2021-02-23

炎症が現代病の原因/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー


『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』奥山治美
『日本人には塩が足りない! ミネラルバランスと心身の健康』村上譲顕
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス

 ・炎症が現代病の原因
 ・食物に含まれる反栄養素
 ・意志力は限りある資源
 ・炭水化物は夕食で摂る

・『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー
・『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』金森重樹
・『食べても太らず、免疫力がつく食事法』石黒成治
・『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『大豆毒が病気をつくる 欧米の最新研究でわかった!』松原秀樹
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

必読書リスト その一

 原因を調べていくうちにわかった。弱った手、スペアタイヤ、二重あご、むくんだ肌、男のおっぱいを引き起こしていたのは脂肪ではなかった――【これらは炎症のせいだった】(もっとも、炎症の下に脂肪がたっぷり隠れてはいたけれど)。アンチエイジングのバイオハッカーである僕は、炎症が老化の原因というのは知っていたものの、自分の生態に起こっている他のほぼすべても炎症に関係していたは気づいていなかった。

【『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー:栗原百代〈くりはら・ももよ〉訳(ダイヤモンド社、2015年)以下同】

 20年前に体重140kgだった億万長者が10年で50kgの減量に成功した。30万ドルを費やしてあらゆるダイエット法を試したという。ダイエットの原義は「食習慣」である。食事制限による痩身術と誤解している人が多い。本書はデイヴ・アスプリーが編み出した「バターコーヒー」で一躍世界的な脚光を浴びたベストセラーである。

「慢性炎症は生活習慣病とがんに共通する基盤病態」(真鍋研究室)であり、「2型糖尿病患者は一般に肥満で,慢性の炎症を患い,インスリンに抵抗性がある(インスリンは血中の糖を取り込んでエネルギーとして保存するために働くホルモン)」(日経サイエンス2010年2月号)。自己免疫疾患アトピー性湿疹は順序が逆だが症状として炎症反応が起こる。最近ではアルツハイマー病も「脳の炎症」と考えられている(『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン)。

【調査研究の結果、多くの病気の中心には高度の炎症があることが何度も示されてきた】。心疾患(しんしっかん)、がん、糖尿病はアメリカの全死因の70%近くを占めるが、これらの病気すべてに共通しているのが炎症だ。また炎症は、多くの自己免疫疾患や一部の精神衛生上の問題ともつながっている。
 僕もそうだったが自分では炎症の症状をあまり感じていなくても、脳は体のどの部位の炎症にもきわめて敏感で集中力を弱められてしまうから、炎症を放っておくと、体の痛みや不調を感じだすよりずっと前に、頭のキレが鈍る。そう、ぼんやり頭と、いつものむくみにいますぐ対処すべき理由は、これらがその先のもっと深刻な問題の危険信号だからなのだ。

 痛みの伴わない炎症が厄介なのだ。肥満は既に病気として捉えられているが、肥満そのものを炎症状態と考えてよかろう。外傷以外のあらゆる炎症の原因は食べ物にある。口から入った毒に対する免疫反応が炎症なのだ。そしてまた過剰な栄養も毒と同じ作用をもたらす。人類史を振り返っても食べるのに困らなくなったのは第二次世界大戦からの復興以降のことだ。まだ100年に満たない期間である。

 近代化によって文明病が、近代化が行き渡ることで現代病が生まれた。栄養学は最も学問の名に値しない学問だが、摂取カロリーを全て燃料と考え、脂質は体の脂肪になると錯覚してミスリードし続けてきた。コンピュータによって分子科学が発達したことで栄養学の誤謬(ごびゅう)が次々と明らかになりつつある。栄養学は土下座をして出直すべきだろう。

【大切なのは、反栄養素を含む食品はなるべく摂らないで、免疫系を刺激する食品は完全に避けて、免疫反応を抑制することだ】。  たいていの人は食品に添加されていそうな保存料、農薬、着色剤など、反栄養素の一形態である毒素には注意しているのに、これらが食物への渇望をかきたて、脳のパフォーマンスを低下させることを理解している人はほとんどいない。日常生活に隠れている「自然由来の反栄養素」のことをわかっている人は、さらにわずかしかいない。
 この毒素は、植物および植物製品の栽培や貯蔵中に形成されるもので、その主な機能は、植物が繁殖するために動物、昆虫や微生物、菌類に食べられ愛ようにすること。そう、植物は、僕らが食べるために進化したんじゃない。僕らに食べ【られない】ために、複雑な防御システムを発展させてきたのだ!(中略)
 自然由来の反栄養素の主なものには、レクチン、フィンチ酸、シュウ酸、カビ毒(マイコトキシン)がある。

 植物は動くことができない。このため昆虫や動物に襲われると毒を放って身を守る。シュウ酸は聞いたことのある人が多いだろう。ホウレンソウを茹でるのはシュウ酸を取り除くためだ。野菜を煮た時に出る灰汁(あく)を毒と考えればよい。

 不健康は糖質の摂(と)り過ぎによってもたらされる。要は穀物と砂糖だ。糖質は血糖値を一気に上昇させ、インスリン反応が起こる。血中のブドウ糖が過剰になるとインスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、膵臓のインスリン分泌能力が低下する。尿にまで糖が出るから糖尿病というのだ。しかも糖質の中毒性(依存性)はコカインよりも高いというデータがある。甘いものは多幸感を招くが、少し経つとボーッとしてくることが多い。上昇した血糖値がインスリンで一気に下がると今度は低血糖状態になるためだ。

 個別が普遍に通じるわけではないが、デイヴ・アスプリーの努力は多くの人に新しい知識と賢明なヒントを与えてくれるだろう。



インターバル速歩/『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博

2021-02-19

重商主義は世界商業の覇権をめぐる戦争の時代/『時計の社会史』角山榮


・『超訳「国富論」 経済学の原点を2時間で理解する』大村大次郎
『火縄銃から黒船まで 江戸時代技術史』奥村正二

 ・重商主義は世界商業の覇権をめぐる戦争の時代

『世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界』川北稔

世界史の教科書
必読書リスト その四

 こうしてまず16世紀の世界を支配したのは、新大陸を発見したスペイン、および東洋への海上ルートを掌中に収めたポルトガルであった。ところが17世紀になると、世界史の舞台に登場したのはオランダとイギリスである。両者はスペイン・ポルトガルに代わって覇権をめぐって激しく争い、17世紀末にはルイ絶対王権を背景にフランスが一枚加わって、海上の覇権争いはいっそう熾烈となった。
 17世紀初めから18世紀中ごろにいたる時代は、経済史上これを重商主義とよんでいるが、重商主義という表現からくる平和な商業競争のイメージとはまったく異なり、オランダ、イギリス、フランス、スペインを中心に周辺諸国もまきこんで、世界商業の覇権をめぐって戦争につぐ戦争、海戦また海戦といった動乱の時代を迎えた。
 海上制覇を左右した要因はいくつかある。まず決め手になるのは、軍事力としての強力な海軍の保有である。だから各国とも軍艦の数、大きさ、備砲数、大砲の性能、造船技術に力を入れたことはいうまでもない。しかしこうした軍事力とは直接結びつかないまでも、各国とも解決を迫られていた共通の課題があった。しかもその解決が海上制覇にとって、ある意味で決め手になるような重要な課題を抱えていたのである。その難題というのは正確な経度の測定である。というのは、正確な経度が測定できなければ船の位置を知ることができず、いわば眼の不自由な人が勘だけに頼って自動車を運転するようなものだからである。そのためにガリヴァが南洋で座礁したような海難事故は、今日では考えられないくらい頻繁に起こっていた。それがもし軍艦であるなら、敵以上にこわいのは海難による自滅である。その心配されていたことが実際に起こったのである。

【『時計の社会史』角山榮〈つのやま・さかえ〉(中公新書、1984年/吉川弘文館、2014年)】
 私の手元にあるのは新書版で、「ザ・新書」という敬称で呼びたくなるほどの一冊。川勝平太著『日本文明と近代西洋 「鎖国」再考』で本書を知った。このように面白くない本が面白い本につないでくれることがあるので読書には無駄がないと考えてよろしい。しかも、『超訳「国富論」』と併読していたため、上記テキストで理解が深まった。

 更に本テキストが重要なのはワシントン海軍軍縮条約(1922年)をも示唆しているためだ。つまり軍の暴走や五・一五事件にまでつながる話なのだ。

 私は全く時計に興味がないし、腕時計も持っていない。携帯電話すら持ち歩くことが少ないため、今でも道行く人に時間を尋ねることがある。そんな私でも本書の内容には引きずり込まれた。時計と社会を巡る見事な近代史となっている。文章、内容ともに完璧な新書といっていいだろう。

「連想」ではなく「類推」と訳すべき/『規律とトレーダー 相場心理分析入門』マーク・ダグラス


『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』ジャック・D・シュワッガー
『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新
『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー
『一目均衡表の研究』佐々木英信
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ

 ・「連想」ではなく「類推」と訳すべき

『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス
『伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術』カーティス・フェイス
『ワイルダーのアダムセオリー 未来の値動きがわかる究極の再帰理論』J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア
『フルタイムトレーダー完全マニュアル』ジョン・F・カーター
『タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門 スーパートレーダーになるための自己改造計画』バン・K・タープ
『週末投資家のためのカバード・コール』KAPPA
『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦
『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希

必読書リスト その二

連想

 連想とはわれわれの思考方法のひとつで、類似する外部世界の情報が自動的に関連づけられることである。その形態は次の二つに大別される。そのひとつは顕著な特徴を持つ人間や物体などを区別し、それらを類似するグループに分類することを指す。(中略)
 連想のもうひとつの形態は、外部からの知覚情報をある出来事と関連づけることである。

【『規律とトレーダー 相場心理分析入門』マーク・ダグラス:関本博英〈せきもと・ひろひで〉訳(パンローリング、2007年)】

 たとえ原書が「association」であったとしても、ここは「類推」と訳すべきだ。致命的なミスといってよい。

アナロジーは死の象徴化から始まった/『カミとヒトの解剖学』養老孟司

 マーク・ダグラスの科学的視点が「連想」だとぼやけてしまう。小さなことではあるが見逃せない瑕疵(かし)だ。

2021-02-18

フランス人マダムに教えてもらった、世界一おいしいアイスティーの作り方


金森式紅茶ゼリー

 ・フランス人マダムに教えてもらった、世界一おいしいアイスティーの作り方

教えてもらった、マダム式氷を使わないアイスティーの作り方

(1)できればやかんではなく、鍋に2リットルの水を入れ、沸かす。
(2)沸騰したら火を止め、ティーバッグを3包入れてふたをし、21分蒸らす。
(3)ふたをはずし、菜箸などでそっとティーバッグを取り出す。
(4)粗熱が取れるまで放っておき、粗熱が取れたらピッチャーやジャグなどに移し変え、冷蔵庫でひと晩冷やす。

フランス人マダムに教えてもらった、世界一おいしいアイスティーの作り方 (2/3) 〈dot.〉|AERA dot.

「アホみたいに美味い」10分もかからずに出来るその辺のよりも5000兆倍おいしい勝利のミルクティーの作り方 - Togetter

2021-02-17

外国為替は資産ではない/『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦


『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』ジャック・D・シュワッガー
『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新
『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー
『一目均衡表の研究』佐々木英信
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
・『規律とトレーダー 相場心理分析入門』マーク・ダグラス
『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス
・『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
『伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術』カーティス・フェイス
『ワイルダーのアダムセオリー 未来の値動きがわかる究極の再帰理論』J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア
『フルタイムトレーダー完全マニュアル』ジョン・F・カーター
『タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門 スーパートレーダーになるための自己改造計画』バン・K・タープ
『週末投資家のためのカバード・コール』KAPPA

 ・外国為替市場でテクニカル分析は絶滅した
 ・外国為替は資産ではない

『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希

【FXつまり外国為替市場は、資産運用の場ではありません。
 外国為替は、株式や債券、不動産などといった資産ではない】からです。資産ではないものを対象として、どうやって「資産運用をする」というのでしょう? まったく違う世界のものだからこそ、株式や不動産などの「資産」との価格の連動性が低いのです。

【『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦〈とみた・きみひこ〉(ぱる出版、2015年)以下同】

 ドルとダウは連動性が低いが、円と日経平均には連動性がある。ただし「外為が資産ではない」との指摘に眼を開かれる。その価値は金利差分でしかなく、価格の上下動によってあっさりと吹き飛ぶ範疇に収まる。しかも経済政策は緩やかなインフレを目指すため通貨の価値は常に押し下げられる。

 為替取引の優位性はその流動性と24時間可能な取引時間にある。株式相場は9:00~15:00(昼休み1時間を含む)までだからザラ場を見ることが難しいサラリーマンも多いことだろう。その上株式の場合、売買が白熱すると値がつかないことも多い。FX会社はそこに目をつけたのだろう。「外国為替市場は、資産運用の場ではありません」。しかし利殖の機会ではある。

 ひとこで言えば、外国為替市場とは「【通貨と通貨との交換比率に賭ける鉄火場】」です。世界中のプロが、壮絶な闘いの末に瀕死の重症を負ったり、あえなく討ち死にしたりしている場所です。素人が、用もないのに近づくところではありません。

 プロの本音といえば聞こえはいいが、ではなぜプロが通貨の取引をするのか? それは圧倒的な流動性があるからだ。よもや実需筋の外貨調達だけで仕事をしているわけではあるまい。

 最後に味わいのあるテキストをいくつか紹介しよう。

 相場の世界で「もし」などと言ったら、「お前はもう死んでいる」と言われるのが関の山です。

 外資系の世界は、徹頭徹尾「【性悪説の世界】」です。

【他人の相場観に頼る人は、プロではありません】。

 したがって、【「ヘッジファンドが動いた」という情報は、すべて作り話】ということになります。

 マネーと欲望で描くのがマーケットという物語である。全プレイヤーの合意が価格として示され、上昇と下降を繰り返す。真実は値動きのみ。乗るのも降りるのも自由なだけに規律を欠けば、いつでも破滅が待っている。

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2021-02-15

外国為替市場でテクニカル分析は絶滅した/『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦


『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』ジャック・D・シュワッガー
『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新
『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー
『一目均衡表の研究』佐々木英信
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
・『規律とトレーダー 相場心理分析入門』マーク・ダグラス
『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス
・『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
『伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術』カーティス・フェイス
『ワイルダーのアダムセオリー 未来の値動きがわかる究極の再帰理論』J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア
『フルタイムトレーダー完全マニュアル』ジョン・F・カーター
『タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門 スーパートレーダーになるための自己改造計画』バン・K・タープ
『週末投資家のためのカバード・コール』KAPPA

 ・外国為替市場でテクニカル分析は絶滅した
 ・外国為替は資産ではない

『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希

 プロの世界でも、生き残ったのはごく一部の方だけです。
【FXで安定的に儲け続けることは、九分九厘不可能です。】
 大勢のプロの方々が、最後には損をして静かに消えていくのを、わたしはこの目で31年間見続けてきました。生存率1パーセント未満という世界です。

【『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦〈とみた・きみひこ〉(ぱる出版、2015年)】

 富田公彦はJPモルガン・チェースのディーラーを務めた人物で、現在は中西健治参議院議員(自民党、神奈川選挙区)の政策秘書をしている。文章が平易で読みやすい。テレビCMで頻繁に見るようになったFX取引への警鐘を鳴らす内容となっている。

 外国為替市場というサーキットでは、プロのドライバーが猛烈なスピードでしのぎを削っています。プロは、高性能のF1マシンに乗り、強力なサポート・チームを引き連れて戦っています。それでも悪戦苦闘の連続で、安定的な収益を上げることができていません。
 そんな場所は、近所の販売店で買った量産車に乗ってサポートもなしに参戦してきた人がいます。個人投資家のみなさんです。

 けんもほろろの言い草で、amazonレビューの低い評価はさしずめFX個人投資家によるものだと思われる。富田に言わせれば「一昨日来やがれ」ということなのだろう。一番驚かされたのは以下の記述である。

 最大の懸念材料は、ほぼすべての方がテクニカル分析とかチャート分析(以下、テクニカル分析)と呼ばれる手法をとっていることです。
 これは正直言って驚きました。なぜなら、実は、この【テクニカル分析という投資法・分析手法は、外国為替市場のプロの世界ではずい分前に絶滅してしまったもの】だからです。
 おそらく今世紀のはじめには、世界中の主要な金融機関や運用会社からは消えていたはずです。成功された個人投資家のみなさんは、この事実をご存じなかったのだと思います。

 吃驚仰天である。随分前に読んだのでうろ覚えだが、結局は「ただ、値動きについてゆくだけ」みたいなことが書かれていたはずだ。通常、投資手法はテクニカル分析とファンダメンタルズ分析に大別できる。ファンダメンタルズとは経済の基礎的条件である。再度確認しよう。

 まず、誤解のないように申し上げておきます。テクニカル分析が絶滅したのは、あくまで外国為替市場です。
 さらに言うならば、「【外国為替市場の人間が、株式市場から勝手に持ち出してきて、使ってみたら大失敗だった】」という話です。わたしもその一人です。若い頃に異常なまでに没頭し、みずからの手で「役に立たない」ということを証明するハメになってしまいました。

 富田が外国為替のプロであることに疑問の余地はないが、説明能力が劣っているのもまた確かである。テクニカル分析以前にはチャートがなかったのだろうか? チャート研究はテクニカル分析そのものである。また、「ただ、ついてゆくだけ」ということはレートパネルの動きだけを見ていると思われるが、もしもそれで勝てるなら短期間で億万長者になっているはずだ。富田がやや狡(ずる)いのは自分の成績を明かしていない点にも現れている。

 実際、世界の富豪は殆どが株式による含み益や配当で富を増やしており、為替長者という存在は聞いたことがない。なぜなら外国為替は資産ではないからだ。

2021-02-14

精神障碍者を町に解き放つ/『ベリー オーディナリー ピープル とても普通の人たち 北海道 浦川べてるの家から』四宮鉄男


『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫
『悩む力 べてるの家の人びと』斉藤道雄
『治りませんように べてるの家のいま』斉藤道雄

 ・精神障碍者を町に解き放つ

『べてるの家の「当事者研究」』浦河べてるの家
『石原吉郎詩文集』石原吉郎

虐待と知的障害&発達障害に関する書籍

 べてるのメンバーはどんどん町へ出ていく。病気が治ってからとか、症状がよくなってから、というのではない。症状が良くても悪くても、よほど状態が悪かったり急性期の錯乱状態でもなければ、本人に外に出ていきたいという意志や意欲があれば、積極的に後押しして町へ出ていけるようにしている。(中略)
 患者さんが町に出ていくと問題が起きやしないかと心配する人がいる。しかしべてるでは、誰もそんな心配はしない。むしろ問題が起こることを歓迎する。問題が起こった方が、問題の在りかが明らかになり、それが問題解決の手がかりになる。そもそも、べてるには、問題は必ず解決しなければいけないという発想がない。すぐに解決するような問題は放って置いてもたいしたこがないし、逆に、本質的な大問題は少々の努力をしてみても、すぐにどうこうなるものではないからだ。

【『ベリー オーディナリー ピープル とても普通の人たち 北海道 浦川べてるの家から』四宮鉄男〈しのみや・てつお〉(北海道新聞社、2002年)】

 四宮鉄男はドキュメンタリー映画監督で、長期間に渡ってべてるの家を撮り続けてきた。斉藤道雄著『悩む力 べてるの家の人びと』と同年に刊行されており、べてるが広く社会に知られるきっかけとなったことだろう。驚くほど文章が巧みで著作が一冊しかないのはもったいない限りである。必読書に入れてもよかったのだが既にべてる本は3冊あるため教科書本とした。

『ベリー オーディナリー ピープル』は全8巻、続いて『シリーズ・精神分裂病を生きる』は全10巻のビデオ作品となっている。たった今知ったのだが林竹二〈はやし・たけじ〉の映像作品も撮っていた。こりゃ本物ですな。現在入手可能な作品は限られているが、図書館を探せばビデオ作品は見ることができるかもしれない。尚、一連の映像はコピー可で営利を目的としていない。

 精神障碍者といえばどうしてもレッサーパンダ帽男殺人事件(2001年)を思い出してしまう。

『自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』佐藤幹夫

 あの頃は幼児を高層マンションから投げ落とす事件が何度も起こった(児童投げ落とし事件の考察 異常犯罪行動学の試み:佐藤弘弥)。後日報道が途絶えた。いずれも知的障碍者や精神障碍者の犯行だった。本書でも池田小事件(2001年)が起こった際のべてるメンバーの反応が紹介されている。犯人は統合失調症であった。

 こうした事件があると「精神障碍者は危ない」となりがちだが、そこには認知バイアスが働いている。殆どの障碍者は罪を犯していない。健常者だって人を殺す。正確な犯罪率を出すことにも意味はないだろう。例えば都道府県の窃盗犯罪率を調べて、最も多い県名を挙げて「泥棒県」と評価するような行為に堕してしまう。こうしたデータは原因を究明するところに意味があり、長期的な視点に立たないと単純な現状批判の刃(やいば)になりかねない。

「開かれた社会」という言葉がある。べてるが行ったのは「社会を開かせる」一種の蛮行であった。横紙破りといっていい。地域に迷惑をかけ、110番通報されることも多かった。しかし数年を経て地域に溶け込み、更にはなくてはならない存在にまでなるのである。べてるの家は地域密着サービス事業を行い、勇名を馳せてからは観光資源にまでなる。ともすれば障碍者の自由は地域住民の不自由につながりなけないが、不自由と自由が入り乱れて予測し得ない化学反応を起こした。

 私が知る限り、べてるの家は最高に理想的なコミュニティである。ダイアローグ(対話)の意味はべてるを知らずして理解できまい。向谷地生良〈むかいやち・いくよし〉(ソーシャルワーカー)と川村敏明医師の功績は年々輝きを増している。





2021-02-11

金森式紅茶ゼリー


 ・金森式紅茶ゼリー

レシピ

【材料】
・午後の紅茶 おいしい無糖 1本(500cc)
・ゼラチン 10グラム(大さじ1)
・生クリーム 適量

【作り方】
① 鍋に午後の紅茶おいしい無糖を入れ、ゆっくり弱火であっためる。沸騰する直前で火を止める
② 耐熱容器に移し、ゼラチンを投入。かき混ぜる。じゅうぶんかき混ぜたら、粗熱をとる
③ 冷蔵庫に入れ、1時間ほど冷やせば完成。生クリームをかけ、食べる

紅茶ゼリーで空腹感とさよなら。「#金森式」で17㎏痩せたダイエット奮闘記 | 日刊SPA!

Q、ゼラチンを入れたのに固まる気配がありません。失敗ですか?[よくある質問]



 定価2646円のゼラチンがamazonだと853円(パントリー商品)。

トレーディングにおける七つの大罪/『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ


『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』ジャック・D・シュワッガー
『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新
『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー
『一目均衡表の研究』佐々木英信

 ・トレーディングにおける七つの大罪

『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
・『規律とトレーダー 相場心理分析入門』マーク・ダグラス
『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス
『伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術』カーティス・フェイス
『ワイルダーのアダムセオリー 未来の値動きがわかる究極の再帰理論』J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア
『フルタイムトレーダー完全マニュアル』ジョン・F・カーター
『タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門 スーパートレーダーになるための自己改造計画』バン・K・タープ
『週末投資家のためのカバード・コール』KAPPA
『なぜ専門家の為替予想は外れるのか』富田公彦
『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希

第5章
 トレーディングにおける7つの大罪
 いかに戦い、打ち勝つか

 第1の大罪――すぐに損切りできないこと
 第2の大罪――利益を勘定すること
 第3の大罪――時間軸を変更すること
 第4の大罪――より多くを知ろうとすること
 第5の大罪――過度に自己満足に陥ること
 第6の大罪――間違った勝ち方をすること
 第7の大罪――正当化

【『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ:林康史〈はやし・やすし〉監訳、藤野隆太〈ふじの・りゅうた〉訳(日経BP、2002年)以下同】

 何となく男女関係を思わせる価値観である。第3の大罪は結婚を先延ばしにする無責任な男か(笑)。トレードとは交換の意である。その意味ではあらゆる経済行為がトレードといってよい。日常生活では「買う」と表現するが、トレード意識を持つことが重要だ。給与も同様である。一度時給換算をしてみるといい。

 個人的には第6と7の大罪が身につまされる。トレードは裁量であろうとシステムであろうと手法である。ゆえに勝ち方・負け方が問われる。結果オーライという考え方もあろうが、飽くまでも長期的視点に立つのが正しい。誤った勝ち方をすると取り返しのつかない癖がついてしまう。更にその結果を正当化すると「誤った成功体験」として記憶される。「あの時上手くいったから今度も大丈夫だ」という保証はない。マーケットは生き物なのだ。

 我々のアプローチはテクニカル手法である。マーケット心理の変化を反映し、信頼できるさまざまなチャートに基づく。チャートには、買い手と売り手の力関係が変化した瞬間を特定できるパターンがある。
 チャートはマネーの動きの足跡とでもいうべきものである。チャートは嘘をつかない。トレーダーにとってマーケットは患者なのであり、チャートは患者の内部を映し出すレントゲン写真なのである。

 アメリカの現役プロトレーダーの間では既にテクニカル手法は絶滅したと伝えられるが、チャートを丸っきり見ない人はいないだろう。それがどのような足であろうと建玉をする際はチャートを確認するはずだ。

 投資はゴルフ以上にメンタルの作用が大きい世界である。手法よりもメンタルが問われると言ってよい。

 私は横書きというだけで本を放り投げてしまうことが多いのだが、本書は最後まで読ませられた。

2021-02-10

読書讃歌/『書斎の鍵 父が遺した「人生の奇跡」』喜多川泰


・『賢者の書』喜多川泰
・『君と会えたから……』喜多川泰
『手紙屋 僕の就職活動を変えた十通の手紙』喜多川泰
『心晴日和』喜多川泰
『「また、必ず会おう」と誰もが言った 偶然出会った、たくさんの必然』喜多川泰
『きみが来た場所 Where are you from? Where are you going?』喜多川泰
・『スタートライン』喜多川泰
・『ライフトラベラー』喜多川泰

 ・読書讃歌

『株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者』喜多川泰
『ソバニイルヨ』喜多川泰
『運転者 未来を変える過去からの使者』喜多川泰

必読書リスト その一

 部屋着に着替えた浩平は、ダイニングに行き、料理をしている日菜にカウンター越しに話しかけた。
「ママ、今日俺は目覚めたよ」
「何言ってるのよ」
 日菜は鼻で笑って相手にしなかった。
「本当だ。俺はこれまでの俺の生き方を改める」
 いつになく強い口調に、日菜は手を止めて浩平を見た。

【『書斎の鍵 父が遺した「人生の奇跡」』喜多川泰〈きたがわ・やすし〉(現代書林、2015年)】

 必読書の一冊目にした。本を取り巻く物語であり、傷ついた男性が再生するドラマである。小説の途中に『書斎のすすめ 読書が「人生の扉」をひらく』という90ページほどの解説がある。この読書礼賛が私の趣味に合わない。本好きが昂じて古本屋にまでなってしまった私にとっては、書物が「人生の扉を開く」のは確かだが、「部屋の扉が開かなくなる」のもまた確かなのだ。私に言わせれば読書はただの病気に過ぎない。

 浩平は人々との出会いを通して逝去した父親の思いを知る。従姉妹の洋子、営業先の志賀会長、部下の加藤、上司の井上部長に導かれて答えは自(おの)ずから得られた。鍵が開けたのは「自分の心」であった。

 両親が結構本を読んでいたこともあって私は幼い頃から本が好きだった。文字が読めない頃から本を開いていた記憶がある。絵本はたくさんあったし、小学校に上がると小学館の『世界の童話 オールカラー版』を毎月1冊ずつ買ってもらった。


 小学校の高学年で図書室の本の半分以上の図書カードに私の名前があったはずだ。本を借りすぎて怒られたこともあった。誰もが恐れるオールドミスのヨシオカ先生に職員室で叱責され、反省文を提出する羽目となった。

 ずっと本を読んできたが病の度合いが本格化したのは、やはり上京して神田の古書街に足を運んだことが切っ掛けとなった。やがてブックオフが登場する(1990年)。私にとっては安価なドラッグが現れたようなものだ。直ぐに10冊以上買う癖がついた。やがて20冊となり、クルマを持つと30~40冊と増えていった。30代で3000冊、40代に入ると5000冊を数えた。5000冊がどの程度の量かというと、3部屋の壁ほぼ全部が本棚で各段には前後2列ずつ並べても収まらない。床は林立する本で覆われつつあった。書籍のビルはやがて都市を形成し、残されたのは奥の細道のような通路だけであった。決して笑い事ではない。2年に一度くらいの割合で書籍の重みによって床が抜けたというニュースが報じられているのだ。

 私にとって本を読む行為は人に会うことと同じである。問われるのはコミュニケーションの深さである。文字をなぞり、受け取るだけが読書ではない。優れた書籍は必ず開かれた精神で書かれている。本物の一書は答えに窮する問い掛けをしてくる。読み手は何をもって応答するのか? それは個性に他ならない。

 為になる本は読んできた。感動した本も多かった。しかしながら私の周囲にいる人々の魅力を上回ることはなかった。それほど私は人間関係に恵まれていた。『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』(レヴェリアン・ルラングァ著)を読んだのは45歳の時だ。私は完膚なきまでに打ちのめされた。『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』や『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』は過去の歴史であった。だがルワンダ大虐殺の場合、私は同時代を生きていた。「なぜ切り刻まれたツチ族の叫び声が私の耳には聴こえなかったのか?」と我が身を苛(さいな)んだ。あまりの残酷に宗教や哲学の無力を思い知った。生きる意味は殺す意味に呆気なく踏みにじられた。

 1年ほどの煩悶を経てクリシュナムルティと出会った(『私は何も信じない クリシュナムルティ対談集』)。『子供たちとの対話 考えてごらん』を通して私は初めてブッダの教えを理解した。心の底から「本を読んできてよかった」と思った。

 だからといって私がルワンダ大虐殺やクリシュナムルティを布教するつもりはない。ただ静かに胸の内に仕舞って今日を生きるだけのことである。

2021-02-07

背骨を自由に解き放つ/『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏


『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』ロビン・マッケンジー
『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』

 ・背骨を自由に解き放つ

【肩甲挙筋の圧痛を調べて、右が痛かった場合は右側から、左が痛かった場合は左側からゆらしましょう】。どちらかわからない場合は、僧帽筋の圧痛がある側からゆらしましょう。

【『5分間背骨ゆらしで体じゅうの痛みが消える 自然治癒力に火をつけて、首・肩・腰痛・ひざ痛を解消!』上原宏(現代書林、2018年)】

 著者が開発したDRT(ダブルハンド・リコイル・テクニック)という療法の解説書である。手技は画像だとわかりにくい。そもそも実際に見たとしても素人目では何をどうするのかが理解できないことだろう。職人技と一緒である。

「頭痛、腰痛、肩こり、手のこわばり、関節痛(ひざ、ひじ、股)をはじめ、ギックリ腰、椎間板ヘルニア、頚椎ヘルニア、O脚、顎関節症、むち打ち、ひざ痛、腱鞘炎、リウマチ、四十(五十)肩、神経痛、自律神経失調症、めまい・耳鳴り、ゴルフエルボー、テニスエルボー、産後の骨盤矯正、内科的症状等々」に効果があるという。健康本の「効果」と「体験談」は眉に唾(つば)をつけるのが私の習い性となっている。個別が普遍につながるとは限らない。梅干しを額に貼りつければ頭痛が治る人も1万人に一人くらいはいることだろう。ただし梅干しを貼らずとも治るタイミングであった可能性は否定できない。我々の思考は時間の前後で因果関係をとらえる癖があるから厄介だ。

〈手の当て方〉
 両手の指を少し曲げた状態にして受け手の体(2カ所)に当てます。その際、手のひらの下に指一本程度入るほどの隙間を開け、手のひらの付け根部分で背骨に直接コンタクトする(接触させる)のがポイントです。

 上原本人の動画もあるのだが撮影者が喧しいので、もっと見やすい動画を紹介しよう。


 たぶん効果はある。背骨を自由に解き放つ動きである。首、背骨、腰は絶えず重力に逆らおうとして力が加わっている。体を支える骨をしっかりと使えれば問題はないのだが、骨には感覚がないためどうしても筋肉を楽にしようとして姿勢が悪くなる。我々が楽だと思っている姿勢は骨に対して強い負荷をかける。もう一つは日本人の場合、床に坐ることが多いため骨盤が後傾してしまうのだ。

 私が背骨ゆらしを評価するのは、ゆる体操と動きが似ているためだ(『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫)。もう一つ思い出したのは紙屋克子である(『紙屋克子 看護の心そして技術/別冊 課外授業 ようこそ先輩』NHK「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ、KTC中央出版編)。NHKの番組では植物状態の患者を丸いトランポリンに載せて、周囲で看護師たちがトランポリンを押して上下運動をしていた。身体障碍者についてはプールなども効果があるとされている。浮力で体が軽くなるため身体の自由度が増す。

 健康な体であれば本来は睡眠によって疲労を恢復(かいふく)するのだろう。重力を逆利用するという点では逆立ちも効果があると思う。ひょっとすると海で波に揺られているだけでも体が目覚めるかもしれない。