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2022-02-22

トイレに一冊/『会社四季報 業界地図2022年版』


 ・トイレに一冊


 ま、有り体に言ってしまえば、税金と消費の動向が見えてくる。家計であれば家賃・食料・自動車・保険・学費あたりがメインか。介護とコンビニが肩を並べている事実を知って驚いた。

 日経平均は3万円を突破すると売り浴びせを喰らい、次が三度目の正直となる。世界市場を見渡せば最高値の3万9000円を軽々と超えてもいい状況なのだが、なぜか日本の株価は低迷を続けている。緩和マネーは外国に向かったのであろうか?

 私は現物の取引は行っていないが、時折こうした本に目を通しておくとニュースの見方が変わる。北京冬季五輪も終了したので、いよいよ戦争リスクが高まることだろう。ウクライナではCIAの偽旗作戦が行われているようだが、大掛かりな戦闘にはならないような気がする。

 日本人には中国を軽んじる傾向があるが、国際ユダヤ資本が中国を選ぶようなことがあると世界は一変する。ダボス会議が示した「グレート・リセット」との指標を軽んじてはなるまい。ニクソン・ショックから半世紀が経った。そろそろドル崩壊の時期が訪れると考える。

2021-10-31

農業の産業化ができない日本/『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹、藤原肇


小室直樹
藤原肇

 ・農業の産業化ができない日本

『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原丈人

藤原●アメリカのCIAは、インテリジェンスをうたっているけど、内閣調査室を「日本のCIA」と呼ぶ場合には、あれは日本のセントラル・インフォメーション・エージェンシーの略だと思えばいい。どうせインテリジェンスのやれる人材なんかがいるわけないですから。

小室●インテリジェンスというのは数学的な発想が基礎になっています。ところがそれが日本人にはない。私は、かつて、役人相手に数学の基礎理論を手ほどきしたことがあるけど、その実情に驚いたことがある。

藤原●それは生態環境としての生活圏の問題が多いに関係しているせいです。それもインテリジェンスのレベルまで行かずに、インフォメーションのレベルで決定的な役割を演じています。くわしいことは『情報戦争』や『日本が斬られる』という本で論じたが、情報に対しての理解の仕方と構えで見ると、農耕民族と遊牧民は本質的に異なっているんです。農耕民の情報は蓄積し発酵して知恵にしている。それに対して、遊牧民の情報はオンタイムでとらえ、的確に選択し行動に移すことで、そのグループの生存に結びつける。そうなると、リーダーシップが関係してきて、遊牧民はリーダー中心の社会で、いうならば、男の世界です。

小室●たしかに、農耕社会は大地と結びついているから女性的です。日本も天照大神が一番偉いし、かつ女性上位だし……。

藤原●トップの性別はあまり関係なくて、たとえ男であっても女性型支配をするのです。それが長老であり、農耕民族は蓄積だから長老が一番偉い。情報も新しさよりも知恵と結びついた古さのほうが重要視される。その辺にリーダー型の西欧や中東と、長老型のアジアの違いがあります。

小室●一般にヨーロッパ的、アジア的と区分する人が多いが、中国やインドのほうが日本よりはるかにヨーロッパに近い。実は、世界中で日本だけが例外中の例外です。たとえば、牧畜を例にとってみても、牧畜をまったくやらないのは日本ぐらいで、中国もインドも農業と牧畜の二本建(ママ)てです。それに日本の驚くべき特徴として指摘していいのは、どんなに見かけ上近代化したように観察されても、日本では農業が絶対に産業化されない点です。こういうことはアジアでもめずらしい。

藤原●日本語では術語が十分にないので、議論がむずかしいから英語を借りて話すと、日本にはファーミングもアグリカルチャーもなくて、あるのはガーデニングだけです。ガーデニングは技術集約化がむずかしいから産業化するところまでは行かない。

小室●日本軍がフィリピン作戦をしたときに、フィリピンは農業しかないから、農村地帯では食糧が自給できるはずだと思い込んでいたら、それはとんでもないことだった。タバコ地帯ではタバコだけしかないし、麻を作るところには麻しかなかった。いわゆるモノカルチャーです。農村地帯は食糧があるはずだと期待したいのに、食糧はない。だがタバコや麻を食べるわけにいかないので、作戦は大混乱してしまったそうです。

藤原●ベトナムだってブラジルだって同じです。農業が労働力集約型から技術集約型への進化の系列の中で動いているので、産業が可能になる。それを植民地主義がプランテーション化を通じてやったわけです。

小室●フィリピンは遅れている、と日本人は頭から決めつけてかかる癖があるが、農業でみる限りでは、産業の組織化という点で、返っらのほうがはるかに進んでいる。日本の農業なんて何でも作るし、それも主な目的は家族が食べるところにある。

藤原●インダストリアライズして剰余価値を生み出すところまで行っていない。

小室●農業に見る限り、日本は世界で最も遅れた状態を維持している。しかも、この農業地帯を地盤にした政党が農本的な政治をやってきたのだし、これからも続けようとしているので救いがありません。

藤原●そこに日本の政治が近代以前のパターンでしか機能しない理由もあるし、日本人が情報一般に関して非常にニブイ原因もあると思います。その当然の帰結として、インテリジェンスの問題がいかに重要であるかについて誰も気がつかないし、また、それを論じようともしないのです。(中略)

藤原●とてもじゃないが、日本の農業社会を見る限りでは、近代資本制などの水準には達していないといえます。

小室●とてもキャピタリズムじゃない。

藤原●じゃあ、前に話したように原始(グラスルーツ)共産制ですね。

小室●農業だけでなく企業や産業界までが同じであり、労働力は労働と分化しないまま、労働者は会社という一種の共同体の所属物になってしまっている。古典的な資本主義では労働市場が存在して、そこでは完全な自由競争が行なわれるのに、日本ではそれさえなくて、賃金でさえ、生きる上で必要な給与を分配してもらう形をとっている。

藤原●原始共産制における分け前だから、交通費や厚生費の現物支給があったり、年功序列の手当てが給料の形をとるのです。

小室●それに〈生産者と生産手段が分離する〉という、資本主義にとって最も基本的なこの性格が欠けている日本の経済システムは、中世的な共同体のままといえます。

藤原●中世じゃなくて古代以前だと思いますね。政治を見ればわかるけれど、どう考えても呪術的ですよ。だから、情報以前なのは当たり前かもしれない。

【『脱ニッポン型思考のすすめ』小室直樹〈こむろ・なおき〉、藤原肇〈ふじわら・はじめ〉(ダイヤモンド社、1982年)】

大東亜戦争はアメリカのオペレーションズ・リサーチに敗れた/『藤原肇対談集 賢く生きる』藤原肇

「オペレーションズ・リサーチ」が本書に書かれていたと思い込んでいて、三度も画像を確認する羽目となってしまった。これ、と思った情報はメモ書き程度で構わないから残しておく必要がある。はてなブログを使うか。

「インテリジェンス」という言葉は佐藤優〈さとう・まさる〉が嚆矢(こうし)と思いきや、本書の方がずっと早かった。藤原、小室、そして倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉あたりを嚆矢とすべきか。

 農業の産業化ができない日本という指摘は納得できる。近頃、農業本を数冊読んできたのだが「工夫次第では儲かる」というレベルで、大規模化を農地法が妨げている現状だ。安倍政権が何とか改革したが、まだまだ道半ばである。

 日本の政治は食料安全保障の意識が欠如している。食とエネルギーこそ国家の生命線である。自民党にとって農家は票に過ぎない。農業のグランドデザインを描く政治家を私は見たことがない。日本の食料自給率はカロリーベースで37%まで低下した(令和2年/日本の食料自給率:農林水産省)。国防もさることながら食料においても有事を想定していないことがわかる。

 小室と藤原は合理性をそのまま人間にしたような人物である。ただし、今読むとどこか新自由主義の臭いがして、すっきりと頷けないところがある。

2021-09-01

皇室制度を潰す「女系天皇」/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄
『〔復刻版〕初等科國史』文部省
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

(2)女系天皇を認めようとする政治家は皇室制度を潰す「陰謀」を企んでいる

 ご存知のように日本の皇室制度は世界に冠たる制度です。18世紀にヨーロッパで王室を守ろうとした人々が「右」、潰そうとした人々を「左」と言い出したのが、政治的「右」「左」の最初だと第1章で説明しましたが、これを21世紀の皇室制度にスライドさせると、建前では共産党以外、全て「右」ですが、「女系天皇」なるものを造ろうとしている政治家の本当の思想は全員「左」です。何故なら、皇室制度は、ヨーロッパ王室制度と異なり延々と続く男系であり、それが途絶えた時は皇室制度の終わる時だからです。
「女系天皇」なるものを造ろうとする人達は「陰謀」を企んでいると考える根拠は、次のとおりです。

・世界一長い伝統のある日本の皇室制度を妬(ねた)む外国人は多い。とりわけウソの歴史教育によって国民に反日感情をもたせ、それを権力の正当化に利用している中国共産党や北朝鮮の金一族、韓国にとって、日本の皇室制度はいち早く潰したい制度である。
・しかし、間接デモクラシーを採用する日本において、親中派や、親北朝鮮派、親韓国派が「皇室制度を潰す」と主張して国会議員に当選するのは共産党を除きほとんど不可能である。社会主義が妄想だとバレる以前には、立憲民主党の辻元清美議員は憲法を改正して皇室制度を潰せと大声で主張していたが、今ではその姿勢を隠している。
・皇室を潰す「陰謀」は、憲法改正よりも「女系天皇」なるものを創る手法の方が、成功しやすい。
・「女系天皇」に良いイメージを抱かせるために、まだお若くて今のところ彼氏がいない愛子内親王の人格を利用し「女系天皇」の現実に目を向けないように国民を騙している。
・「女系天皇」なるものができた時、最もそれに近いのは婚姻問題が生じている真子内親王と小室圭氏の子が天皇になることだ。お二人に子供ができて、天皇が「今上天皇陛下」⇒「秋篠宮」⇒「(女性天皇としての)真子内親王」⇒「(女系天皇なる)小室圭氏の子」と続く可能性が一番高い。
・小室圭氏の子供が天皇になりかねないのが「女系天皇」制度だと、多くの国民が気付けば、それだけで目が覚めて「陰謀」を見抜くが、これを推進する人達は「ヨーロッパの王室が見本だ」と言って国民を騙している。
・ヨーロッパを見本とする「女系天皇」なるものが実現すると、「小室圭氏の子」の比ではない「国民が嫌がりそうな人物」が「天皇」になれる。具体的には、内親王を口説くことに成功した中国人や韓国人、北朝鮮人、在日コリアンなど、外国人の子供である。ヨーロッパの王室では、父の国籍は問題にならず、英語を話せない人が英国王になった歴史まである。それゆえ「女系天皇」に成功すれば、皇室廃止は容易に実現できるだろう。
・男系が続いているので日本の皇室制度は、外国人から見ると「同じ王朝が続いている」と見えるが、「女系天皇」なるものが誕生すると、外国人、特に欧米人からは「王朝が変わった」と映る(戦争もしないのにヨーロッパで王朝が代わるのは女系に移る時です)。
・それゆえ、「女系天皇」に成功したら、皇室制度を廃止できなくても「世界一長い伝統のある王朝の国=日本」という外国人からの羨ましさは消える。
・日本に「女系天皇」なるモノが誕生したら、メンタル面で「巨万の富」を獲得できる国や人は世界中に存在する。

 いかがでしょう。「女系天皇」なるモノは、中国共産党、北朝鮮、韓国はもちろん、世界一長い伝統のある王朝という地位を狙っているヨーロッパ諸国の「陰謀」であり、それを推進する者達のバックにそれらの国がいる可能性も高いと思いませんか。
 新型コロナの「陰謀」が成功した2020年に、それまで愛国者ぶっていた河野太郎氏が急に「女系天皇」の話をしだしたのも、有力な状況証拠だと考えます。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 万世一系を苦々しく思っている連中は予想以上に多い。女性週刊誌の皇室スキャンダルネタはCIAが流しているという噂があるほどだ。

 先程、真子内親王の年内結婚が報じられた。皇統は日本の魂であり、アイデンティティの根幹を成すものだ。歴史的経緯からいえば天皇が先にあり、日本国の成立は後のことである。民族は血と文化から成る。例外は宗教で結びつくユダヤ人だけだ。もちろん意図的に差異を強調する必要はない。もともと我々の先祖は猿なのだから、それを思えば遺伝子の違いなどあってないようなものだ。

 問題は反日を標榜しない反日勢力が多いことで、中・韓・朝の浸透工作は政官報に及び、学術・法曹・教育は完全に牛耳られた感がある。

 現在の日本において左翼と目されるのは親中・親韓・新北朝鮮派である。その意味において与党である公明党は完全な左翼といってよい。また自民党に巣食う仮面保守を一掃する必要がある。小沢一郎を始めとする旧田中派は小泉政権で自民党を追われたが、中韓の利権を貪る自民党代議士は健在だ。

 天皇陛下の存在が世界の重石(おもし)となっている事実を日本人は知らねばならない。ローマ教皇とイギリス王室が頭を下げるのは天皇陛下だけだろう。皇統が正しく維持される限り、日本は不滅だ。

2021-08-22

日本はサイバー後進国/『正論』2021年6月号


『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ

 ・経済安全保障 日本の惨状
 ・日本はサイバー後進国
 ・国立大学の反自衛隊イデオロギー

兼原●20年前のことですが、小泉純一郎首相がアフガニスタンでの米軍による「不朽の自由作戦」に対して海上自衛隊の護衛艦などを出しました。首脳間では、人の戦争に自国の軍隊を出すというのはすごい貸しになるんです。喜んだブッシュ大統領は「ジュンは盟友だ!」となった。そこで、日米で情報協力を進めようという話になったんですが、CIA(中央情報局)は反対したらしいんですよ。「そもそも日本政府はデジタル情報の統合が極端に遅れており、サイバーインテリジェンスも知らないし、サイバーセキュリティも恐ろしく甘い」と。この状況は今でも変わりません。

手塚●欧州連合(EU)が始めた「EU一般データ保護規制(GDPR)」の運用は、EUを含む欧州経済領域内で取得した個人データの海外移転を原則禁止しています。それに比べて日本は対応がすごく甘い。データセンターは海外の方が人件費などのコストが安いから、そっちを利用してしまうわけです。

兼原●スパコンは、例えばこの瞬間の日本の全ての電信通話を入れても量的に平気なんですよね。スパコンというのは大体1台回すのに数万世帯分ぐらいの電気を消費しますが、当然日本の電気料金は高いし、日本のスパコンもクラウドも高いわけですよ。

手塚●土地も高い。建物を置いてサーバーとか置かなきゃいけませんから。ある国がどこかの会社にサーバー管理をやらせて、政府から補助金をもらって「安いですよ」と世界中で売って回って簡単に引っかかるのは多分日本人だけです。

【「特集 経済安全保障 日本の惨状」/『正論』2021年6月号】

 サイバー特区を作る他あるまい。地震の少ない富山自然災害の少ない栃木災害に強い滋賀、佐賀、香川あたりが候補地だろう。個人的には瀬戸内海に面している県が望ましいと思う。

 頭のよいエリートは理論に走り過ぎて現実を見失う傾向がある。すなわち計画経済的な発想では国民が苦しむ結果となる。それゆえ国家のグランドデザインを描くためには様々なタイプの人材を活用することが不可欠だ。特に過去の戦争研究が必要で、なぜ失敗したのか、どこをどうすれば変わったのかを具体的にしなければ、またぞろ同じ轍(てつ)を踏むことになろう。就中(なかんづく)、戦前から引き継がれてきた官僚システムを一新するのが急務である。

 日本の安全保障についてはもはや自民党では無理だろう。新党結成の動きを待つしかない。現在の自民党が親中派に蝕まれているとすれば、袂(たもと)を分かつ政治家が出てきて当然だ。むしろ出ない方がおかしい。

 国防予算はGDPの3%程度、軍需産業を復活させれば景気対策にもなる。その手始めとしてサイバー特区を進めるべきだ。

2020-09-26

『田中清玄自伝』は戦後史の貴重な資料/『日本の秘密』副島隆彦


『暴走する国家 恐慌化する世界 迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』副島隆彦、佐藤優

 ・片岡鐵哉『さらば吉田茂』の衝撃
 ・『田中清玄自伝』は戦後史の貴重な資料

『日本永久占領 日米関係、隠された真実』片岡鉄哉
『國破れて マッカーサー』西鋭夫
『田中清玄自伝』田中清玄、大須賀瑞夫

 60年安保闘争で、「全学連主流派」という、元祖・過激派学生運動を、背後から使嗾(しそう/あやつり、そそのかす)したのは、まず岸信介を政権の座から追い落とそうとして動いた、自民党・吉田学校(宏池会〈こうちかい〉)の人々であった。その証拠となる文献を、以下にいくつか挙げることにする。
 まず、どうしても、田中清玄(せいげん)氏の『田中清玄自伝』(大須賀瑞生インタビュー、文藝春秋、1993年刊)からである。この本は、きわめて重要な本である。日本の戦後史を検証してゆく上で、陰画(ネガ)のような役割を果たす貴重な回顧録である。田中清玄の死に際の遺言集である。田中清玄は本書の中で、かなり大胆に正直に多くの歴史証言を行っている。しかし肝心の、日本の戦後史の大きな核心部分については、狡猾にも歴史の闇に葬るべく、いくつかの重要事実の公開を慎重に避けていると私は判断する。
 それ以外では、嘘は書かれていない本だ。

【『日本の秘密』副島隆彦〈そえじま・たかひこ〉(弓立社、1999年/PHP研究所新版、2010年)】

 うっかりしていた。私は田中清玄〈たなか・きよはる〉を本書で知った。2015年12月に読了。随分と遠回りしてしまった。ただし意味のある遠回りであった。副島隆彦には一部のコアなファン層がいるが私はあまり好きではない。この人はともすると過激に傾く嫌いがある。穏健なオールドリベラリズムとは反対の性質を感じる。

「戦後史の大きな核心部分」とはCIAによる工作のことか。アメリカは1947年、マーシャル・プランで反共に舵を切った。翌1948年1月6日、アメリカのロイヤル陸軍長官は「日本を共産主義の防波堤にする」と宣言した。同年、朝鮮戦争が勃発。GHQの占領が終了した1952年以降はCIAが様々な工作をしたと仄聞(そくぶん)する。日本が安全保障すら自前で賄(まかな)えないのは自民党が甘い汁を吸いすぎたためだろう。この国は右も左も売国奴だらけだ。

 私は三島由紀夫の純情には惹かれるが非常に危うい性質をも感じる。三島の見識と切腹には飛躍がありすぎる。田中清玄は三島のことを「礼儀知らず」と一言で切り捨てた。

2020-07-06

日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好への告発状 その正体は、北京政府の忠実な代理人(エージェント)/『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一


・『書斎のポ・ト・フ』開高健、谷沢永一、向井敏
・『紙つぶて(全) 谷沢永一書評コラム』谷沢永一
『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一

 ・進歩的文化人の正体は売国奴
 ・日本罪悪論の海外宣伝マン・鶴見俊輔への告発状 「ソ連はすべて善、日本はすべて悪」の扇動者(デマゴーグ)
 ・日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好(たけうち・よしみ)への告発状 その正体は、北京政府の忠実な代理人(エージェント)

『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

 ところで、近代シナ文学の研究者に竹内好(よしみ)という魁偉(かいい)な人物がいました。この人はシナ学を志したくせに、肝心なシナの古典については無学であり、無関心でしたが、それはともかくとして、自分の専攻である近代シナ文学に執着するあまり、近代シナが格別に秀でた国であると信じるようになりました。これまた一向に珍しくもない、ありふれた自然な経過です。
 ところが竹内好の場合は、近代現代のシナを崇敬し高く持ちあげるにとどまらないで、現代シナを尊重し称賛する思い入れを梃(てこ)に用いて、ひたすら、わが国を罵倒する放言に熱意を燃やしました。なにがなんでも、常に悉(ことごと)くシナは正しく清らかであり、そのご立派な尊敬すべきシナに較べて、なにがなんでも、すべて、必ず日本は劣っており間違っている、という結論が一律に導きだされました。
 その生涯を通じて竹内好は、日本に対して肯定的な評価を下したことがなく、彼にとって日本はあらゆる面において否定と非難の対象にしかすぎませんでした。反日的日本人という言葉ができるより遙(はる)か遙か昔、半世紀以上も前から、竹内好は筋金入りの反日的日本人でありました。

【『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉(クレスト社、1996年/改題『反日的日本人の思想 国民を誤導した12人への告発状』PHP文庫、1999年/改題『自虐史観もうやめたい! 反日的日本人への告発状』ワック、2005年)】

 私はつくづくこの12人の著作を読んでこなかったことを感謝した。加藤周一の「夕陽妄語」(せきようもうご/朝日新聞連載)に目を通した程度である。とにかく掴みどころのない文章で後に谷沢と向井敏が腐していたのを読んで溜飲を下げた憶えがある。丸山眞男の『現代政治の思想と行動』を読まねばと思ったのは30代になった頃だ。マルティン・ニーメラー牧師の言葉が引用された「現代における人間と政治」は避けて通れないと感じた。が、ついぞ読む機会がなかった。丸山については進歩的文化人の代表であることは動かないが、小室直樹が師事しており政治学者としては優れた見識の持ち主なのだろう。最後は学生運動に愛想を尽かした

 他人の悪口を読むのは後味の悪いものである。感情を一旦突き放して見つめる冷静さを欠くと醜悪な文章になりやすい。「この人はシナ学を志したくせに」は書き過ぎだ。抑制が利いていない。それでも本書が教科書本であるのは確かで、彼らの正体を知らずに著書と親しんでいる人も多いことと思われる。

 竹内好の本は何冊か持っていた。あまり記憶にないので多分売れたのだろう。悪い印象は持っていなかったので本書を読んで吃驚仰天(びっくりぎょうてん)した。中国人は客をもてなすのが巧い。たとえそれがカネや女であったとしても、誰に何を与えればどう動くかをきちんと読んでいる。毛沢東や周恩来が生き抜いてきた政争は日本の比ではない。周恩来の養女・孫維世〈そん・いせい〉は留置所で惨殺されている。

 文化大革命時代には、女優としての名声の高さと毛沢東との男女関係から江青の嫉妬を買い、迫害を受けた。孫維世は養父である周恩来が署名した逮捕状を以って、北京公安局の留置場に送られ、1968年10月14日に獄中で死亡した。遺体は一対の手枷と足枷のみ身に付けた全裸の状態であった。一説には江青が刑事犯たちに孫維世の衣服を剥ぎ取らせて輪姦させ、輪姦に参加した受刑者は減刑を受けたと言う。また、遺体の頭頂部には一本の長い釘が打ち込まれていたのが見つかった。これらの状況から検死を要求した周恩来に対し、「遺体はとうに焼却された」という回答のみがなされた。

Wikipedia

 周恩来には表の顔と裏の顔があったが、そうでもしなければとっくに失脚していたことだろう。

 アメリカと中国は、表面的には対立していても裏の情報世界ではもともとツーカーなんです。そもそもCIAの前身OSS時代には、長官ドノバンの命令でOSS要員が延安の共産党根拠地に出向いて、対日抗戦を支援していた。60年代の中ソ対立時代も米中はあらゆる場面で結託してソ連に対抗していたし、79年のソ連アフガニスタン侵攻で、ムジャヒディンを支援しタリバン政権を後押ししたのも、米中の情報機関です。スパイマスター周恩来によって育まれた中国共産党の情報機関、中央委員会調査部は胡耀邦総書記の時代、公安部の一部と合併、国家安全部として、現在では、かつてのソ連のKGBをしのぐ巨大組織になっています。

【『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘(徳間書店、2006年)】

 中国の手に掛かれば政治家はもとより作家・ジャーナリスト・学者などはイチコロだろう。子供に飴を与えるようなものだ。中国へ渡ると親中派になって帰国する人が多いのも当然だ。細君を伴わない政治家は確実に女を充てがわれていると見てよい。

 左翼は国家の伝統を破壊し漂白した後に社会主義の樹立を目論む。人権・平等・ジェンダーといった綺麗事に騙されてはならない。彼らは単なる破壊者なのだ。

2020-04-06

国家は必ず国民を欺く/『ザ・レポート』スコット・Z・バーンズ監督・脚本・製作


・『ゼロ・ダーク・サーティ』キャスリン・ビグロー監督

 ・国家は必ず国民を欺く

『闇の眼』ディーン・R・クーンツ


 9.11テロの容疑者に対してCIAが行ってきた拷問の実態を調査する委員会がオバマ政権下のアメリカ上院で立ち上げられた。CIAが関係者との面談を禁じたため共和党は直ぐに撤退した。ブッシュ政権の罪を暴くことに後ろ暗い気持ちもあったことだろう。主人公は調査スタッフのリーダーに指名されたダニエル・J・ジョーンズだ。アクセスできる情報は文書・Eメールのみ。しかもコピーの持ち出しが許されていない。5年間に渡る調査を経てCIAの蛮行が明らかになった。二人の心理学者が説くEIT(強化尋問テクニック)という手法を用いて容疑者を尋問するのだ。その理論はやすやすと拷問を正当化した。

 逮捕されたのは容疑者とすら言えない人々だった。自白を強要するために水責めが行われる。顔面をタオルで覆って水を掛けるだけだが水中で溺れるのと同じ効果がある。結果的にCIAは科学的根拠もなく、尋問の経験すらない心理学者に8000万ドル以上を支払った。

 5年間かけて作った報告書は公開されることがなかった。ダニエル・J・ジョーンズは様々な圧力に屈することなく情報公開への道を探る。

 この作品は実話に基づいている。

CIAの拷問は「成果なし」 実態調査で分かったポイント

 ワシントン(CNN) 米上院情報特別委員会は9日、米中央情報局(CIA)が2001年の同時多発テロ以降、ブッシュ前政権下でテロ容疑者らに過酷な尋問を行っていた問題についての報告書を公表した。報告書は拷問が横行していたことを指摘し、その実態を明かしたうえで、CIAが主張してきた成果を否定している。

同委員会は「強化尋問」と呼ばれた手法を検証するため、5年間かけて630万ページ以上に及ぶCIA文書を分析し、約6000ページの報告書をまとめた。今回公表されたのは、その内容を要約した525ページの文書。この中で明かされた事実や結論のうち、重要なポイント8点を整理する。

1.「強化尋問」には拷問が含まれていた

同委員会のダイアン・ファインスタイン委員長は報告書の中で、CIAに拘束されたテロ容疑者らが02年以降、強化尋問と称する「拷問」を受けていたことが確認されたと述べ、その手法は「残酷、非人間的、屈辱的」だったと指摘。こうした事実は「議論の余地のない、圧倒的な証拠」によって裏付けられたとの見方を示した。

ベトナム戦争で拷問された経験を持つマケイン上院議員も9日の議会で、報告書の内容は拷問に相当すると言明した。

CIAは厳しい尋問手法が「命を救った」と主張してきたが、報告書はこれを真っ向から否定している。

2.拷問はあまり効果がなかった

「CIAの強化尋問は正確な情報を入手するうえで有効ではなかった」と報告書は指摘する。

CIAは強化尋問が効果を挙げたとする20件の例を掲げているが、報告書はそれぞれの例について「根本的な誤り」が見つかったと主張。こうした手法で得られた虚偽の供述をたどった結果、テロ捜査が行き詰まることもあった。CIAが拷問などによって入手した情報は容疑者らの作り話か、すでに他方面から入っていた内容ばかりだったという。

これに対してCIAは9日、当時入手した情報は「敵への戦略的、戦術的な理解」を深めるのに役立ち、現在に至るまでテロ対策に活用されていると反論した。

3.ビンラディン容疑者の発見は拷問の成果ではない

国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を捕らえた作戦に、強制的な手法は不可欠だったというのがCIAの主張だ。

これに対して報告書は、同容疑者の発見につながった最も正確な手掛かりは、04年にイラクで拘束されたハッサン・グルという人物が拷問を受ける前の段階で明かしていたと指摘。拷問がなくても必要な情報は得られたとの見方を示す。

4.拷問の末、低体温症で死亡したとみられる拘束者もいた

CIAは拘束者らを消耗させるために、眠らせないという手法を取った。最長180時間も立たせたまま、あるいは手を頭の上で縛るなど無理な姿勢を維持させて睡眠を妨害した。

肛門から水を注入したり、氷水の風呂につからせたりする手法や、母親への性的暴行などを予告する脅迫手段も使われた。

排せつ用のバケツだけを置いた真っ暗な部屋に拘束者を閉じ込め、大音量の音楽を流す拷問もあった。

02年11月には、コンクリートの床に鎖でつながれ、半裸の状態で放置されていた拘束者が死亡した。死因は低体温症だったとみられる。

こうした尋問を経験した拘束者たちはその後、幻覚や妄想、不眠症、自傷行為などの症状を示したという。

同時多発テロの首謀者、ハリド・シェイク・モハメド容疑者は少なくとも183回、水責めの拷問を受けた。

アルカイダ幹部のアブ・ズバイダ容疑者が水責めで一時、意識不明の状態に陥ったとの報告もある。同容疑者に対する水責めを撮影した映像は、CIAの記録から消えていた。

5.CIAはホワイトハウスや議会を欺いていた

CIAの記録によれば、ブッシュ前大統領は06年4月まで強化尋問の具体的な内容を知らされていなかった。強化尋問の対象とされた39人のうち、前大統領が説明を受けた時点で、38人がすでに尋問を受けていたとみられる。CIAに残された記録はなく、これよりさらに多くの拘束者が対象となっていた可能性もある。

報告書によると、CIAはホワイトハウスや国家安全保障チームに対し、強化尋問の成果を誇張、ねつ造するなど「不正確かつ不完全な大量の情報」を流していた。司法省が強化尋問を認めた覚書も、虚偽の証拠に基づいて出されたという。

6.担当者は十分な監督や訓練を受けていなかった

収容施設の監督は経験のない若手に任され、尋問は正式な訓練を受けていないCIA職員が監視役もいない状態で行っていた。

報告書によれば、CIA本部の許可なしで強化尋問を受けた拘束者は少なくとも17人に上った。腹部を平手打ちしたり、冷たい水を浴びせたりする手法は司法省の承認を受けていなかった。ある収容施設で少なくとも2回行なわれた「処刑ごっこ」について、CIA本部は認識さえしていなかった。

7.同時テロ首謀者への水責めは効果がなかった

CIAは同時テロを首謀したモハメド容疑者から、水責めによって情報を引き出したと主張する。しかし当時の尋問担当者によれば、同容疑者は水責めに動じる様子をみせなかった。水責めを終わらせるために作り話の供述をしたこともあるという。

8.尋問手法を立案した心理学者らは大きな利益をあげた

強化尋問の手法開発に協力した2人の心理学者は05年、尋問プロジェクトを運営する企業を設立し、09年までに政府から8100万ドル(現在のレートで約97億円)の報酬を受け取った。

2人ともアルカイダやテロ対策の背景、関連する文化、言語などの知識については素人だったという。

CNN 2014.12.10 Wed posted at 12:38 JST

 びっくりしたのだがダイアン・ファインスタイン役の女優がそっくりである。実際のダニエル・J・ジョーンズ(Daniel J. Jones)は元上院議員のようだ。


 アメリカの実態は中国と遜色がない。かつてのソ連を思わせるほどだ。CIAはブッシュ大統領に知らせることなく拷問を繰り返していた。強大な権力は自分たちの過ちを隠蔽し、平然と偽りの大義を主張する。その意味から国家は必ず国民を欺くと言ってよい。共産主義も資本主義も成れの果てが全体主義に至るのは人類の業病(ごうびょう)か。オーウェルが描いた『一九八四年』は決して他人事ではない。

 何と言ってもキャスティングが素晴らしい。カットバックもユニークで脚本も秀逸だ。エンドロールでニヤリとさせられることは請け合いだ。地味ではあるが映画作品としては『ボーン・シリーズ』より上だ。

2020-01-29

ジョン・ケネス・ガルブレイスの人種差別/『中国はいかにチベットを侵略したか』マイケル・ダナム


『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール
『不可触民 もうひとつのインド』山際素男

 ・ジョン・ケネス・ガルブレイスの人種差別

 しかしそこに政治が介入してきた。
 ジョン・ケネス・ガルブレイス。新任の駐インドアメリカ大使で、ケネディの最も信頼する顧問の一人であり、チベット問題に公然と反対する人物であった。数々の肩書きを持ち、明らかに無視できない相手であった。即ちハーバード大学教授にして、経済学者、作家、テレビコメンテーター、雑誌「フォーチュン」編集委員、そしてケネディ一族と親交がある、といった具合だ。さらに重要なのは、アイゼンハウアー時代に培ってきたパキスタンとの友好関係を犠牲にしてでも、インドとより友好的な関係を結ぶのがアメリカのアジア政策に欠くことのできない必須条件だとするケネディ自身の意向を彼が反映していたという点である。ガルブレイスのチベット計画への反対は、チベットに対する個人的嫌悪感にまで達していた。曰く「チベット人は不愉快で野蛮であり、恐ろしく非衛生的人種だ」とまで決めつけていた。
 ガルブレイス・インド大使は、ムスタンであろうとチベット本土であろうと、いかなる補給物資の空中投下にも反対するロビー活動を強めていた(備忘録にガルブレイスは臆面もなく、CIAのチベットへの援助を直ちに止めるよう国務省に忠告した、と書いていた。そしてケネディに対する自分の影響力で、CIAのチベット援助を最小限度に抑えるのに成功したと豪語している)。大使がアメリカの外交政策を決めていたわけではないにしろ、インドに関してはケネディの目と耳であり、ケネディを通してムスタンへの空中補給に関する生殺与奪(せいさつよだつ)の権を行使していたことになる。  ネールの中共への迎合的態度からしてインドの協力的態度を望めなかったし、彼の右腕とされる親共的国防相クリシュナ・メノンは大のアメリカ嫌いであり、アメリカCIAの意向がケネディの新しい政策に受け入れられないことをつとに読んでいた。かくしてムスタンへの空からの補給は頓挫することになった。
 そればかりでなく、キャンプ・ヘイル関係者の多くは部署替えになった。ロジャー・マッカーシーは台湾担当となり、ケネディ-ガルブレイス-ネールの“いい仲”はその後も長くつづいてチベット特別チームもお仕舞いかと噂されるまでになった。
 もちろんムスタンのゲリラはアメリカの政策転換など夢にも知らず、ただただ生き延びるこに必死であった。

 こうした危機的状況を一気に変え、ネールをして一転、親チベット派に豹変させる大事件が発生した。1962年10月22日、中共がインドを侵略したのである。

【『中国はいかにチベットを侵略したか』マイケル・ダナム:山際素男〈やまぎわ・もとお〉訳(講談社インターナショナル、2006年)】


 先ほど流れてきたニュースを紹介しよう。

米下院、チベット支援法案を可決 中国の後継者選び介入をけん制

2020年1月29日 18:50 発信地:ワシントンD.C./米国

1月29日 AFP】米下院は28日、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世(84)の後継者選びに介入する中国当局者への制裁を許可する法案を可決した。

 法案によると米政府は、政府が承認する後継者の「特定や任命」に関与したことが発覚した中国当局者に対し、米国にあるすべての資産を凍結するほか、米国への渡航を禁止するという。

 議員392人が賛成し、反対票を投じたのは共和党議員21人と保守派の無所属議員1人の計22人だった。

 法案は上院で承認される必要があり、マルコ・ルビオ(Marco Rubio)議員(共和党)が通過に向けた動きを指揮すると約束している。法案はその後、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の署名を経て成立する。

 チベットを長年支持してきた民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は、法案の目的は、10年前に決裂したダライ・ラマ14世の特使団との協議を中国政府に再開させることだと説明。

 また、「チベット仏教社会がダライ・ラマ15世を含む宗教指導者選出の独占権を有するとする米国の方針を正式に制定することで、われわれはチベットの人々の信教の自由や真の自治の権利を支持している」と述べた。

 公式には「無宗教」とする中国政府は、ダライ・ラマ14世の後継者を陰で操ろうとしていることを示唆しており、政府の言いなりになるチベット仏教指導者を仕立てることを目指しているとみられる。儀式的な後継者選びでは、僧侶たちは生まれ変わりの少年を探し出す。

 中国政府は1995年、チベット仏教第2の高位者パンチェン・ラマ(Panchen Lama)の後継者を独自に選出し、後継者に認定されていた6歳の少年を拘束した。人権団体は少年が「世界最年少の政治犯」になったとして政府を非難した。(c)AFP

 ジョン・F・ケネディは民主党の下院議員でアメリカ初のカトリック大統領だった(その後もカトリック大統領はいない)。半世紀前にチベットゲリラを見捨てた民主党が今頃になってダライ・ラマを担ぐのは政治利用以外の何ものでもない。そもそもアメリカは他国の内政に干渉しすぎる。「世界の警察官ではない」のだから引っ込んでろと言いたくなるのは私だけではないだろう。

 それにしてもガルブレイスの人種差別は凄い。我々日本人がこうした白人感情を理解することは不可能だろう。精神が病んでいる。単なる容共のリップサービスとは思えない。ロモノーソフ金メダルを授与されているのもきな臭い。

 創価学会の池田大作とも親交が深く、晩年には対談『人間主義の大世紀を わが人生を飾れ』(潮出版社、2005年)を編んでいる。どちらも親中派である。

 国際的には経済的な見返りを求めてチベット、ウイグル、台湾に目をつぶってきたのが親中派である。暴力団とのつながりは規制されるが中国とは大手を振ってつながるのが法治と呼ばれる不思議な体制である。

 人種差別感情から自由になれなかった人物は偉大なる経済学者であった。人間性は下劣でも金勘定が得意であったのだろう。

2019-11-28

『悪魔の飽食』事件の謎/『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通


『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編
『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通
『新・悪の論理』倉前盛通
『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘編
『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
『自然観と科学思想』倉前盛通

 ・『悪魔の飽食』事件の謎

『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通

 レフチェンコが表情の撮影を拒否していると聞いた時、思い出したのは“『悪魔の飽食』ニセ写真事件”の時の記者会見の様子だった。
 57年夏にニセ写真の使用が暴露された際、『悪魔の飽食』の著者・森村誠一氏は、取材パートナーと称する下里正樹氏と共に、写真提供者A氏なる人物を正面に出して、弁明の記者会見を行なった。その時のA氏の様子たるや、珍妙さを通り越して異様な印象を与えるものであった。
 ホテルの室内にもかかわらず、ハンチングをかぶり、黒いサングラスにガウン姿、ボクサーやレスラーではあるまいに、こんな奇妙な姿で記者会見に臨んだ人物が、かつてあっただろうか。森村氏らは、石井部隊(旧関東軍の細菌部隊で別名731部隊)関係者にA氏の身許が割れて危険が及ばないための措置としているが、そこに大いなる作為を感じるのである。(中略)
 そもそも、『悪魔の飽食』の誕生からして、マインド・コントロールの臭いがぷんぷんしているのである。日本共産党の幹部党員のもらしたところによれば、『悪魔の飽食』の赤旗日曜版への連載は、当時の宮本顕治委員長(現・最高幹部会議長)の一存で決まったという。
 当時、森村誠一氏は赤旗日曜版に小説『死の器』を連載中であった。連載開始は55年6月22日で、完結は56年9月27日である。この完結直前の56年7月19日から、74回にわたる『悪魔の飽食』の連載が突如開始される。
 同じ紙面に同じ筆者の連載が2ヵ月半にわたって続く形になるのだが、これはいかに党機関紙とはいえ、ブルジョワ・マスコミにできるだけ近い紙面形態を採ろうとしている赤旗にしては、異常なことである。ある幹部党員は、その背後の事情を“ミヤケンのツルの一声”と説明していた。
 日共にとって、『悪魔の飽食』の空前のヒットは、日本国民に対するマインド・コントロールという意味から、絶大なる効果を持つ戦略兵器となり得る存在であった。日米同盟の強化と“日本の右傾化”に対して、日本国民に戦時中の悪夢を思い起こさせ、警戒の念を抱かせるのに、これほどの効果的な“紙爆弾”はないと考えていたのだろう。
 この一大戦略に従って、流行大衆作家であり日共シンパの森村氏に白羽の矢が立てられたのである。しかし森村氏には泣所があった。取材力に乏しく、ノンフィクションを書く素養があまりないという点である。
 そこで、取材パートナーという形で、筋金入の党員が実質的な筆者として送り込まれた。それが下里正樹氏である。日共内での正式な肩書は、赤旗特報部長とういレッキとした幹部党員で、囲碁、将棋の世界ではかなり有名な観戦記者でもある。

 しかし、日共の一大野望も“ニセ写真事件”によって破綻してしまった。否、破綻したというよりむしろ、アメリカ側のマインド・コントロールに乗せられて“悪魔の飽食作戦”を開始した日共が、アメリカ側のスケジュール通りに陥穽にはまったと見たほうが正確かもしれない。
 問題になった例のニセ写真は、終戦直後の戦犯裁判用に中国の国民党や共産党が大量に作成したという経緯がある。その大部分が、日露戦争のあと、満州でペストが大流行したとき、その救援活動を日本赤十字と日本軍が協力して行なった当時の写真を修正したものであった。それを森村・下里チームは、前述のA氏から提供されたと主張している。
 だが、日共の幹部党員によれば、取材開始時点での1ヵ月にわたるアメリカ取材旅行の際、下里氏が米軍関係者もしくはアメリカの情報筋から入手したものだという。日共としては“米軍提供”と書くわけにはいかず、提供者A氏なる人物をデッチ上げたのではないか。
 それにしても、あの抜け目のない日共が、あんな粗悪なニセ写真にだまされたのか、あるいは知っていてもわざと使ったのかは別にして、この事実は、なによりも日共そのものがアメリカのマインド・コントロール下に置かれていたとでも考えるほかないのではなかろうか。日共は、米ソ双方からマインド・コントロールされているのかもしれない。
 また、森村氏自身についても、不審な点がある。ヒューマニズムと正義を売り物にしている森村氏にもかかわらず、「ああいう写真を見付け出すのが、ゾクゾクするほどうれしい」と語っている。これは異常な表現ではないか。人間なら心が痛むような写真である。ゾクゾクするとは尋常ではない。
 これには、焼跡左翼の野坂昭如氏も、「ゾクゾクするほどうれしいとは何事か」とカミついていた。これが当り前の人間の反応であろう。良心の痛みもなくあいいう発言をした森村氏自身、中国はソ連を旅行した際、なんらかの形でマインド・コントロールを受けた可能性はないか、自己点検してみてはいかがだろうか。

【『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉(太陽企画出版、1983年)】

 このテキストの直前にラストポロフ事件が紹介されている。佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉の著書も関連書として挙げておく。

『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行
『私を通りすぎたスパイたち』佐々淳行

 志位正二〈しい・まさつぐ〉の名を初めて知った。日本共産党の志位和夫委員長の伯父に当たる人物だ。ラストボロフ事件発覚後、志位正二は自首した。その後航空機内で急死する。親交のあった倉前は「殺(や)られた!」と確信する。それがKGBによるものかCIAによるものかは不明だ。

『悪魔の飽食』は私も若い頃に読んだ。当時は本多勝一〈ほんだ・かついち〉を読んでいたこともあり、若き精神は反日に傾いていた。本多の山本七平批判がカッコよく見えた。私の歴史館は『中国の旅』に染められていた。『週刊金曜日』も創刊号から購入していた。私が戦後史観の迷妄から覚めたのは数年前のことだ。

 本書は竹村健一が企画した「日本の進路シリーズ」の一冊で、軽めの読み物となっている。超心理学とはマインド・コントロールと超能力のことで、ヒカルランド系の内容だ(笑)。

 尚、下里正樹〈しもざと・まさき〉はかつて松本清張の秘書を務めた人物らしい。

2019-07-27

小善人になるな/『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通


『昭和の精神史』竹山道雄
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』水野和夫
『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編

 ・小善人になるな
 ・仮説の陥穽
 ・海洋型発想と大陸型発想
 ・砕氷船テーゼ

『新・悪の論理』倉前盛通
『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
『自然観と科学思想 文明の根底を成すもの』倉前盛通
『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通
『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 悪人とは何も邪悪な人間という意味ではなく、国際社会の非情冷酷さを知らず、デモクラシーとか人権とか人民解放なぞというような上っ面の飾り文句で、国際社会が動いているかのように思いこんでいる善人に対比して、人間と社会、ことに国際社会のみならず、力関係の入り乱れた社会の狡智と冷酷さを十分わきまえた上で、それに対応する手をうつことのできる強い人間のことを悪人と称してみただけのことである。

【『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉(日本工業新聞社、1970年/角川文庫、1980年)以下同】

 小室直樹との対談本で倉前盛通を知った。あの小室御大が「先生」と呼ぶ人物である。そこそこ本を読んできたつもりであったが見落としている人物の大きさに気づいて愕然とした。学生運動のピークが1969年(昭和44年)であったことを踏まえれば、地政学を説いた先見の明に畏怖の念すら覚える。「人民解放」という言葉が古めかしく感じるが当時の大学生は大真面目でこれを叫んでいた。

 巻頭のドキュメント・フィクションはロッキード事件を仕組んだCIAの手口を推察したもので「さもありなん」と思わせる説得力がある。

 日本人は昔から「悪」という言葉に、強靭で、しぶとく不死身という意味を持たせていた。つまり「ええ恰好しい」ではなく、世の毀誉褒貶や、事の成否を意に介せず、まっすぐに自己の信念を貫いた人の強烈な荒魂を、崇め安らげる鎮魂の意味で「悪」という文字を使用してきた。これは日本人の信仰の深淵に根ざすものかもしれない。
 日本の社会は昔から女性的で優美な「もののあはれ」という美学を、生活の規範としてきた社会であり、男性的な硬直した儒教論理や、キリスト教、マホメット教のような一神教的男性原理によって支えられている社会ではない。それゆえ、男性的な行動原理に身をおくとき、日本の伝統美学から、やや遠ざかっているという美意識が生じてくる。それゆえ、一種の「はにかみ」をもって、「悪」とか、「醜(しこ)」と自称したのであろう。

 明治の男たちが愛した「狂」の字と同じである(狂者と狷者/『中国古典名言事典』諸橋轍次)。現在辛うじて残っているのは力士の呼び名である「醜名(しこな)」くらいか。「醜(しこ)」については、「本来は、他に、強く恐ろしいことの意もあり、神名などに残る」(デジタル大辞泉)。

 よく指摘されることだが日本のリーダーに求められるのは母親的要素が強く、度量や鷹揚さが示すのは優しさに他ならない。これは親分や兄貴分を思えば直ちに理解できることだ。原理原則で裁断する男性性は日本人の精神風土と相容れない。

「愛」という言葉も元々は小さなものに対する感情で「可愛い」という表現と同じ心理である。日本人の美的感覚が雄大なものより繊細に向かったのは当然というべきか。

 脆く、はかないものを美しいとする日本の伝統的美学の中では、強靭で不死身なものは、醜になり、悪になるのである。ここのところの日本の美学的発想がまだ外国の人々には、よく理解されてないようである。
 たとえば30年間、南海の小島のジャングルの中で戦い続けていた小野田少尉のような人こそ「醜の御楯」であり「醜のますらを」とよばれるにふさわしい人物といえよう。地政学は、その意味で、まさしく「悪の論理」であり、「醜の戦略哲学」である。
 これからの国際ビジネスマンは、人の見ていないところで、国を支えてゆく「醜のますらを」であり、「悪源太」であることを、ひそかに誇りとすべきであろう。そして小善人になり上がることをもっとも恥とすべきである。

 万葉集に「今日よりは顧みなくて大君の醜(しこ)の御楯(みたて)と出で立つわれは」とあるようだ。小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉の帰還は1974年(『たった一人の30年戦争』小野田寛郎)なので増補された内容か。「悪源太」とは源義平〈みなもと・の・よしひら〉のことらしい。楠木正成〈くすのき・まさしげ〉も悪党と呼ばれた。こうして見るとはかなさの対局にある太々(ふてぶて)しい様を示すのが「悪」や「醜」であることがよくわかる。

 1970年(昭和45年)に三島由紀夫が割腹し、その4年後に小野田寛郎が帰ってきた。私はこの二人を心より敬愛する者であるが、それを差し引いても二人のあり方は「潔さからしぶとさへ」という精神性の変化を象徴する事件であったと思われてならない。つまり腹を切って責任を取るよりも、もっと難しい選択を迫られる時代に入ったのだ。しかもこの「難しい選択」は容易に避けることが可能で、避けたとしても後ろ指をさされることがない。

 だからこそ「小善人になるな」とのメッセージが胸に突き刺さる。真面目や善良は尊ぶべき資質ではあるが、世間に迎合することを避けられない。真面目な官僚は省益のために働き、善良な組員は鉄砲玉となって抗争する組長の殺傷に手を染める。

 要は世間の評価や他人の視線を歯牙にも掛けない「悪(にく)まれ役」が求められているのだ。山本周五郎著『松風の門』で池藤八郎兵衛〈いけふじ・はちろべえ〉は主君の命に背いて百姓一揆の首謀者3人をあっさりと斬り捨てた。八郎兵衛は謹慎(閉門)を言い渡された。彼は言い訳一つせず、ただ畏(かしこ)まっていた。八郎兵衛の深慮が明らかになるのは後のことである。義を前にして己を軽んじてみせるのが武の魂であろう。いつ死んでもよいとの覚悟が壮絶な生きざまに表れる。



内気な人々が圧制を永続させる/『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

2019-07-23

岡崎久彦批判、「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動/『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』西尾幹二


『国民の歴史』西尾幹二
『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃』西尾幹二、中西輝政
『三島由紀夫の死と私』西尾幹二

 ・「戦争責任」という概念の発明
 ・岡崎久彦批判、「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動
 ・死ぬ覚悟があるのなら相手を倒してから死ね

岡崎久彦

 この日は珍しい来賓があった。岡崎久彦氏である。
 岡崎氏は私が名誉会長であった間は(※「新しい歴史教科書をつくる会」の)総会に来たことがない。多分気恥かしいひけ目があったからだろう。彼は「つくる会」創設時にはスネに傷もつ身である。すなわち最初の頃はずっと理事に名を出していたが、会発足の当日に会に加わるものはもの書きの未来に災いをもたらすと見て、名を削ってくれと申し出て来た。つまり夏の夜のホタルのように甘い水の方に顔を向けてフラフラ右顧左眄(うこさべん)する人間なのだ。それならもう二度とつくる会に近づかなければいいのに、多少とも【出世した】つくる会は彼には甘い水に見えたらしい。こんど私が会場に姿を見せなくなったら、厚かましくも突然現れた。

【『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』西尾幹二〈にしお・かんじ〉(徳間書店、2007年)以下同】

「必読書」から「資料本」に変えた。カテゴリーとしての資料本(しりょうぼん)とは必読書を鵜呑みにしないためのテキストである。謂わばワクチン本といってよい。

(※米議会で靖国神社遊就館の展示に変更を求めたハイド委員長〈共和党〉の意見は)靖国とナチスの墓地を同列に置くような低レベルの内容であるが、戦史展示館「遊就館」の展示内容を批判し、「次期首相」の参拝中止を求めている記事(毎日新聞、9月15日付)内容は、岡崎久彦氏が8月24日付産経コラム「正論」で、「遊就館から未熟な悪意ある反米史観を廃せ」と先走って書いたテーマとぴったり一致している。やっぱりアメリカの悪意ある対日非難に彼が口裏を合わせ、同一歩調を取っていたというのはただの推理ではなく、ほぼ事実であったことがあらためて確認されたといってよいだろう。岡崎久彦氏は「親米反日」の徒と昔から思っていたが、ここまでくると「媚米非日」の徒といわざるを得ないであろう。

 政治的な意味のリベラルは地に落ちた。かつては是々非々を表したこの言葉は既に左翼と同義である。ポリティカル・コレクトネスという牙で日本の伝統や文化を破壊するところに目的がある。その後、リアリズム(現実主義)という言葉が重宝されるようになった。そしてリアリズムが行き過ぎると岡崎久彦のような論理に陥ってしまうのだろう。国家の安全保障を米軍に委ねるのが日本国民の意志であるならば、用心棒に寄り添い、謝礼も奮発するのが当然という考え方なのだろう。

 かつてのコミンテルン同様、CIAも日本人スパイを育成し第五列を強化している。大学生のみならず官僚までもが米国留学で籠絡(ろうらく)されるという話もある。学者や評論家であれば米国内で歓待して少しばかり重要な情報を与えれば感謝感激してアメリカのために働く犬となることだろう。日本人には妙なところで恩義を感じて報いようとする心理的メカニズムがある。

 岡崎久彦がアメリカに媚びるあまり歴史の事実をも捻じ曲げようとしたのが事実であれば売国奴といってよい。しかも日本民族の魂ともいうべき靖国神社に関わることである。リアリストというよりは第五列と認識すべきだろう。

 中西輝政氏は直接「つくる会」紛争には関係ないと人は思うである。確かに直接には関係ない。水鳥が飛び立つように危険を察知して、パッと身を翻(ひるがえ)して会から逃げ去ったからである。けれども会から逃げてもう一つの会、「日本教育再生機構」の代表発起人に名を列(つら)ねているのだから、紛争と無関係だともいい切れないだろう。(中略)
 中西氏は賢い人で、逃げ脚が速いのである。いつでも「甘い水」を追いかける人であることは多くの人に見抜かれている。10年前の「つくる会」の創設時には賛同者としての署名を拒んだだけでなく、「つくる会」を批判もしていたが、やがて最盛時には理事にもなり、国民シリーズも書き、そして今度はまたさっと逃げた。

 本書には「つくる会」の内紛、扶桑社との騒動にまつわる詳細が書かれている。月刊誌に掲載された記事が多いこともあるが、よくも悪くも西尾幹二の生真面目さが露呈している。私の目には政治に不慣れな学者の姿が映る。それゆえに西尾は不誠実な学者を許せなかった。自分との距離に関係なく西尾は批判を加えた。

 西尾はチャンネル桜でも昂然と安倍首相批判を展開している。年老いて傲岸不遜に見えてしまうが、曲げることのできない信念の表明である。そこには周囲と巧く付き合おうという姿勢が微塵もない。

国家と謝罪―対日戦争の跫音が聞こえる
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2019-03-24

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2018-08-06

「児玉誉士夫小論」林房雄/『獄中獄外 児玉誉士夫日記』児玉誉士夫


『篦棒(ベラボー)な人々 戦後サブカルチャー偉人伝』竹熊健太郎

 ・「児玉誉士夫小論」林房雄

『大東亜戦争肯定論』林房雄
・『われ敗れたり』児玉誉士夫
・『芝草はふまれても 巣鴨戦犯の記録』児玉誉士夫
・『悪政・銃声・乱世 児玉誉士夫自伝』児玉誉士夫
・『われかく戦えり 児玉誉士夫随想・対談』児玉誉士夫
・『随想 生ぐさ太公望』児玉誉士夫
・『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』有馬哲夫

 児玉誉士夫を知って早くも30年が過ぎた。互いに仕事の場を異にしているので、会い語る機会は少なかったが、目に見えぬ心の糸はつながっていた。その糸の最も強いものの一つは、この不思議な人物がときどき発表する自伝風の著書である。
 巻数は少なかったが記された文字のすべてが、強く私の胸を打った。私も長く文字の道にたずさわっている者の一人だから、文章の真贋だけはわかるつもりだ。この人は嘘の言えない人、嘘を行えない人である。爆発する激情のみに身をまかせて生きてきた行動家であるかのような印象を、世間の一部の人々は持っているかもしれぬが、そんな単純な人物ではない。深い内省と謙虚を内に蔵している。生れながらの叛骨と権力者嫌いは生涯消えることはないであろうが、あふれる温情を胸底に秘めて、人情の正道を歩き通した。肩をいからした国士面と強面(こわもて)の愛国者顔のきらいな、永遠の憂国者。常に迅速、果断な行動によって裏づけられる適確無比の洞察力と決断力は、これまた天与のものであろう。ある公開の席上で、私は彼を「天才」と呼んだことがあるが、決してお世辞ではなかった。(「児玉誉士夫小論」林房雄、以下同)

【『獄中獄外 児玉誉士夫日記』児玉誉士夫〈こだま・よしお〉(アジア青年社出版局、1943年/広済堂出版、1974年)】

 ま、酒呑みの言葉をそのまま信用するほど私は初(うぶ)ではない。三島由紀夫も最後は林房雄に対して厳しい評価をせざるを得なかった。児玉誉士夫もまた毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人物である。この二人には似た面影(おもかげ)がある。良い意味でも悪い意味でも日本人的なのだ。志は清らかなのだが清濁併せ呑むことで自身を汚(けが)していったようなところがある。振り返れば大東亜戦争における旧日本軍もまた同様であった。

 意外と知られていないことだが児玉誉士夫は創価学会と間接的な縁がある。大日本皇道立教会(1911年設立)には牧口常三郎(創価学会初代会長)や戸田城聖(同二代会長)に遅れて参加しているし、岸信介と親(ちか)しいところも共通している。すなわち戦後の保守における本流にいたことは間違いないと思われる。

 私が児玉に注目したのは神風(しんぷう)特別攻撃隊の生みの親である大西瀧治郎中将(ちゅうじょう)の末期(まつご)に立ち会ったことを知った時である。

 終戦を迎えた翌日、1945年8月16日に児玉と懇意にしていた大西が遺書を残し割腹自決した。児玉誉士夫も急行し、駆けつけた児玉に「貴様がくれた刀が切れぬばかりにまた会えた。全てはその遺書に書いてある。厚木の小園に軽挙妄動は慎めと大西が言っていたと伝えてくれ。」と話した。児玉も自決しようとすると大西は「馬鹿もん、貴様が死んで糞の役に立つか。若いもんは生きるんだよ。生きて新しい日本を作れ」といさめた。

Wikipedia

継母への溢れる感謝/『新編 知覧特別攻撃隊 写真・遺書・遺詠・日記・記録・名簿』高岡修編

「児玉は死期が近づいた時、『自分はCIAの対日工作員であった』と告白している」(Wikipedia)。正力松太郎(元読売新聞社主)もポダムというコードネームを持つ工作員だった(『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』有馬哲夫)。保守というよりは反ソ感情を利用されたのだろう。敵の敵と組むことには一定の利がある。やがては大きすぎる利に目が眩(くら)んだのかもしれない。

 敗戦後、独立独歩の道を塞(ふさ)がれた日本はGHQの占領期間において完全なコントロール下に置かれたと見てよい。それは今もなお解けない呪縛だ。

 児玉誉士夫は酒を飲まない。飲めないのではなく、飲まない。
 まだつきあいの浅かったころは、これは体質的なもので、即ち“下戸”なのだろうと思っていた。私の方は親譲りの“上戸”で、豪酒というよりも暴酒というべき、浴びるような飲み方をして、乱に及ぶこともしばしばであった。見兼ねたのであろう、彼は時折り私に言った。
「あんたは酒をつつしみなさい。わたしは、このとおり飲まぬ」
 その言葉の意味がわかったのは、だいぶ後になって、彼自身の口から次のような告白を聞いた時であった。
 若いころには、人並みに飲み、飲めばいい御機嫌にもなり、つきあいとなれば酒場の梯子も辞さなかった。ある晩、酒場のカウンターで友人たちとグラスを片手に放談し、さて帰ろうとして気がつくと、上着の背が鋭い刃物で縦一文字に切り裂かれていた。
「これはいけない」と思ったそうだ。「生死の覚悟というような問題ではない。酒場で酔って刺されるなどは男の名誉ではないし、しかも、刺されたのならまだしも、背中に刃物を当てられて、それに気がつかなかったというのは醜態以外何物でもない。こんな飲み方と酔い方はやめよう」
 以来、飲めないのではなく【飲まない】児玉誉士夫が生れた。

 国士とか壮士の気風が確かに残っているエピソードである。上場企業の社長がTシャツで公の場に出てくる時代は、もはや正すべき襟(えり)すらないのだろう。信念とは誰も見ていないところで貫かれるものである。口にして宣伝する道具ではない。

 児玉がCIAの工作員であることを吐露したのは、CIAに裏切られたためではあるまいか。そんな気がしてならない。日本人は人が好(よ)すぎて国際関係で失敗することが多い。最大の原因は情報機関と国軍がないことに因(よ)る(『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行)。帝国主義はまだ死んでいない。先進国と名前を変えてのうのうと生き続けている。

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2018-04-06

誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか?/『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム


『暗殺者』ロバート・ラドラム

 ・誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか?

『メービウスの環』ロバート・ラドラム

ミステリ&SF
必読書リスト その一

 強烈な光線が闇を切り裂いた。その中に、必死に逃げまどう女の姿が浮かび上がる。次の瞬間、銃声が鳴り響いた――テロリストがテロリストに向けて放った銃弾。1発目が背骨の低部に命中したのだろう。女は大きくのけぞり、金髪が滝のようにはじけて流れ落ちた。つづいて3発、狙撃手(そげきしゅ)の自信のほどを示すように間を置いて発射され、襟首(えりくび)と頭部に命中した。女は泥と砂の小山のほうへ吹っ飛び、その指が地面をかきむしる。血に染まった顔はしかし、地面に突っ伏しているためによく見えない。やがて断末魔の痙攣(けいれん)が女の全身を走り抜け、と同時に、すべての動きが停止した。
 彼の恋人は死んだ。彼は自分がやらねばならないことをやったのだ。ちょうど、彼女が自分のしなければならないことをしたように。彼らはお互いに正しく、お互いに間違っていた。

【『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム:山本光伸訳(新潮文庫、1985年)】

「必読書リスト」は折に触れて変更している。コレクションは常に取捨が問われる。精査し厳選することで磨きが掛かるのだ(『子供より古書が大事と思いたい』鹿島茂)。中にはどうしても好きになれない人物もいるが――左翼の三木清や高橋源一郎、親左翼だった松下竜一、誤解した仏教観を西洋世界に広めたショウペンハウエルなど――そこは読み手の判断に委(ゆだ)ねよう。

 ロバート・ラドラムの作品はほぼ全部読んできた。映画「ボーン・シリーズ」の原作『暗殺者』はもちろん傑作なのだが、シリーズ全体となるとやや評価は落ちる。読み物としては本書の方が優れていると判断し「必読書」に入れた。

 エスピオナージュや国際謀略ものは基本的に「不信が渦巻く世界」である。上司が工作員を騙すのも朝飯前だ。そして極秘のスタンプが捺(お)された任務を遂行する中で極秘をいいことに腐敗や行き過ぎが生まれる。世界最大のテロ組織はCIAである。かつて大英帝国がそうだったように覇権国家は必ず他国を侵略する。覇権とは侵略を正当化するキーワードなのだ。

 マイケル・ハブロックは愛するジェンナ・カラスを殺害した。それが任務だった。ジェンナは敵国のソ連と通じていたのだ。裏切り者は敵よりも憎しみの対象となり下される罰は厳しさを増す。ところが全てが嘘だった。

 誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか? そして彼女はまだ死んでいなかった。既に四読しているが多分また読み直すことが何度かあるだろう。

 尚、具体的な経済侵略については『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンスが実体験を綴っている。『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルムも参考書として挙げておく。

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2017-12-14

巧妙に左方向へ誘導する本の数々/『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優


『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 2』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 3』小林よしのり
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『戦争論争戦』小林よしのり、田原総一朗

 ・巧妙に左方向へ誘導する本の数々

『打ちのめされるようなすごい本』米原万里
佐藤優は現代の尾崎秀実

 ――つまらない本の見分け方を教えてください。
 その前に、どうしてつまらないスカ本が出版されると思いますか?
 ――書き手に才能がないからですか?
 それもありますが、重要なのは、本は「有価証券」だということ。出せばお金に換えられるということです。
 出版社で社員が20人を超えると、編集者が作りたくなくて、営業も売りたくなくて、取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)もありがたがらない、本屋も起きたくない本がどうしてもできてしまう。資本主義ですから。
 だから、読者は「スカ本と、そうでない本を見分ける方法」をちゃんと学んでおかなくてはいけません。
 どうするかというと、本の「真ん中」をまず読むのです。
 ――本のど真ん中を開いて、何を確かめるのですか?
 なぜ真ん中を読むか。時間が足りずに雑に作って出している本は、真ん中あたりに誤植が多い。
 それから、自分が知っている分野の固有名詞がでたらめな場合もダメ。そんな本を出している出版社は、いい加減な本を作る傾向があるから、警戒した方がいいでしょう。(聞き手 小峯隆生)

【『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優(PHP文庫、2014年)】

 冒頭で佐藤が推す「本読み」巧者として松岡正剛〈まつおか・せいごう〉、斎藤美奈子鹿島茂立花隆佐高信〈さたか・まこと〉の5人を挙げる。松岡・佐高は言わずと知れた極左で、斎藤はフェミニズム左翼である。

 私程度の読書量でも「巧妙に左方向へ誘導する本の数々」とわかる。山口二郎や大田昌秀の名前を見て読むのをやめた。

 佐藤優が山口二郎を絶賛したのは新党大地が立ち上げた直後の講演であったと記憶する。当時、山口は北大教授だった。その後、山口は半安倍の急先鋒となり、佐藤は巧妙に沖縄の世論形成をリードしてきた。2015年に行われた辺野古基地反対の沖縄県民大会でのスピーチこそが佐藤の行ってきた工作の目的であろう。

「東京の窓から」は石原慎太郎が都知事をしていた時の番組である。YouTubeからは削除されている。私はこれを見て佐藤優という人物が信用できなくなった。


 石原慎太郎が4歳年上である。佐藤優とよく比較してもらいたい。菅沼光弘はまさしく国士である。インテリジェンスに通じた二人だが決定的な違いだ。私は菅沼の著書は全て読んできたが国士であるという一点がブレることはない。尚、菅沼がCIAに殺害されないのは山口組がガードしているため。戦後、東大を卒業しドイツに留学。ゲーレン機関(連邦情報局)で諜報教育を受ける。ラインハルト・ゲーレンにも一度会っている。








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2016-09-07

マッカーサーが恐れた一書/『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ


 ・マッカーサーが恐れた一書

『パール判事の日本無罪論』田中正明

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むことはできない。
   ――ダグラス・マッカーサー(ラベル・トンプソン宛、1949年8月6日付書簡)

【『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ:伊藤延司〈いとう・のぶし〉訳(角川ソフィア文庫、2015年/角川文芸出版、2005年『アメリカの鏡・日本 新版』/アイネックス、1995年『アメリカの鏡・日本』)以下同】

 新書で抄訳版も出ているが、「第一章 爆撃機からアメリカの政策」と「第四章 伝統的侵略性」が割愛されており、頗(すこぶ)る評判が悪い。完全版が文庫化されたので新書に手を伸ばす必要はない。むしろ角川出版社は新書を廃刊すべきである。

 マッカーサーが恐れた一書といってよい。ミアーズは東洋史の研究者で、戦後はGHQの諮問機関である労働政策委員会の一員として二度目の来日をした。原書は1948年(昭和23年)に刊行。戦前のアメリカ政府による主張とあまりに異なる内容のためミアーズの研究者人生は閉ざされた。

 私は打ちのめされた。アメリカに敗れた真の理由を忽然と悟った。アメリカにはミアーズがいたが、日本にミアーズはいなかった。近代以降の日本は「アメリカの鏡」であった。遅れて帝国主義の列に連なった日本は帝国主義の甘い汁を吸う前に叩き落とされた。本書を超える書籍が日本人の手によって書かれない限り、戦後レジームからの脱却は困難であろう。


なぜ日本を占領するか

 日本占領は戦争行動ではなく、戦後計画の一環として企てられたものである。私たちは勝利に必要な手段として、日本を占領したのではない。占領は日本に降伏を許す条件の一つだったのだ。この方針は1945年7月27日のポツダム宣言で明らかにされている。同宣言は日本民族が絶滅を免れる最後のチャンスとして、不定期の占領に服さなければならない、占領は日本の文明と経済の徹底的「改革」をともなうが、もし、これに服さなければ、日本は「即時かつ完全な壊滅」を受け入れなければならない、というのだった。
 この厳しい条件は日本の態度を硬化させた。そして、宣言発表から10日後、私たちは1発の原子爆弾を投下して、この条件が単なるこけ脅しではないこと、日本を文字どおり地球上から消し去ることができることを証明してみせた。私たちは、もし日本がすぐさま惨めにひれ伏して降伏しなければ、本気で日本を消滅させるつもりだったのだ。

 ポツダム宣言が発表されたのは「7月27日」ではなく26日である(アメリカ時間か?)。日本政府は8月14日にこれを受諾した。広島への原爆投下が8月6日で、長崎が9日である。ミアーズはアメリカ人なので致し方ないが、日本政府がポツダム宣言受諾を決定した最大の理由はソ連対日参戦(8月9日)であった。そして8月14日には陸軍エリートが宮城事件を起こし、埼玉では川口放送所占拠事件(8月24日)が発生する。

 尚、ポツダム宣言に署名したのは米・英・中華民国であって中華人民共和国ではない。巷間指摘される通り「中国3000年の歴史」という言葉はデタラメなもので、中華人民共和国の歴史は70年にも満たない(1949年建国)。シナという地理的要件がたまたま一致しているだけで国家としての連続性はなく、王朝がコロコロ変わるのがシナの歴史であった。「中国」という幻想をしっかりと払拭しておく必要があろう。

 つまり、日本占領はアメリカの戦争目的の一つだったのだ。では、いったい、日本を占領する私たちの目的は何なのか。その答えは簡単すぎるほど簡単だ。この疑問に悩んで眠れなくなったアメリカ人はいまい。答えはたったひと言「奴らを倒せ、そして倒れたままにしておけ」である。これ以上のことをいうにしても、せいぜい、日本人が二度と戦争を起こさないよう「民主化」しよう、ぐらいのものなのだ。
 国民の考えは、カイロとポツダムの両宣言から、占領後のホワイト・ハウス声明、ポーリー報告、マッカーサー将軍をはじめとする軍、政府首脳が出した数多くの通達にいたるまで、公の、あるいはそれに準ずる文書の中でいわれてきた戦争目的と見事に一致していた。
 すべての文書が、断固として日本を「懲罰し、拘束する」といっていた。懲罰によって「野蛮な」人間どもの戦争好きの性根を叩き直し、金輪際戦争できないようにする。そのために、生きていくのがやっとの物だけを与え、あとはいっさいを剥ぎ取ってしまおうというのだった。占領の目的は1945年9月19日、ディーン・アチソン国務長官代行が語った言葉に要約される。
「日本は侵略戦争を繰り返せない状態に置かれるだろう……戦争願望をつくり出している現在の経済・社会システムは、戦争願望をもちつづけることができないように組み替えられるだろう。そのために必要な手段は、いかなるものであれ、行使することになろう」

 ソ連参戦によって日本政府が恐れたのは共産主義化が国体を滅ぼすことであった。ゾルゲ事件(1941-42年)で近衛内閣のブレーンを務めた尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉までもがソ連のスパイであることが発覚した。

 中華民国の蒋介石は既に反共から容共に転じていた。そしてアメリカもまた共産党勢力に冒されていたのである(『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫)。GHQは分裂していた。占領初期~民主化~マッカーサー憲法を推進した民政局(GS)はニューディーラーと呼ばれる左派(社会民主主義者)の巣窟であった。一方、チャールズ・ウィロビー少将が率いる参謀第二部(G2)は保守派であり、GSとG2は激しく対立していた。

 世界恐慌(1929年)からブロック経済への移行が第二次世界大戦の導火線となったわけだが、大統領選挙でニューディール政策を掲げたフランクリン・ルーズベルトは社会民主主義色が強く、「ルーズベルトは民主主義者から民主主義左派・過激民主主義者を経て、社会主義者、そして共産主義支持者へと変貌していった」(ハミルトン・フィッシュ)との指摘もある(『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』深田匠)。

 日本政府が最後通牒と受け止めたハル・ノートには二案あり、採用されたのはモーゲンソー私案である。これを作成したハリー・デクスター・ホワイトはソ連のスパイであった(『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男)。第一次世界大戦後、世界中を共産主義の風が吹いていた歴史の事実を忘れてはなるまい。

 敗戦が確定した時点で国体の命運は定まっていなかった。GSが支援した片山社会党内閣(1947-48年)に続き、芦田民主党内閣(1948年)を挟んで第二次吉田内閣(1948-49年)が誕生する。GHQの主導権はGSからG2へと移り変わり、レッドパージ(1949年)の追い風を受けた吉田内閣は第五次(1953-54年)まで続いた。吉田首相は国家の自主防衛を捨てても国体を護る道を選んだ。その功罪を論(あげつら)うのは後世の勝手である。しかし吉田が天皇制を護ったのは事実である。辛うじて国体は護持し得たが国家としての日本は破壊された。

 大東亜戦争は日本の武士道がアメリカのプラグマティズムに敗れた戦争であったと私は考える。大日本帝国の軍人は軍刀を下げていた。対面を重んじて実質を軽んじた。開戦そのものが見切り発車で、石油の備蓄は2年分しかなかった。つまり最初から2年以上戦うつもりはなかったのだ。明治維新の会津藩と日本の姿が重なる(会津藩の運命が日本の行く末を決めた)。規範を疑うことを知らず、視線は常に内側に向けられたまま、外部世界との戦いに翻弄された。

 GHQによって日本は「二度と戦争のできない国」に改造された。GSとG2の分裂による迷走は今尚、日本を二分している。冒頭に掲げたマッカーサーの言葉は意味深長である。多くの日本人が本書を読んでないのだから、GHQの占領はまだ続いていると思わざるを得ない。

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世界史対照年表の衝撃/『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編