2016-08-24

アルボムッレ・スマナサーラ、他


 2冊挫折、1冊読了。

知らないと損する給与明細』大村大次郎〈おおむら・だいじろう〉(小学館新書、2016年)/過去の著作と重複する内容が目立つが、賢い奥さんを目指すなら必ず読んでおきたい。税金は多めに徴収されている。

バカの理由(わけ) 役立つ初期仏教法話12』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2011年)/無智の解説。無智とは貪瞋癡の「癡」である。散漫な内容だ。

 129冊目『的中する生き方 役立つ初期仏教法話10』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2009年)/道徳について。十悪の解説も。これはオススメ。「役立つ初期仏教法話」はあと13と14があるのだが読むつもりはない。スマナサーラは印税を一切受け取っていないようだ。その辺の新興宗教とは決定的に違う。

2016-08-23

東京五輪セレモニー


海外「とことん日本だった!」 五輪閉会式の日本の演出に海外から大絶賛の嵐
東京五輪のPR動画に海外も大興奮(海外の反応)
安倍マリオの海外の反応「東京五輪に行く気になった」「閉会式で最高の瞬間」
海外「リーダーの差!」リオ五輪閉会式、東京へ繋いだ日本のパフォーマンスに世界が大興奮
安倍マリオ、海外の人たちが大喜び「こんなすごい光景見たことない」【リオオリンピック】

武田邦彦、小室直樹、伊藤貫、佐々淳行、他


 14冊挫折、6冊読了。

私を通りすぎたマドンナたち』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(文藝春秋、2015年)/『政治家たち』と比べると内容が格段に劣る。

ソトニ 警視庁公安部外事二課 シリーズ1 背乗り』竹内明(講談社+α文庫、2015年)/登場人物の名前が陳腐すぎて、まるで漫画みたいだ。そのセンスのなさに落胆。

ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』おおたとしまさ(幻冬舎新書、2016年)/サピックス小学部と鉄緑会という私塾が日本の頭脳を担っているらしい。学歴ではなく塾歴の光と闇。

「慰安婦」問題とは何だったのか メディア・NGO・政府の功罪』大沼保昭(中公新書、2007年)/姿勢のいい左翼か。アジア女性基金の理事という立場が主張をわかりにくくしていると思う。

オウム的!』小林よしのり、竹内義和(ファングス、1995年)/小林の古い作品は読めた代物ではない。単なる放談。

歴史問題は解決しない 日本がこれからも敗戦国でありつづける理由』倉山満(PHP研究所、2014年)/文体が肌に合わず。

無援の抒情』道浦母都子〈みちうら・もとこ〉(雁書館、1980/同時代ライブラリー、1990年/ながらみ書房新装版、2015年)/飛ばしながら半分ほど読む。私が唾棄する全共闘運動の歌集である。知っている歌を確認するために読んだ。どのような世界であれ「生きる現実」がある。主義主張は異なれど共通する感情が通う。青春とは錯誤の異名であろう。そして歳月が錯誤を正すと純粋さが失われる。

日本史の謎は「地形」で解ける』竹村公太郎〈たけむら・こうたろう〉(PHP文庫、2013年)/竹村は国土交通省河川局長を務めた人物。狙いはいいのだが、思いつきのレベルに感じる。

日本文明の謎を解く 21世紀を考えるヒント』竹村公太郎〈たけむら・こうたろう〉(清流出版、2003年)/第12章「気象が決める気性」だけ読む。気象変化が激しいために日本人は原則を立てられなかった、という指摘が斬新だ。

いますぐ読みたい 日本共産党の謎』篠原常一郎〈しのはら・じょういちろう〉、筆坂秀世〈ふでさか・ひでよ〉監修(徳間書店、2009年)/佐藤優が寄稿している。内容も文章も中途半端。創価学会に関する記述が目を惹いた。

ともしび 被災者から見た被災地の記録』シュープレス編著(小学館、2011年)/「悲しい思い出」を読むのは無駄だと思う。津波てんでんこの言い出しっぺである山下文男が逃げなかったという話には大笑い。いかにも左翼らしい。

ペリリュー島玉砕戦 南海の小島七十日の血戦』舩坂弘〈ふなさか・ひろし〉(光人社NF文庫、2010年)/文章が冗長なのか、頭に入らず。

ニッポン核武装再論』兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉(並木書房、2008年)/専門性が高すぎて読み物としては微妙だ。概念と技術を立て分けて書くべきだと思う。文体に臭みがあって読みにくい。

日本人が知らない軍事学の常識』兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉(草思社、2012年/草思社文庫、2014年)/やはり文章が肌に合わない。気取りやポーズがある。

 123冊目『彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(幻冬舎、2011年)/民主党政権批判の書。一々説得力がある。

 124冊目『ほんとに、彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(幻冬舎、2011年)/こちらは東日本大震災直後に書かれたもの。記憶を確認するためにも読まれてしかるべきだ。

 125冊目『私を通りすぎた政治家たち』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(文藝春秋、2014年)/いやはや面白かった。佐々の祖父は幕末の志士で後に衆議員となる。父は参議員を務めた。石原慎太郎を持ち上げすぎるきらいがあるが、きちんと根拠を述べている。加藤紘一に事務次官の道を断たれたことも赤裸々に綴る。佐々は武士道の流れを汲む最後の世代か。

 126冊目『自滅するアメリカ帝国 日本よ、独立せよ』伊藤貫〈いとう・かん〉(文春新書、2012年)/アメリカの保守層を中心とした要人の発言集といった感がある。確かに自滅しそうだが、その経路は書かれていない。内容は文句なしだが、やや感情の異常さが窺える。「(笑)」はともかく、「(苦笑)」との表記は文筆家として問題がある。しかも苦笑できる内容ではない。伊藤の話し方には妙に甘ったるいところがあり、永六輔のような寄りかかった姿勢を感じる。悪い意味での言文一致といったところか。

 127冊目『天皇畏るべし 日本の夜明け、天皇は神であった』小室直樹(ビジネス社、2016年/文藝春秋、1986年『天皇恐るべし 誰も考えなかった日本の不思議』改題、脚註加筆)/天才というべきか、奇才とするべきか。一番相応しいのは鬼才かもしれぬ。小室の力と技は日本人離れしている。「天皇とはキリスト教的神である」と断言するまでに用意周到な根拠を列挙する。ユダヤ教、キリスト教、仏教、儒教、教育勅語、そして栗山潜鋒の『保建大記』。全く関係ないのだが私は本書を読んで、日蓮の『立正安国論』が仏儒習合であることがわかった。崇徳天皇の呪いが末法思想に影響を及ぼした可能性もある。

 128冊目『武田教授の眠れない講義 「正しい」とは何か?』武田邦彦(小学館、2013年)/インターネット放送を編んだためか、やや散漫に流れてはいるが十分お釣りがくる内容だ。正しいとは、自分とは別の正しさを知ることである。

2016-08-19

エル・システマとグスターボ・ドゥダメル


 近接格闘術のシステマを検索していたところ、「エル・システマ」を知った。

 ベネズエラで行われている公的融資による音楽教育プログラムの有志組織であり、1975年に経済学者で音楽家のホセ・アントニオ・アブレウ博士によって「音楽の社会運動」の名の下で設立された。

Wikipedia

 あのグスターボ・ドゥダメルもエル・システマ出身だという。ドゥダメルの名を一躍有名にした「マンボ」はシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(25歳以上の青年)の演奏である。クラシック音楽と縁のない人でも十分楽しめる。

 貧困は青少年から自信を奪い、ふとしたきっかけで転落することも珍しくない。まして南米の犯罪は銃や麻薬が絡んでくる。ブラジルの映画『シティ・オブ・ゴッド』はストリート・チルドレンの抗争を描いた作品だが実話に基づいている。登場するストリート・チルドレンは全部本物で構成もアドリブ中心だ。


 打ち込める何かがあれば青少年は道を踏み外すことはない。好きなものがあれば自暴自棄になることを避けられる。音楽を通した教育活動は長い目で見れば必ずやベネズエラを精神大国としてゆくことだろう。









魂の教育 エル・システマ ~音楽は世界を変える~ [DVD]

世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ: エル・システマの奇跡エル・システマ―音楽で貧困を救う南米ベネズエラの社会政策貧困社会から生まれた“奇跡の指揮者

2016-08-13

鳥居民、養老孟司、マハーシ長老、藤本靖、藤平光一、林えいだい、山本周五郎、他


 7冊挫折、8冊読了。

絶望と歓喜「親鸞」 仏教の思想10』増谷文雄〈ますたに・ふみお〉、梅原猛(角川書店、1970年/角川文庫ソフィア、1996年)

古仏のまねび「道元」 仏教の思想11』高崎直道、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)

永遠のいのち「日蓮」 仏教の思想12』紀野一義〈きの・かずよし〉、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)/以上でシリーズ全巻終了。初期仏教から鎌倉仏教までを捉える試みはよいと思うが断片的で体系を欠く。梅原の趣味的要素が強いが、1970年前後という時期を思えば、仕事としては評価できる。ただしシリーズ中盤以降の失速は否めない。

友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学』ロビン・ダンバー:藤井留美訳(インターシフト、2011年)/期待外れ。軽妙だが洒脱ではない文体で好き嫌いが分かれる。

呼吸で心を整える』倉橋竜哉(フォレスト2545新書、2016年)/パッとしない。

呼吸法の極意 ゆっくり吐くこと』成瀬雅春(BABジャパン、2005年)/「プラーナ粒子を見る」のところでやめる。神智学会の教義が出てきてびっくりした。

宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ』ジョン・D・バロウ:林一〈はやし・はじめ〉、林大〈はやし・まさる〉訳(青土社、2013年)/100ページほど残してやめた。良書。短いページ数で様々な宇宙論を紹介している。インフレーション・モデルで佐藤勝彦の名前が出てこないのは「やはり」といった印象である。林一・大は親子なのだろうか? 文章が時々おかしくなっている。

 115冊目『松風の門』山本周五郎(新潮文庫、1973年)/表題作と「鼓くらべ」が忘れ難い。それにしてもバラエティに富んだ短篇集である。実験的な作品もある。丸山健二に足りないものが全てあるような気がする。

 116冊目『証言 台湾高砂義勇隊』林えいだい(草風館、1998年)/良書。高砂隊ものでは一番おすすめ。なんと霧社事件の証言も多い。台湾原住民は理蕃政策・皇民化教育で天皇陛下に忠誠を尽くすようになる。高砂義勇隊は正式な部隊ではなく位も軍属であったが、ジャングル戦で縦横無尽に活躍した。彼らがいなければもっと多くの人々が殺戮されたことだろう。まず証言者の名前が胸を打つ。台湾名・日本名・中国名の三つが記載されているのだ。わずか数十年のうちに翻弄されてきた台湾の運命を思わずにはいられなかった。台湾原住民は部族(社)によって言葉が異なるため、日本語は戦後も使われていた。死ぬまで軍歌を口ずさみ、日本の演歌を愛した人々が多かったという。日本で死んだ精神は台湾に生き残った。

 117冊目『氣の呼吸法 全身に酸素を送り治癒力を高める』藤平光一〈とうへい・こういち〉(幻冬舎、2005年/幻冬舎文庫、2008年)/文章がいい。実績も多い。王貞治・高見山・千代の富士といったスポーツ選手が藤平の指導を受けている。呼吸法自体は実に単純で、単純ゆえの難しさがある。呼吸法の概念がよく理解できる。

 118冊目『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖(さくら舎、2012年/講談社+α文庫、2016年)/良書。著者は気づいていないようだがヴィパッサナー瞑想に近い。読むだけだとピンと来ないが実際にやってみるとその効果に驚かされる。耳を引っ張るマッサージもよい。

 119冊目『ミャンマーの瞑想 ウィパッサナー観法』マハーシ長老:ウ・ウィジャナンダー大僧正訳(国際語学社、1995年/アルマット新装版、2011年)/名(みょう)と色(しき)の関係が初めてわかった。一度挫けたのだが意を決して一気に読んだ。少しずつ実践しているのだが直ぐに飽きてしまう(笑)。悟りの段階がきちんと示されていて目標を設定しやすい。気になったのは2点。一つは集中と書いてあるが、「注意」とすべきだろう。もう一つは「――したい」という念はダメだとスマナサーラ長老が書いている。主観ではなく客観で捉えよ、と。

 120冊目『ブッダの集中力 役立つ初期仏教法話9』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/集中とはサマタ瞑想のことである。念仏(ブッダの姿を念じる)という発想には疑問が残る。

 121冊目『養老孟司特別講義 手入れという思想』養老孟司(新潮文庫、2013年/白日社、2002年『手入れ文化と日本』改題)/手入れとは里山理論である。子育て・自然が講演の共通テーマであるが、情報論・宗教論を盛り込んでいるところが凄い。

 122冊目『日米開戦の謎』鳥居民〈とりい・たみ〉(草思社、1992年/草思社文庫、2015年)/評価の難しい本だ。それ相応の知識がなければ鵜呑みにせざるを得ない。「だろう」「はずだ」「違いない」のオンパレードである。ただし、その想像は事実から遠く離れたものではない。鳥居は市井の研究家のようだ。膨大な資料を読み込んで果敢に挑む姿勢には好感が持てる。永野修身〈ながの・おさみ〉を知りたかったのだが、それほど詳しくは書かれていない。徳富蘇峰〈とくとみ・そほう〉が世論に与えた影響の大なるも初めて知った。陸軍と海軍の分裂状態も詳しく描かれている。

2016-08-12

弁護士を信用するな/『証拠調査士は見た! すぐ隣にいる悪辣非道な面々』平塚俊樹


『桶川ストーカー殺人事件 遺言』清水潔

 ・弁護士を信用するな

『実子誘拐ビジネスの闇』池田良子

必読書リスト

 また、これも重要なことだが、弁護士をすぐに信用しないことだ。いまだに日本人はこの職業名に弱いようだが、クズみたいな弁護士が世の中には山ほどいることを知っておいてほしい。
 なにしろ、こやつらの悪さは言語に絶する。私も悪いやつはたくさん見てきたが、この地球上で一番悪いのは、ヤクザでもない、詐欺師でもない、間違いなく(悪辣な)弁護士である。これは仕事でつきあいのある警察幹部や探偵、他の弁護士などとも一致した意見だ。これほど人の心をもてあそんで平気でいられる生き物を私は他に知らない。
 しかも、その目的がただの金だというのだから、その愚劣さは筆舌につくしがたい。やつらの悪さと比較したら暴力団などはまだ善良……なんていうとまたクレームがきそうだが、そう言いたいほど、鬼畜生にも劣る外道だ。断じて許すことはできない。

【『証拠調査士は見た! すぐ隣にいる悪辣非道な面々』平塚俊樹(宝島社、2012年)】

 証拠調査士(エビデンサー)とは「警察や弁護士が手を出せないトラブルの解決に向けて調査をし、証拠を集め、最終的に解決を図る仕事」とのこと。海外ではメジャーな仕事らしい。警察は事件が起こった後でしか動けない。弁護士は正義を証明するわけではない。法律に適っているか違(たが)っているかを争うだけの仕事である。

 その弁護士に悪い連中が蔓延(はびこ)っているという。具体的に触れているのは所謂(いわゆる)「別れさせ屋」という仕事で、会社を経営している資産家の夫とその妻がターゲットである。手口としては会社の乗っ取り・カネ・別居状態で莫大な養育費を請求するなど。で、妻に対してイケメンの弁護士・コンサルタント・医師・ベンチャー企業社長を紹介し肉体関係を持たせる。籠絡(ろうらく)された奥方は引くに引けなくなるという寸法だ。紹介した男は性交渉だけが目的のヤリチン野郎だ。

 弁護士は既に需給関係が逆転し無職弁護士が増加している。法科大学院制度も失敗した。仕事のない弁護士が悪知恵を働かせる構図はいかにもあり得る。法に精通しているがゆえに彼らの悪徳がやくざを凌駕するのも当然だろう。

 本書では証拠調査士が見てきた数々の驚くべき事件が紹介されている。現代社会の危険を知るためにも広く読まれるべき一冊である。



売春に罰則があるのは管理売春のみ/『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』野崎幸助

2016-08-07

「胸に痛みのない心筋梗塞」がある/『臓器の急所 生活習慣と戦う60の健康法則』吉田たかよし


『心臓は語る』南淵明宏

 ・「胸に痛みのない心筋梗塞」がある

『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議』吉田たかよし

必読書リスト その一

【健康で長生きするための秘訣は、安静にしているときにはしっかり心拍数を下げて、心臓と血管に無理をさせないことです。】そのためにとっておきの方法が、「心臓呼吸法」です。心臓のブレーキである迷走神経は、息を吐いているときに活発に働き、心拍数をより強力に下げてくれます。心臓呼吸法はこうした効果を利用して、息をゆっくり長く吐くことによって心拍数を低く保つというものです。【目安としては、10秒間ほどかけて息を吐くのがおすすめです。】
 本当に心拍数が下がっているかどうか、脈を取りながら息を吐いてみるといいでしょう。

【『臓器の急所 生活習慣と戦う60の健康法則』吉田たかよし(角川SSC新書、2009年)以下同】

 知っているようで知らないのが自分である。私が知る自分とは鏡に映った顔や心の反応といった表面に限られる。自分の後ろ姿は見たことがないし、心の奥底に何が潜んでいるかは案外わからぬものだ。時折、腕を横に振ったり、ガニ股で走っている人を見掛けることがある。自分の胸元や足元すら見えていないのだろう。まして体の内側ともなれば、とんと見当がつかない。体を自覚するのは異変を感じた時である。

 私は三十の頃から酒を呑み始め、気がつくと中年太りになっていた。塵も積もれば山となり、不摂生が積もればデブになる。健康に留意するようになったのは最近のことだ。

 知ることは備えることである。体のメカニズムを知れば自ずと生活習慣も変わる。吉田たかよしは東大で量子化学を専攻し、東大大学院で分子細胞生物学を学び、NHKアナウンサーとなる。その後NHKを退職し、北里大学医学部を卒業。加藤紘一元自民党幹事長の公設第一秘書を経て、現在は開業医をしながら東京理科大学客員教授も務める。医学と科学に関してはポスト池上彰になるかもね。中高年は本書を座右に置くべし。

 実際にやってみると直ぐわかるが、息を長く吐くと心拍数が遅くなる。哺乳類の一生は心拍数20億回で共通している(『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』本川達雄、1992年)。ということは、ゆっくりと呼吸をすれば長生きできる計算になる。また、「心臓は“浪”を通じて体中にメッセージを伝えている可能性もある」(『心臓は語る』南淵明宏、2003年)から、ゆっくりと落ち着いたリズムは好ましいと思う。

 これほど、痛みに特徴がある心筋梗塞ですが、大きな例外があります。【心筋梗塞にかかっても4人に1人は胸の痛みがないのです。特に75歳以上の高齢者の場合は、4人に3人が胸に痛みを感じません。】そのため本人は心筋梗塞だと気づかず、手遅れとなって死亡してしまうケースも少なくないのです。
 このような場合に備えて、「胸が痛まない心筋梗塞」に関する知識をぜひとも覚えておいてください。【ポイントは、胸以外の場所が痛むこと。特に、左肩が痛みます。また、左腕、アゴ、それに奥歯が痛いということもあります。】
 心筋梗塞なのに、心臓ではない部分が痛くなるのは不思議に思われるでしょうが、これには理由があります。一言で言えば、脳がだまされるのです。心臓の痛みを伝える神経は、脊髄(せきずい)に入って脳につながっていきますが、この脊髄に入る場所が肩の痛みを伝える神経と近いため、脳は心臓の痛みを肩の痛みと勘違いすることがあるのです。神経が関連している痛みだから、関連痛といいます。

 あな恐ろしや。無知による死といってよい。肉体の痛みですら誤って伝わることがあるのだから、心の痛みはもっと誤謬(ごびゅう)にまみれていることだろう。大病を患(わずら)えば「なぜ私が?」と懊悩する。病気という事実に対して、我々は別の物語を付け加えてしまう。これをブッダは「第二の矢」と名づけた(『ブッダ神々との対話 サンユッタ・ニカーヤI』中村元訳、1986年)。

 体が発するメッセージを正しく受け取るために知っておくべきことは多い。



・・鼻うがい/『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修

嘘で滅びゆくアメリカ/『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
・『プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯

 ・嘘で滅びゆくアメリカ

菅沼光弘

〈「ブッシュ大統領は世界の脅威2位 英紙の世論調査
[ロンドン=本間圭一]ブッシュ米大統領が、北朝鮮の金正日総書記やイランのアフマディネジャド大統領よりも、世界平和の脅威だ――。
 3日付の英紙ガーディアンは、世界の指導者で誰が平和への脅威になっているかに関して聞いた世論調査でこうした結果が出たと1面トップで報じた。
 調査は、英国、カナダ、イスラエル、メキシコの4か国でそれぞれ約1000人を対象に世論調査機関が実施した。
 英国民を対象とした調査によると、最大の脅威とされたのは国際テロ組織アル・カーイダ指導者、ウサマ・ビンラーディンで87%。これに続いてブッシュ大統領が75%で2位につけ、金総書記69%、アフマディネジャド大統領62%を上回った。ビンラーディンは他の3国でもトップとなった。〉(読売新聞2006年11月4日)

「イラク戦争の開戦理由は全部大ウソ」であることを証明した、アメリカ上院報告書は、2006年9月に出されています。そして、2006年11月の世論調査がこれ。
 イギリス、カナダ、イスラエル、メキシコ、つまり親米国家で、75%が「ブッシュは平和の脅威だ!」と認識していた。
 その他の国々では、もっとひどかったことでしょう。
 実際、ブッシュが、「ウソの理由」で、イラク戦争をはじめたことで、アメリカの権威は失墜しました。いえ、「ウソがバレたことで」というべきですね。

【『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2014年)以下同】

 新聞記事冒頭の【「】が閉じていないが原文通りである。記事内のゴシック表記についても脚註がない。そして相変わらず改行が多い。文章の問題はコミュニケーション能力の問題でもある。膨大な余白の量を思えば価格は1500円以下が望ましいと思う。ネット文体で片づけるわけにはいかない。

 ブッシュ大統領やチェイニー副大統領が「イラクは大量破壊兵器を保有している」と繰り返しメディアで訴え、アメリカはイラク攻撃(2003年)に踏み切った。小泉首相が真っ先に手を上げ、「アメリカ支持」を表明したことも記憶に新しい。だがそれは嘘だった。

 イラク戦争の真の目的はドル基軸通貨体制を守るためで、フセイン大統領が始めた石油のユーロ決済を阻止することにあった。本書で初めて知ったのだが、プーチン大統領はロシア産資源の決済通貨をドルからルーブルに変えたという。ジョージ・ソロスの財団がNPO法人を通してカラー革命を支援する理由もこのあたりにあるのだろう。外交の舞台裏で行われている「小さな戦争」を日本人は知らなさすぎる。

 みなさん、以下の事実をご存知でしょうか?

(1)イランは核兵器を開発する意向を一度も示したことがない。
(2)アメリカも数年前まで、イランには「核兵器を開発する意図がない」ことを認めていた
(3)核兵器開発が「戦争」の理由であるなら、真っ先に攻撃されるべきはイランではない。

 イランのアフマディネジャド大統領を最も危険視した人物に佐藤優がいる。ラジオ番組での解説を聴いて、「やはりイスラエルの代弁者か」と落胆した覚えがある。日本という米英情報ピラミッドの中で犬のように振る舞う学者や専門家だけがテレビ出演を許される。民主政が成熟しないのは、新聞・テレビが多様な意見を伝えないことが大きい。

 少しでも世界情勢を知っている人であれば、以下の二つの「絶対的定説」をご存知でしょう?

(1)アメリカがシリア攻撃を検討したのは、アサド大統領の軍が、「化学兵器を使ったから」である。
(2)アサド大統領は、「独裁者で悪」である。反アサド派は、「民主主義社で善」である。

 どうでしょう?
 ほとんどすべての人が、「そのとおりじゃないか!」と思っていることでしょう。
 しかし、この二つの「ウソ」が暴露された。
 少なくとも、「反アサド派」に関する「大ウソ」が世界に明らかにされた。
 それで、アメリカはシリア攻撃できなくなったのです。

 その後、「シリア反体制派がサリンガスを使用した可能性がある」と国連調査委員会が指摘した。更に反アサド派が殺害した政府側軍人の内蔵を食べる映像を公表した。

18禁:動画

 プーチン大統領はアサド政権を支持する。そして反アサド派はイスラム国(ISIS)となって今日に至るまで世界各地でテロを実行している。

 嘘で滅びゆくアメリカを日本は他山の石とすることができるだろうか? 難しいと言わざるを得ない。安全保障に関する情報をアメリカに依存している以上、アメリカが日本をコントロールするのは容易だ。まずは愛国心が否定されない程度の「普通の国家」になることが求められよう。

日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理
北野 幸伯
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2016-08-06

日英同盟を軽んじて日本は孤立/『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯

 ・日英同盟を軽んじて日本は孤立

『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯

菅沼光弘

 第一次世界大戦が始まる時、日本とイギリスは同盟国、イギリスとアメリカは同盟国ではありません。
 つまり、日本とイギリスのほうが、米英よりも近い関係にあった。
 しかし、第一次世界大戦の態度の違いにより、日英関係は冷え込み、米英は「もっとも重要な同盟国」になってしまいます。
「味方が苦しんでいるのを見捨てた」日本の「武士」らしからぬ行動は、すぐに悪い結果となって現れてきました。
 米英は、日本を強く警戒するようになり、以後「日本の力を削ぐ」ことが重要な目標になっていきます。
【1921年、日英同盟破棄が決定】されました。
 1922年に締結された「ワシントン海軍軍縮条約」で、日本の戦艦保有は、米英の6割と定められました。
 日本は7割を主張しましたが、米英は一体化して、これを拒否しています。
【1923年、日英同盟が失効。】
 このように、【日本の孤立は、第一次世界大戦時、日英同盟を軽んじたところから始まった】のです。

【『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2013年)】

 改行まみれである(笑)。女子中学生の日記みたいだ。ロシアで失脚したプーチンが日本に柔道留学する。日本の無能な政治家がプーチンにアドバイスを求める。つまりプーチンであればどのような日本の舵取りをするか、とのテーマで国家としての自立を示す内容となっている。

 ヨーロッパ列強の中で「栄光ある孤立」を貫いてきた大英帝国が翳(かげ)りを帯びた。日英同盟は大英帝国の覇権が弱まったことを意味した。

 同盟の直接的なきっかけとなったのは義和団の乱(1900年)であり、柴五郎とジョージ・アーネスト・モリソンの邂逅(かいこう)が両国を結ぶに至った(『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人、『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』ウッドハウス瑛子)。そしてモリソンは日本とロシアを戦争にまで誘導する(『日露戦争を演出した男 モリソン』ウッドハウス瑛子)。

 日英同盟破棄には伏線があった。第一次世界大戦後にパリ講和会議で日本による人種的差別撤廃提案が否決されたことである(1919年)。

白人による人種差別/『国民の歴史』西尾幹二

 19世紀末から日本が歩んだ半世紀を振り返ってみよう。

(1868年 明治元年
 1894-95年 日清戦争
 1896年- 欧米豪で黄禍論が台頭  1900年 義和団の乱
 1902年 第一次日英同盟
 1904-05 日露戦争
 1905年 第二次日英同盟
 1911年 第三次日英同盟
 1921-22年 ワシントン海軍軍縮条約  1921年 四カ国条約  1931年 満州事変
 1933年 日本が国際連盟を脱退
 1937年 支那事変
 1941-45年 太平洋戦争(日本は支那事変を含めて大東亜戦争と称した)

 武士が刀を置き、チョンマゲを落として(散髪脱刀令 明治4年/1871年)からわずか23年で戦争に突入した。日本の近代化は文字通り戦争の歴史であった。

 幕末の知識人は阿片戦争(1840-42年)に衝撃を受けた。幕府は外国船に対して宥和政策を執らざるを得なくなった。そこに黒船が来航(1853年)する。迫りくる帝国主義に対する国家改造が明治維新であった。日本が遅れて帝国主義の波に乗ろうとした。だが当時の世界はそれを許さなかった。

 戦後の日本は安全保障を米軍に肩代わりさせて、まんまと経済発展を遂げた。辛うじて国体は護持したものの国家観を見失った。GHQの占領期間が終わっても尚、自国の歴史を教えることがなかった。日教組の教員は堂々と国旗掲揚を非難し、君が代斉唱を拒んだ。義務教育では戦前を暗黒史として教えた。マルクス史観を貫く進歩というテーマのために古い時代は悲惨と位置づけられた。


 日本の領土問題は北方領土竹島尖閣諸島の三つである。GHQが意図的に島嶼(とうしょ)部の扱いを曖昧にして混乱要因を残したという説もある。そして中国・ロシアが領空・領海を日常的に侵犯している。こうした状況にありながら平和憲法にしがみつくのは一種の教条主義であろう。日本の安全を保障してきたのは憲法第9条ではなくアメリカの核の傘であった。理想を見つめるあまり脅威を無視できる人々が多いことに暗澹(あんたん)たる思いがする。彼らにとってはチベットやパレスチナは他人事なのだろう。

 1990年代にようやく自虐史観を乗り越える動きが始まり、東日本大震災を通して尊皇の気風が回復しつつある。

 しかし、被災地で、また避難先で、今日もなお多くの人が苦難の生活を続けています。特に、年々高齢化していく被災者を始めとし、私どもの関心の届かぬ所で、いまだ人知れず苦しんでいる人も多くいるのではないかと心に掛かります。
 困難の中にいる人々一人ひとりが取り残されることなく、一日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう、これからも国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切と思います。

東日本大震災5年 追悼式の天皇陛下お言葉全文 2016年3月11日

 このお言葉を政治家は真剣に受け止めているだろうか? 右も左も関係ない。幕末にあって攘夷派も開国派も尊皇という一点は共通していた。日本が世界最古の国(【ギネス認定】日本は世界最古の国)たり得たのは天皇陛下の存在があったからだ。天皇という国家の軸を失えば「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう」(「果たし得ていない約束」三島由紀夫/サンケイ新聞 昭和45年7月7日付夕刊)という三島の予言が現実のものとなる。

日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら
北野 幸伯
集英社インターナショナル
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2016-08-03

ジョン・D・バロウ、他


 4冊挫折、1冊読了。

ブッダの脳 心と脳を変え人生を変える実践的瞑想の科学』リック・ハンソン、リチャード・メンディウス:菅靖彦訳(草思社、2011年)/狙いはいいのだが力及ばずといったところ。半分ほど読んだが自我を肯定しているため心理学レベルの療法にとどまっている。それでも新しい表現があって参考にはなる。

がんが自然に治る生き方 余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』ケリー・ターナー:長田美穂訳(プレジデント社、2014年)/キレとコクを欠く。悪い本ではない。

千日の瑠璃 究極版(上)』丸山健二(求龍堂、2014年)/厳密に比較したわけではないのだが文章が長くなっているように感じた。「究極版」との尊大なタイトルの割には冗長さしか感じない。しかも旧版はウェブ上で公開されており、わざわざ改行を増やして2000ページにした意味が不明だ。巻末に加えられた詩的な文章もかつての丸山と比べると澱みがある。求龍堂からは古い作品が陸続と増刷され、眞人堂では「丸山健二文学賞」なるものまでできた。古いファンからすれば、やや不思議なスポンサーシップである。丸山が強気なのはこうしたパトロンの存在もあるのだろう。個人的に『千日の瑠璃』は好きな作品なのだが、多くのファンからは見限られた。究極版とはいうものの文章に誤りがある。

科学vs.キリスト教 世界史の転換』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、2013年)/三部作の最終章。読み物としての山場に欠ける。機会があれば読み直すつもりである。

 114冊目『宇宙が始まるとき』ジョン・D・バロウ:松田卓也訳(草思社、1996年)/「ジョン・バロウ」と表記されているが多分『無の本 ゼロ、真空、宇宙の起源』と同じ著者だろう。“なお、訳書の名義は「ジョン・D・バロウ」、「ジョン・バロウ」、「J.D.バロー」など、出版社ごとに異なる”(Wikipedia)。出だしは易しいのだが、あっという間に難解な領域に踏み込む。その手並みが鮮やか。松田の訳もこなれていておすすめ。時間論と人間原理についての言及もある。

世界は「アメリカ幕末時代」に突入した/『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯


 ・世界は「アメリカ幕末時代」に突入した

『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

「世界は【アメリカ幕末時代】に突入した」

【『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(草思社、2007年)以下同】

 電子書籍配信サイトの連載を単行本化した作品である。書き手にとっては巧いやり方だと思う。一粒で二度おいしいわけだ。文化を支えるのは活字と音楽だ。不況の波が恐ろしいのは文化発信者の数を激減させることである。ミュージシャンもこうした手法を取り入れるべきだろう。文筆家はフリーの編集者を確保するのが賢明だと思う。

 北野幸伯〈きたの・よしのり〉の著作はインテリジェンス入門としてうってつけである。文章がわかりやすく、話題も広い。引用文献もあまり知られていない好著が多い。内容の重複が目立つが、きちんとバージョンアップしている。今のところハズレなし。

 インターネット社会の作法としてインテリジェンス能力は欠かせない。情報を読み解く力が弱いとデマを信じ込んでしまう。安倍政権に対する批判が広がりを持てないのは、左翼の古ぼけた眼鏡を通した価値観に基づくためだ。日本の近代史を上書き更新した上で、利権構造や官僚システム、天下りの放置などに斬り込む必要があるだろう。

「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」(テレビ演説 2013年9月10日)という歴史的なひと言が「アメリカ幕末時代」の幕を開いた。これから訪れるのは「混乱」である。日本における明治維新は「尊皇」の精神で一つにまとまることができた。しかし世界に天皇陛下は存在しない。ということは際限のない三国志のような時代が来る可能性もある。

 世界情勢をじっくり観察してみると、【アメリカの影響力は衰退の一途をたどっている】ことがわかるのです。

 特にオバマ政権下での国防予算削減が大きい。沖縄から米軍が撤収する時期もそう遠くはないことだろう。憲法改正の動きにはそうした背景がある。

 世界情勢を理解するためにはいくつかのファクターを知る必要があると書きました。それはいったい何でしょうか?
【第一に「国家のライフサイクル」】
 これは、ある国が今上向きなのか下向きなのかを知る方法。これは人的要素と関係ない変えられない流れです。
【第二に「国際関係の主役と準主役の動き」】
 世界情勢を理解するためには、全部の国の動向を知る必要はありません。数カ国の動きだけで十分です。
【第三に「ある国の動きを決める国益」】
【第四に「指導者」】
【第五に「通貨と資源」】
 これだけわかれば世界のことは手にとるようにわかるようになります。

 これは一貫して北野が著作で主張している。一つだけ付言しておくと、「国家のライフサイクル」とは仏教語でいうところの生老病死・成住壊空(じょうじゅうえくう)である。永遠に発展する国家はない。アレクサンドロス大王(紀元前356-紀元前323年)の栄華は1代で終わった。モンゴル帝国は200年足らずで衰退を免れなかった。ナポレオン・ボナパルト(1769-1821年)は10年で失脚した。栄枯盛衰は摂理のように見える。

 そして日本のライフサイクルは下降しつつある。アメリカの軍事力を頼ることができなければ自前で調達するしかない。今まで米軍に与え続けてきた思いやり予算と、これからの防衛費がバランスできるのかどうか? 「日米安保は安かったな」と自覚するような日が来れば、社会保障はとっくに切り捨てられていることだろう。

中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
北野 幸伯
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2016-08-01

情報ピラミッド/『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯

 ・情報ピラミッド

『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

 実はこの世界には、いくつかの情報ピラミッドがあります。
 米英ピラミッド・欧州ピラミッド・中国ピラミッド・イスラムピラミッド・ロシアピラミッド等々。ピラミッドが違うと、同じ事件に対する見解が全く異なるのです。
 皆さんご存知ないかもしれませんが、日本は米英情報ピラミッドの下流にあります。
 日本にはもちろん報道の自由があります。しかし、その解釈はどうしても、米英ピラミッドの外に出ることはないのです。これは、いくらCNNを見ても、英字新聞を熟読しても同じこと。
 ロシアピラミッドの否定的な面は、あまりどっぷりつかりすぎると、クレムリンに洗脳されてしまうこと。肯定的な面は、ロシアピラミッドには、世界を支配する米英のネガティブ面について報道規制が全くないということです。
 これらの要因で、私は自然と多角的に物事を見るようになりました。そしてわかったことは、「政治経済というのは、【案外因果関係がはっきりしている】」ということでした。

【『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(ダイヤモンド社、2008年)】

「イスラムが行うとテロで、アメリカが行えばテロと呼ばれないのはおかしい」と武田邦彦が指摘するのも、米英ピラミッドを疑えというメッセージなのだろう。所属・帰属が情報を大幅に制限する。

 特に政治性や宗教性は人間の脳を束縛する。洗脳とは「ブレイン・ウォッシュ」の訳語であるが、洗われ、漂白された脳が特定の色に「染め上げられる」。完璧な洗脳は他人からの支配を自分の意志と錯覚させる。

 監禁・睡眠不足・暴力を伴う洗脳をソフトにしたものがマインドコントロールである。マインドコントロールはカルト宗教やマルチ商法の専売特許ではない。操作性という意図がマインドコントロールの本質である。教育は親子であろうと学校であろうと子供を自由にするためではなく、隷従させるために行われる。大人の指示・命令に子供が従う時、我々は「お利口だね」と言う。聞き分けのよいことが賢いこととされるのだ。褒められるという報酬によって子供は更なる隷従へ向かう。

 古来から伝わる神話には健全な社会秩序形成という目的があったと考えられるが、メディアのマス化(新聞・ラジオ・テレビ)以降は操作性が強くなる。社会主義国ではプロパガンダに進化し、資本主義国では広告に発展する。情報は加工・修正・粉飾を施され、人々を惑わす。

 なぜ日本は米英ピラミッドの下流にあるのか? それは情報(諜報)機関を持たないゆえである。

アメリカからの情報に依存する日本/『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘
瀬島龍三はソ連のスパイ/『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行

 この国は同胞が北朝鮮に拉致されても目を覚ますことがない。戦後、国家の安全保障をアメリカに委ね、日本はのうのうと経済発展を遂げた。豊かさと引き換えに自国の歴史を見失い、確かな国家観を持つことを忌避し、漫然と平和を強調してきた。「ああ、平和は雄志を蝕む」(『三国志』吉川英治)。

 外側の視点に立たなければ閉ざされた世界を知ることができない。まずは新聞とテレビの情報を疑うことだ。

隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?
北野 幸伯
ダイヤモンド社
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2016-07-31

河野義行、他


 6冊挫折、1冊読了。

ロボットとは何か 人の心を映す鏡 』石黒浩(講談社現代新書、2009年)/確か茂木健一郎の講演で石黒を知った。視点がユニーク。ところどころ飛ばしながら最後まで読む。

カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』エレツ エイデン、ジャン=バティースト・ミシェル:阪本芳久訳、高安美佐子解説(草思社、2016年)/要は文化を望遠鏡で見つめる試みである。総花的で主題がつかみにくい。TEDの講演も声が甲高くて耳障りだ。

説き語り日本書史』石川九楊〈いしかわ・きゅうよう〉(新潮選書、2011年)/中ほどまで読む。やはり石川にはゴリゴリの硬い文体が合う。読みやすい分だけ魅力が薄い。

つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版』森健(文藝春秋、2012年)/子供たちが避難所で書いた原稿がそのまま掲載されている。元は『文藝春秋』臨時増刊号で18万部も売れたという。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『文藝春秋増刊「つなみ 5年後の子どもたちの作文集」』、『「つなみ」の子どもたち』と続く。

東北ショック・ドクトリン』古川美穂(岩波書店、2015年)/文章に嫌な匂いを感じる。タイトルも読者をミスリードしている。特定の政治的スタンスや思想を感じる。

日本共産党研究 絶対に誤りを認めない政党』産経新聞政治部(産経新聞出版、2016年)/出来はよくないが1404円なので目をつぶる。「朝日新聞は読む気もしないが、かといって産経新聞を読むほど知的に落ちぶれてはいない」というのが我が心情である。左と右を代表する新聞に共通するのは「拙さ」である。朝日の慰安婦問題捏造発覚以降、毎日やローカル紙は完全に左旋回している。読売は中身がないし、日経はアメリカ万歳だ。つまり日本にはまともな新聞がない。日本共産党が秘めている破壊活動に警鐘を鳴らすのは結構だと思うが、角度が浅い。4分の3ほど読んだ。

 113冊目『「疑惑」は晴れようとも 松本サリン事件の犯人とされた私』河野義行(文藝春秋、1995年/文春文庫、2001年)/「必読書リスト」のチェックを行っている。再読に堪えないものはどんどん削除していくつもりだ。報道被害を知る上で絶対に欠かすことのできない一冊である。それにも増して市井にこれほどの人物がいることに驚く。常識とはバランス感覚なのだろう。『妻よ! わが愛と希望と闘いの日々』(潮出版社、1998年)もおすすめである。

三枝充悳、黄文雄、三上修、他


 18冊挫折、3冊読了。

身近な鳥の生活図鑑』三上修(ちくま新書、2015年)/3分の1ほど読む。身近な鳥は30種類ほどもいるという。

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』クレア・キップス:梨木香歩〈なしき・かほ〉訳(文藝春秋、2010年/文春文庫、2015年/大久保康雄訳、小学館ライブラリー、1994年『小雀物語』の新訳)/著者は第二次世界大戦中に飛べない子スズメを拾う。クラレンスと名づけられたスズメはすくすくと育ち、やがてキップス夫人のピアノに合わせて歌うようになる。その芸は人々の前で行われ、喝采を浴びた。文章に澱(よど)みが感じられるのは一気に書いていないためか。

だから日本は世界から尊敬される』マンリオ・カデロ(小学館新書、2014年)/マンリオ・カデロはサンマリノ共和国の駐日大使である。天皇陛下の美しいエピソードを紹介している。クリスチャンなのだが神道にぞっこんで絶賛している。

「子供を殺してください」という親たち』押川剛〈おしかわ・たけし〉(新潮文庫、2015年)

インドとイギリス』吉岡昭彦(岩波新書、1975年)

東インド会社 巨大商業資本の盛衰』浅田實(講談社現代新書、1989年)

オランダ東インド会社』永積昭(講談社学術文庫、2000年)

ウイルスは生きている』中屋敷均(講談社現代新書、2016年)/以上5冊は暑さのせいか、文章が全く頭に入らず。

なぜ人はキスをするのか?』シェリル・カーシェンバウム:沼尻由起子訳(河出書房新社、2011年)/ダメ本。文章を書く仕事に向いていないと思われる。各ページに「キス」という言葉が20回くらい出てくる。構成も内容も悪い。

呼吸整体師が教える 深呼吸のまほう 体の不調が消える、人生が変わる』森田愛子(ワニブックス、2015年)/飛ばし読み。参考にはなる。構成が悪く、体験談や「治る」という薬事法違反の健康食品みたいなムードが漂う。編集者の問題か。

「ラットレース」から抜け出す方法』アラン・ワッツ:竹渕智子訳(サンガ、2014年/めるくまーる、1991年『タブーの書』改訂版)/スタイルが合わない。アラン・ワッツは1960年代のカウンター・カルチャーにおいて、若者たちのカリスマ的リーダーであったというから、ややニューエイジ絡みの可能性もある。引用はされていないのだが巻末の推薦文献にクリシュナムルティの『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー』が入っている。

東洋の呼び声 拡がるサルボダヤ運動』A・T・アリヤラトネ:山下邦明、長井治、林千根訳(はる書房、1990年/新装版、2003年)/『ぼくは13歳 職業、兵士。 あなたが戦争のある村で生まれたら』の鬼丸昌也がサルボダヤ運動を実践しているようだ。スリランカなので社会参画仏教と関係があるのかと思って読んでみたが外れた。仏教の精神に基づく農村開発運動である。

ブッダのユーモア活性術 役立つ初期仏教法話8』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/初期仏教法話シリーズを読んできたが初めて挫ける。前置きが長過ぎて読む気が失せた。宗教性よりも出版事業に重きを置いているのではないか?

ブッダの瞑想法 ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』地橋秀雄〈ちはし・ひでお〉(春秋社、2006年)/良書といってよいと思う。「サティ(気づき)を入れる」との表現がよい。ただし古い体質から脱し切れていない印象を受けた。視点の高さも感じられない。

無の探求「中国禅」 仏教の思想7』柳田聖山〈やなぎだ・せいざん〉、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)/読む気の起こらない文章だ。

不安と欣求「中国浄土」 仏教の思想8』塚本善隆〈つかもと・ぜんりゅう〉、梅原猛(角川書店、1968年/角川文庫ソフィア、1997年)/出来が悪い。シリーズ7以降の失速は目に余るものがある。

生命の海「空海」 仏教の思想9』宮坂宥勝〈みやさか・ゆうしょう〉、梅原猛(角川書店、1968年/角川文庫ソフィア、1996年)/これも期待外れ。空海の飛躍が描けていない。

 110冊目『スズメ つかず・はなれず・二千年』三上修(岩波科学ライブラリー、2013年)/私がスズメの巣を発見できるようになったのは昨年のことだ。電信柱の変圧器を支える架台の鋼材にあった。スズメは何と言っても声と姿がよい。一度でいいから手に乗せてみたいものだ。スズメの数はかなり減少しているそうだ。

 111冊目『世界が憧れる 天皇のいる日本』黄文雄〈コウ・ブンユウ〉(徳間書店、2014年)/小林よしのり作『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』の次に読むのがよい。著者は台湾出身の評論家である。日本と台湾で活動している。親日・反共の旗幟を鮮明にしているため誤解されやすいが、想像以上にしっかりした内容で驚いた。

 112冊目『初期仏教の思想(中)』『初期仏教の思想(下)』三枝充悳〈さいぐさ・みつよし〉(レグルス文庫、1995年)/下巻は半分以上、飛ばし読みしたのでカウントしないでおく。三枝の研究ノートといってよい。大量のテキストが引用されている。推し進められた思索は称賛に値するが、やはり悟りの輝きは見られない。その意味で「悟りとは」の前に読んでおくと理解がより一層進むことだろう。

2016-07-30

自殺念慮/『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史


『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎
『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳
『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳

 ・自殺念慮

虐待と知的障害&発達障害に関する書籍

 自分は1984年4月に小学校に入学し、無茶苦茶にいじめられました。両親に訴えましたが、基本的に放置されました。担任教師も同様でした。自分はいじめから逃れる術(すべ)はないと思い、そして「終わりにしたい」と常に願うようになりました。それ以来、頭から自殺念慮が消えたことはありません。
 2010年の秋頃から自分の自殺念慮は急激に強くなり始めました。自分が抱えた虚しさにいよいよ堪えられなくなり始めたからです。嘘の設定が精神安定剤として効かなくなり始めていました。この虚しさは、例えば事件や事故や災害で息子を亡くした母親が「息子を亡くしてから何をしても面白いとも楽しいとも感じられない。とにかく虚しさばかりが募る」と語る時の虚しさと非常によく似ています。娯楽でやり過ごせる虚しさではありません。むしろ周囲が楽しんでいる中で孤立感を覚えてより悪化するタイプの虚しさです。

【『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史〈わたなべ・ひろふみ〉(創出版、2014年)】

 精神科医の香山リカが拘留中の渡邊に『子ども虐待という第四の発達障害』と『消えたい』の2冊を差し入れており、本書で鋭い考察が述べられている。渡邊は高橋本を読むことで秋葉原無差別殺傷事件の加藤被告の動機まで理解できたと語る。マスコミの取材を拒否し、自著以外ではコメントを発してこなかった加藤が、何と渡邊の意見陳述に関する見解を篠田博之(月刊『創』編集長)宛てに送ってきた。

「秋葉原事件」加藤智大被告が「黒子のバスケ」脅迫事件に見解表明!

 渡邊は学校ばかりでなく塾でもいじめに遭ったという。具体的なことは書かれていないが死を思うほど苛酷なものであった。私は自殺念慮という言葉を始めて知った。願望ではなく念慮としたところに貼りついて離れない思いが読み取れる。

 ここで見逃すことができないのは「両親が放置した」事実である。渡邊は自覚していないが両親による虐待があった可能性が高い。

 幼い頃からゴミ扱いされてきた男が自殺念慮を跳ねのけるべく社会に復讐をしようと決意する。計画は緻密で行動は精力的だった。邪悪ではあったがそこには生の輝きがあった。渡邊の目的はイベント中止であり、誰かを死傷することではなかった。

 闇を見つめてきた男の筆致は飄々としたユーモアに満ちて軽やかだ。何よりもそのことに驚かされる。渡邊が抱えてきた矛盾は多くの犯罪を防ぐ確かな鍵となるような気がする。

 お笑い芸人が芥川賞を受賞する時代である。犯罪者に直木賞を与えてもよかろう。それほどの衝撃があった。

2016-07-29

製薬会社による病気喧伝(疾患喧伝)/『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス

 ・製薬会社による病気喧伝(疾患喧伝)

『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』デイミアン・トンプソン
『快感回路 なぜ気持ちいいのかなぜやめられないのか』デイヴィッド・J・リンデン
『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング
『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』ローン・フランク
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『土と内臓 微生物がつくる世界』デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美

身体革命

 19世紀後半、新しい症状をヒステリーの貯蔵庫へと追加する手順は、次のように進められた。少数の興味深い症例をもとに、医者が公表して議論を重ね、病的な行動を体系化する。新聞や学術誌などがその医学的な新発見を記事にする。一般女性が無意識にその行動を表して、助けを求めはじめる。それから、医者や患者がいわゆる「病気の取り決め」をし、それによって患者の行動に関する互いの認識を作り上げていく。この取り決めにおいて医者は、症状が正当な疾病分類に当てはまるかどうかを科学的に検証する。一方、患者の増加に伴い、メディアがふたたびこれを報じ、その正当性がさらに確立されるという文化的なフィードバックが繰り返されるようになる。そして、この反復のあとに、拒食や足の麻痺などの新しいヒステリー症状が広く受け入れられるようになるわけだ。

【『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ:阿部宏美訳(紀伊國屋書店、2013年)】

 人類史を振り返ると文明がダイナミックに移り変わる時期があった。伊東俊太郎は人類革命(二足歩行、言語の発明、道具の製作)・農業革命・都市革命・精神革命(枢軸時代)・科学革命(産業革命、活版印刷〈=情報革命〉を含む)と分けた(PDF「環境問題と科学文明」伊東俊太郎)。

 社会のあり方や一人ひとりのライフスタイルは緩やかに変わり続ける。例えば農業革命によって農産物の保存が可能となり、「富」の創出によって戦争が開始されたとの指摘もある。また近代以降は金融・メディアの発達、通信・移動のスピード化、目まぐるしい電化製品の誕生など、変化の潮流が激しい。

 いつの時代も世の中の変化についてゆけない人や、社会に違和感を覚える人は存在する。精神医学のグローバル化が地域性や文化に基づく要因を否定し、アメリカ単独の価値観が疾患を特定するに至った。情報は脳のシナプス構造をも変えてしまう。「昔々、製薬会社は病気を治療する薬を売り込んでいました。今日では、しばしば正反対です。彼らは薬に合わせた病気を売り込みます」(マーシャ・エンジェル)。始めに病気喧伝(疾患喧伝とも〈PDF「特集 双極スペクトラムを巡って 双極性障害と疾患喧伝(diseasemongering)」井原裕〉)ありきで症状はどうあれ、投薬・服薬が目的と化す。

 病気喧伝(疾患喧伝)は孔子の「名を正す」とは正反対に向かう。名づけること・命名することで人々の不安を搦(から)め捕る戦略といってよい。うつ病・PTSD・自律神経失調症・パニック障害・ADHD(注意欠陥多動性障害)・発達障害などが出回るようになったのは、ここ20~30年のことだ。本書では具体的に摂食障害が取り上げられている。

 尚、ADHD(注意欠陥多動性障害)については「作られた病である」(ADHDは作られた病であることを「ADHDの父」が死ぬ前に認める)との怪情報がネット上に出回っているが、「『ADHDの父』が言いたかったのは、『診断基準の甘さ』『薬の過剰投与』であって、『ADHDが架空のもの』ってことじゃない」(「ADHDは作られた病である」という記事について)との指摘もある。英語原文は「セカオワ深瀬の精神病(発達障害ADHD)は病気でない?」で紹介されている。「ADHDに関する論争」に書かれていないので眉唾情報だろう。PDF「精神医療改善の為の要望書」も参照せよ。

 例えばうつ病という疾患が設定されると、その上下左右に位置する症状もうつ病に引き寄せられる。我々は名づけることのできない不安状態を忌避する。うつ病と認定されれば処方箋があると錯覚する。

 DSM-IVの作成から小児の障害は、注意欠陥障害3倍、自閉症20倍、双極性障害20倍となった(DSMの功罪 小児の障害が20倍!)。医学は医療をやめて病気創出に余念がない。



現実の虚構化/『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル

2016-07-28

事件を見世物にしたがる新聞記者(朝日新聞ヨーロッパ特派員)






2016-07-26

精神医学のバイブルが新たな患者を生み出す/『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン

 ・精神医学のバイブルが新たな患者を生み出す

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』ローン・フランク

 DSMとは「精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」の略だ。それも当然なのだが、1980年まで、DSMは目立たないちっぽけな本で、たいして注目されていなかったし、読まれてもいなかった。そこへ突然、DSM-III(スリー)が現れた――この分厚い本はすみやかに文化の象徴となり、息の長いベストセラーになり、精神医学の「バイブル」としてむやみな崇拝の対象になった。
 DSMは正常と精神疾患のあいだに決定的な境界線を引くものであるため、社会にとってきわめて大きな意味を持つものになっており、人々の生活に計り知れない影響を与える幾多の重要な事柄を左右している――たとえば、だれが健康でだれが病気だと見なされるのか、どんな治療が提供されるのか、だれがその金を払うのか、だれが障害者手当を受給するのか、だれに精神衛生や学校や職業などに関したサービスを受ける資格があるのか、だれが就職できるのか、養子をもらえるのか、飛行機を操縦できるのか、生命保険に加入できるのか、人殺しは犯罪者なのかそれとも精神障害者なのか、訴訟で損害賠償をどれだけ認めるのかといった事柄であり、ほかにもまだまだたくさんある。
 定期的に改訂されるDSM(DMS-IIIR、DSM- IV)に20年間にわたってかかわってきた私は、落とし穴をしっており、改訂につきまとうリスクを警戒していた。これに対して私の友人たちは新参者であり、DSM-5の作成に自分らが果たす役割に興奮していた。

【『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス:大野裕〈おおの・ゆたか〉監修、青木創〈あおき・はじめ〉訳(講談社、2013年)以下同】

 アレン・フランセスはDSM-IV(1994年)の編集委員長を務めた人物である。DSMの第5版は単なる更新ではなかった。それは製薬会社からのリクエストに応じる新たな症状の創造であった。聖書が罪を定めるようにDSM-5が病気を決めるというわけだ。病気が増えれば薬は売れる。

 DSM-IVでは小さな誤りも許されないことを私は承知していた。DSMは度を越して重要になりすぎ、それ自身のためにも、社会のためにもなっていなかった。ささいに思える変更であっても、甚大な災いをもたらしかねない。そしていまや、DSM-5がまさに大きな誤りを犯そうとしているように思えた。友人たちがあまりにも無分別に後押ししていた疾患は、のべ何千万もの新たな「患者」を生み出すものだった。じゅうぶんに正常な人々がDSM-5の広すぎる診断の網にとらわれるのが私には想像できたし、多くの人々が必要なものにともすれば危険な副作用のある薬の影響にされされる恐れがあった。製薬企業も、お得意の病気作りに新しい格好のターゲットをどう利用してやろうかと、舌なめずりをしているはずだった。

 DSM-5は製薬会社にとって打ち出の小槌となった。

 DSM-IIIでは主要な診断名の有病率が著しく高く報告されるようになり、過剰診断を促していると批判されたため、DSM-IVでは7割以上の診断基準に「著しい苦痛または社会的、職業的、その他の領域での機能の障害を引き起こしている」という項目を追加した。しかし、その後も主要な製薬会社は強力なマーケティングを展開し、アメリカでは精神障害の罹患率が毎年上昇し続け、注意欠陥多動性障害が3倍、自閉症が20倍、子供の双極性障害が40倍、双極性障害は2倍となり。伴って処方箋医薬品による死亡が違法薬物によるものを超えることとなった。

Wikipedia

 以下に批判を列挙する。



精神科医・鈴木映二教授による「DSM5の問題」に関する連続ツイート

 平成23年5月にアメリカ精神医学会から発刊された『精神疾患の診断と統計の手引き第5版』(DSM-5))において,「インターネットゲーム障害」が今後研究が進められるべき精神疾患の一つとして新たに提案されました。

PDF:インターネット依存症について

アスペルガーの診断が消えたと話題に 自閉症一本化の恐怖

DSM-5:アメリカ精神科協会出版利益至上主義がもたらした弊害 →精神疾患診断への信頼性危機増大

「DSM-5、聖書ではない」

 要はアメリカ精神医学会が薬を売る目的で嘘をついたということである。今までは「正常」とされたものが、これからは「異常」となる。もちろんあなたも私も。資本主義も共産主義も最終的には「管理~支配」に向かう。『すばらしい新世界』や『一九八四年』が現実となりつつある。



現実の虚構化/『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル

2016-07-25

支離滅裂な文章/『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎


 ・支離滅裂な文章

『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳
『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳
『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史

 徐々に筆者は、被虐待児は臨床的輪郭が比較的明確な、一つの発達障害症候群としてとらえられるべきではないかと考えるようになった。
 筆者は現在、被虐待児を【第四の発達障害】と呼んでいる。【第一は、精神遅滞、肢体不自由などの古典的発達障害、第二は、自閉症症候群、第三は、学習障害、注意欠陥多動性障害などのいわゆる軽度発達障害、そして第四の発達障害としての子ども虐待である】。

【『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎〈すぎやま・としろう〉(学研のヒューマンケアブックス、2007年)】

 杉山は発達障害の権威らしい。日本で軽度発達障害という概念を樹立した人物でもある。海外の研究や事例も豊富だ。しかし人間性が伝わってこない。本の体裁も変わっていてフォントが大きい二段組で読みにくい。尚、私が誤読しているかもしれないので、お気づきの点があればご指摘を請う次第である。

 障害と病気は異なる(※通常は「障碍」と表記しているが発達障害との絡みで今回は「障害」とする)。昔は精神障害を精神病と呼んだ。1982年(昭和57年)には山本晋也が口にした「ほとんどビョーキ」というセリフが流行語となった(流行語 共通史年表)。当時はまだ、普通でない=病気という感覚が支配していた。因みに「気違い」という言葉に苦情が出始めたのは1974年のことである(Wikipedia)。ただしマニアを意味する言葉としてカーキチや釣りキチなどは1980年代まで通用していたと記憶する。少年マガジンで『釣りキチ三平』の連載が終了したのは1983年であった。

 現在、精神障害の分類はアメリカ精神医学界が出版しているDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)の第3版以降に基くが、2013年に発表された第5版についてはアレン・フランセス(第4版編集委員長)からの批判もある(『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』)。この業界はきな臭い話が多い(『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン)。

「被虐待児は」→「一つの発達障害症候群」、「被虐待児」→「第四の発達障害」とあるが「人=障害」となっていて支離滅裂な文章だ。そもそも本書のタイトルが致命的で虐待には加害者と被害者が存在するわけだが、親なのか子なのかわからぬ「子ども虐待」という言葉を発達障害に直接結びつけている。

 上記引用箇所では「被虐」と読めるが、「表3 発達障害の分類」では第四群の定義を「子どもに身体的、心理的、性的加害を加える。子どもに必要な世話を行わない」とある。これだと「加虐」となる。学研には編集者がいないのだろうか?

 説明の拙さや言葉の曖昧さが読み手に不安を募らせる。こんな人物が本当に権威なのか?

 私の理解では杉山の主張は「被虐待によって脳がダメージを受け、発達障害と酷似した症状が現れる」ということなのだろう。それにしても被虐(状況)=障害(症状)という設定そのものがおかしい。

 拘留中の渡邊博史〈わたなべ・ひろふみ〉に香山リカが差し入れた一冊である。

2016-07-23

修行としての掃除/『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵


『「捨てる!」技術』 辰巳渚
・『1週間で8割捨てる技術』筆子

 ・修行としての掃除

『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『人生を掃除する人しない人』桜井章一、鍵山秀三郎
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士

 このように、私自身が片づけについて真剣に向き合ってきた経験と、たくさんの「片づけられなかった人」たちを「片づけられる人」に導いてきた経験から、自信を持っていえることが一つあります。それは、【家の中を劇的に片づけると、その人の考え方や生き方、そして人生までが劇的に変わってしまう】ということです。

【『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵〈こんどう・まりえ〉(サンマーク出版、2010年/河出書房新社改訂版、2019年)以下同】

「そんな馬鹿な……」と思う人は掃除をしない。「そうなのか!」と受け止めた人は直ちに掃除を開始する。コンマリを「一時的にテレビで持てはやされた女だろ?」などと侮ってはならない。幼い頃から好きだった片づけで大学時代に起業し、2015年のアメリカ『TIME』誌で「世界で最も影響力のある100人」に村上春樹と共に選ばれたのである(近藤麻理恵さんってどんな人 TIME誌「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる)。「芸は身を助く」を極めた人生といってよい。アメリカでも100万部を超えるベストセラーとなり、「ときめき片づけ法を使って片づけを実践することを“Komaring”“Kondoing”と表現するワードも浸透しているという」(「片づけで人生がときめく」で世界600万部超の大ヒット、その理由とは)。まるで「パレアナ現象」だ。

 では、なぜ家の中を片づけると、このように考え方や生き方が、つまりはその人の人生までもが変わってしまうと思いますか。
(中略)【ひと言でいうと、片づけをしたことで「過去に片をつけた」から。その結果、人生で何が必要で何がいらないか、何をやるべきで何をやめるべきかが、はっきりとわかるようになるのです。】

 近藤の「片をつける」という発想が、桜井章一の「間に合う」(『運に選ばれる人 選ばれない人』)を思わせる。一つひとつ小さな決着をつけてゆくことが、大きな判断を確かなものとするのだろう。

 片づけは目に見える形で必ず結果が表れます。【片づけはウソをつきません】。だから、私がお伝えしている片づけの極意は、【「片づけの習慣を少しずつつける」のではなく、「一気に片をつけることで、意識の変化を劇的に起こす」】ことにあります。

「塵も積もれば山となる」というが実際にできた山はない。地殻変動がマグマを噴火させることで山は生まれる。劇的な変化は一瞬で決まる。心の底にはヘドロが堆積している。怠惰という名のヘドロが。それを一掃することから掃除は始まる。

【「片づけは祭りです。片づけを毎日してはいけません」】

 蓋(けだ)し名言である。

【驚かれるかもしれませんが、私は自分の部屋の片づけを今ではまったくしていません。なぜなら、すでに片づいているからです】。

 掃除は修行なのだ。「行(ぎょう)を修める」とは行為を正しくする・整えることである。修行とは何かを単純に繰り返すことではない。心構え次第では日常生活の全てが修行となる。

【片づけを真剣にしていると、瞑想状態とまではいかないまでも、自分と静かに向き合う感覚になっていくことがあります。自分の持ちモノに対して、一つひとつときめくか、どう感じるか、ていねいに向き合っていく作業は、まさにモノを通しての自分との対話だからです】。

 ブッダの弟子にチューラ・パンタカ(周利槃特)がいる。双子の兄のマハー・パンタカは頭脳明晰であったが、チューラ・パンタカは愚かで3ヶ月かかっても一偈を暗誦することができない。自分の名前すら覚えられなかったとの説まで伝わる。出産の時刻が兄と隔たっているようなので何らかの障碍(しょうがい)があった可能性も高い。

 兄に連れられて出家したものの、あまりの愚かさゆえに弟を哀れんだ兄が還俗(げんぞく)を命じた。それを聞いたブッダがチューラ・パンタカを訪ねる。ブッダは1枚の布を渡し、心を込めて「塵や垢を除け」と唱えて掃除をすることを教えた。やがてチューラ・パンタカは「清浄な布が汚れていく」事実をありありと見て諸行無常を悟る。掃除はまさしく修行であった。(「悟りを開いた人たち A・スマナサーラ長老」を参照した)

 はたきを使っていると私の頭では「お祓(はら)い」の文字が明滅する。清浄・浄化を目指すのが宗教であれば、掃除が悟りにつながることは決して不思議ではない。「婦」の字も白川静によれば、「『帚』(ほうき)を持って宗廟(そうびょう)を清めるという大切な役割をする女」という字義がある(第21回 人の形から生まれた文字 5 女の人の姿 2「婦」 主婦が掃除する廟)。

 掃除は聖と俗を往来する道なのだろう。取り敢えず現段階では自分の部屋を振り返ることはしない。


J・クリシュナムルティ、那智タケシ、岡崎勝世、小林よしのり、他


 1冊挫折、5冊読了。

チームワークの心理学』國分康孝〈こくぶ・やすたか〉(講談社現代新書、1985年)/國分の著書には外れがない。多少古くても十分読める。「ワンマンショウ」という言葉に思わず笑った。既に死語である。良質なビジネス書としても通用する一冊。

 105冊目『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり(小学館、2009年)/小林の漫画作品を初めて読了した。名著といってよいと思う。日本人の自覚は天皇陛下を知ることから生まれる。否、そこからしか生まれ得ない。続く『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論』では女系天皇制を支持して評価が割れている。

 106冊目『聖書 vs. 世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、1996年)/再読。やはり名著。そして冒頭50ページがやはり難解。

 107冊目『世界史とヨーロッパ』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、2003年)/途中で何度かあきらめようかと思ったのだが最後まで読んで正解だった。今こそ読まれるべき一冊である。9.11テロ後の世界における国家主義の潮流は、アンチ啓蒙主義としてのロマン主義と軌を一にするものだ。歴史は繰り返す。何度でも。

 108冊目『二十一世紀の諸法無我 断片と統合 新しき超人たちへの福音』那智タケシ(ナチュラルスピリット、2014年)/文という文字には「あや」との訓読みからもわかるように「かざる」義がある。その意味からいえば「かざっている」ようにも見える。ひょっとすると悟りが酔いをもたらすのかもしれない。あるいは年齢的な問題(=成熟)か。断片というキーワードと心身脱落という禅語の組み合わせに新味がある。日蓮が「禅は天魔の所為」と批判した理由は独善の陥穽を指摘したのだろう。悟りにはそうした危険がつきまとう。

 109冊目『時間の終焉 J・クリシュナムルティ&デヴィッド・ボーム対話集』J・ クリシュナムルティ:渡辺充訳(コスモス・ライブラリー、2011年)/自問自答のアクロバットである。時間とは「なりゆく過程」を指す。1980年の4月から9月にかけて断続的に行われた対話である。逝去の5~6年前だから、これが最後の作品かもしれない。私は梵天勧請として読んだ。仏と凡夫の差異を乗り越えんとするところに仏の苦悩があった。クリシュナムルティは一人二役を演じながら、ボームを通して人類に語りかける。対話の波長が合っているように感じるのは錯覚で、理(理論)と事(事実)の相違がある。

津波のメカニズム/『人が死なない防災』片田敏孝


『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 ・東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%
 ・釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた
 ・津波のメカニズム

気づき(アウェアネス)に関する考察
『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ

『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

必読書リスト その二

 津波は、断層が動いて、海の中で海底の地形が変化することで起きます。よく、10メートルとか15メートルの津波が来たといいますね。なぜそんなに大きな波が起こるのかということについて説明します。
 海の中で断層ができますね。例えば、3メートルの断層ができる。すると、そのまま海面の水も3メートルの段差がつきます。この段差が津波そのものとなります。これがそのまま移動していくわけです。ただ、普通の波は周期が短いので、海がしけたときに「今日の海上は5メートルの波です」ということを聞きますが、家を壊すほどのものではありません。波長が短いので、ザバッと来て、それで終わりです。ところが津波の高さ5メートルというのは、もはや波ではないわけですね。波だけれども、ものすごく周期が長い。無尽蔵の水が一挙に入ってくる。そうすると、陸地に、海から水の壁が大挙して押し寄せてくる。海からの大洪水となって、家々を全部壊し、瓦礫にして流していく。それが津波の恐さです。
 例えば、海底の段差が3メートルなら最初の津波は3メートルです。ところが実際に陸地に上がってくるときには、これが5メートル、7メートル、10メートルと、大きい波になる。
 津波は、海底の深いところでは時速800キロぐらいのスピードで伝播していくので、チリ津波は丸一日あれば日本に来てしまうわけですね。けれども、浅くなると急ブレーキがかかります。水深500メートルで新幹線並み、100メートルで電車並み、10メートルで人間が走るぐらいのスピードになる。そうなると、津波は背後からすごいスピードで来るのに、進む前面で急ブレーキがかかってしまう。そのため次から次へと津波が積み重なって、どんどん高くなっていく。向こうの沖合に白波が立ったと思ったら、目の前に来たときに波が急に立ち上がってくるのは、こうしたメカニズムに則(のっと)ったことなのです。

【『人が死なない防災』片田敏孝(集英社新書、2012年)】

 無知は恐ろしい。波浪と津波が全くの別物だったとは。チリ津波の場合、ハワイにぶつかることで内側に角度をつけた波が日本で収束するという。


 被災地を飲み込んだ大津波のメカニズムを初めて知った。片田の防災教育が「知は力なり」(フランシス・ベーコン)を証明した。知ることは備えることでもある。知っていれば対処できる。

 動物は恐怖を感じると闘争か逃走かを迫られる(ウォルター・B・キャノン)。安全に慣れきって本能の力が弱まると立ちすくんでしまう。東日本大震災の教訓は「逃げ遅れたら死ぬ」という単純な事実である。

 そして助かるべくして助かった人々と、たまたま助かった人々が存在する。多くの証言集は運のよさを示すだけで学べることが少ない。むしろ迂闊さを際立たせる内容となっている。本書が稀有なのは災害に対する正しい姿勢が即座の行動を生み、ほぼ100%といってよい人々が大災害を生き延びた事実にある。そんな小中学生たちが必ずや東北の未来を照らすことだろう。

人が死なない防災 (集英社新書)

2016-07-19

釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた/『人が死なない防災』片田敏孝


『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 ・東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%
 ・釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた
 ・津波のメカニズム

『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ

『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

必読書リスト その二

 大槌湾(おおつちわん)の近くに、この地域唯一の中学校である釜石東中学校があります。その隣には、鵜住居(うのすまい)小学校があります。
 釜石東中学校は、当日、校長先生が不在でした。教頭先生が、すごい揺れのなか、床を這(は)うようにして放送卓まで行ったのですが、停電のために放送できなかった。だけど、そのときすでに、生徒たちがダダダダダーッと廊下を駆け抜けていく音が聞こえたといいます。
 教頭先生は、やっとの思いでつかんだハンドマイクで校庭にいる子どもたちに指示を出そうとして立ち上がったら、すでに子どもたちは全力で走っていました。ある先生が「逃げろ!」と叫んだのを聞いて、最初に逃げたのはサッカー部員たちだったそうです。グラウンドに地割れが入ったのを見た彼らは、校舎に向かって「津波が来るぞ! 逃げるぞ!」と大声を張り上げ、そのまま走りはじめて、鵜住居小学校の校庭を横切ります。そして小学校の校舎に向かって「津波が来るぞ! 逃げるぞ!」と声をかけながら、「ございしょの里」という避難場所に向かって全力で走っていきました。(中略)
 この地域では、津波にいちばん詳しいのは中学生ということになっていました。学校の近所に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんたちも、その中学生たちが血相変えて逃げていく光景を見て、それに引き込まれるようにして、一緒に逃げはじめました。(中略)
 ところが、「ございしょの里」の裏の崖(がけ)が地震で崩れかけていた。それに気づいたある中学生がこう言ったそうです。「先生、ここ、崖が崩れかけているから危ない。それに揺れが大きかったから、ここも津波来るかもしれない。もっと高いところへ行こう」。(中略)
 本当にギリギリのところで、生き延びることができたのです。それは、中学生が「先生、ここは危ない。次へ行こう」と言った、このひと言に始まったと思います。

【『人が死なない防災』片田敏孝(集英社新書、2012年)】

 以下のページに地図と写真が掲載されている。

地域防災に関する実践的研究 岩手県釜石市 津波犠牲者ゼロを目指した地域づくり

 もしも学校の屋上に避難したり、ございしょの里にとどまっていたならば彼らは助からなかった。

 以下のページには避難をしている中学生を撮影した写真があるが、既に町が津波に飲み込まれている様子がわかる。

臨機応変に行動する力が培われていたことで、生徒全員が生き延びることができた

「率先避難者たれ」という片田の教えを守り、まずサッカー部が全力疾走で逃げた。この行動が集団同調性バイアスと正常性バイアスを打ち破った。彼らは地震発生から30分以上避難し続けたことになる。上記ページの地図から察すると、約1.5kmに渡る上り勾配(こうばい)だ。釜石は最も早く大津波が到達した地域と思われるが、地震発生からの30分間は決して余裕のある時間ではないことがわかる。

 中学生の一言はこれまた片田の「想定にとらわれるな」という教えによるものだった。釜石の奇蹟は防災教育の勝利であった。





人が死なない防災 (集英社新書)

必読書リスト その五


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『イスラム教の論理』飯山陽
『「自分で考える」ということ』澤瀉久敬
『壊れた脳 生存する知』山田規畝子
『「わかる」とはどういうことか 認識の脳科学』山鳥重
『世界はありのままに見ることができない なぜ進化は私たちを真実から遠ざけたのか』ドナルド・ホフマン
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『物語の哲学』野家啓一
『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』アンドレ・コント=スポンヴィル
『完全教祖マニュアル』架神恭介、辰巳一世
『宗教は必要か』バートランド・ラッセル
『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語』安冨歩
『服従の心理』スタンレー・ミルグラム
『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ
『一九八四年』ジョージ・オーウェル:高橋和久訳
『「絶対」の探求』バルザック
『絶対製造工場』カレル・チャペック
『華氏451度』レイ・ブラッドベリ
『われら』ザミャーチン:川端香男里訳
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
『しらずしらず あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』レナード・ムロディナウ
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー
『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹
『確信する脳 「知っている」とはどういうことか』ロバート・A・バートン
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン
『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル
『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー
・『LIFE3.0 人工知能時代に人間であるということ』マックス・テグマーク
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
『苫米地英人、宇宙を語る』苫米地英人
『数学的にありえない』アダム・ファウアー
『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹
『死生観を問いなおす』広井良典
『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹
『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール
『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース:茂木健一郎訳
『なぜ、脳は神を創ったのか?』苫米地英人
『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド
『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一、小原克博
『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン
『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー
『遺伝子 親密なる人類史』シッダールタ・ムカジー
『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン
『音と文明 音の環境学ことはじめ』大橋力
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン
『こうして、思考は現実になる』パム・グラウト
『こうして、思考は現実になる 2』パム・グラウト
『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ
『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
『ゆだねるということ あなたの人生に奇跡を起こす法』ディーパック・チョプラ
『同じ月を見ている』土田世紀
『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』アルボムッレ・スマナサーラ
『怒らないこと2 役立つ初期仏教法話11』アルボムッレ・スマナサーラ
『人生の短さについて』セネカ:茂手木元蔵訳
『怒りについて 他一篇』セネカ:茂手木元蔵訳
『怒りについて 他二篇』セネカ:兼利琢也訳
『中国古典名言事典』諸橋轍次
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『シッダルタ』ヘルマン・ヘッセ
『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン
『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元訳
『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 1』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 2』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 3』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 4』J・クリシュナムルティ
『生の全体性』J・クリシュナムルティ、デヴィッド・ボーム、デヴィッド・シャインバーグ