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2008-12-23

なぜ私達は声が出ないのか/『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一

 ・なぜ私達は声が出ないのか

『リズム遊びが脳を育む』大城清美編著、穂盛文子映像監督
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖
『身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生』齋藤孝
『息の人間学 身体関係論2』齋藤孝
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇

 竹内敏晴は演出家である。若い頃、一時的に聴覚を失った経験があり、独自のボイストレーニングを行っている。言うなれば「声と身体」のプロ。理論をもてあそぶような姿勢がなく、経験に裏打ちされた論理は雄々しい説得力に富んでいる。

 竹内は嘆く。「現代人は声が出なくなった」と。建物がコンクリートで造られるようになってから、子供は騒ぐことを禁じられた。何せ、赤ん坊の泣き声を嫌悪する父親がいるご時世だ。

 こえの面から見たことばとは、本来からだの発する音、さらに主体とそのからだそのものに即して言えば、からだの動きに他ならぬことになる。こえを、そしてことばを発するとは、からだの内に発した動きを、もっとも敏感にからだ全体に拡大した時、呼吸器官の部分に現れる動きの一部である。だから、からだが充分に解放され、内なる情報に対して敏速に反応できるだけ柔軟である時、充分に豊かなこえが発せられるのは当然のこととなるだろう。こえの問題は、本来発声器官の問題ではなく、からだ全体の問題なのである。
 気がつき始めてみると、こえの状態が悪い人があまりに多いので、私は不安になってきた。
 なぜ私たちは、これほどこえが出ないのか。
 なぜ私たちは、こんなにからだが歪んでいるのだろう。

【『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴(思想の科学社、1975年/ちくま文庫、1988年)】

 発語と言葉の認識という観点からすれば、脳機能の働きが抜け落ちているが、それでも説得力は色褪せていない。我々は音の出なくなったスピーカーみたいな身体を抱えているのだ。

 飽食よりも、むしろ身体を動かさなくなった生活様式の方が問題なのだろう。文明の発達は、額に汗して働くことを人々から奪い去った。私が流す汗の多くは冷や汗だ。

 自分の声が反響しない身体は、他人の声に震えることもない。そして、共感は失われ、共鳴は途絶える。声の大小ではなく、相手に届いているかどうかが問われるのだ。

 ストレスが多くなると身体は硬直する。硬直した身体はコントロールしにくくなる。そして、精神は拘縮する一方となる。

 ポピュラーミュージックの多くが「泣き声」みたいに聞こえるのも、声が出なくなっている証拠なのだろう。

 声を解放するには、身体の姿勢と生きる姿勢を変える必要がある。

2012-01-16

シュロモー・サンド「イスラエル国家は全てのイスラエル市民に属する」

2009年2月12日。イスラエル議会選挙直後の討論。ネタニヤフ顧問で在仏ユダヤ人代表評議会副議長のマイヤー・ハビブとイスラエル人歴史学者シュロモー・サンド。





 見よ、説教強盗の生きた見本を。何と日本語訳が刊行されていた。


ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか

2018-11-07

読む=情報処理/『読書について』ショウペンハウエル:斎藤忍随訳


『社会認識の歩み』内田義彦

 ・劣悪な言論に鉄槌
 ・読む=情報処理

『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール

必読書リスト その一

 学者とは書物を読破した人、思想家・天才とは人類の蒙をひらき、その前進を促す者で、世界という書物を直接読破した人のことである。

【『読書について』ショウペンハウエル:斎藤忍随〈さいとう・にんずい〉訳(岩波文庫、1960年)】

 書評を記そうとして関連文献を紹介していないことに気づき、更にその文献のための別文献にまでさかのぼってしまうことがままある。情報はつながることで強度を増し、あるいは意味を書き換え、はたまた過ちに気づく。

 脳機能は情報処理・計算に集約されるが、具体的には「読む」行為と考えてよい。脳は本を読み、人を読み、世界を読む。膨大な情報から感情という反応に引っ掛かった情報に重みをつけ、因果関係を築き、生き延びる可能性(※子孫も含む)を計算する。

 私の蒙(もう)が啓(ひら)けないのは目先の小事に囚われて感情を優先してしまうためだ。「カッとなって人を殺してしまった」という事件が時折ある。結局のところ「情報の読み方を誤った」のだ。

 地位・名誉・財産という世間の物差しがある。この物差しが示すのは「生存確率の高さ」であろう。しかし幸不幸を決めるものではない。それどころか世間の物差しはショウペンハウエルに言わせれば「蒙」そのものに他ならない。

 日本人の思考からすれば、やはり世界と社会の間に隔絶がある。日常生活で世界を意識することはまずない。政治や経済のレベルで考えても、せいぜいアメリカ・中国・南北朝鮮が浮かぶ程度である。

 読むとは解釈することである。情報は自我というフィルターを通して必ずバイアスが掛かる。合理性とは多くの人々を説得し得る「歪み」を意味する。あらゆる宗教が教義を巡る解釈によって分裂することからも明らかなように、言葉はいくらでも屁理窟をつけることができる。

 実はショウペンハウエルもその一人であった。本書の文体には逆らい難い魅力があり、人をして服せしめずにはおかない響きに満ちている。彼はまた仏教を厭世主義に貶めた哲学者でもあった。我々は騙される。姿形や見栄え、体型、声、文体などに。

読書について 他二篇 (岩波文庫)
ショウペンハウエル
岩波書店
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翻訳と解釈/『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー

2021-08-01

たわけ者



たわけ者 - 語源由来辞典

2022-02-25

依存症の教科書本/『快感回路 なぜ気持ちいいのかなぜやめられないのか』デイヴィッド・J・リンデン


『浪費をつくり出す人々 パッカード著作集3』ヴァンス・パッカード
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』デイミアン・トンプソン
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー
『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』アダム・オルター

 ・依存症の教科書本

『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール
『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング

 人間と快感との関係は、複雑かつ微妙なものだ。私たちは、快感を追い求めることに、とてつもない時間と費用と労力を注ぎ込んでいる。私たちが何かをしようとするとき、その動機づけの鍵となるのは快感である。たとえば学習に際しては、快感が中心的な役割を果たす。そもそも人類が生存し、遺伝物質を次世代に伝えていくためには、食べ物、水、セックスが〈報酬〉的なものと感じられなければならない。
 快感の中には、私たちにとって特別な種類のものもある。とくに重要な儀式には、祈りや音楽や舞踏や瞑想が伴い、多くは超越的な快感を生み出す。そのような快感は、人間の文化活動の奥底に深く根付いている。
 いっぽう、これほどまでに影響力の強い快感を前に、私たちはそれをコントロールしようとする。快楽について明確に定義された概念や規則は世界中の文化で見られるし、それは人類の歴史を通じて実にさまざまな表現で語られてきた。

【『快感回路 なぜ気持ちいいのかなぜやめられないのか』デイヴィッド・J・リンデン:岩坂彰訳(河出書房新社、2012年/河出文庫、2014年)】

 依存症の本はあまりいいものがない。部分や過剰に重きを置くあまり他人事に感じてしまう。「業」(ごう)を解く鍵があるように思ったが、私の志向を満足させる書籍は今のところ一冊もない。その中でも本書は教科書本としてお勧めできる。

「情報と刺戟」は今後一大テーマになると思われるが、薬物摂取以外の方法で脳を溺れさせることが可能となれば、人類が滅ぶまでの時間は大幅に短縮されることだろう。生き延びるための快楽システムが既に暴走しつつある。

2014-04-18

呼吸法(ブリージング)/『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英


『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成

 ・恐怖心をコントロールする
 ・呼吸法(ブリージング)
 ・呼吸をコントロールする

武の思想と知恵 平直行✕北川貴英
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖
『BREATH 呼吸の科学』ジェームズ・ネスター
『釈尊の呼吸法 大安般守意経に学ぶ』村木弘昌

悟りとは


 1.楽な姿勢で座ります。
 2.肩の力を抜いて手の平(ママ)を上向きにして膝に載せ、息が手のひらに伝えるように意識しつつ、普段より強く長めに呼吸をします。
 3.これを繰り返すと、手のひらがぽかぽかして来たり、呼吸による圧力が伝わってくるのがわかるでしょう。
 4.5分ほどかけて続けて終了です。首に力が入っていると、のぼせたり、立ちくらみになったりすることがあります。そういう時はすぐに休み、気分が落ち着いてから首や肩を回したりして、凝りをほぐすようにしましょう。

【『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英(マガジンハウス、2011年)以下同】

 基本的なことだが呼吸とは鼻から吸って口から吐くことをいう。北川は「口をすぼめる」と書いているが、あまり気にすることもあるまい。大口を開ける必要はない。色々な呼吸法が示されているが、一番手っ取り早く効果を感じられるのがこれだ。寒い時にやってみるといい。意識を手のひらに向けることが大事だ。続けて足の裏も同様に行う。

 仏教の瞑想のひとつに数息観(すそくかん)というのがある。これは鼻から吐いても構わない。ただひたすら息を勘定するのだ。焦った場合にやるとわかるが中々効果がある。確か米軍かCIAでも教えているはずだ。

数息法(気功の呼吸法)
数息観について

 病気や怪我などで痛みを感じる場合にも効果があると思われる。

 1.吐きながら1歩歩きます。
 2.止めながら1歩歩きます。
 3.吸いながら1歩歩きます。
 4.止めながら1歩歩きます。
 5.これを1~3分続けたら、同じことを2歩のペースでやります。つまり2歩吐き、2歩止め、2歩吸い、2歩止めるサイクルを繰り返すのです。
 6.1~3分ほど続けたら、3歩、4歩~10歩と徐々に歩数のサイクルを増やし、10歩まで行ったら9歩、8歩と徐々に歩数を戻します。
 7.1歩まで戻ったらおしまいです。

 歩数が増えるほど息を止めるのが苦痛になってきます。吸い過ぎでも吐き過ぎでもない、一番楽に息を止めていられる空気の量を見出しましょう。するとこれまでよりも厳密に自分の呼吸と姿勢をチェックすることができるはずです。息を止めることで緊張が生まれたら、その部位を軽く動かしたりして緊張を分散させるようにしましょう。息を止めるという負荷の中で快適さを保ち、かつ冷静に回復するのがこのエクササイズのポイントです。

 私はこれを実践して瞑想のコツをつかんだ。階段の昇り降りで行ったところ走る姿勢まで変わった。「生きる」とは「息する」ことの謂(いい)である。呼吸を見つめることは生を実感する行為でもある。

 我々は日常生活で身体を意識することが殆どない。意識に上るのは違和感や痛みであって身体そのものではない。明らかに身体を見失っているといってよい。呼吸を意識することは身体を調(ととの)える第一歩なのだ。



歩く瞑想/『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール

2019-07-31

アルツハイマー病に効く薬は存在しない/『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン


『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス

 ・アルツハイマー病に効く薬は存在しない

・『Dr.白澤の アルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる』白澤卓二
『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン

必読書リスト その二

 さようなら、
 アルツハイマー病。
 薬に頼らない治療と
 予防する時代へ。

【『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン:白澤卓二〈しらさわ・たくじ〉監修、山口茜〈やまぐち・あかね〉訳(ソシム、2018年)以下同】

 原書は2017年。ミヒャエル・ネールスを必ず先に読んでおくこと。専門用語が多いがそれほど難しい内容ではない。やはり正確な知識を広く知らしめるところに眼目を置いたのだろう。上記テキストは表紙見返しにある。

 本書で紹介されている「リコード法」は、ブレデセン医師らによって、この研究結果に基づき、アミロイドβが蓄積する原因となる「3つの脅威」(※炎症、栄養不足、毒素)を取り除くために考案された、画期的な治療法である。
 このリコード法が革命的である理由は、なんといっても、まずその非常に高い成功率にある。
 2014年にブレデセン博士らが、この方法により、アルツハイマー病の約9割に回復が認められたことを医学雑誌『Aging』で発表すると、このニュースは瞬く間に全世界に広がった。
 これは世界で初めて、人間のアルツハイマー病が回復したことを報告した論文だった。(山口茜〈訳者〉)

 リコード(ReCODE)法とは「回復(REverse)+認知機能の低下(COgnitive DEcline)」の造語。「再暗号」とも読める秀逸なネーミングだ。

 アルツハイマー病患者の脳内ではアミロイドβが沈着してアミロイド斑を形成する。2002年、アミロイドカスケード仮説が提唱され広く支持を集めた。製薬会社の標的はアミロイドとなった。アルツハイマー病の原因がアミロイド斑ならばアミロイドを退治すればアルツハイマー病は治癒するはずだった。ところが見事にこの目論見は頓挫した。


 政府機関や製薬企業、バイオテクノロジーの専門家たちにより、この治療薬の開発と試験には莫大な費用がつぎ込まれた。しかし、99.6%は見るも無残に失敗し、試験段階を終えることすらなかった。
 市場に出た0.4%の薬に期待して、「結局、効果がある薬が1剤あればいいじゃないか」と思った人は、もう一度考えてほしい。なぜなら米国アルツハイマー病治療薬は2003年以来、承認されておらず、現在承認されているアルツハイマー病治療薬4剤については「物忘れや混乱症状は軽減されるかもしれないが、その効果は期間限定的」だという厳しいものだからだ。

 すなわちアルツハイマー病に効く薬は存在しない。何ということか。衝撃の事実である。それでも何がしかの薬が処方されているのは需要の大きさに魅了された製薬会社のしみったれた戦略なのだろう。

 実際、アルツハイマー病と呼ばれるこの病気の原因は、べとべとしたアミロイド斑が生成されたためというより、むしろ脳の防御反応の結果なのだ。
 このことは繰り返し述べる必要がある。
 アルツハイマー病は、脳がうまく機能しないために起こるのではない。

 発想を転換すると新たな地平が見えてくる。脳は何を防御しようとしているのか?

 特に、アルツハイマー病は、脳が次の3つの代謝と毒物の脅威から身を守ろうとするときに起きる。

【脅威1 炎症(感染、食事またはそのほかの原因による)】
【脅威2 補助的な栄養素、ホルモン、その他脳の栄養となる分子の低下や不足】
【脅威3 金属や生物毒素(カビなどの微生物が産生する毒物)などの有害物質】
(中略)
「アルツハイマー病は、脳が炎症から身を守ろうとしたり、有益な物質が不足しているにもかかわらず機能しようとするときや、有害物質の流入と闘っているときに起こる」。
 ひとたびこう認識してしまえば、病気を予防し、治療する方法ははっきりする。

 つまりアルツハイマー病は生活習慣病であり文明病なのだ。特に1の炎症が注目されており、アルツハイマー病は「脳の糖尿病」とまで言われるようになった。簡単に言えば糖尿病は高血糖によって血管に炎症を起こしボロボロにする病気だ。とするとアルツハイマー病は糖尿病の合併症と考えることも満更的外れではあるまい。

 日本の認知症患者数は462万人(2012年)で前段階の軽度認知障害は400万人と推計されている(認知症の人はどれくらいいるのですか? | 認知症フォーラムドットコム)。そして糖尿病患者数は328万人となっている(2017年/糖尿病患者数が過去最多の328万人超に増加 【2017年患者調査】| 糖尿病リソースガイド)。認知症と糖尿病は国民の二大疾病であり、認知症の半分程度をアルツハイマー病が占めている。

 3の金属は水銀・ヒ素・鉛など。水銀濃度が比較的高い水産物にはマグロ・サメ・深海魚・鯨がある(魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A)。海藻やヒジキにはヒ素が含まれている。有害金属が蓄積されると疲労が抜けなくなる(その不調「有害金属」が原因かも?: 日本経済新聞)。

 生活習慣病・文明病の最大の原因は運動不足である。「椅子に坐る」行為が健康を蝕む。人体は基本的に「歩く・走る」ことを目的に設計されている。ヒトが世界中に棲息しているのは他のどの動物よりも長距離の移動が可能であったからだ。認知症と糖尿病は人類に「動け」と命じている。

アルツハイマー病 真実と終焉
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2015-05-10

限られた資源をめぐる競争/『複雑で単純な世界 不確実なできごとを複雑系で予測する』ニール・ジョンソン


『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン

 ・限られた資源をめぐる競争

 現実世界に見られる複雑性は、多くの場合、系の構成要素が限られた資源――たとえば、食べ物、空間(スペース)、エネルギー、権力、富――をめぐって互いに競争を繰り広げているという状況がその核心をなしている。このような状況では、群集の出現が非常に重要な実際的影響を及ぼすことがある。金融市場や住宅市場を例にとると、手持ちの金融商品や物件を売りたい群集――彼らは互いに買い手を求めて競争している――が自然に形成されると、暴落につながって市場価格が短期間のうちに劇的に下がってしまうことがある。同じような群集現象は、同じ時間帯に通る道路上の空間をめぐって競争している車通勤者たちでも生じる。その結果が交通渋滞で、これは市場の暴落の道路交通版なのだ。このほかの例としては、インターネットにおける過負荷、停電をあげることができる。前者は利用者のアクセスが一時に集中したために特定のコンピューター・システムが使えなくなった状況だし、後者もやはり電気の利用が一時的に集中して、電力網による供給が追いつかなくなった状況なのである。戦争やテロさえも、異なる勢力どうしの暴力的な集団行動であり、同じ資源(たとえば、土地や領土や政治的権力)の支配をめぐって競争が繰り広げられていると見なせる。

 複雑性科学の究極の目標は、こうした創発現象――とりわけ重要なのは、恐ろしい結果をもたらしかねない市場の暴落、交通渋滞、感染症の世界的流行、癌をはじめとする病気、武力衝突、環境変化など――を理解し、その予測と制御を行なうことである。これらの創発現象の予測は可能なのだろうか。それとも、これらの現象は何の前触れもなく、どこからともなく姿を現わすのだろうか。さらに、いったん生じてしまったとき、われわれはその現象を制御したり操作したりできるのだろうか。

【『複雑で単純な世界 不確実なできごとを複雑系で予測する』ニール・ジョンソン:阪本芳久訳(インターシフト、2011年)】

 1+1が2+αというよりは、2xになるような事象を創発という。「がらくた置き場の上を竜巻が通過し、その中の物質からボーイング747が組み立てられる」(フレッド・ホイル)確率と似ている。分子を並べただけでDNAはできないし、同じ数の細胞を並べただけで人体とはならない。創発という概念は自己組織化散逸構造非線形科学などとセットになっている。

 生命も宇宙も熱力学第二法則に従う。エントロピーは増大するのだ。コーヒーの中に落としたミルクは拡散し、風呂の湯は必ず冷める。逆はあり得ない。時間の矢は過去から未来へ向かう。やがて人は死に、宇宙も死ぬ。分子は乱雑さを増し、一切が平均化してゆく。

 群集現象による創発は人文字を思えばよい。一人ひとりは色のついたパネルをめくっているだけだが、全体で見ると文字や絵が浮かぶ。先に書いた1+1=2xがおわかりいただけるだろう。

 交通渋滞と戦争やテロを同列に見なす視点が鋭い。特定秘密保護法や集団的自衛権に関する安倍政権批判は相変わらず「古い物語」を踏襲していて、平和を賛美する叙情的な文学のようにしか見えない。中華思想に弾圧されるチベットやウイグルの問題を正面から見据えれば、武力の裏づけを欠いた外交が実を結ぶとは思えない。戦争もできないような国家は国家たり得ない。そんな当たり前のことがこの国では忘れられているのだ。拉致問題が進展しないのも憲法の縛りがあるためだ。

 戦争はない方がいいに決まっている。だからといって反戦・平和を叫べばそれで済むというものではない。人類は数千年にわたって戦争を行ってきたわけだから、まず戦争は起こるという前提で考えるべきだろう。そして戦争に至る要因や条件を科学的に検証することで、戦争回避の手立てが見えてくるに違いない。

 複雑系科学は仏教の縁起を立証しているようで実に面白い。阪本芳久が訳した作品は外れが少ない。

複雑で単純な世界: 不確実なできごとを複雑系で予測する

2021-07-01

田中清玄の右翼人物評/『田中清玄自伝』田中清玄、大須賀瑞夫


『日本の秘密』副島隆彦
『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人
『守城の人 明治人柴五郎大将の生涯』村上兵衛
『自衛隊「影の部隊」 三島由紀夫を殺した真実の告白』山本舜勝
『消えたヤルタ密約緊急電 情報士官・小野寺信の孤独な戦い』岡部伸
『日本のいちばん長い日 決定版』半藤一利
『機関銃下の首相官邸 二・二六事件から終戦まで』迫水久恒
『昭和陸軍謀略秘史』岩畔豪雄

 ・会津戦争のその後
 ・昭和天皇に御巡幸を進言
 ・瀬島龍三を唾棄した昭和天皇
 ・田中清玄の右翼人物評

『陸軍80年 明治建軍から解体まで(皇軍の崩壊 改題)』大谷敬二郎
『軍閥 二・二六事件から敗戦まで』大谷敬二郎
『徳富蘇峰終戦後日記 『頑蘇夢物語』』徳富蘇峰

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 ――話は飛びますが、安岡正篤氏とはお付き合いがありましたか。

 全然ありません。そんな意思もありませんしね。有名な右翼の大将ですね。私が陛下とお会いしたという記事を読んで、びっくりしたらしい。いろいろと手を回して会いたいといってきたけど、会わなかった。私は当時、アラブ、ヨーロッパなどへ言ったり来たりで、寸刻みのスケジュールだったこともありましたが、天皇陛下のおっしゃることに筆を加えるような偉い方と、会う理由がありませんからと言ってね(笑)。私には自己宣伝屋を相手にしている時間の余裕などなかった。

【『田中清玄自伝』田中清玄〈たなか・きよはる〉、インタビュー大須賀瑞夫〈おおすが・みずお〉(文藝春秋、1993年/ちくま文庫、2008年)以下同】

「筆を加えるような」とは終戦詔書(=玉音放送)を校閲したことを指す(『機関銃下の首相官邸 二・二六事件から終戦まで』迫水久恒)。細木数子が結婚騒動を起こして安岡の晩節を汚している。多分そういう人物だったのだろう。戦前戦後を通して長く政治家の指南役を務めた人物だ。田中の人物評は寸鉄人を刺す趣がある。しかも直接見知っているのだからその評価は傾聴に値する。

終戦の詔書 刪修 | 公益財団法人 郷学研修所・安岡正篤記念館

 児玉(誉士夫)は聞いただけで虫唾(むしず)が走る。こいつは本当の悪党だ。児玉をほめるのは、竹下や金丸をほめるよりひでえ(笑)。赤尾敏というのもいたな。彼をねじあげて摘み出したことがあった。俺がまだ学生の頃です。

 児玉誉士夫〈こだま・よしお〉は特攻生みの親・大西瀧治郎〈おおにし・たきじろう〉の自決(介錯なしの十字切腹)に立ち会ったエピソードが有名だ。児玉も後に続こうとしたが「馬鹿もん、貴様が死んで糞の役に立つか。若いもんは生きるんだよ。生きて新しい日本を作れ」と大西は諫(いさ)めた。首と胸を刺したが大西は半日以上も苦痛の中で生きた。いかなる悪事に手を染めようと児玉の心中では大西が生きているのではないかと私は考えてきた。が、違ったようだ。

 ――戦後の右翼はどうですか。

 ほとんど付き合いはありません。土光さんが経団連会長の時に、野村秋介(しゅうすけ)が武器を持って経団連に押し入り、襲撃したことがありましたね。政治家と財界人の汚職が問題になった時のことでした。どこかの新聞社の電話と野村とが繋がっていると聞いたので、俺はすっ飛んで行って、その電話を横取りするようにひったくって、こう言ってやった。
「おい、野村、貴様、即刻自首しろ。貴様は土光さんに会いたいというなら、それは俺が取り計らってやるとあれほど言ったじゃねえか。それを、約束を破って経団連を襲うとは何ごとだ」
 そうしたら、野村はつべこべ言った揚げ句に、謝りに来ると言うから「貴様は約束を反古にした。顔も見たくねえ」と言って、それっきり寄せつけない。約束を守らないようなやつは駄目だ。その前に藤木幸太郎さんに一度会わしたことがあったが、藤木さんは「あいつは小僧っ子だな」って、そう言ったきりだったな。

 昨今、ネット上で児玉誉士夫や野村秋介を持ち上げる人物がいるので、慌てて書評をアップした次第である。新右翼は「左翼への対抗」を目的としており理論武装せざるを得ない。そして左翼と同じ体臭を放つようになる。

 ――三島由紀夫という人物をどう評価されますか。

 剣も礼儀も知らん男だと思ったな。自衛隊に入りたいというので、世田谷区松原にあった僕の家に、毎日のように来ていたんだが、2回目だったか、「稽古の帰りですので、服装は整えてませんが」とか言って、紺色の袴に稽古着を着け、太刀と竹刀を持って寄ったことがある。不愉快な感じがした。これは切り込みか果し合いの姿ですからね。人の家を訪ねる姿ではありませんよ。

 生真面目な三島がそれを知らなかったとは思えない。悪ふざけか冷やかしのつもりだったのだろう。それが通用する相手ではなかった。三島が田中に胸襟を開いていれば長生きした可能性はあっただろうか? 否、長く生きて輝きを失うよりは、花の盛りで散ってゆくことが彼の願いであったに違いない。

 私が本当に尊敬している右翼というのは、二人しかおりません。橘孝三郎さんと三上卓君です。二人とは小菅で知り合い、出てきてからも親しくお付き合いを致しましたが、お二人とも亡くなられてしまった。橘さんは歴代の天皇お一人お一人の資料を丹念に集めて、立派な本を作られた。そのために私もいささかご協力をさせていただきました。

 三上卓については『五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」』(小山俊樹〈こやま・としき〉著、中公新書、2020年)が詳しい。野村秋介の師匠である。

2011-07-16

津田真一、モーリス・オコンネル・ウォルシュ、マーシャル・マクルーハン、石田勇治、武内進一


 4冊挫折。

 挫折40『反密教学』津田真一(春秋社、2008年改訂新版/リブロポート、1987年)/ノリがボードリヤールと似ている。頭がいい人だ。よすぎてついてゆけず。でもまあ良心的な価格(3360円)なんで、冒頭の章の対談だけでも一読の価値あり。上級者向け。

 挫折41『仏教のまなざし 仏教から見た生死の問題』モーリス・オコンネル・ウォルシュ:大野龍一訳(コスモス・ライブラリー、2008年)/スピリチュアリズムから仏教にアプローチしたような内容。「アストラル体」が出てきたところでやめる(笑)。クリシュナムルティの「輪廻転生について」が付録となっているが、読まなくても構わない代物だ。

 挫折42『メディア論 人間の拡張の諸相』マーシャル・マクルーハン:栗原裕〈くりはら・ゆたか〉、河本仲聖〈こうもと・なかきよ〉訳(みすず書房、1987年)/最初は面白かったのだが、途中から胡散臭さを感じて中止。ヌルヌルしていて、つかみどころがない。たぶん意図的にやっているんだろうけどね。これは再読することもないと思う。

 挫折43『ジェノサイドと現代世界』石田勇治、武内進一編(勉誠出版、2011年)/呑気かつ悠長。イライラが募ってやめる。客観性は大切であろうが、あまりの熱意のなさに驚かされる。十数人の論文で構成されているが、一つとして読む気が起こらなかった。

2019-05-19

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2016-01-19

天才戦略家の戦後/『石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人』早瀬利之


『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田俊也

 ・天才戦略家の戦後
 ・ソ連の予審判事を怒鳴りつけた石原莞爾

『昭和陸軍謀略秘史』岩畔豪雄

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 片倉(衷)は陸大教官石原の教え子で、昭和6年の満州事変の時は見習い参謀だった。ともに満州事変を乗り切った、いわば子弟である。その片倉が、重病の石原に変わって供述書を口述・代筆する。
 石原はむしろ戦犯になり、ペリー来航まで遡って戦う腹だった。しかし4月8日の参与検事会議で戦犯リストから外され、残念がった。それでも彼は、検事たちが新しい証拠を見つけては再び戦犯リストに挙げてくるだろうと、むしろ期待した。

【『石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人』早瀬利之(双葉新書、2013/双葉文庫、2016年)以下同】

 礼賛本である。客観性に乏しいため割り引いて読む必要があろう。にもかかわらず「必読書」としたのは、やはり石原莞爾〈いしわら・かんじ〉という男が規格外の日本人であったためだ。稀代の天才戦略家は合理性の権化(ごんげ)であった。不合理には昂然と異を唱え、たとえ上官であったとしても罵倒した。普通の日本人とは立つ位置が異なっていたのだろう。

 病室にアメリカ軍の法務官と通訳が新聞記者たちと一緒に入ってきて、「これから証人尋問を開始する!」と宣告した。

「オレは戦犯だ。なぜ逮捕しないのだ。裁判になったら何もかもぶちまけてやる。広島と長崎に原爆を落としたのはトルーマンだ。彼こそ第一級の戦犯ではないか。どうした。なぜオレを逮捕しないんだ」

 と、石原は怒鳴りつけた。


 敗戦後、原爆に関する報道はGHQにより規制された。日本国民が初めて原爆の惨禍を知ったのはサンフランシスコ講和条約が発効した(1952年4月28日)独立後のことで、『アサヒグラフ』が1952年8月6日号で報じた。


米軍による原爆投下は人体実験だった/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人

 昭和21年4月29日は月曜日で、戦後初めて迎えた天長節である。キーナン首席検事は起訴状を読み上げ、裁判開始の日どりは5月3日からとした。起訴された名前は荒木貞夫から始まって梅津美治郎までの28名。
 石原は、翌30日の連盟会員が持ってきた新聞でそのことを知ると、
「オレの名前があったらな。この裁判を引っくり返してやるんだが――」
 と残念がった。

 Wikipediaの石原記事は読み物として通用するほど面白い。個人的にはハンガリー人宇宙人説の筆頭ジョン・フォン・ノイマンと双璧をなす記事だと思う。

戦犯自称の真相」という中途半端な記述があるが、酒田臨時法廷における石原の堂々たる態度や、公判終了直後にその場でアメリカ人検事が非礼を詫(わ)びたことなどを併せ鑑み、各人が判断すればいいだろう。

「ときに東京裁判は、日清日露戦争まで遡って戦犯を処罰するべきだ、という者がいる。君はどう思うかね」
 すると法務官は「そうする方針です」と答えた。
 その時だった。石原はニヤリとして、
「これは面白い。大いにやってくれ。それだったら、ペリーこそが戦争犯罪人だ。ペリーを呼んでこい」と言った。

 ペリーを知らないという法務官に石原は歴史を語り、「だからペリーを呼んでこい。彼をあの世から呼んで来(ママ)て、戦犯としてはどうかね」と言いくるめた。返答に窮した法務官が「今度の戦犯の中で、いったい誰が第一級と思われますか」と尋ねると、間髪を入れず「それはトルーマンだよ」と、アメリカ大統領の名前を上げ、具体的な国際法違反を懇々と語り、更にはナポレオンの話までする。法務官は「まるで陸軍大学の講義を聴いているみたいでした」と感激しながら帰っていった。

 石原は国際法の仕組みをきちんと理解していたのだろう。それゆえ欧米の土俵(≒論理)に上がろうとも、「勝てる戦略」が見えていたのではないか。ただし寺内大吉著『化城の昭和史 二・二六事件への道と日蓮主義』(1988年)は石原の日蓮主義を批判的に捉えている。

2016-07-03

デュポン一族の圧力に屈したデラウェア州/『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン


『マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで』橘玲

 ・アンシャン・レジームの免税特権
 ・多国籍企業は国家を愚弄し、超国家的存在となりつつある
 ・デュポン一族の圧力に屈したデラウェア州

『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻

 アメリカで2番目に小さい州、デラウェアは、世界最大手の企業の多くにとって生まれ故郷である。タックスヘイブンの通常の定義――税制を重視する定義――では、デラウェアはオフショア・システムには含まれないが、この地で重要なことが起きているのは明らかだ。アメリカの株式公開企業の半数以上、フォーチュン500社の3分の2近くが、この州の法人であり、2007年にアメリカで上場した企業の90パーセント以上がこの小さな州に登記している。これらの企業はデラウェアに本社を置いているわけではない。そこで法人化されただけであり、これはつまりはデラウェア州の法律に従って社会の仕組みが築かれているということだ。

【『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)以下同】

世界最悪のタックスヘイブンはアメリカにある」との声もある。

 デラウェア州の会社法(州法)は極めて著名である。他州に比べ、会社の設立や解散が容易で、多くの判例があるため裁判が予測可能などといった特徴を持つ。
 そのため、州外で事業活動をする会社でも、同州に登記上の本社を置くことが多い(会社設立における法律回避を参照)。また、小さな州にも拘らず、ニューヨーク証券取引所で上場している会社の半数以上、フォーチュン500に載る会社の63%はデラウェア州の会社法に準拠して設立されていると言われる。法人税で州歳入の5分の1が挙げられている。
例えば、世界最大の化学会社であるデュポンの米国法人、日本アイ・ビー・エムの親会社であるIBMワールド・トレード・コーポレーション(米IBMではない)、生命保険会社のアメリカン ライフ インシュアランスカンパニー(アリコ)の本社など、多くの有名企業がデラウェア州法により設立されている。

Wikipedia > デラウェア > 法人の州

 租税よりも法律リスクの回避が重んじられていることがわかる。法律も所によってはルールが変わるという現実が恐ろしい。そして楽園のコストは最終的に国民に付け替えられる。一般人は租税を回避することができない。

 1899年、デラウェア州政府は、巨大な化学事業を法人化したいと考えていたデュポン一族の圧力を受けて、「一般会社法」と呼ばれる新しい寛容なビジネス規定を制定した。そこには、企業の力が大になりつつある時代の自由放任的な精神が反映されていた。この法規が意味するところは、デラウェアでは、企業経営者は他の利害関係者を犠牲にして自分のやりたいことをする大きな自由を持つことができる、ということだった。デラウェア州は、株主や他の利害関係者が救済措置を得るのをとくに難しくしている。(中略)
 企業は、かつては公共の利益に役立つための手段とはっきりみなされていた。だが、デラウェアはその考えを捨て去って、デラウェアのある公文書が「断然、自由のきく民間企業モード」と表現しているものを採用した。このモードでは、企業や個人がそれぞれ自分の目標を追求し、政府は、公共の利益は自動的に増大するという想定のもとで、脇に追いやられている。これは企業に対する姿勢の微妙ながら根本的な変化だった。

 デュポンはフランス系のアメリカ財閥だ。ま、ケミカル(化学)企業・石油産業・製薬会社は悪の巣窟と考えてよかろう。巨大資本が必要なため新規参入が難しい。軍需とも深く関わっている。日本人はアメリカを政治的に成熟した社会と思いがちだが実態は異なる。企業や業界、各種団体が力任せに利益を奪い合う世界だ。インディアンを虐殺して土地を奪い、黒人奴隷で利益を上げてきた伝統は脈々と受け継がれている。

 先日、イギリスがEUから離脱した。タックスヘイブンは一種の植民地主義でイギリス領に多い。シティが金融センターとしての機能を失うかどうかが注目される。


 やはり英仏独が歩調を揃えることは難しいのだろう。ヨーロッパの平和は絵に描いた餅だ。白人は常に争ってきた。自分たちが滅びるまで争い続けるに違いない。

タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!

2019-06-02

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