『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
『肚 人間の重心』 カールフリート・デュルクハイム

身体革命
必読書リスト その二

 私の手の動きがまったく見えないから、目が点になっている。ダンサーだから早い動きは充分できる。しかし、気配なく動く私の手や足は、まったく理解できないようだ。
 そこから、肘の使い方に入っていき、自然にワークになっていた。腕を動かすためには「肘の操作」が重要で、そのためにはまず肘の力を抜くことを稽古しなければならない。
 そして、肘を操作するためには上半身の柔軟性が求められるからこそ、「胸骨操作」が重要なのだ。
 その一連の動きを「上半身と下半身を切り離す」稽古とともにする。
 上半身と下半身の切り離しは、腹部腰部の脱力と比例する。この辺りの筋肉の緊張か弛緩かが、上半身も下半身も柔軟に、そして自由に動かすための要になる。

【『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃〈ひの・あきら〉、押切伸一〈おしきり・しんいち〉(白水社、2005年)以下同】

 フランクフルト・バレエ団を経てザ・フォーサイス・カンパニーの一員となった安藤洋子〈あんどう・ようこ〉は日本へ帰国すると日野晃の道場に通った。ドイツへ戻ると安藤の動きは明確に変わっていった。同僚ダンサーが教えを請う。挙げ句の果てにはウィリアム・フォーサイスが「皆の前で(武道の動きを)伝えて欲しい」と切り出した。安藤は密かな目論見を口にした。「これ以上のことを教わりたければ、日本の先生を招いて下さい」と。フォーサイスは即断した。「直ぐに呼んでくれ」と。


 私は以下の動画で日野を知った。








 私は上記テキストで自転車のポジションを変えた。胸骨を引っ込めることで肩甲骨が開いて楽に走れるようになった。最後の動画を見ると明らかだが日野は足首に至るまで自在に動かしている。

 胸骨の動きに注目した人に伊藤昇がいる。伊藤の存在も日野の著書で知った。「相手を目で倒す」のはシステマでも行われている。予(かね)てより私はシステマが近接格闘術で最高峰と考えてきたが実は忍術の方が上であった。武神館宗家〈ぶじんかんそうけ〉・初見良昭〈はつみ・まさあき〉も日野の著書で知った。私は決して日本万歳を唱える者ではないが、やはり日本は底知れない文化を持つ国である。世界最強の傭兵(ようへい)といえばグルカ兵と相場は決まっているが、そのグルカ兵ですら恐れたのが大日本帝国の軍人であったことは意外と知られていない。

 全員が輪になって正座をした。その姿が初日とはくらべものにならないくらい、様になっている。夕陽に横顔を照らされた日野が口を開いた。

「私は57年間生きている。しかし私は何を目的として生きてきたのかを知らなかったが、ここフランクフルトに来て、そしてフォーサイスに出会って、はっきりした。この時期を過ごし、そして、皆と出会うためだった、と」

 本書のキーワードは「理解」である。越境する武道がバレエダンサーを虜(とりこ)にするのは武術が単なる目先の技術ではなく、長い伝統という裏打ちがあるためだろう。教えた日野が教えられる。学ぶ謙虚さが武術を無限に進化させるのだろう。「理解」という点において『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』(多田富雄、柳澤桂子著)と併読することをお勧めしよう。

2019-06-02

アルツハイマーは文明病/『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス


『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一

 ・アルツハイマーは文明病
 ・おばあさん仮説

『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン
『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

身体革命
必読書リスト その二

 同じくアルツハイマー病に関して、予防も不可能と断言するのはアメリカの独立系専門家委員会だ。2015年末、ドイツを代表する日刊紙『南ドイツ新聞』が掲載したのは、アメリカのアルツハイマー病専門家で、ハーバード大学の神経学教授、デニス・セルコーの悲観的なコメントだ。教授によると、この病気にならないための唯一の方法は、「よい両親を選び、長く生きないこと」だった。

【『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス:鳥取絹子〈とっとり・きぬこ〉訳(筑摩書房、2018年)以下同】

 医師と裁判官はよく似ている。過去の例に基づいて現在を判断するところが。医師の仕事は過去の症例に合わせて薬を処方することだ。本当にその薬が有効かどうかを彼らが考えることはない。医学的に認められたパターンを踏襲するだけの気楽な仕事だ。そして医師にとって「治らない病気」は多ければ多いほどよい。長く薬を処方することができるためだ。実際に臨床を実践する医師は1割も存在しないだろう。

 アルツハイマー病とはどういう病気なのだろう? 最初に目に入る情報では、神経が変性する不治の病気となっている。不治とされるのは、研究の枠内で行われた何百件という臨床研究で、病気を治す薬も、進行を抑える薬も発見されていないからである。それなのに、先進国では認知症の形としてはもっとも多く、死因では心血管病、ガンに次いで第3位になっている。したがって、高齢になってもアルツハイマー病を発症するのは宿命で、運命として諦めるしかほかに方法がないように見える。こういう状況では、私たちのほとんどんが年を取るのが怖いと思っても仕方がない。なぜなら私たちは記憶や理性、ときに尊厳まで喪失するこの病気を、老化と結びつけているからである。
 本書の目的は、まさにこの恐怖と決別することである。【アルツハイマー病は年齢による病気でも、運命として避けられない病気でもなく、私たちにとってもっとも必要で重要なものが欠乏することで生じる病気である】。普段の生活様式に起因するので、行動を変える処置をいくつかすることで予防も可能だ。欠乏しているものがあれば、手遅れになる前に――つまり、後戻りできないポイントとされる中間段階の前に――対策を講じれば、アルツハイマーの進行を止めることもできる。さらにはもっと初期に対処すれば、プロセスを逆戻りさせ、治すことさえ可能なのである。

 認知症の中で最も多いのがアルツハイマー病である。レビー小体型認知症同様、発見者の名前を病名にするのは大いに疑問である。認知症という言葉も日本語としておかしい。認知障害・認知機能疾患とするべきだろう。

 有吉佐和子が『恍惚の人』を世に問うたのが1972年(昭和47年)のこと。その後は長く「痴呆症」と言われた。「呆(ぼ)ける」という言葉は今でも多くの人が使っていることだろう。認知障害は「自分が自分でなくなる病気」である。我が子に向かって「どちら様ですか?」と尋ねる母親の映像を見た時の衝撃は忘れることができない。自分という名の小説のページが次々と欠落して物語性を失ってゆくのだ。「呆けるくらいなら死んだ方がましだ」という声も耳にするが、自分が自分でなくなることは形を変えた死を意味しているのだろう。

 ミヒャエル・ネールスが明かしたのは驚くべき事実である。アルツハイマー病は生活習慣病だというのだ。具体的には食生活と運動不足が原因だと指摘する。特に「坐る時間の長さ」が体を静かに蝕んでいる。

 2014年に発表された、カリフォルニア大学ロサンジェルス校のアルツハイマー病治療計画の研究は、小規模ながらこの病気の治療に新しい道を開いた。

 研究チームを率いたのはUCLAのメリー・サウス・イーストン・アルツハイマー病リサーチセンターの神経学教授、デール・ブレデセンである。

 なぜ、これほどまでに希望をもたらすニュースが、世界の新聞のいち面に出ないのだろう? なぜテレビやラジオ、ネットのSNSで話題にならないのだろう?
 答えはいたって簡単。奇跡の薬のおかげで治ったわけではないからである。新薬が発見されたわけでも、有効成分を商品化できたわけでもないからだ。逆にこの結果はむしろ、市場経済に合わせた私たちの行動を問題視することになるからだ。なぜなら、この治療の成功によって、【この恐ろしい病気の本当の原因は年齢でも、遺伝子でもなく、私たちの生活様式にあることがわかった】からである。アルツハイマーは、私たちが肉体的、精神的に必要とする多くのものを考慮しなかったことで生じる病気である。なぜか? 私たちの生活様式がそうさせているからだ。したがって、これら必要なものを満たすには、私たちの行動を変えるだけで十分というこになるだろう。

 どうやら精神疾患を取り巻く状況(エリオット・S・ヴァレンスタイン)と酷似しているようだ。薬以外で治されれば医師と製薬会社はお手上げだ。彼らは文明病を必要としている。

 病は人類にとって永遠の課題である。生老病死は避けようがない。そして病はサインでもある。病と向き合うことで健康を見つめ直すことができ、死をも見据えることが可能となる。癌が慈悲深いのは死を迎える準備期間を告知してくれるためだ。

 文明の進歩はヒトの体を退化させた。たとえ我々が健康に生きたとしても病気がなくなることはあり得ない。しかし健康であれば病気を通してヒトが進化するようになるのではないか。

 本書を理解するためにも前回散々腐した佐藤眞一は読んでおいた方がよい。



何はさておき歩いてみよう/『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏

2019-04-28

ウォーキング三部作/『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき


『足・ひざ・腰の痛みが劇的に消える足指のばし』湯浅慶朗
『本当に必要な「ゆるスクワット」と「かかと落とし」』中村幸男
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『高岡英夫の歩き革命』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘

 ・ウォーキング三部作

ナンバ歩きと古の歩術
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
・『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『走れ!マンガ家 ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』みやすのんき
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン

身体革命
必読書リスト その二

 危険なのは横たわっている状況だけではありません。
 イギリスのスポーツ医学雑誌「British Journal of Sports Medicine」オンライン版に発表された研究では、オーストラリア糖尿病学会が行った「オーストラリア肥満・生活習慣研究(AusDiab)」や、オーストラリア国民健康調査のデータを検討した結果、テレビを1日平均6時間視聴すると、まったく見なかった場合と比べて【“4年8ヶ月”も寿命が短くなってしまう】という結論が導き出されました。じっと座って1時間テレビを見ることで、寿命が約22分縮んだことになるのです。
 肝心なのは【テレビそのものが悪いのではなく、「座る」行為が身体によくない】ことです。
 テレビに限らず、オフィスでじっと1時間座っていても、クルマを1時間座って運転していても寿命が22分間縮むことになります。ちなみにタバコは1本吸うごとに寿命が11分縮むといわれています。つまり、【1時間座って仕事をするほうが、タバコを1本吸うよりも寿命が縮む】のです!
 カナダ・トロントの研究チームが、座る時間が長い生活スタイルについて調べた47の調査結果を分析した結果、【座る時間が長いと心血管系の疾患や癌、2型糖尿病などの慢性疾患を発症して死に至る確率が高まる】ことが分かりました。

【『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき(彩図社、2016年/増補改訂版『ランナーが知っておくべき歩き方』実業之日本社、2019年)以下同】

 確か『アルツハイマー病は治る』(ミヒャエル・ネールス、2018年)でも同じ指摘があったように思う。アルツハイマーですら文明病だというのだ。何度も書いているが小学生を椅子に坐りっ放しにする義務教育のあり方はどう考えてもおかしい。野山を駆け巡り、木に上るのが児童本来の行動だ。

 タバコの記述に関しては少々安易で、肺癌患者の喫煙者に注目するか喫煙者全体を見るかで結果は異なる。寿命については相関関係を因果関係と誤解する論法が多すぎて信じるに値しない。そもそも喫煙を始めたのはアメリカ・インディアンだが彼らは長寿であった。

 みやすは「なぜASIMOの歩き方はおかしいのか?」と問う。そして人体の特徴が「骨盤」にあることを示す。

 人間の歩行は地球上の他のいずれの動物とも違うのです。【背骨や膝をまっすぐ伸ばし、踵をつけて歩く直立二足歩行】です。単なる“二足歩行”の動物は、熊や猿、鳥類、エリマキトカゲなどたくさんいます。しかしこれらは骨盤が発達していないために、おっかなびっくりな歩き方で長時間の二足歩行には堪えられません。
 人間がなぜ直立二足歩行ができるようになったのかというと、しっかり立つことができるように2~300万年の間に骨盤と踵が他の動物に比べて大きく進化したからなのです。
 ロボットの話に戻ると、【彼らは概して歩行のために骨盤や上体を使っていない】のです。

 私はかねがね「姿勢を正すとは背筋を伸ばすことではなく骨盤を起こすことだ」と考えてきたのだが、「骨盤が進化した」との指摘に目から鱗が落ちる思いがした。体幹は意識しにくい。むしろ骨盤に意識を向けた方が上半身と下半身を自由に動かせるような気がする。

 人間の歩行は、【股関節や膝が脱力して足を振り子のように振り出して進みます】。これを【二重振り子歩行】といいます。だから長時間歩けるのです。人間の歩き方は骨盤を中心とした体幹が起動されて足に伝わって歩くのです。

 大転子(だいてんし)とは骨盤側面の下に位置で大腿骨が出っ張っている部分である。ここを振ることによって脚の重さを利用するのだ。当然、大転子を動かすためには大臀筋(だいでんきん)が働く。つまり大転子ウォーキングは必ず大臀筋ウォーキングとなるのだ。これでピンと来る人は少ないだろう。みやすがモンロー・ウォークを示したのは卓見である。

 つまりこうだ。大股で体を左右に振って極端なナンバ歩きをしてみればよい。それから大転子ウォーキングをすれば歩幅が格段に広がることを実感できる。つまりナンバ歩きは体を捻(ねじ)らないのと同時に歩幅を広げる効果があったのだ。

 いやはや驚きである。実践していくうちに体が目覚めてくるのだ。私は自転車の乗り方まで一変した。みやすのんきは漫画家であるが説明能力はオリンピック選手を軽々と凌駕する。

 着地は踵(かかと)の真ん中としているのもミッドフットと考えてよかろう。爪先を上げるのもサンダル利用者であれば普通に行っていることで、かつて人類が裸足で歩いていた事実を思えばまったく自然である。

 ウォーキング三部作は必ず順番通りに読むこと。そうすれば本書が天才本であることが納得できよう。



内発動理論/『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑

2019-04-27

速く歩ける人は死亡率が低い/『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘


『高岡英夫の歩き革命』高岡英夫:小松美冬構成

 ・速く歩ける人は死亡率が低い

『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
・『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』小田伸午、小山田良治、河原敏男、森田英二、木寺英史、常歩研究会編
・『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午

 私たちは「労働時間こそすべて」のような価値観に長らく縛られてきたので、量の多いことに価値観を見出しがちです。しかしながらスポーツにおいては量だけの競争はありません。必ずタイムが伴います。
 究極の目的は【「速く、長い距離を、ずっと」】ということなおんですが、現実には速さと距離のバランス、負荷と量のバランスをそれぞれ取りながら生きています。
 さらに身体機能については興味深いデータがあります。
 速く歩ける人のほうが、死亡率が低いというデータです。
 厚生労働省では、「それぞれの年齢でこれぐらいのスピードでは歩きたい」という目標値を出しているので、ぜひ一度トライしてみてください。

【『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘〈そのはら・たけひろ〉(きずな出版、2017年)以下同】


 園原健弘は競歩の元オリンピック選手だ。「だから何なんだ?」と最初から舐(な)めてかかったのだが意外と参考になった。「速く歩ける人は死亡率が低い」との指摘には吃驚仰天(びっくりぎょうてん)である。

 ウォーキングの概念を叩き込み、考えながら歩かせる手法は正しい。呼吸や歩行は誰もが行っていることだがきちんと出来ている人は少ない。我々は長く坐り過ぎて歩くことすら忘れてしまったのだ。因みに健康を最大に阻害しているのは「坐る」行為だ。万病の元と断言しておこう。

 裸足歩行に園原は疑問を投げ掛けているが、彼は大東亜戦争で高砂義勇隊が裸足で大活躍した歴史を知らないのだろう。人類の長い歴史を振り返れば靴を履いている期間は最近のことだ。素足で得られる情報の多さを軽んじてはなるまい。

 一流選手の説明が一流とは限らない。名選手が必ずしも名監督とならないのと同じだ。踵着地も私としては腑に落ちない。ただしウォーキング概念をつかむためには読んでおいて損はないだろう。

スクワット入門/『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』小林弘幸


・『「腰割り」で体が若返る 肩こり・腰痛・ひざ痛など体の不調を改善するお手軽体操』白木仁

 ・スクワット入門

『本当に必要な「ゆるスクワット」と「かかと落とし」』中村幸男
・『世界一やせるスクワット』坂詰真二監修
・『神スクワット 1日20回からの腹も凹む究極のメニュー』森俊憲

 正しいフォームとは、最も健康効果を高めるフォームのことです。同時に、誰が行ってもケガやアクシデントが起こりにくい、安全なフォームのこと。
 そこで私は、医学的知見をもとに、健康効果を最大限に高めるとともに、誰もが安心して行える正しいスクワットの方法を検証しました。
 最初は、私自身も「階段をラクに上るため」という、ちょっとしたきっかけで始めたスクワットでしたが、効果を調べていくと、実におもしろいことがわかりました。【スクワットには、足腰を鍛えるだけではなく、免疫力向上、認知症予防、尿もれ防止、便秘改善、心を前向きにする作用】など、たくさんの驚くべき効果が隠されていたのです。
【スクワットをすることで、これからのあなたの人生は確実に変わります】。

【『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』小林弘幸(幻冬舎、2017年)以下同】

 スクワットは意外と奥が深いのだが中々いい本がない。一応私が読んだものをピックアップしておいたが雑多な情報から自分なりにエッセンスをつかむのがよいだろう。

 筋トレの基本はスクワットである。理由は簡単で人体の最も太い筋肉が大腿筋であるからだ。加齢に逆らえるのは筋肉だけである。黙っていると筋肉は年々減少してゆく。体型は変わっていなくても実際はサルコペニア肥満になっているケースが多い(『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也)。有酸素運動で鍛えられる筋肉は代謝とは無縁で、贅肉を落とすためには筋トレが不可欠だ。

・毎日、朝晩行う
・ゆっくり行う
・ひざを90度より深く曲げない
・意識を太ももに集中させる
・腰を曲げない
・腰を下ろすときに息を吐き、上げるときに息を吸う
・食前に行う
・入浴前に行う
・ゆったりした衣服で行う
・痛みを感じたらすぐに中断

 所謂ハーフスクワットなのだが姿勢については諸説ある。一般的には足を肩幅より広い位置に置き、爪先をやや外側に向ける。腕は胸で組む、胸から離して組む、真っ直ぐ伸ばして掌(てのひら)を下に向けて重ねる、など。股割りスタイルというのもあって、この場合は相撲取りのように足と膝を外側に向けて行う。膝に掛かる負荷が少ないといわれている。

 高齢者はテーブルや椅子、手摺りなどにつかまって行うといいだろう。特に女性の場合、尻餅をついて背骨の圧迫骨折が原因で寝たきりになるケースが多いので安易な姿勢は戒めるべきだ。

死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい
小林 弘幸
幻冬舎 (2017-10-25)
売り上げランキング: 14,784

2019-02-24

ウォーキングの極意/『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成


『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『「体幹」ウォーキング』金哲彦

 ・ウォーキングの極意

『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也
『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫
『究極の身体(からだ)』高岡英夫

身体革命

 私は2004年に、『高岡英夫の歩き革命』(弊社刊)を舞台に、人の理想の歩きとして、「ゆるウォーク」を提示した。
 ゆるウォークとは、体をゆるめて、コリやムダな力を取り除き、もって生まれた自然の力を取り戻し、快適に歩くことである。つまり、この本は、観念的に正しいとされる歩き方に人の体をはめ込むという、これまでなされてきたすべての歩き方の理論と指導に、警鐘を鳴らす本でもあった。
 そして「この本は、とても奥の深い内容を、懇切丁寧に、わかりやすく説いている。これこそ、快適な歩きをものにするためのバイブルだ」との声を、数多くいただいた。
 しかし、ゆるウォークを、どこまでも正確に理解していただきたいという思いが強すぎたのか、その内容は少々ヘビーなものになってしまった。そこで、このヘビーな本を手にした多く(ママ)方々から、今度は、もっと気軽に取り組めるやさしい本を出版してほしいというご希望をいただき、本書は生まれた。

【『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬〈こまつ・みふゆ〉構成(学習研究社、2006年)】

 臆面もなく自画自賛を綴(つづ)る神経が図太い。病的といってもいいほどだ。自己愛性人格障害か、もしくは自分を高く売りつけようとする詐欺師のどちらかだろう。『高岡英夫の歩き革命』の焼き直しにすらなっていない著作で、半分ほどの量を費やしてゆる体操を紹介している。かえって手の内を隠すような体裁となっているのが疑問である。2008年には同じく学研から『楽しくなるゆるウォーク DVD付き』を刊行しており、著者と出版社にとっては「一粒で三度おいしい」マルチ出版となっている。

 理想の歩きでは、脚に重みが感じられるものの、軽く動くようになる。脚に重みを感じるというのは、脚の脱力が進んだ証拠。軽く感じるのは、股関節のまわりの筋肉がゆるんできたということで、大腿骨がパッとスムーズに前に振り出されるようになってきた証拠である。
 さらに股関節まわりの筋肉の脱力が進むと、腸腰筋(ちょうようきん)が使われ始めてくる。腸腰筋(下図)は、股関節と骨盤及び背骨をつなぎ、大腿骨をポンと前に振り出す働きのある筋肉なので、さらに脚は軽く感じられるようになる。

【『高岡英夫の歩き革命』高岡英夫:小松美冬〈こまつ・みふゆ〉構成(学習研究社、2004年)】


 人品が卑(いや)しくとも理論が優(すぐ)れているのは確かだ。ただし体に関することは本書に限らず鵜呑みにするのは危険である。飽くまでも参考にしながら自分自身で創造的な手法を編み出すのが正しい。体も心も千差万別なのだから。注意深く体の声に耳を傾けることだ。

 腸腰筋を使うというのは要は振り子の原理である。もともとウォーキングに関心はあったのだが、近所のおばあさんの歩行訓練を手伝うことになり真剣の度合いが一気に増した。歩けない人が歩けるようになる課程に私は歩行の合理性を見出した。

 次に「Lesson 4 のおもなワーク」を紹介する。


 歩行障害があるとどうしても足先に意識が向かう。これが躓(つまづ)きの原因となる。介護の場合はまず「膝を高く上げる」ことを促し、少しずつ腿(もも)から腸腰筋を意識させるのがいいだろう。腸腰筋を使うには膝を曲げずに歩いてみればよい。

 続いてウォーキングに関する私の試行錯誤をいくつか紹介しよう。

 








「大股で歩くことにまったく意味はない」(田中尚喜)という。また「時速8kmを超えたら、歩いた方がエネルギー消費量が大きく」なるそうだ(園原健弘)。とすれば高速小股歩行は最強の運動となる。

 色々と調べているうちに踵(かかと)への衝撃がダメージを蓄積することがわかってきた。クリストファー・マクドゥーガル(近藤隆文訳、NHK出版、2010年)のベストセラー『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"』でヒール・ストライク(踵着地)走法が怪我の要因となることが広く認知された。またララムリ(タラフマラ族)のサンダル(ワラーチ)ランニングが世界のランナーに衝撃を与えた。








 フォアフット走法とミッドフット走法については判断するほどの材料を私は持たないが、足の形状が縦長であることを踏まえるとミッドフットに動力性の軍配が上がると思われる(正しくは「ミッドフット」 - Great Life)。

 検索したところ『「つま先歩き」で腰の痛みが消える』(宮崎義憲)との記事を見つけた。試しに5kmほど歩いてみた。何と寝る前から筋肉痛が出た。ふくらはぎから太腿に至るまで足全体が鈍い痛みに包まれた。

 実際にやってみると直ぐにわかることだがスニーカーだと歩きにくい。ギョサンも踵部分が高いので向いていない。ソール(靴底)は薄い方がよさそうだ、と気づいた瞬間に地下足袋が思い浮かんだ。案の定同じ考えの人がいた。

地下足袋ウォーキング ~正しい足運びを身に付けよう 『それいいな!』の山道具

 ワラーチの作成もそれほど難しくはなさそうだ(コルクマットワラーチがすごすぎるので作り方教えます! - 裸足と瞑想の日々)。また足型をファックスやメールで送るオーダーサービスもある(2700円:ランニングサンダル・ワラーチを作ります!! - クローズアップ源内)。

 では今日現在でのウォーキングの極意を開陳しよう。家の中を歩く時の動きをよくよく吟味すれば踵をつけていないことがわかる(踵をついている人はよほど運動神経が鈍いか、体のバランスが狂っている)。裸足の動きを再現するためにはソールの薄い履物(←シューズとは書かないぞ)が望ましい。イメージとしては足袋(たび)や草鞋(わらじ)である。

 爪先ウォーキングの肝は指の付け根部分を後ろから前に向かって半回転運動をさせるところにある。現実には土踏まずから着地することはできないわけだから、これがミッドフット歩行ということになる。

 で、ここからが問題なのだが、腸腰筋を使って脚を動かすと爪先から着地するのが極めて難しい。慣れないうちは小股で爪先を内側へ向けると歩きやすい。そう、和服姿の女性の歩き方だ。

 これをマスターすれば「歩くスローステップ運動」が完成する。筋肉に負荷が掛かる分だけ関節や骨のダメージは軽減されるはずだ。

 ヒトと猿とを分けるのは二足歩行である。だったらきちんと歩きたいものである。



疲れない、きれいな歩き方は、腰から歩く、フラットに着地する | 笛吹きおじさんの、中高年が健康で快適に生きるための情報
その2「大転子を引き上げるイメージ」|にぎりこぷし|note
X脚、O脚の子を救う 歩き方&立ち方 | プレジデントオンライン

2019-02-22

腕は後ろに振る/『「体幹」ウォーキング』金哲彦


『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博

 ・腕は後ろに振る

『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

 黄色人種である日本人は、骨格的に大きなハンディがあります。
 黒人選手の骨格で特徴的なのは、骨盤がしっかり前傾していることです。そのため、骨盤が動きやすく、骨盤を動かすインナーマッスルの腸腰筋も非常に発達しています。つまり、生まれつき体幹が機能しやすいのです。黒人アスリートの、パワフルでダイナミックなフォームは、骨格からくる体幹の力によるものなのです。
 これに対し、日本人をはじめとする黄色人種は、骨盤がもともと後継ぎみ。そのため、腸腰筋やお尻の筋肉が発達しにくく、油断すると体幹がすぐに眠った状態になってしまいます。黄色人種の私たちが黒人に対抗するには、トレーニングによって強靭な体幹を作り上げることが必須条件なのです。

【『「体幹」ウォーキング』金哲彦〈きん・てつひこ〉(講談社、2010年)】

 実に危うい記述である。人種の違いを指摘することすら差別と受け止められかねない時代情況を思えば編集が甘すぎる。著者の視野も狭い。「骨格的に大きなハンディ」としているが、日本人の骨盤は稲作や山歩き(峠越え)に応じて進化したものと私は考える。江戸時代は「男十里、女九里」と言われた。男性なら40km、女性でも36km程度歩くのが普通だった。健脚の飛脚であれば100km以上の距離を移動したという。

 最近の若者を見ると日本人の脚もずいぶんと長くなった。床から椅子に坐るようになった生活スタイルの変化が影響しているのだろう。胴長・短足・眼鏡・出っ歯・首からカメラという日本人のイメージは既に過去のものだ。

 ウォーキングで大きく手を振ることには意味がないと書かれている。肩甲骨を動かすために腕は後ろに振るのが基本で、「肩甲骨に羽がある」というイメージを持つ。これは読んでから直ぐに実践した。

2019-02-19

トイレ掃除は高度な動き/『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成

 ・トイレ掃除は高度な動き

『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃

身体革命
必読書リスト その二

 おそらく大半の人が、掃除や洗濯は好きではないでしょう。
 私は毎日必ず、自宅の洗面所とトイレの掃除をしています。日によっては私が使うたび、多いときには1日に4~5回も掃除をすることがあります。
 そのたびに何をやっているかというと、便器の内側をブラシでササッと掃除するのです。1日4~5回もやると、洗剤を使わなくても水だけで汚れが落ちてしまいます。そして、トイレットペーパーのミシン目1間隔分だけを使ってトイレの床をすみずみまでふき掃除するのです。これを使ってサッサッサとふくだけで、床一面がピカピカになります。なぜかというと、床が汚れていないからなのです。
 ほこりはすみっこにたまりがちですが、毎日ふき掃除をしていればまったく汚れません。現実には汚れていないけれど、そうやってふいていくのです。
 突然トイレ掃除の話になって、何がいいたいのかとお思いでしょうが、もう少しおつきあいください。
 トイレ掃除はほとんどの人がイヤがることですよね。汚れやすいし、狭く、そのうえ便器の形が複雑だから、体をクネクネさせないと、便器の億までうまく掃除ができません。
 床のふき掃除だって、変に力んで力まかせにこすり過ぎるとトイレットペーパーが破れてしまいますし、便器もきれいになりません。
 つまり、トイレ掃除は、力加減を考えながら手を動かす、けっこう高度な動作なのです。あざやかに体をくねらせて、サッサとやるこの動作自体は、ゴルフでボールを打ったり、テニスでサーブを打ったりする難しい動きと同じぐらい、もしかすると勝るかもしれないほど高度な動きなのです。
 体を魚のようにくねらせるこの動作は、健康だけでなく、さらにはスポーツや高度な機能を開発していく体操に自然となっている。毎日、便器の複雑なところに、いかに鮮やかに体をサッと差し入れて、いかに短い時間の中できれいにするか。さっとふいて、さっとトイレから抜け出してくるか。こうしたことが自分の健康にも、若返りにも、高能力にも役立っているわけなのです。
 そう考えたら、トイレ掃除をやらないなんて、なんてもったいないことだろうと思うのです。

【『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫(マキノ出版、2005年)】

 掃除は努力が100%報われる稀(まれ)な行為だ。掃除はやった分だけ必ずきれいになる。物理世界ではエントロピーが増大し続けるが、これに逆らう唯一の存在が生命体である。乱雑さを整える(=エントロピーを逆行させる)掃除はその象徴的な行為といってよい。ブッダの弟子チューラパンタカ(周利槃特〈すりはんどく〉)は掃除をきっかけにして悟りを得たと伝えられる。

 掃除には体をゆるめるだけではなく、心をゆるめる効用もあります。汚いものに積極的にかかわっていきますから、そのぶんだけ心のバランスがとれてくる。人間としてのバランスがとれてくるから、周囲との人間関係もよくなります。
 人間には汚い部分、きれいごとではすまない部分がたくさんあります。
 そうした自分の汚いところに自分自身で触れないで、気がつかないようにフタをしてしまうのが、いまの社会のあり方だと思うのです。
 ですから、きれいごとですませるというか、とにかく汚いことには触れない、汚いものは避けて通るという人生を子どものころから送っていると、人としてのバランスが失われていきます。

 巧みな説明だが言い過ぎだ。清掃会社に勤める人々全員が善人というわけでもあるまい。それでも尚、心を打たれるのは部分的な真理があるためだろう。

 面接をするよりも部屋を見た方がその人物を理解できるという。ただし言いわけをさせてもらうと男は汚れに対する耐性が高い。いかに乱雑な家に住んでいたとしても悪臭が漂わなければ大目に見るべきだ。いや、大目に見てくれ(笑)。

 今日から喜んでトイレ掃除をすることをここに誓うものである。

2019-01-12

思想する体/『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『究極の身体(からだ)』高岡英夫

 ・思想する体

『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『アイ・ボディ 脳と体にはたらく目の使い方』ピーター・グルンワルド
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編

身体革命
必読書リスト その二

 われわれは自らの自己イメージ通りに行動する。この自己イメージは――他方ではわれわれのあらゆる行動を支配するが――程度の差こそあれ、遺伝、教育、自己教育という三つの要因に制約される。
 遺伝的にうけついだものは、もっとも不変の部分である。個人の生理学的資質――神経系、骨格、筋肉、体内組織、腺、皮膚、感覚器の形態と能力――は、なんらかの独自性が確立されるはるか以前に、身体的遺伝によって決定されている。その自己イメージは、自然の成り行きのなかで体験する行動と反応から生まれ発育する。
 教育は、ひとの言語を決定し、特定の社会に共通した概念と反応のパターンをつくりあげる。このような概念と反応は、生をうける環境次第でさまざまであろう。それらは種としての人間の特質ではなくて、ある集団や諸個人の特質なのである。
 教育が自己教育の方向を大部分決定するとはいえ、自己教育は、われわれの成長発展にとってもっとも積極的な要素であり、生物学的起源をもつ諸要素よりもはるかに多く社会的に活用される。自己教育は、外からの教育を身につける方法を左右するだけでなく、習得すべき材料の選択と同化できない材料の拒絶に影響を与える。教育と自己教育は断続的に行なわれる。

【『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス:安井武訳(大和書房、1982年/新装版、1993年)】

 フェルデンクライス・メソッドは動作法である。体操ではない。正式にはソマティック・エデュケーションというらしい。直訳すれば「身体教育」だが「心身技法」とすべきだろう。気づきや内発性に重きを置くところに特徴がある。

 ルドルフ・シュタイナーオイリュトミーリトミックよりも負荷は弱い。

 アレクサンダー・テクニーク成瀬悟策〈なるせ・ごさく〉の心療動作法と同じジャンルと考えてよい。モーシェ・フェルデンクライスはフレデリック・マサイアス・アレクサンダーからレッスンを受けていたとのこと(ソマティック・エデュケーションとは | アレクサンダーテクニークの学校)。

 肉体との対話によって思想する体が形成される。無自覚な姿勢や動きが体の自由を損ない、肩凝りや猫背、腰痛となって現れる。日常生活で筋肉や骨を意識することは殆どない。我々が体を意識するのは病気や怪我をした時に限られる。身体障碍者のリハビリは時に運動部の練習よりも過酷の度合いを増すという。であれば元気なうちから体の内側に眼を向け、耳を澄まし、鍛えておくべきだろう。

 プロスポーツ選手でもフェルデンクライス・メソッドを実践している人がいる。やはり人によるのだろう。私は全くやる気が起こらなかった。ところがである。フェルデンクライスの言葉は刮目(かつもく)に値する。竹内敏晴や高岡英夫と完全に共鳴している。むしろ思想性では一歩先を行っている。

 フェルデンクライスがいう「イメージ」とはスタイルと言い換えてよい。「表現のなかで、人間がいちばん惹(ひ)かれるのは、その文体、スタイルである。人間を好きになる場合でも、その人のスタイルを好きになるのだ。どう生きているか、といった対他的、対社会的スタイルに共鳴するかしないか、である」(『書く 言葉・文字・書』石川九楊)。

 自分が自分らしくあろうと努めて確立したスタイルの結晶が「私」である。つまり「私」とは単なるイメージに過ぎない。そこにあるのは「私」という反応だけだ。ひょっとすると「私」という情報すら錯覚かもしれない。

 しかしながら、観察者と観察されるものとのあいだに分裂があるときには、葛藤があります。
 私たちの、他の人たちとの関係というのはすべて――親密なものであろうとなかろうと――分裂や分離に基づいています。
 夫は妻についてのイメージをもち、妻は夫についてのイメージをもっています。そういったイメージが、何年にもわたり、快楽や苦痛、いらだち、その他もろもろを通じて、ひとまとめにされてきたのです――ご承知のとおりの、夫と妻とのあいだの関係です。
 ですから、夫と妻との関係というのは、実際にはふたつのイメージのあいだの関係なのです。性的なことすら――その行為のなか以外のところでは――そのイメージが重要な役どころを演じているのです。
 そういうわけで、人が自分を観察すると、関係のなかで絶えずイメージを構築し、それゆえ分裂を生じさせていることがわかります。
 そのため、実際には関係というものなどまったくないのです。
 人は家族や妻を愛していると言うかもしれませんが、それはイメージであり、それゆえそこには実際の関係などなにもないのです。
 関係とは、物理的な接触だけではなく、心理的になんの分裂もない状態をも意味します。(スタンフォード大学での四つの講話)

【『あなたは世界だ』J・クリシュナムルティ:竹渕智子〈たけぶち・ともこ〉訳(UNIO、1998年)】

 病気や障碍を受け容れることが難しいのも過去のイメージを手放すことができないためだ。我々はイメージを持つことで現実性を見失っているのだ。ジョン・レノンは「想像してごらん」と歌ったが、想像を振り捨てて目の前の現実をありのままにただ見つめることが正しい。

フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく
M. フェルデンクライス
大和書房
売り上げランキング: 93,464

あなたは世界だ
あなたは世界だ
posted with amazlet at 19.01.12
J. クリシュナムルティ
UNIO
売り上げランキング: 476,632

2019-01-03

体幹の奥に背骨あり/『究極の身体(からだ)』高岡英夫


『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫

 ・体幹の奥に背骨あり

『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃

身体革命
必読書リスト その二

 私の「運動化理論」の考え方で言うと、人間の身体というのは実は「魚類」なのだ。

【『究極の身体(からだ)』高岡英夫(講談社、2006年/講談社+α文庫、2009)以下同】

「!」――頭の中で電球が灯(とも)った。背骨が重要なのだ。腸腰筋や体幹が注目されるようになったのは最近のことである。体幹の奥に背骨あり。つまりはトレーニングの方向が背骨に向かっていたのだろう。私がピンと来たのは介護の視点からである。

 魚の動きをよく観察してみると、やはり全身の中間から後方の尾ひれ側のほうがよく動いている。魚の後半身の波動運動はまさに鞭のような動きだ。
 その魚類の鞭の動きを体現する二本足の人魚が、「究極の身体」の下半身なのだ。
「究極の身体」では、立ったり歩いたり走ったりジャンプしたりした時に、魚類の身体運動と同じように、胸椎の下端を中心に、足先までを鞭打たせる運動をしている。しかもその運動は、決して魚類と同じレベルではない。
 人間が鞭のような下半身の扱い方をできるようになった時は、魚類よりもはるかにハイレベルな運動になる。なぜかというと、人間の下半身の運動は交互運動だからだ。人間は身体をX・Y平面で割って左右交互に鞭打つことができるのだ。それに対し、魚類の鞭は一本だ。左右二本の鞭を振り回せる人類の運動のほうが、はるかに複雑な運動なのである。(中略)
 つまり「究極の身体」というのは、魚が尾ひれで立っている状態なのだ。

 スピードは失ったが複雑な動きに対応できるという意味なのだろう。我々は木登りができる。

 私は今、歩行困難なおばあさんを歩かせる計画を進行中で、まず第一段階として曲がった背中を伸ばすために鋭意努力をしているところである。背筋を鍛える運動を中心に行ってきたが、本書を読んで腰をひねる運動を取り入れることにした。90近い年齢のせいもあり可動域が狭いため、チューブやゴムまりを使って負荷を掛ける。

 ちょっと小馬鹿にしていたゆる体操を本気で15分ほどやってみた。ひたすら魚が泳ぐようにゆらゆらと体を揺らしただけである。次の日、背筋が筋肉痛になっていた。水泳が健康にいい理由もたぶん背骨の運動にある。フラダンスやフラフープは腰の動きに特徴があるが、背骨を中心とした肩甲骨~骨盤の運動が理想的だと思う。水泳、ダンス、木登り、ロッククライミング、スキーなど。

「丹田を意識する」というのも多分背骨の動きに関係しているのだろう。まったくの素人考えだが背筋を伸ばすというよりは肩甲骨を引き上げることによって胸骨を開く意味合いがあるのではないか。

 高岡英夫は東大卒だけあって説明能力が極めて高い。ただし書籍は重複した内容が多く粗製乱造気味でマーケティング目的が透けて見える。更に「ゆる体操指導員」になるためには数多くの著作やDVDを購入しなくてはならない。こうなると形を変えた代理店商法といってよい。よもや高岡教を目指しているとまでは思わないが、宗教やマルチ商法の臭いが漂ってくる。

 また我が田に水を引くように有名人を「ゆる理論」に利用する悪癖があり、誇大広告紛いの危うい記述が少なくない。読むに値するものは今のところ3~4冊ほどか。

2018-03-18

有酸素運動よりも週2回の筋トレを/『速トレ 「速い筋トレ」なら最速でやせる!』比嘉一雄


・『スロトレ完全版 DVDレッスンつき』石井直方、谷本道哉

 ・有酸素運動よりも週2回の筋トレを

 確かに、運動で脂肪を減らすためには、脂肪を直接エネルギーとして消費させることができる有酸素運動が有効です。公園や川沿いでのウォーキングやジョギングは気持よく、達成感とともにリフレッシュ効果も得られることでしょう。
 ただし、【有酸素運動でカロリーを消費できるのは運動を行っている間だけ。筋肉を増やすことで、何もしなくてもカロリーが消費される基礎代謝が上がるのとは違い、有酸素運動によるカロリー消費は運動中のみ】という限定的なものなのです。

【『速トレ 「速い筋トレ」なら最速でやせる!』比嘉一雄〈ひが・かずお〉(池田書店、2015年)以下同】

 いわゆる健康本は眉に唾(つば)して読む必要がある。ストレッチ本や筋トレ本も例外ではない。どの本も恐怖感を煽り立て、単純な結論に導くのは多分編集方針なのだろう。有り体に言えば「読者を馬鹿にしている」わけだよ。ま、自分の健康管理すらできない連中に高尚な話は無理だろうと考えているに違いない。ってなわけで内容をただ鵜呑みにするのではなく、自分で情報の裏づけを取りながら概念をつかむことが重要だ。

「筋肉が基礎代謝の30%を担う」と書かれているが、Wikipediaでは「大人の場合肝臓が27%、脳が19%、筋肉(骨格筋)が18%」と解説されている(基礎代謝)。

「総エネルギー消費量(24時間相当)は、大きく基礎代謝量(約60%)・食事誘発性熱産生(約10%)・身体活動量(約30%)の3つで構成」(身体活動とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット)されているので、筋トレは身体活動量と基礎代謝量をアップさせることは確かだろう。

 また、35歳から「筋肉量は年に1%ずつ減っていきます」と書かれているが、減少するのは速筋(白筋)であって遅筋(赤筋)ではない(筋肉の種類とその特徴 | 健康長寿ネット)。つまり中高年になればなるほど筋トレが有効なのだ。

 実は、【筋肉をつくるうえでは、週2回が最も効果的なのです】。それ以上の頻度で行っても――もちろん害にはなりませんが――メリットはありません。はっきり言えば、ムダになるだけです。
 これは、あるアメリカの研究チームの実験効果によって明らかになった事実です。

 出典として示されているのは改変された図だけで、これまた大雑把と言わざるを得ない。たぶん超回復理論に基づいているのだろう(超回復って何?)。休息時にはウォーキングやジョギングをするのが望ましいようだ(超回復が嘘なのは前提が間違っているから)。以下のページも大変勉強になった。

超回復と休息:CramerJapan
超回復嘘・本当?部位別の回復時間|腹筋・大胸筋・広背筋

 で、私が出した結論はこうだ。「人体は週に2回程度の力仕事をすることで最も発達するように進化したのだろう」。毎日力仕事をさせられるのは奴隷に等しい。またメンタルも沈んでゆくことだろう。苦役(くえき)が長寿に結びつくとは考えにくい。

 女性が高齢になると尻餅をついて背骨が損傷することがままある(脊椎圧迫骨折)。また寝たきり老人になる最大の原因は転倒による骨折である。やはり人類は長生きし過ぎているのだろう。下半身に重点を置いた筋トレをおすすめしたい。更に骨粗鬆症を防ぐために乳製品の摂取をやめることが望ましい(カルシウム・パラドックス)。

速トレ 「速い筋トレ」なら最速でやせる! (Ikeda sports library)
比嘉一雄
池田書店
売り上げランキング: 29,510

サルコペニア肥満を恐れよ/『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也

2017-08-24

疲れないタイピングのコツ/『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖


『ことばが劈かれるとき』竹内敏晴
『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二

 ・疲れないタイピングのコツ
 ・体のセンサーが狂っていると疲れが取れない

『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール
『呼吸による癒し 実践ヴィパッサナー瞑想』ラリー・ローゼンバーグ

身体革命
悟りとは

 今度は、のせた指先とキーボードの間に薄皮1枚入っているようなイメージを持ってください。
 実際には手とキーボードは接触しているのですが、その間を隔(へだ)てる薄くて柔らかいシートのようなものが入っているイメージをすると、指先が柔らかくなって、肩や首の力がフッと抜けるのが感じられるはずです。
 そして、その「薄皮1枚入れる」感覚を持ったまま実際にタイピングしてください。
 肩や首がリラックスした状態が保たれるので疲れなくなり、むしろタイピングすればするほど、ほぐれると感じる方もいるかもしれません。

 では、なぜこんなちょっとしたイメージだけで力が抜けるのでしょうか?
 実は「薄皮1枚入れる」感覚で指先の皮膚感覚が活性化していることと関係があります。
 特にモノに触れるとき、皮膚はそのモノの情報を受けとるために重要な役割を果たしています。
 しかし、我々は一般的にモノに触れるときに皮膚感覚を意識しないので、外からの情報を受けとりにくくなっています。
 キーボードからの情報を受けとることなく、それを押すのにどの程度の力が必要化わからないので、必要以上に力を込めてしまうのです。

【『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖〈ふじもと・やすし〉(さくら舎、2012年/講談社+α文庫、2016年)】

 藤本靖はロルフィング®というボディワークの施術者である。意識を操作するよりも身体を操作する方が手っ取り早い。要は気や意識を内側へ向けることだ。これを内観という。

「薄皮1枚」感覚は携帯電話のボタン操作にも使えるという。薄皮を意識することで皮膚感覚が広くなる。点から面ほどの違いがある。私は歩く時や階段の昇り降りでも心掛けている。

 やってみると直ぐ気づくが「薄皮1枚」とは皮膚そのものを意識することである。大袈裟に言えば日常生活に接触の豊かさを取り戻す行為につながる。

 心も体もほんの少しの歪みによってバランスが狂う。本書は身体操作だけではなく五官の使い方にまで言及されており、五蘊(ごうん)を調(ととの)えるのに役立つ。疲労回復といった低い次元にとどまる内容ではない。

2016-10-28

サルコペニア肥満を恐れよ/『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也


『調子いい!がずっとつづく カラダの使い方』仲野孝明
『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』ロビン・マッケンジー
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成

 ・サルコペニア肥満を恐れよ

四股鍛錬

 筋肉は「老化に抗(あらが)う器官」です。
 歳をとれば、誰でも衰えを感じるようになります。白髪が増えてきたり、老眼になったり、耳が遠くなったり……歳とともに少しずつ機能が衰えてくるのは“老化だから仕方がない”と思っている方も多いでしょう。
 でも、筋肉だけは別です。たとえ、70歳、80歳になろうとも、鍛えれば量を増したり機能を高めたりします。なかには90歳代で筋量が増えたというデータもあります。言ってみれば、体の中で筋肉だけが「加齢」「老化」という流れに果敢に逆らっているわけです。

【『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也〈くの・しんや〉(飛鳥新社、2014年/飛鳥新社文庫、2017年)】

 久野譜也は筑波大学院教授で、インナーマッスルの一つである大腰筋(※画像)に初めて注目した人物。きっかけは高野進(男子400mの日本記録保持者)のMRI撮影であった。太腿の筋肉を撮影したところ大学生の陸上選手と変わらぬ太さであった。ついでにあちこち撮影したところ高野の大腰筋が異様に太いことがわかったという。イスさえあれば直ぐにできるトレーニングメニューも紹介。40歳以上の善男善女は必読のこと。

 20代の筋肉を100とすると、40代で20%減、50代で30%減、60代で40%減、70代で50%減と筋肉量低下は進行する。つまり年々1%ずつじわじわと減ってゆくわけだ。これが疲労の原因となるいう。

 加齢や疾患による筋肉減少をサルコペニアといい、これに肥満が加わると疾病のリスクが一気に上がる。減った筋肉の分だけ脂肪がついてしまう状態は体重だけを基準にすると全く気づかない。


 脂肪太りの内部はかくも恐ろしい様相を呈している。加齢に伴い筋肉量は確実に減ってゆくわけだから、あなたの「変わらぬ体重」を支えているのは間違いなく脂肪である。サルコペニア肥満は女性に多く、原因の一つにダイエットがある。

 でも、みなさんはこうした無謀なダイエットがどんなに自殺行為であるか、これによって健康や美容の輝きがどんなに失われてしまうか、その「コトの重大性」が十分にわかっていらっしゃるでしょうか。
 たとえば、みなさん、食事制限だけのダイエットを3か月間続けると、通常の人に比べてどれくらい筋肉が落ちるのかをご存じですか?
 私たちの研究では、「わずか3か月間で5%の筋肉量が落ちてしまう」という結果が出ています。20代以降、筋肉は1年に1%ずつ減っているので、これは3か月で5年分の筋肉を減らしてしまったということ。通常なら5年かかって落ちるべき筋肉量を、たった3か月でごっそり減らしてしまったわけです。これはかなり危険なレベルであり、サルコペニアが進んだお年寄りでもこんなに一気に筋量低下が進むことはそうそうありません。

 いかにも学者らしい臭味のある文章だが指摘されている事実は侮れない。我々は容姿という「見た目」を気にして「健康」を失っているのだ。スレンダーボディの正体は「老(ふ)けた体」なのである。

 年をとると歩くスピードが落ちる。歩行スピードは「ピッチ(歩調)」と「歩幅」で決まり、ピッチは老化の影響を受けないという。つまり「老化で歩行スピードが低下するのは、徐々に歩幅が狭くなっているせい」ということになる。下肢全体の筋肉が衰えが原因と考えられてきたが、久野は大腰筋に注目する。

 寝たきりになるきっかけは転倒による骨折である。特に女性の場合、尻餅をついて脊椎を圧迫骨折するケースが多い。養生(ようじょう)している間に筋力が低下し起き上がれなくなってしまうのだ。

 私は最近ストレッチを初めてわかったのだが関節部分の硬さも歩幅が狭くなる要因である。動きの鈍さと言い換えてもよい。股関節のストレッチを行うと歩幅がグッと広くなる。

 大腰筋は背骨と大腿骨をつなぐ筋肉である。


 猫背、お腹が出ている、つまずきやすいといった症状は大腰筋の衰えを示すサインである。

 人体の筋肉は上半身に対して下半身の方が1.5倍も大きい。鍛えるべきは下半身である。そしてここが肝心なのだが筋肉を強化するのは有酸素運動ではなく無酸素運動(筋トレ)である。簡単に言ってしまえばいくらウォーキングをしても歩幅が広くなることはない。

 最後にもう一つだけ蒙(もう)を啓(ひら)かれた内容を記そう。かつて多田富雄が『わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか』で、自民公明が推進した介護予防の「パワーリハ」(筋肉増強のためのパワーリハビリテーション)を「税金を使って業者を潤わせただけの事業」と批判したが、これは誤っている。筋肉は何歳になっても鍛えることが可能で、アンチエイジングを可能にする唯一の器官なのだ。



筋肉量と寿命の関係
サルコペニア(筋肉量減少)が疲労の原因
サルコペニア肥満チェック!40代以上の女性に忍び寄る怖い肥満

有酸素運動よりも週2回の筋トレを/『速トレ 「速い筋トレ」なら最速でやせる!』比嘉一雄
ペダリングの悟り

2014-05-20

何かに打ち込む/『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫


 ・何かに打ち込む

『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』
『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『究極の身体(からだ)』高岡英夫

 どんなつまらないことでも、打ち込めればおもしろくなる。おもしろければさらに打ち込みたくなる。これをくり返し体験することで、身体と心の中に中心となるものが育ってくる。そうすると、それがない人には見えないさまざまな対象の中身がとらえられるようになり、自分の軸と対象の中心をきちっと向かい合わせることができるようになる。これができるようになると、必要であればどんなことにも打ち込めるようになるのです。
 そして、いずれ自分が本当にしたいことを見つけ、それに打ち込みつづけ、達人への道を切り開いていくことができるのです。
 だから、打ち込むものは基本的になんでもいいのです。それによって育てられる自分こそが重要で、打ち込む対象はなんでもいいのです。たとえ、それが大人に叱られるようないたずらでもいいのです。たいていのいたずらは、大人たちから見れば、打ち込む対象としてはまったく価値のないものでしょう。だけど、大人からは許されないようないたずらも、こっぴどく叱られる必要はもちろんあるものの、それをしたことで、その子どもの中に打ち込める自分が育っているのであれば、それはきわめて重要な経験だと言えるのです。

【『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫(講談社+α文庫、2005年/運動科学総合研究所、2003年『カガヤクカラダ』改題、新版)】

 ツイッターで五十肩を訴えたところ、後輩が教えてくれたのが「ゆる体操」だった。ゆらゆら、ブラブラさせるのが基本。一理あることは直ぐわかった。素人判断のリハビリが危険なのは筋力アップだけに意識が向いて筋肉を緩めないためだ(『脳から見たリハビリ治療 脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方』久保田競、宮井一郎編著)。

 ストレスが過剰になると身体は常に強(こわ)張る。固まった筋肉が脳へのフィードバック情報を減少させる。外界への注意力が散漫になれば事故や怪我につながりかねない。

 高岡は何かに打ち込むことを勧める。「自分の軸と対象の中心をきちっと向かい合わせることができるようになる」とは言い得て妙だ。野球や剣道の「打ち込み」を思えばストンと腑に落ちる。来る日も来る日も素振りを繰り返すのは身体の軸を定めるためだ。ぎこちない動きも少しずつ無駄な力が抜けて理想的なフォームに近づく。

 一つの言葉が思考を劇的に変えることがあるように、一つの動きが運動神経を一変させることがある。私は50歳になった今でもありありと覚えているのだが、小学2年の時、ドッジボールでファインプレーをしたことがある。ライン際でジャンプし相手のパスボールを奪ったのだ。やんややんやの大喝采を浴びた。たったこれだけのことが私の運動神経を一変させた。生まれて初めて野球をした際にも同様のプレーができた。それからというもの球技全般において抜きん出た才能を示した。

 きっとそれまではつながっていなかった神経やシナプスがつながったのだろう。そんな風に考えている。何かに打ち込む。そして一つの自信を得る。たったそれだけで子供の人生は変わる。世界は信じられるものと化して光り輝く。「子の日わく、これを知る者はこれを好む者に如かず。 これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」(『論語』金谷治訳注)と。我を忘れて打ち込むことは楽しい。