2018-11-30

外務省の極秘文書『日本外交の過誤』が公開/『敗戦への三つの〈思いこみ〉 外交官が描く実像』山口洋一


 ・外務省の極秘文書『日本外交の過誤』が公開

『腑抜けになったか日本人 日本大使が描く戦後体制脱却への道筋』山口洋一
『植民地残酷物語 白人優越意識を解き明かす』山口洋一
『驕れる白人と闘うための日本近代史』松原久子

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 やがて元勲たちが国政の表舞台から退き、軍人がわが世の春を謳歌する時代となるにつれて、外務省は軍部追随の色彩を徐々に強めていく。この間の事情を最もよく物語っているのは、外務省資料『日本外交の過誤』である。
 2003年4月、外務省は極秘文書『日本外交の過誤』の秘密指定を解除し、これを公表した。これは1951年に作成された外務省の文書であるが、吉田茂総理の命により、課長クラスの若手省員が精力的に作業を行い、満州事変から敗戦までの日本外交の過誤を洗い出し、後世の参考にせんとして作成したものである。この資料の本体は、膨大な作業の結論としてまとめられた、50ページ程度の『調書』であるが、これに加えて、『調書』についての堀田正昭、有田八郎、重光葵、佐藤尚武、林久治郎、吉沢謙吉ら、先輩外交官や大臣の所見(インタビューでの談話録)および省員の批評があり、これも付属文書(以下においてはこれを『所見』と記すことにする)として公開された。さらに、『調書』作成の基礎となった259ページに及ぶ『作業ペーパー』が残されており、これは『調書』『所見』からは1年以上遅れて、2004年6月に公表された。こうして『調書』『所見』『作業ペーパー』の3点セットが2004年には完全に揃うこととなった。これらの資料は、満州事変以降、終戦に至る日本の対外政策を考える上で、よりどころとなる貴重な手がかりを与えている。

【『敗戦への三つの〈思いこみ〉 外交官が描く実像』山口洋一(勁草書房、2005年)以下同】

『植民地残酷物語』で山口洋一は竹山道雄を引用していた。そして本書では岡崎久彦を引用している。竹山道雄~山口洋一~岡崎久彦という流れが今年の読書遍歴の中軸を成した。本物の知性は良識に支えられている。学者は専門知識に溺れて世間を侮る。そして知らず知らずのうちに社会から離れてゆく。彼らが語る死んだ知識は生きた大衆の耳に届かない。山口は外交官、岡崎は外務官僚、竹山は文学者である。彼らは自分の専門領域を超えて歴史に着手した。実務経験に裏打ちされた確かな眼が人間の姿をしっかりと捉える。更に歴史と人間の複雑な絡み合いやイレギュラーをも見据えている。

 元勲たちに代わって登場してきたのは、陸軍大学校、陸軍士官学校、海軍大学校、海軍兵学校などで教育を受けた軍事エリートたちだった。明治になってからの、こうした軍の高等教育機関は、欧米列強の軍事れべるに追いつかねばならないという焦りから、目先のことに役立つ軍事教育に専念するようになった。政戦合わせた国家戦略を構築するというステーツマンとしての教育はなおざりにされ、国家経営のジェネラリストではなく、軍事に特化したスペシャリストを育成したのである。そしてこのような軍事スペシャリストが徐々に国家の枢要ポストを占めるようになる。

 武士から明治維新の志士を経て国士となったのが元勲である。明治開国で不平等条約を結ばされ、治外法権を受け入れた日本がステーツマン(見識のある政治家)やジェネラリスト(広範な分野の知識・技術・経験をもつ人)を育成する余裕はなかった。半植民地状態を脱するには廃藩置県によって誕生した国軍を強化する他ない。富国強兵・殖産興業は国家としての一大目標であった。惜しむらくは大正デモクラシー後に政党政治が育たなかったことである。

 山口の文章には日本から武士が滅んでしまった歴史への恨みが滲み出ている。もはや国士も見当たらない。ステーツマン・ジェネラリストであるべき官僚は省益のために働くサラリーマンと化してしまった。国が亡びないのが不思議なくらいだ。きっと人の知れないところで日本という国家を支えている人々が存在するのだろう。

 外務省資料『日本外交の過誤』には伏線があった。

 しかし、人間でも国家でも失敗の経験というのは貴重なものである。大失敗などめったにするものでもないし、またすることが許されるわけでもないのだから、ここから教訓を学びとらない手はない。
 ところが、戦後の史観は、真珠湾攻撃が悪かったというだけならまだしも、統帥権(とうすいけん)の独立があったから、さらには明治憲法があったから、しょせん日本は滅びたということで、あれだけ全国民が全身全霊で打ち込んだ大戦争をしながら、そこから具体的な教訓を得ようという姿勢に乏しかった。
 じつは敗戦直後、天皇は東久邇宮成彦〈ひがしくにのみや・なるひこ〉総理に対して「大東亜戦争の原因と敗因を究明して、ふたたび日本民族がこういう戦争を起さないようにしたい」とのお言葉があり、幣原喜重郎〈しではら・きじゅうろう〉内閣も敗戦の原因究明こそ日本再建にとって最重要課題の一つと考えて、昭和20年12月20日に戦争調査会が設置され、幣原自身が会長となった。ところが昭和21年7月、対日理事会でソ連代表が、会に旧軍人が参加していることを理由として、これは次の戦争に負けないように準備しているのだと非難し、英国もこれに同調した。当時の吉田茂総理からマッカーサーの了承を得ようとしたがそれも失敗し、幣原の憤懣(ふんまん)のなかで廃止された経緯がある。この作業がきちんと行われていれば、日本もあの戦争から多々教訓を学びえたはずであるが、もうその後は占領軍の言論統制のなかで、日本の過去はすべて悪だったのだから、戦略の是非など論じるのはおこがましい、極端な場合は「むしろ負けてよかった」というような史観だけが独り歩きすることとなった。

【『重光・東郷とその時代』岡崎久彦(PHP研究所、2001年)/PHP文庫、2003年】

 偶然にも先ほど読んだ箇所に出てきた。読書の醍醐味は知識と知識がつながり、人と人とがつながるところにある。敗戦はつくづく残酷なものだ。日本は反省する機会すら奪われたのだから。しかしながら敗戦から半世紀を経て近代史を見直す動きが現れたことは日本人の魂がまだ亡んでいなかった証左といえよう。

 老人が生活を憂(うれ)えるのは構わない。若者であれば貧しくとも国家を憂(うれ)えよと言いたい。一身の栄誉など踏みつけて国家の行く末を案じるべきだ。

敗戦への三つの“思いこみ”―外交官が描く実像
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戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書)
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2018-11-29

ジム・キャリー「全てとつながる『一体感』は『自分』でいる時は得られないんだ」



 悟りには段階がある(『悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃)。四向四果(しこうしか)だと預流果→一来果→不還果→阿羅漢果で完成となる(藤本晃)。

 悟りを説明することに意味はあるのだろうか? ないね。ちっともないよ。むしろ説明することによって悟りは知識の範疇(はんちゅう)に押し込められる。レシピ本を読んで料理を語ることはできても決して満腹にはならない。

 知識や考え方、概念から離れるのが悟りである。いかに努力を積み重ねても自分の価値観を変えることは難しい。努力の過程そのものに自分の価値観が入っているためだ。すなわち悟りは努力の果てに得られるものではない。悟りを「理想」と捉えるのも誤っている(『自由とは何か』J・クリシュナムルティ)。

 例えば宮崎哲弥の該博な知識や頭のよさに唸(うな)らされることはあっても、そこに悟りの明晰さは見られない。通説の経・論・釈(経典・論書・釈書)にこだわるつもりはないが次元の違いを見極める必要がある。

 人類にとって最大の問題は悟りを社会に展開できるのかどうかだ。政治・経済は差別の世界である。軍隊を持たぬ平和主義は脆弱(ぜいじゃく)だ。チベットは中国に侵攻され、いまだ独立がかなわない。もしも国民全員が悟った国があったとすれば直ちに隣国から攻撃されることだろう。人類史上最も攻撃的なキリスト教白人が帝国主義以降の世界をまだ牛耳っていることからも明らかである。

2018-11-26

人生を変える発見/『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク


『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 ・自己治癒コンクリート
 ・人生を変える発見

『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン

必読書リスト その三

 そのあと書類に記入する段になったとき、隣に座っていた両親が心配そうに、私が何を躊躇しているのかといぶかった。自分の名前と住所を忘れでもしたのか? 実は1枚目の上部に止(ママ)められていたステープラー(ホチキスなどの閉じ〈ママ〉金)の針に目を奪われはじめていたのだ。これも鋼鉄でできているに違いない。一見何の変哲もないこの銀色の金属片は、手際よく正確に紙を貫いている。書類は裏返してみると、針の両端をきれいに揃えて折り曲がり、数枚の用紙をきつく抱きかかえて束ねている。宝石職人もこれほどうまくはできないはずだ(あとで知ったことだが、最初のステープラーはフランス国王ルイ15世のために手づくりされたもので、針1本1本に記章が刻まれていた。王侯の血が流れていたとは誰が想像しただろう?)。私が「なんとも美しい」と言って指さすと、両親は不安げに顔を見合わせ、この子はノイローゼになったに違いないと思った。
 実際そうだったのだろう。何かとても奇妙なことがはじまったのは確かだ。あれは私の材料に対する執着が生まれた瞬間だった――鋼鉄を手はじめに、私は突然、どこへ行っても鋼鉄の存在にめざとく気づくようになった。あなたも意識して探せば気づくはずだ。鋼鉄は、警察で書類の記入に使っていたボールペンの先にあった。落ち着かない様子で待つ父のキーホルダーでじゃらついて、私をせかした。そのあと、私を中に入れて家まで連れ帰った――葉書ほどの厚みの層として車の外部を覆って、変な話だが、いつもならうるさいとしか思わないわが家の鋼鉄のミニ(MINI)が、その日はつとめて神妙に平謝りしているように感じた。家に着くと、私は台所のテーブルで父と並んで座り、母のつくったスープを黙って食べた。ふと、食器を持つ手が止まった。自分が鋼鉄を口に含みさえすることに気づいたのだ。そこで、食べるのに使っていたステンレスのスプーンを意識してなめ、口から出して光沢のある外観をしげしげと眺めた。表面はぴかぴかで、自分のゆがんだ顔がスプーンのくぼみに映る。私は「この材料、何?」と言って父に向かってスプーンを振り、「それに、味がしないのは何で?」と尋ねると、確かめるために口の中に戻して熱心になめまわした。
 それをきっかけに膨大な数の疑問が沸(ママ)いてきた。自分たちのために大活躍しているこの材料を、私たちはどうしてほとんど話題にしないのか? 鋼鉄とは暮らしのなかでずいぶん親しくしているのに、口に含むし、余計な髪を切るのに使うし、乗り込んで走り回ったりもする。いちばん信義に篤い友人なのに、その性質の出自についてはほとんど知らない。なぜカミソリの刃は切れ、ゼムクリップ(ペーパークリップ)は曲がるのか? そもそもなぜ金属には光沢があるのか? さらに言えば、なぜガラスは透明なのか? なぜ誰もがコンクリートを嫌ってダイヤモンドを好むのか? そして、なぜチョコレートはあれほどおいしいのか? どんな材料についても、なぜそれぞれの外見と振る舞いを見せるのか?

【『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク:松井信彦訳(インターシフト、2015年)】

 著者のマーク・ミーオドヴニクが若い頃、暴漢にカミソリで襲われた事件のエピソードである。彼はまず薄いカミソリの刃が重ね着していた5枚の衣服を貫いたことに心底興味を抱いた。押収された証拠品を眺めながら彼は忽然(こつぜん)と「鉄」を発見した。それは人生を変える発見だった。「見る」ことは「感じる」ことでもあった。そして「感じる」ことが「観じる」ことに戻り現在世が押し拡げられる。「先が見えない」状況は未来への展望に固執するあまり、現在性が見えなくなっているところに問題があるのだろう。一つの発見が次の発見につながり、豊かな世界に気づく様が生き生きと描かれている。

 鉄の他には紙、コンクリート、チョコレート、フォーム(泡)、プラスチック、ガラス、グラファイト、磁器、インプラントが取り上げられている。どれ一つとして私の興味を掻き立てる物はない。ところがマーク・ミーオドヴニクという人間を通すと色とりどりの鮮やかな世界が見えてくるのだ。我々の身の回りに存在するありふれた何の変哲もない物が実は科学技術の粋を凝らした製品なのだ。

 松井信彦の翻訳はこなれているのだが誤字が多い。このテキストでいえば、「止められて」→留められて、「閉じ金」→綴金、「沸いて」→湧いて、と三つもある。以前は出版社に直接教えてやったのだが、年を取ると面倒になってきてやめた。これは翻訳者というよりもインターシフト社の校正に責任がある。私は小学生の時分に新聞の誤字・誤植を見つけてからというもの誤字にはうるさいのだ。

2018-11-25

ドイツ経済を見事に立て直したヒトラー/『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘


『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』V・E・フランクル:霜山徳爾訳
『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』プリーモ・レーヴィ
『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編
『アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか』菅原出

 ・ドイツ経済を見事に立て直したヒトラー

『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』ノーマン・G・フィンケルスタイン

必読書リスト その二

 ヒトラーが政権を取ったとき、ドイツは疲弊しつくしていた。
 第一次世界大戦で国力を使い果たした上に、多額の賠償金を課せられた。ようやく復興しようとした矢先に世界大恐慌に襲われた。ドイツという国はボロボロの状態になっていたのだ。
 しかし、ヒトラーが政権を取るや否や、経済は見る間に回復し、2年後には先進国のどこよりも早く失業問題を解消していたのである。
 ヒトラーの経済政策は失業解消だけにとどまらない。
 ナチス・ドイツでは、労働者の環境が整えられ、医療、厚生、娯楽などは、当時の先進国の水準をはるかに超えていた。
 国民には定期的にがん検診が行なわれ、一定規模の企業には、医者の常駐が義務づけられた。禁煙運動や、メタボリック対策、有害食品の制限などもすでに始められていた。
 労働者は、休日には観劇や乗馬などを楽しむことができた。また毎月わずかな積み立てをしていれば、バカンスには豪華客船で海外旅行をすることもできた。
 思想的な是非はともかく、経済政策面だけに焦点を当てた場合、ヒトラーは類(たぐい)まれなる手腕の持ち主ということにいなるだろう。
 ドイツ国民も、ヒトラーやナチス・ドイツに対して決して悪い印象を持ってはいなかった。

【『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘〈たけだ・ともひろ〉(祥伝社新書、2009年)】

 ユダヤ人はロシアを含むヨーロッパで長く虐げられてきた。反ユダヤ主義は新約聖書に始まる。虐殺は幾度となく繰り返されてきたがナチスによる虐殺はスケールが異なった。ユダヤ人がまともな人間として扱われるようになったのは国民国家が誕生したフランス革命以降のことである。彼らはヒトラーを絶対悪と規定することでユダヤ人差別の解消に成功した。更に金融・メディアを牛耳ることで世界経済に影響を行使し得る権力を獲得した。イスラエル建国に際してはロスチャイルド家が資金提供し、ユダヤ人の帰国事業をプロデュースした。

 民主政を善とする現代の常識からすれば独裁者は悪となるわけだが決してそう単純な話ではない。開発独裁という言葉が示す通り、経済発展が未熟な国では安定した政権運営のために独裁が正当化されることがある。所詮政治システムの違いでしかない。人類の歴史を振り返れば独裁や専制の方が長い。民主政が碌(ろく)でもない制度であることは大東亜戦争前の日本が既に証明している。日本は世論に押され、新聞に煽られて戦争への道を走った。これは日清・日露戦争から続く伝統である。

 また普通に考えても平時は民主政でよいが、戦時は独裁色を帯びることを避けられない。更に満州事変における関東軍の戦闘は暴走に思えても、『沈黙の艦隊』の海江田四郎艦長は英雄的行動に見える。結局のところ中身が問われているわけだ。

 第一次世界大戦に敗れたドイツは莫大な賠償金を背負わされた。税収の十数年分といわれる賠償金を支払えるわけがなく、ドイツは行き過ぎた金融緩和によってハイパーインフレに襲われる。物価は1兆倍にまでなった。この状況を果たして民主政で解決できるだろうか? 無理だね。断じて無理だ。むしろ無気力となった大衆が「私に任せよ!」という独裁者を待望したことは容易に想像できる。困った時に英雄を恃(たの)むのが大衆心理である。

 複雑系科学の視点からすれば「歴史を変えた英雄」は認められない。つまりヒトラーは要素の一つであってその背景にはドイツ国民の熱力学的なエネルギーが存在するのだ(『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン)。

 具体的にドイツ経済を復興させたのはヒャルマル・シャハト経済大臣の功績だ。彼は反ユダヤ主義者ではなかったという。

ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151)
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2018-11-24

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2018-11-22

伊藤博文の慧眼~憲法と天皇/『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹


『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹
『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
『小室直樹の資本主義原論』小室直樹

 ・いわゆる従軍慰安婦問題を焚き付けた朝日ジャーナル
 ・従軍慰安婦は破格の高給だった
 ・伊藤博文の慧眼~憲法と天皇

『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹
『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹
『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹
『数学嫌いな人のための数学 数学原論』小室直樹
『日本人のための憲法原論』小室直樹

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 ヨーロッパにおける憲法政治(立憲政治)の基礎には宗教という基軸がある。基軸としての宗教が深く人心に浸潤(しんじゅん)し、人心が宗教に帰一(きいつ)している。だから、立憲政治はうまくゆく。
 それなのに日本ではどうか。どの宗教もその力は微弱であって、どれも立憲政治の基軸として機能しうるものはない。さすがに、維新元勲の一人たる伊藤博文の慧眼(けいがん)、立憲政治(民本主義〈デモクラシー〉政治)の本質を見抜いていたのである。

【『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹〈こむろ・なおき〉(クレスト社、1996年ワック出版、2005年/WAC BUNKO、2018年)以下同】

 伊藤博文がイギリスに留学した期間はわずか半年足らずである(渡航は片道3~4ヶ月を要した)。しかも22歳という若さであった。時代が人を作り、人が時代を作る。明治維新が現代人を魅了してやまないのは綺羅星の如く人材が躍り出たダイナミズムに理由がある。伊藤は松陰門下では下っ端と見られがちだが、高杉晋作や久坂玄瑞が生きていれば上手く運んだかといえば決してそんなことはないだろう。大物であればこそ邪魔な存在になった可能性もある。確実なことは伊藤なくして日本の憲法制定はありあり得なかったという事実である。

 絶対契約という考え方は、啓典(けいてん)宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)に由来する。啓典宗教における契約は、本来、神と人間との契約である。ゆえに、その契約(命令)は絶対である。(中略)
 仏教においては、仏との契約という考え方はない。ありえない。はじめに「法」があって、この「法」を悟った者が仏となる。この考え方を「法前仏後」という。「法」は仏といえども如何(いかん)ともできない。はじめに「法」ありき。
 啓典宗教においては、法(戒律、規範、法律、すすんでは、社会法則、自然法則、超自然法則)もまた、神の創造による。神の意志によって作られたものである。仏教的表現を用いれば、「神前法後」。だからこそ、神の意志によって契約が結ばれる。すなわち、絶対者との契約があり、これによって法が作られるのである。(中略)
 儒教にも、聖人との契約という考え方はない。ありえない。聖人孔子でさえも、「述(の)べて作(つく)らず、信じて古(いにしえ)を好む」(述而〈じゅつじ〉 第七)とあるように、道(規範、倫理)の創造者ではない。(中略)
 ゆえに、絶対契約としての統治契約たる憲法は、啓典宗教の他の宗教のもとでは成立しえない、と言えよう。(中略)
 憲法が成立しうるためにはタテの絶対契約(神との契約)が、ヨコの絶対契約(人と人との間の契約)に転換されなければならない。西方キリスト教諸国においては、資本主義発生期に、この転換が行なわれた。資本主義における契約は、対等な両当事者の間の合意に基づくヨコの契約(人と人との間の契約)であるが絶対である。統治契約たる憲法もこれと同じ。

 旧植民地でデモクラティックな憲法が機能しないのは「神」という画竜点睛を欠いたためだ。形だけを真似ても憲法は機能しない。伊藤博文は「立憲政治の前提として宗教なからざるべからず」(憲法草案審議 明治21年〈1888年〉)と気づいた。

 しかし、日本に宗教は無い。どの宗教も、立憲政治の基軸とはなりえないのである。「深ク人心ニ浸潤(シンジュン)シテ、人心此(コレ)ニ帰一(キイツ)セリ」(同右)というようにはなっていないからである。
 では、伊藤をはじめとする日本の指導者はどうしたのか。皇室(天皇)をもって、立憲政治の基軸とすることにしたのであった。
「我国(ワガクニ)ニ基軸トスヘキハ、独リ皇室アルノミ」(同右)
 かくて、皇室(天皇)は、「ヨーロッパ文化1000年にわたる『基軸』をなして来たキリスト教の精神的【代用品】」とされることになった(同右)のである。立憲政治のためのキリスト教の代用品――。これが、大日本帝国における天皇の役割であった。
 この驚くべき(いくら驚いても足りない)方法に対して、すぐさま疑問が出てくるであろう。
 そんなことが可能か。天皇がキリスト教的神に成るなんていうことが本当に可能なのか。

 天皇陛下を現人神(あらひとがみ)にしたのは何と憲法制定のためであった。小室は天皇が庶民からの支持を得ていない事実を示し、伊藤の狙いがどれほど困難に満ちたものであったかを解説する。

 まだ白人帝国主義真っ盛りの時代である。有色人種は劣った存在とされていた。日本の望みは不平等条約の撤廃と関税自主権を取り戻すことであった。そのためには文明国であることを証明しなければならない。これが立憲政治に賭けた伊藤の思いであった。

 当時の日本人は世界といえばシナ(清国)~インドまでの認識しかなかった。清(シン)は眠れる獅子としてアヘン戦争以降はヨーロッパ諸国も手をつけていなかった。その大国清に日本は戦争で勝った(1894-95年〈明治27-28年〉)。

 奇蹟である。何が宗教を作るか。奇蹟である。日本国民は「天皇は神である」ということの意味をやっと理解した。

 1889年(明治22年)2月11日に公布、1890年(明治23年)11月29日に施行された大日本帝国憲法に魂が入った。

 日英同盟が結ばれるのは1902年(明治35年)のことである。不平等条約は改正され、日露戦争(1904-05年〈明治37-38年〉)を経てやっと日本は半植民地状態を脱して立を果たす。ここにおいて明治維新の目的は達成されたのだ。

日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する (WAC BUNKO 282)
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2018-11-21

従軍慰安婦は破格の高給だった/『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹


『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹
『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
『小室直樹の資本主義原論』小室直樹

 ・いわゆる従軍慰安婦問題を焚き付けた朝日ジャーナル
 ・従軍慰安婦は破格の高給だった
 ・伊藤博文の慧眼~憲法と天皇

『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹
『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹
『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹
『数学嫌いな人のための数学 数学原論』小室直樹
『日本人のための憲法原論』小室直樹

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 近年の歴代内閣がやってきたことはただ一つ、「謝罪外交」であった。政治はすべて官僚の言いなり。周辺国のご機嫌(きげん)を伺(うかが)いながら、平身低頭ひたすら政権の維持だけに努めてきた。
 鳩山由紀夫(はとやまゆきお)、邦夫(くにお)兄弟、菅直人(かんなおと/元厚相)らが平成8年の秋に発足させた新党「民主党」に至っては、元従軍慰安婦への深い反省と謝罪を党の基本政策として掲げている。彼らが基本政策の第一として掲げる「民主党の歴史認識」とは、以下のとおりである。
「日本社会は何よりも、アジアの人々に対する植民地支配と侵略戦争に対する明瞭な責任を果たさずに今日を迎えている。21世紀に向け、アジアと世界の人々の信頼を取り戻すため、アジアの国々の多様な歴史を認識することを基本に、過去の戦争によって引き起こされた元従軍慰安婦などの問題に対する深い反省と謝罪を明確にする」
 いったい、彼らは「謝罪」の意味が分かっているのだろうか。

【『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹〈こむろ・なおき〉(クレスト社、1996年ワック出版、2005年/WAC BUNKO、2018年)以下同】

 これまた自分の不明を恥じるばかりである。鳩山兄弟は鳩山一郎の孫である。敗戦から1ヶ月後の9月15日付朝日新聞は鳩山一郎の「“正義は力なり”を標榜する米国である以上、原子爆弾の使用や無辜の国民殺傷が病院船攻撃や毒ガス使用以上の国際法違反、戦争犯罪であることを否むことは出来ぬであらう」という談話を掲載した。更に17日付で米兵の犯罪を批判する記事を載せた。これがGHQの逆鱗に触れ、朝日新聞は48時間の発行停止処分を受ける。これ以降、朝日新聞はGHQに額(ぬか)づく言論機関に成り下がった。鳩山は間もなく首相になる身でありながら公職追放となる。その鳩山の孫が東京裁判史観に毒されているのだから空いた口が塞がらない。

 本論に先立って、従軍慰安婦問題などの教科書問題がマスコミに現われ、決着がつけられるときのパターンを見ておこう。

 そのパターンとは――。
 反日的日本人が騒ぐ→マスコミが騒ぎを拡大する→これを奇貨(きか)として外国が干渉してくる→日本政府が内政干渉に屈する
 いつでもいつも、このパターンになって、定着してしまったのである。パターンが定着し、模型化したことだけ見ても、裏には必ず計画性のあることが見えてくるであろう。
 いくら戦慄しても足りないほどの恐ろしいことは、これが、「反日史観が新たに製造され人々に定着するプロセス」(藤岡信勝「反日史観はこうしてつくられる」――『サンサーラ』平成8年11月号)だからである。

 これは武田邦彦も常に指摘している。売国奴ならぬ亡国奴といってよい。反天皇制を正面から説くのではなく、裏から手を回して体制転覆を目論む左翼的な謀略である。




 貧富の差が激しいとどうなるか。自発的に「慰安婦」になる人びとが出現する。当時、売春は合法であったし、「慰安婦」は儲かる商売だった。『関東軍女子特殊軍属服務規程』によると、「女子特殊軍属」すなわち慰安婦の月給は、信じがたいことに800円であった。当時の巡査の初任給が45円、陸海軍の大将の月給が550円だから、破格の高給である。3年間、働けば、警察官が一生働いても買えない家が60軒近くも買えた(当時、500円あれば家が買えた)。

 無論、慰安婦が一律に高給取りだったとは思わないが、それでも性奴隷(セックス・スレイブ)でなかったことは明らかだろう。朝鮮半島にはキーセンという芸者のような文化もあった。

 それにしても70年以上も昔の戦争犯罪を糾弾されてオロオロする政府は日本以外に存在するのだろうか? イギリスが旧植民に謝罪したことは一度もない。アメリカに至っては原爆投下も謝っていないし、ベトナム戦争についても同様だ。日本と同じく第二次世界大戦で敗れたドイツは全てをナチスのせいにして国民の罪は棚上げしている。

 日本に対する歴史戦の手引きをする左翼勢力は国家反逆罪で裁くべきだろう。

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小室 直樹
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冬は扇風機よりもサーキュレーター


加湿器代わりの霧吹き

 ・冬は扇風機よりもサーキュレーター

注意喚起:冬季ハクキンカイロ依存症候群

 サーキュレーターなる物を最近知った。とある会社の事務所で初めて見た。小型の扇風機で暖房費を節約しようと思い、あちこち調べていたところ扇風機ではなくサーキュレーターだったというわけ。羽根が回転するのは同じ仕組みなのだが扇風機よりも直線的な風が吹くらしい。冬は天井に向け、夏は床と水平に向けて使う。部屋干し用には首振りタイプがいいようだが、アイリス製は音がうるさいというamazonレビューがあった。思ったよりも大きくて男性の掌(てのひら)ほど。音は「静音」に設定すればさほど気にならない。ま、天井にシーリングファンを付けることを考えれば2000円は安いものだろう。

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いわゆる従軍慰安婦問題を焚き付けた朝日ジャーナル/『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹


『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹
『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
『小室直樹の資本主義原論』小室直樹

 ・いわゆる従軍慰安婦問題を焚き付けた朝日ジャーナル
 ・従軍慰安婦は破格の高給だった
 ・伊藤博文の慧眼~憲法と天皇

『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹
『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹
『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹
『数学嫌いな人のための数学 数学原論』小室直樹
『日本人のための憲法原論』小室直樹

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 予兆!
 この年(平成元年=1989年)、あたかも昭和天皇が神去(かみさ)りまつるを待ち構えていたかのように、日本破滅の予兆が兆(きざ)したのであった。
 この年、忌(い)まわしき「従軍慰安婦問題」が日本人から持ち出された。この年、「朝日ジャーナル」に、「日本国は朝鮮と朝鮮人に公式陳謝せよ」との意見広告が、半年間にわたって掲載された。はじめは、これほどの大事件に発展すると思った人は鮮(すくな)かったろう。しかし、ここに濫觴(らんしょう)を発した(始まった)「従軍慰安婦問題」は、渓流となり、川となり、河となり、ついに滔々(とうとう)たる大河となって全日本を呑みつくそうとしている。
 誰(たれ)か狂瀾(きょうらん/荒れ狂う波)を既倒(きとう)に廻(めぐ)らす(押し返す)者ぞ。

【『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹〈こむろ・なおき〉(クレスト社、1996年ワック出版、2005年/WAC BUNKO、2018年)以下同】

 小室直樹は合理主義の塊(かたまり)みたいな人物で思想による色付けとは無縁な大学匠である。ただし日本人であれば当たり前だが尊皇の情緒を保持している。小室は官に就くか野(や)に在るかも眼中になかった。ただ学問の王道を歩んだ。無職でありながらも東大で小室ゼミを開講した。門下生には橋爪大三郎〈はしづめ・だいさぶろう〉・宮台真司〈みやだい・しんじ〉・副島隆彦〈そえじま・たかひこ〉・大澤真幸〈おおさわ・まさち〉らがいる。

 1979年12月、それまで清貧な学究生活を送っていた小室は、自宅アパートで研究に没頭し栄養失調で倒れているところを門下生に発見され病院に運ばれた。しばらく入院し身体は回復したが自身で入院費用が払えず、友人知人のカンパで費用を支払い、小室の才能を知る友人の渡部喬一弁護士や山本七平などの勧めで本を出版することにし[15]、光文社の用意したホテルにて『ソビエト帝国の崩壊』の執筆にとりかかった。小室の奇行ぶりには、担当者も少々辟易したようであるが、出来上がった原稿は想像以上の価値があった。1980年、光文社から初の一般向け著作である『ソビエト帝国の崩壊 瀕死のクマが世界であがく』(光文社カッパ、のち文庫)が刊行されベストセラーになり、評論家として認知されるようになる。この本のなかで小室は、ソ連における官僚制、マルクス主義が宗教であり、ユダヤ教に非常に似ていること、1956年のスターリン批判によってソ連国民が急性アノミー(無規制状態)に陥ったことなどをこれまでの学問研究を踏まえて指摘し、またスイスの民間防衛にならい日本も民間防衛を周知させることなどを訴えた。そしてこの本の「予言」通り、1991年にソ連崩壊となる。
『ソビエト帝国の崩壊』の出版から続編『ソビエト帝国の最期 "予定調和説"の恐るべき真実』(1984年、光文社)など十数年間にわたって光文社のカッパビジネス、カッパブックスより27冊の著作が刊行され、光文社にとって小室の著作群はドル箱になった。光文社以外にも徳間書店、文藝春秋、祥伝社などから著作を刊行、こうした著作活動の成功により経済的安定を得ることができた。ベストセラーを書くまでの主な収入は家庭教師で、受験生のほか、大学の研究者(教授など)まで教えていた。

Wikipedia

 その小室が渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉、谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉らと共に保守論客として立ち上がった。彼らの言論活動が「新しい歴史教科書をつくる会」(1996年)の呼び水となった。

『朝日ジャーナル』の意見広告がいわゆる従軍慰安婦問題の導火線となった事実を私は知らなかった。こういう具体的な事実が大事である。リアルタイムで問題意識を持っていなければ見落としてしまう。因みに1989年の編集長は伊藤正孝1987年4月-1990年5月)である。筑紫哲也〈ちくし・てつや〉の後任だ。『朝日ジャーナル』は1992年、廃刊に追い込まれるが、その衣鉢(いはつ)を継いだのが『週刊金曜日』(1993年創刊)である。本年9月にあろうことか「従軍慰安婦問題」の火付け役をした植村隆が社長に就任した(社長交代について | 週刊金曜日からのおしらせ)。放火魔に火炎放射器を与えるような印象を受けるのは私だけであろうか。

 誇りを失った国家・民族は必ず滅亡する――これ、世界史の鉄則である。この鉄則を知るや知らずや、戦後日本の教育は、日本の歴史を汚辱(おじょく)の歴史であるとし、これに対する誇りを鏖殺(おうさつ)することに狂奔(きょうほん)してきた。
 その狂乱が極限に達したのが、「従軍慰安婦問題」である。

 面倒なことだが従軍慰安婦問題にはカギ括弧や「いわゆる」を付ける必要がある。そうでないと従軍慰安婦という問題の存在を認めることになるからだ。一旦広まった嘘はかくもややこしくなる。反天皇制という思想は理解できる。だが、国家体制転覆のために自分たちの父祖を貶(おとし)める行為が理解に苦しむ。到底日本人の共感を得るとは思えない。それをやってしまうところに左翼の人格的な異常さがある。

「従軍慰安婦」問題が全教科書に登場することにあった最大の原因は、この平成5年8月4日、当時の内閣官房長官・河野洋平(こうのようへい)が、まったく根拠がないのに「慰安婦関係調査結果発表に関する内閣官房長官談話」を発表したことに始まる。
 河野長官はこの日、慰安婦の募集について「官憲等は直接、これに加担したこともあったことが明らかになった」と述べ、「心からのお詫びと反省の気持ちを申し上げる」と公式に謝罪したのである。しかし、「明らかになった」というのはどういう事実なのか、何一つ示されていない。

 こうした、史実さえ確認しない謝罪外交がピークに達したのが、平成7年の夏に繰り広げられた“謝罪祭り”である。この戦後50周年の夏、日本は歴史に残る大失敗をした。半世紀以上も前の戦争を「侵略」であると認め、世界中に「謝罪」してしまったのだ。大東亜戦争は「侵略」ではないから、日本国は「謝罪」しないと主張した政治家は一人としてなく、そう論じた新聞は一紙としてなかった。後世(こうせい)の史家の嘆(なげ)くまいことか。
 細川内閣から、日本政府は何かと言われると(いや、何も言われなくても)、すぐに謝るクセがついてしまった。条件反射的にペコリとする「謝り人形」になってしまった。日本は侵略したから謝ります。日本の歴史は罪の歴史である、日本は過去に悪いことばかりしてきた、だから何がなんでも誤ってしまえ……。
 この無条件謝罪主義が極限に達したのが村山内閣である。

 野(や)に下った自民党が権力を奪取するために多少の行き過ぎには目をつぶったということなのだろう。清濁併せ呑む自民党らしさが良くも悪くも現在の日本を象(かたど)っている。自民党の親中派は媚中派に成り下がって国益を毀損している。たぶん女とカネで籠絡(ろうらく)される政治家が多いのだろう。

 20年以上前に書かれた本だが今こそ読まれるべきである。

加湿器代わりの霧吹き


 ・加湿器代わりの霧吹き

冬は扇風機よりもサーキュレーター
注意喚起:冬季ハクキンカイロ依存症候群

 加湿器は電気代が掛かり、カビが発生するリスクもある。冬に部屋の湿度を上げる方法としては、沸騰させたヤカンの蓋を開けておくのがよく知られているが、他には水を貯めたバケツや洗面器を置いておく、洗濯物を干す、濡らしたタオルをハンガーに吊るしておく、などがある。

 介護関係の仕事をしている人物から「霧吹きだけでも全然違う」と教えられた。私の頭で電灯がともった。1時間ほど検索しまくって辿り着いたのがこれだ。実にいい。文句なしだ。普通の霧吹きよりずっと細かいミストが3秒ほど吐き出される。何度やっても面白い。髪型を整える際にも使えそうだ。

 一つだと1000円するので二つ買って一つを友人に売ればよろしい。

2018-11-20

通貨リセットとゴールドの役割/『金価格は6倍になる いますぐ金(ゴールド)を買いなさい』ジェームズ・リカーズ


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ
『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ

 ・通貨リセットとゴールドの役割

必読書リスト その二

 強大な勝者――世界のゴールドパワーの本当の中心――は、ユーロ圏を構成し、ユーロを発行している19ヵ国である。これらの国が持っている金の対GDP比は4パーセントを超えている。アメリカの比率は約1.7パーセントだ。興味深いことに、ロシアの比率は約2.7パーセントである。ロシアはアメリカの8分の1強の金を保有しているが、経済の規模はアメリカ経済の8分の1にすぎないので、比率が高いのだ。ロシアは金の取得を進めている国のひとつであり、ユーロ圏と対等になろうとしているように思われる。日本、カナダ、イギリスは経済大国だが、金の対GDP比はきわめて低く、3ヵ国とも1パーセント未満である。(中略)
 中国は、ロシアと同じく、アメリカやヨーロッパと同等の比率になるように金の取得を進めている。通貨制度が崩壊した場合、金の対GDP比はきわめて重要だ。どのような通貨リセットをおこなうにしても、それが基礎になり、新しい「ゲームのルール」になるからだ。
 通貨リセットをする際は、すでに説明したように、諸国が集まって交渉することになる。その会議はポーカーゲームのようなものだ。ポーカーテーブルにつくときは、チップをたくさん持っていたい。金はこの状況でポーカーチップの働きをするのである。これは世界が自動的に金本位制に移行するということではない。交渉の席での発言権が、金をどれだけ持っているかで決まるということだ。

【『金価格は6倍になる いますぐ金(ゴールド)を買いなさい』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2016年)】

 いつでも頭のいい人に接することができる。これが読書の利点である。もちろん読んだだけで自分の頭がよくなることはない。大事なことは思考の構造をトレースできるところにある。自分の頭の枠組みを広げるまではいかなくとも歪めるくらいはできる。

「通貨リセット」とはドル基軸体制の崩壊を意味する。ま、ドル本位制と言い換えてもよろしい。

アメリカに「対外貿易」は存在しない/『ボーダレス・ワールド』大前研一

 アメリカ人の借金体質(クレジットカードの最大限活用)とドルの汎用性が第二次世界大戦後の世界経済を支えてきた。イラクのサダム・フセイン大統領がユーロによる原油決済を認めて結局アメリカに殺された。ドルに翳(かげ)りが見えたのは2008年のリーマン・ショックだ。後になって振り返ればこれこそがドル崩壊の兆候であったと位置づけられることだろう。

 本書のタイトルは極めて安直で低俗だが内容に瑕疵(かし)は見当たらない。ただし、ゴールド現物を購入するのは少し早いだろう。12月から株価は上昇し、明年初頭で一旦大幅調整し、その後本格的な上げ相場になると考えている。紙(株、債券)が上がればコモディティ(商品)は下がる。そこを拾うのが賢いやり方だ。

 尚、本書ではSDR(特別引出権)の詳しい解説があり、マネーの新しい形を明示している。

金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい
ジェームズ・リカーズ
朝日新聞出版 (2016-12-07)
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カルロス・ゴーンと青い鳥/『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆


『我が心はICにあらず』小田嶋隆
『安全太郎の夜』小田嶋隆
『パソコンゲーマーは眠らない』小田嶋隆
『山手線膝栗毛』小田嶋隆
『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆
『コンピュータ妄語録』小田嶋隆
『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆
『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆
『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆

 ・襲い掛かる駄洒落の嵐
 ・カルロス・ゴーンと青い鳥

『イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆
『テレビ標本箱』小田嶋隆
『テレビ救急箱』小田嶋隆

 つまり、チルチルとミチルがお家の中で遊んでいると、ふらんすからごーんという名前のおじさんがやってきて、青い鳥を焼き鳥にして食ってしまうのである。
 この場合、青い鳥は何の象徴だろう?
 ブルーバード?
 ははは。違うね。
 ブルーカラーに決まってるだろ。

【『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆(BNN、2003年)】

 カルロス・ゴーンは青い鳥をたらふく食った挙げ句に勘定を誤魔化していたようだ。コストカッターが自分の税金もカットしていた模様である。

 社員の首を切りまくり、工場の土地を売りまくり、経費を節減することで利益を出したゴーン社長をマスコミは手放しで称賛した。私は「フン、まるでマッカーサーだな」と業を煮やした。

 ゴーンが行ったことは地域に根差した日産ファンや日産文化の破壊であった。それまでは経営者の禁じ手であった人員整理が以後当たり前の経営手法に格上げされた。派遣社員も企業側の要望から適用業種が拡大された。富国の要であった経済が今度は国を亡ぼそうとしている。まるで癌細胞だ。癌は人体と共生することを拒んで人体と共に亡ぶ。

 ヨーロッパには「ノブレル・オブリージュ」(高貴なる者の義務)という観念があり、昔の戦争では貴族が先頭に立って出撃した。現代の高貴なる者は納税の義務すら回避しようと節税対策に余念がない。

かくかく私価時価―無資本主義商品論1997‐2003
小田嶋 隆
ビー・エヌ・エヌ新社
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2018-11-18

シリーズ中唯一の駄作/『疑心 隠蔽捜査3』今野敏


『隠蔽捜査』今野敏
『果断 隠蔽捜査2』今野敏

 ・シリーズ中唯一の駄作

『初陣 隠蔽捜査3.5』今野敏
・『転迷 隠蔽捜査4』今野敏
・『宰領 隠蔽捜査5』今野敏
・『自覚 隠蔽捜査5.5』今野敏
・『去就 隠蔽捜査6』今野敏
・『棲月 隠蔽捜査7』今野敏

 まったく、恋愛というやつは理解に苦しむ。いや、恋愛感情を否定するわけではない。男女の関係にルールやしきたりがあるような風潮が理解できないのだ。
 もっと理解できないのが、あたかもこの世で一番大切なものが恋愛であるかのようなテレビドラマや映画が人気を博していることだ。世間の人々の関心事が恋愛なのではないかと思えてしまう。
 実際にそうなのかもしれない。
 そんな国は滅ぶ。竜崎は、本気でそう考えていた。(中略)
 思う人に思われない。いわゆる片思いというのが、恋の悩みの大部分を占めるのだろうが、恋愛に限らず人生うまくいかないのが当たり前だ。大人ならそれくらいのことは充分に認識できるはずだ。
 昨今、交際を断られたことが動機となる若者の凶悪犯罪が目立つ。社会的なトレーニングの欠如だろうと、竜崎は思う。
 断られることなで、長い人生においてはどうということはないのだ。だが、それを受け容(い)れることができずに、感情的になって犯行に及ぶのだろう。
 交際を断られたから、刺し殺した。
 無視されたから、殺した。
 振り向いてもらえなかったから、猟銃で撃ち殺した……。
 枚挙にいとまがない。
 こうした犯罪の一因として、恋愛至上主義ともいえる昨今の風潮があるかもしれない。

【『疑心 隠蔽捜査3』今野敏〈こんの・びん〉(新潮社、2009年/新潮文庫、2012年)】

 その竜崎が生まれて初めて恋を経験する。ありきたりの展開は若い読者に向けたサービス精神の現れか。終始、感情移入することができなかった。堅物のキャリ官僚も一皮むけば普通の人間と変わらなかった、という話のどこが面白いのだろう? 中学生でも思いつくプロットだ。

 ただしシリーズ物としての意味がないこともない。隠蔽捜査シリーズの「.5」は短篇集なのだが、新しいストーリーに発展させているところはさすがである。

 恋愛至上主義は歌に始まる。思春期であればまだしも、年老いた演歌歌手までが男と女の心の綾を熱唱する。他に歌うものがないのだろうか? ないんだな、これが(笑)。俳句の伝統を思えばもっと自然や風景を歌うべきだし、社会風刺や流行、科学や技術革新、労働と生活、友情や信頼関係などが歌われるべきだ。「野球部に入っていると爪水虫になりやすいぞ」なんていう歌があったら俺は水虫にならなくて済んだのに。料理や算数の歌だってもっとあっていいはずだ。大体、相対性理論や量子力学が歌われていない現実がおかしいのだ。

 私の親友が恋の悩みを先輩に打ち明けた。「本当に相手のことを大切に思っているのか? そして結婚まで考えているのか?」と先輩は訊(き)いた。「はい」と応じると先輩は答えた。「君の気持ちが純粋なことはよくわかった。恋愛感情というのは時に美しく感じられるものだが本当は違う。我々男たちが最終的に考えているのは『やりたい』ってだけのことなんだ。その欲望をよく見極めて行動するように」と。

 恋愛とは優れた遺伝子を探す本能に基づく条件反射だ。美男美女(『なぜ美人ばかりが得をするのか』ナンシー・エトコフ)に衆目が集まるのは、遺伝情報が顔に現れやすいためだ。均整のとれた体型も同様である。更に家柄・学歴は社会で生きてゆく上でのメリットであるが、基本的には子孫の生存率が高まることを意味する。人類の歩みを振り返れば男性の優位性は暴力・体力→政治力→財力とシフトしてきているように見える。政治力・財力は知力と置き換えてもよい。要は「他人からいかに奪うか」というのが男の本領であろう。

 自分に最適な遺伝子を見つける方法は案外簡単である。それは体臭だ。相手の体臭を「いい匂い」と感じれば、それが最もタイプの遠い遺伝子を示しており、自分の遺伝子と掛け合わせることで強い子供が生まれるという寸法だ。整形手術で顔は誤魔化せても体臭は変えようがない。

 ここで最大の疑問が生じる。なぜ人類は進化しているように見えないのだろう? 実に不思議なことだ。

 恋愛至上主義は自分が大切にされてこなかったことに対する反動だ。高度成長期にフォークやニューミュージックが一世を風靡(ふうび)したのも偶然ではあるまい。生活の豊かさが愛情を枯渇させたのだ。大事にされた経験が人の目方の中心を成す。軸の弱い人は風に翻弄されやすい。他人の視線や顔色を窺いながら自分の人生を見失ってゆく羽目に陥る。

「いのち短し 恋せよ乙女/あかき唇 あせぬ間に/熱き血潮の 冷えぬ間に/明日の月日は ないものを」(『ゴンドラの歌』大正4年〈1915年〉)――ま、「若いうちに子供を産め」って歌だわな。


2018-11-17

読み始める

日米開戦 (太平洋戦争への道―開戦外交史)

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帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い
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2018-11-15

ありきたりの光景/『ベトナム戦記』開高健


 ・ありきたりの光景

『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン
『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タース

 短い叫びが暗がりを走った。立テ(ママ)膝をした10人のベトナム人の憲兵が10挺のライフル銃で一人の子供を射った。子供はガクリと膝を折った。胸、腹、腿にいくつもの黒い、小さな小さな穴があいた。銃弾は肉を回転してえぐる。射入口は小さいが射出口はバラの花のようにひらくのである。やがて鮮血が穴から流れだし、小川のように腿を浸した。肉も精神もおそらくこの瞬間に死んだのであろう。しかし衝撃による反射がまだのこっていた。少年はうなだれたままゆっくりと首を右、左にふった。
「だめだ。だめだ。まだだめだ」
 そうつぶやいているように見える動作だった。将校が近づき、回転式拳銃をぬいて、こめかみに1発“クー・ド・グラース”(慈悲〈とどめ〉の一撃)を射ちこんだ。少年は崩れ、うごかなくなった。鮮血がほとばしってやせた頬と首を浸した。
 銃音がとどろいたとき、私のなかの何かが粉砕された。膝がふるえ、熱い汗が全身を浸し、むかむかと吐気がこみあげた。たっていられなかったので、よろよろと歩いて足をたしかめた。もしこの少年が逮捕されていなければ彼の運んでいた地雷と手榴弾はかならず人を殺す。5人か10人かは知らぬ。アメリカ兵を殺すかもしれず、ベトナム兵を殺すかもしれぬ。もし少年をメコン・デルタかジャングルにつれだし、マシン・ガンを持たせたら、彼は豹のようにかけまわって射殺し、人を殺すであろう。あるいは、ある日、泥のなかで犬のように殺されるであろう。彼の信念を支持するかしないかで、彼は《英雄》にもなれば《殺人鬼》にもなる。それが《戦争》だ。しかし、この広場には、何かしら《絶対の悪》と呼んでよいものがひしめいていた。あとで私はジャングルの戦闘で何人も死者を見ることとなった。ベトナム兵は、何故か、どんな傷をうけても、ひとことも呻かない。まるで神経がないみたいだ。ただびっくりしたように眼をみはるだけである。呻きも、もだえもせず、ピンに刺されたイナゴのように死んでいった。ひっそりと死んでいった。けれど私は鼻さきで目撃しながら、けっして汗もかかねば、吐気も起さなかった。兵、銃、密林、空、風。背後からおそう弾音。まわりではすべてのものがうごいていた。私は《見る》と同時に走らねばならなかった。体力と精神力はことごとく自分一人を防衛することに消費されたのだ。しかし、この広場では、私は《見る》ことだけを強制された。私は軍用トラックのかげに佇む安全な第三者であった。機械のごとく憲兵たちは並び、膝を折り、引金をひいて去った。子供は殺されねばならないようにして殺された。私は目撃者にすぎず、特権者であった。私を圧倒した説明しがたいなにものかはこの儀式化された蛮行を佇んで《見る》よりほかない立場から生れたのだ。安堵が私を粉砕したのだ。私の感じたものが《危機》であるとすると、それは安堵から生れたのだ。広場ではすべてが静止していた。すべてが薄明のなかに静止し、濃縮され、運動といってはただ眼をみはって《見る》ことだけであった。単純さに私は耐えられず、砕かれた。

【『ベトナム戦記』開高健〈かいこう・たけし〉(朝日新聞社、1965年/朝日文庫、1990年)】

 1964年、開高健は朝日新聞社臨時特派員として米軍が本格的に介入するベトナムへ飛んだ。どちらからどちらに頼んだのかはわからない。野次馬根性の強さを思えば開高から頼んだ可能性も高い。東京オリンピックよりはベトナムの方がお似合いだ。

 やはり1965年の本である。しかも戦記というよりは戦争見学雑記といった内容だ。危ない目には遭っているものの、拭い難い気楽さが漂っている。

 当時の戦地であれば処刑の場面はありきたりの光景といってよい。「サイゴンの処刑」(1968年)は世界中で放映された。

 開高健は帰国後、ベ平連に参加するものの、左翼が行う反米闘争にうんざりして脱退する。保守派とは言い難いが常識的なセンスの持ち主だった。ま、元々サントリーの宣伝をやっていたわけだから現実主義者であったのだろう。

「砕かれた」彼はその後どうなったのか? 私が本気で読んだのは『白いページ』くらいなので知る由もない。よもや釣り三昧ではあるまいな。

ベトナム戦記 (朝日文庫)
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白いページ―開高健エッセイ選集 (光文社文庫)
開高 健
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2018-11-13

憲法9条に対する吉田茂の変節/『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温


『人種差別から読み解く大東亜戦争』岩田温
『いちばんよくわかる!憲法第9条』西修

 ・憲法9条に対する吉田茂の変節

・『だから、改憲するべきである』岩田温
『日本人のための憲法原論』小室直樹
『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』兵頭二十八
『「日本国憲法」廃棄論 まがいものでない立憲君主制のために』兵頭二十八
『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖
『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦

 当初、憲法第9条は、どのように解釈されていたのかを確認しておこう。
 この問題について考える際、最も参考になるのが、吉田茂総理の国会答弁だ。
 昭和21年6月26日、吉田茂は、憲法と自衛権との関係について次のように答弁している。
「戦争抛棄(ほうき)に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定はして居りませぬが、第9条第2項に於て一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も抛棄したものであります。従来近年の戦争は多く自衛権の名に於て戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争然りであります」(1946年6月26日、衆議院本会議)
 ここで吉田茂は、憲法第9条が直接自衛権を否定しているものではない、との留保をつけながらも、「自衛権の発動としての戦争」まで否定しているのだ。(中略)
 今日では考えられないことかもしれないが、こうした吉田茂の自衛権を否定する発言に対して、批判したのが日本共産党だ。日本共産党の野坂参三が、「侵略戦争」と「自衛戦争」を区別し、後者を擁護したうえで、次のように指摘した。
「戦争には我々の考えでは二つの種類の戦争がある、二つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争である。(中略)他国征服、侵略の戦争である。是は正しくない。同時に侵略された国が自由を護るための戦争は、我々は正しい戦争と云って差支えないと思う(中略)一体此の憲法草案に戦争一般抛棄と云う形でなしに、我々は之を侵略戦争の抛棄、斯(こ)うするのがもっとも的確ではないか」(1946年6月28日、衆議院本会議)
 日本共産党の野坂は、祖国を防衛する自衛のための戦争までも放棄する必要はなく、他国を武力によって侵略する「侵略戦争」のみを禁じればよいのではないか、という極めて常識的な指摘をしている。
 これに対して、吉田茂は、次のように応じている。
「戦争抛棄に関する憲法草案の條項に於きまして、国家正当防衛に依る戦争は正当なりとせらるるようであるが、私は斯(か)くの如きことを認むることが有害であると思うのであります(拍手)近年の戦争は多くは国家防衛権の名に於(おい)て行われたることは顕著なる事実であります、(中略)故に正当防衛、国家の防衛権に依(よ)る戦争を認むると云うことは、偶々戦争を誘発する有害な考えであるのみならず、若(も)し平和団体が、国際団体が樹立された場合に於きましては、正当防衛権を認むると云うことそれ自身が有害であると思うのであります、御意見の如きは有害無益の議論と私は考えます」

【『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温〈いわた・あつし〉(並木書房、2015年)以下同】

 多くの書籍で引用されている会議録だがまだまだ知らない人が多いと思われるので資料として記録しておく。吉田発言は芦田修正を完全に無視した暴言で、日本の政治が気分によって動く様相をありありと映し出す。敗戦からまだ1年を経てない時期ゆえ、戦争に対する嫌悪感は理解できるが、床屋のオヤジが言うならまだしも一国の総理が議会で説くような内容ではあるまい。原理原則を軽んじ、本音と建前を器用に使い分ける国民性を恥じるべきだ。

「私は一つの含蓄をもってこの修正を提案したのであります。『前項の目的を達するため』を挿入することによって原案では無条件に戦力を保持しないとあったものが一定の条件の下に武力を持たないということになります。日本は無条件に武力を捨てるのではないということは明白であります。そうするとこの修正によって原案は本質的に影響されるのであって、したがって、この修正があっても第9条の内容には変化がないという議論は明らかに誤りであります」

芦田均の証言:昭和32(1957)年12月5日、内閣に設けられた憲法調査会

日米安保条約と吉田茂の思惑/『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行

 しかし、こうした吉田の「自衛」を放棄するという主張は、戦後日本の一貫した国防方針とはならなかった。
 こうした国防方針を否定することになったのは国際情勢が激変したことによる。冷戦の激化にともない、日本の再軍備が必要だとアメリカが考え始めたのだ。
 1950年の元旦、マッカーサーが「日本国民に告げる声明」において、次のように指摘した。
「この憲法の規定は、たとえどのような理屈をならべようとも、相手側から仕掛けてきた攻撃に対する自己防衛の冒しがたい権利を全然否定したものとは絶対に解釈できない」
 これは、極めて重大な指摘だ。憲法の規定について、従来、吉田茂は、自衛戦争も否定する旨の発言を繰り返してきた。だが、マッカーサーが日本国憲法には、「自己防衛の冒しがたい権利」を否定したものではないと強調したのだ。
 これは、明らかに、日本の再軍備を念頭に置いたものであり、このマッカーサー発言以降、吉田茂の「自衛」論も変化を遂げることになる。

 1952(昭和27)年4月28日まで日本はGHQの占領下にあった。このため憲法制定も憲法解釈も自主的に行うことができなかった。占領下の憲法は廃棄すべきであるとの主張には一定の説得力がある。押し付け憲法論の最右翼で「青年将校」の異名を取った中曽根康弘は衆議院5期目の時に「この憲法のある限り 無条件降伏つづくなり/マック憲法守れるは マ元帥の下僕なり」と歌った(「憲法改正の歌」1956年)。



 国民は食べることに必死だった。政治家は経済発展を何よりも優先した。やがて高度経済成長を迎えた。そして国家を見失った。飽食の時代に至り、バブル景気が弾けた時、長く続いた平和が精神を蝕んできたことにようやく気づいた。

 中国が領空・領海侵犯を繰り返し、沖縄に魔手を伸ばす現実がありながらも、「平和憲法擁護」を叫ぶ人々がまだ存在する。平和の美酒は甘く、薫り高い。アメリカの核の傘の下で目覚めることのない酔いに浸(ひた)るのは無責任な快楽主義といってよい。

平和の敵 偽りの立憲主義
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無意識に届かぬ言葉/『精神のあとをたずねて』竹山道雄


『昭和の精神史』竹山道雄
『竹山道雄と昭和の時代』平川祐弘
『見て,感じて,考える』竹山道雄
『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘編
『剣と十字架 ドイツの旅より』竹山道雄
『ビルマの竪琴』竹山道雄
『竹山道雄評論集 乱世の中から』竹山道雄
『歴史的意識について』竹山道雄
『主役としての近代 竹山道雄セレクションIV』竹山道雄:平川祐弘

 ・無意識に届かぬ言葉

『時流に反して』竹山道雄
『みじかい命』竹山道雄

竹山道雄著作リスト

     目 次

 あしおと
 思い出
 抵抗と妥協
 誘われたがっている女
「ビルマの竪琴」ができるまで
 二十歳のエチュード
 文章と言葉
 砧
 ベナレスのほとり
 印度の仏跡をたずねて

  あとがき



 どういうわけか、われわれの記憶の中では、生活の中のふとした瑣末(さまつ)なことが静かな印象になって刻みこまれて、それが年を経ると共にますますはっきりとしてきます。それが生涯のあちらこちらに散らばって、モザイクの石のように浮きだしています。あるとき見た、とくに何ということのない風景のたたずまい、人が立っている様子、話している相手の顔にちらとさした翳(かげ)、「ああ、この人は自分を愛している」とか「裏切っている」とか思いながらそのままに消えてしまう感情のもつれ……。こんなものがわれわれの心の底に沈んで巣くっているのですが、それを他人につたえようはありません。他人に話すことができるのは、もっとまとまった筋のたった事件ですが、それは理屈をまぜて整理し構成したものです。そういうものでないと、われわれは言いたいことも言えないのです。

【『精神のあとをたずねて』竹山道雄(実業之日本社、1955年)】

「無意識」の一言をかくも豊かに綴る文学性がしなやかな動きで心に迫ってくる。難しい言葉は一つもない。押しつけや説得も見当たらない。ただ淡々と心の中に流れる川を見つめているような文章である。

 言葉は無意識領域に届かないのだ。ここに近代合理性の陥穽(かんせい)がある。人間には「理窟ではわかるが心がそれを認めない」といった情況が珍しくない。特に我々日本人は理窟を軽んじて事実や現状に引っ張られる傾向が強い。形而上学(哲学)が発達しなかったのもそのためだろう。大人が若者に対して「理窟を言うな」と叱ることが昔はよくあった。

「構成」というキーワードが光を放っている。睡眠中に見る夢はことごとく断片情報に過ぎないが、これらを目が覚めてから構成して一つの物語を形成する。ところが竹山の指摘は我々の日常や人生全般が「印象に基づいた構成である」ことを示すものだ。記憶は歪み、自分を偽る。感情は細部に宿り、一つの事実が人の数だけ異なるストーリーを生んでゆくのだ。

 ここで私の持論が頭をもたげる。「悟りを言葉にすることは可能だろうか?」と。「それは理屈をまぜて整理し構成したものです」――教義もまた。だとすれば宗教という宗教がテキストに縛られている姿がいささか滑稽(こっけい)に見えてくる。

 言葉は人類が理解し合うための道具であろう。道具を真理と位置づけて理解し合うことを忘れれば言葉は人々を分断する方向へと走り出すに違いない。宗派性・党派性に基づく言葉を見よ。彼らは相手を貶め、支持者を奪い合うことしか考えていない。かくも言葉は無残になり得る。

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