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2018-12-21

2016年に読んだ本ランキング


2015年に読んだ本ランキング

 ・2016年に読んだ本ランキング

2017年に読んだ本ランキング

 2016年のランキングを書いてないことに気づいた。書けなかった理由すら思い出せない。付箋(ふせん)を貼ったページは全て画像で保存しているので記録に漏れはないのだが、量が多すぎて読んだ時の心の動きがわからない。まあ、そんなわけで不正確な覚え書きとして残しておく。

 まずは印象に残った巧妙な悪書を2冊。

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治
『ジェノサイド』高野和明

 続いて良書。

『なぜ専門家の為替予想は外れるのか』富田公彦
『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
「三木清における人間の研究」今日出海(『日本文学全集 59 今東光・今日出海』)

 次に再読、三読した必読書。外れなし。私の眼は確かだ(笑)。

『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『氷川清話』勝海舟:江藤淳、松浦玲編
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『ウィンブルドン』ラッセル・ブラッドン
『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『「疑惑」は晴れようとも 松本サリン事件の犯人とされた私』河野義行
『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世
『なぜ美人ばかりが得をするのか』ナンシー・エトコフ
『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン
『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ

 次にオススメ本。

『声』アーナルデュル・インドリダソン
『裏切り』カーリン・アルヴテーゲン
『風の影』カルロス・ルイス・サフォン
『「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する』橘玲
『三島由紀夫の死と私』西尾幹二
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖
『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思
『さらば、資本主義』佐伯啓思
『自滅するアメリカ帝国 日本よ、独立せよ』伊藤貫
『苦しみをなくすこと 役立つ初期仏教法話 3』アルボムッレ・スマナサーラ
『心の中はどうなってるの? 役立つ初期仏教法話5』アルボムッレ・スマナサーラ
『結局は自分のことを何もしらない 役立つ初期仏教法話6』アルボムッレ・スマナサーラ
『日露戦争を演出した男 モリソン』ウッドハウス暎子
『武士の娘 日米の架け橋となった鉞子とフローレンス』内田義雄
『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』福岡伸一
『動的平衡2 生命は自由になれるのか』福岡伸一
『失われてゆく、我々の内なる細菌』マーティン・J・ブレイザー
・『人間原理の宇宙論 人間は宇宙の中心か』松田卓也
『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』鈴木猛夫
『コールダー・ウォー ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦争』マリン・カツサ
『天皇畏るべし 日本の夜明け、天皇は神であった』小室直樹
『ブッダが説いたこと』ワールポラ・ラーフラ
『呼吸による癒し 実践ヴィパッサナー瞑想』ラリー・ローゼンバーグ
『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』岸見一郎、古賀史健

 必読書入りしたのが以下。

『5つのコツで もっと伸びる カラダが変わる ストレッチ・メソッド』谷本道哉、石井直方
『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘
『大東亜戦争肯定論』林房雄
『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ
『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎
『日本永久占領 日米関係、隠された真実』片岡鉄哉
『父、坂井三郎 「大空のサムライ」が娘に遺した生き方』坂井スマート道子
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』多田富雄、柳澤桂子
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ
『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ
『複雑系 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』M・ミッチェル・ワールドロップ
『人が死なない防災』片田敏孝
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 で、ベスト10である。

10位 『量子力学で生命の謎を解く 量子生物学への招待』ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン
9位 『砂の王国』荻原浩
8位 『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』中川右介
7位 『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』工藤美代子
6位 『確信する脳 「知っている」とはどういうことか』ロバート・A・バートン
5位 『べてるの家の「当事者研究」』浦河べてるの家
4位 『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
3位 『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
2位 『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
1位 『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン

『人間の本性について』は一度挫折しているだけに思い入れが深い。

人間の本性について (ちくま学芸文庫)
エドワード・O ウィルソン
筑摩書房
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2012-10-08

「慈悲の瞑想」アルボムッレ・スマナサーラ


 このマントラはよい。思わず一緒に口ずさんでしまった。アルボムッレ・スマナサーラはスリランカの上座部仏教(テーラワーダ仏教)シャム派の日本大サンガ主任長老を務める人物(Wikipedia)。著作も数多く刊行されている。







怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉 (サンガ新書)怒らないこと 2―役立つ初期仏教法話〈11〉 (サンガ新書)死後はどうなるの? (角川文庫)原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章

仏教分裂の歴史/『慈経 ブッダの「慈しみ」は愛を越える』アルボムッレ・スマナサーラ

2012-10-11

アルボムッレ・スマナサーラ


 2冊読了。

 58、59冊目と書きたいところだが、『寺田寅彦随筆集 全五冊』を挫折してしまったので、53、54冊目『怒らないこと 役立つ初期仏教法話 1』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2006年)、『怒らないこと 2 役立つ初期仏教法話 11』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2010年)/良書。私は大乗仏教よりも初期仏教を重んじているので、いずれの内容もストンと腑に落ちた。科学的知識に若干違和感を覚えるものの、ま、大した問題ではない。仏教では地獄界の業因を「瞋(いか)り」と説いているが、その理由を初めて理解できた。深遠な哲理をわかりやすい言葉で教えている。無知な者が読めば、ついついわかったような気になってしまうことだろう。よくよく熟読玩味すべきである。「2」を必ず読むこと。

2016-04-11

ブッダの教えを学ぶ


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と知的障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト

「仏教」と呼んでしまえば教条主義(ドグマティズム)に陥る。仏教哲学というのもピンと来ない。やはり「ブッダの教え」とすべきであろう。仏教徒とは教団に額づく者の異名であり、仏教を行じる者は仏教者・仏法者を名乗るべきか。個人的には「ブッダの教えに耳を傾ける者」で構わないと考える。

『シッダルタ』ヘルマン・ヘッセ
『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン
『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』アルボムッレ・スマナサーラ
『怒らないこと2 役立つ初期仏教法話11』アルボムッレ・スマナサーラ
『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元訳
『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
『原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章』アルボムッレ・スマナサーラ
『スッタニパータ[釈尊のことば]全現代語訳』荒牧典俊、本庄良文、榎本文雄訳
ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経 (ワイド版岩波文庫)
『ブッダが説いたこと』ワールポラ・ラーフラ
ブッダとクリシュナムルティ―人間は変われるか?

2012-10-21

布施の精神/『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン


『シッダルタ』ヘルマン・ヘッセ

 ・等身大のブッダ
 ・常識を疑え
 ・布施の精神
 ・無我

『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元訳
『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』アルボムッレ・スマナサーラ
『ブッダが説いたこと』ワールポラ・ラーフラ
『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』くさなぎ龍瞬
『自分を許せば、ラクになる ブッダが教えてくれた心の守り方』草薙龍瞬

ブッダの教えを学ぶ
必読書リスト その五

「昼食はすみましたか」
「いえ、まだです」
「それなら、これをいっしょに食べましょう」

【『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン:池田久代訳(春秋社、2008年)以下同】

 ブッダは常に言葉づかいが丁寧であった。インドでは現在にあっても不可触賤民が触れた食器をバラモン階級が使用することはない。「穢(けが)れ」に対する迷信はかように深い。そうであるにもかかわらずブッダは不可触賤民であるスヴァスティ少年に食事を勧めた。

 シッダールタはふたりの子どもに微笑んで、「みんなでいっしょにわけあって食べよう」と言ってから、白いご飯の半分をとりわけて、それにゴマ塩をつけてスヴァスティに渡した。

 少女スジャータと3人で慎ましい食事を摂(と)る。後年、ブッダが苦行を極めて死に瀕した際、乳粥(ちちがゆ)を与えてブッダの命を救った少女である。めいらくグループのコーヒーフレッシュもこの少女に因(ちな)んでいる。乳つながり。

 ブッダは静かに沈黙の中で食事を終える。

「きみたちは、どうして私が黙って静かに食事をしたのかわかりますか? いまいただいたお米やゴマの一粒一粒は、とてもありがたいものです。静かにいただくと、十分にそれを味わうことができるでしょう」

 これが「食べる瞑想」である。食事とは「他の生命」を摂取することだ。その意味で生は多くの死に依存している。植物の生を有り難いものとして押し頂く。香りを味わい、口に入った食感を意識し、咀嚼(そしゃく)に注意を払い、唾液と溶け合い、胃に収まり、臓腑に行き渡る様相を味わう。「他の生命」を体内に取り込む事実を明らかに客観的に見つめる。深く味わうことが供養にもなる。日常の食事は瞑想であり荘厳な儀式でもあった。

 会話を楽しみながら食事をするのが西洋の文化だが、生命に対する畏敬の念を欠いているように思われる。やはり日本で現在にまで伝わる「いただきます」の精神が正しい。

「きみが持ってきてくれたひとかかえの香草は、すばらしい瞑想の敷物になりました。昨夜と今朝、私はその上に坐って、平和に満ちた瞑想のなかで、すべてのものがはっきりと見えた。きみは私に大きな助けをくれたのですよ、スヴァスティ。私の瞑想行がもっと進んだら、その成果をきっときみたちとわかちあうことにします」

 ブッダは粗食を分かち合い、そして悟りの成果をもスヴァスティと分かち合うと告げる。ここに布施の精神があるのだ。アルボムッレ・スマナサーラの文章を読むと、より一層理解が深まることだろう。

 たとえばビデオをレンタルして一人で見るよりは、二人でわいわい見たほうが楽しいでしょう? たとえ自分がレンタル料を払っていても友達と見ればレンタル料以上の楽しみを得ているはずです。本当の楽しみは共有することで生まれます。いわゆる「布施」の精神です。幸福はそこから生まれます。物惜しみは布施の反対で、すごく苦しいのです。(中略)
 相手が求めようが求めまいが、ある程度のところで知らず知らずにわれわれはいろいろ共有します。幸福になりたければ、ものは「共有」するものなのです。

【『怒らないこと 2 役立つ初期仏教法話 11』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2010年)】

 ブッダは自らの振る舞いを通して教える。「教義に従え」などという姿勢は微塵もない。人間を型に嵌(は)めて矯正する思想とは一切無縁であった。ただ、しなやかに生の流儀を示した。

 寄付や供養を募る寺社仏閣・教団は多いが、彼らが分け与えるのを見たことがない。

2016-04-16

序文「インド思想の潮流」に日本仏教を解く鍵あり/『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集、『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵


 ・長尾雅人と服部正明
 ・序文「インド思想の潮流」に日本仏教を解く鍵あり
  ・秘教主義の否定/『アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために』岸見一郎

『ウパニシャッド』辻直四郎
『はじめてのインド哲学』立川武蔵
『バガヴァッド・ギーター』上村勝彦訳
・『神の詩 バガヴァッド・ギーター』田中嫺玉訳
『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵

スピリチュアリズム(密教)理解のテキスト

 ウパニシャッドは「奥義書」と訳されたり、「秘教」とよばれたりするが、その本来の意味は必ずしもはっきりしていない。語源的には「近く」(原語略)「坐る」(原語略)という意味があり、弟子が師匠に近座すること、こうして伝授される秘説、さらにその秘説を集録した文献を意味する、という解釈が一般に行なわれてきた。
 近来の学者は、それに対して次のような考え方を提示している。そのほうがより多くわれわれを納得せしめるようである。すなわちこの語は古くから「対照」「対応」の意味をもち、それはのちに述べる大宇宙と小宇宙との等質的対応の関係――究極的には宇宙の最高の原理であるブラフマンと、個体の本質としてのアートマンの神秘的同一化を説くウパニシャッドの内容に、よく符号調和するというのである。

【『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人〈ながお・がじん〉責任編集(中央公論社、1969年/中公バックス改訂版、1979年)】

 序文「インド思想の潮流」(長尾雅人、服部正明)に日本仏教を解く鍵がある。バラモン教の聖典ヴェーダは、サンヒター(本集)・ブラーフマナ(祭儀書、梵書)・アーラニヤカ(森林書)・ウパニシャッド(奥義書)の4部から成り、更に各部が四つに派生し、重ねて細密化し、絢爛(けんらん)たる思想のタペストリーを紡(つむ)ぐ。

 イエスがユダヤ教の論理に則ってキリスト教を説いたように、ブッダもまたバラモン教の論理を再構築・止揚するスタイルで教えを説いた。

六五〇 生れによって〈バラモン〉となるのではない。生れによって〈バラモンならざる者〉となるのでもない。行為によって〈バラモン〉なのである。行為によって〈バラモンならざる者〉なのである。

【『ブッダのことば スッタニパータ』中村元〈なかむら・はじめ〉訳(岩波文庫、1984年/岩波ワイド文庫、1991年)】

 言葉を自由に駆使しながら、バラモンを否定することなく、その階級制を撃破している。手垢まみれの表現を恐れずに使えば、ブッダはまさしく「言葉の天才」であった。そしてこの天才性に抗し切れず、額(ぬか)づくところに教義が形成される。

 インド仏教には二つの大きな流れがあり、上座部(じょうざぶ/いわゆる小乗・部派仏教・テーラワーダ)と大衆部(だいしゅぶ/いわゆる大乗)に分かれ、前者は南伝仏教(スリランカやタイ、ミャンマー)となり後者は北伝仏教(中国やチベット、日本)として伝わった。

 厳密にいえば大衆部=大乗ではなく、諸説があって定まっていない。学者ではない私が神経質になることもないのだが、やはり古本屋魂が許さないため、個人的には「初期仏教」「後期仏教」と表記する。

 インドの宗教史は、おおよそ以下の6期に分けることができる。

 第1期 紀元前2500年頃~前1500年頃 インダス文明の時代
 第2期 紀元前1500年頃~前500年頃 ヴェーダの宗教の時代(バラモン教の時代)
 第3期 紀元前500年~紀元600年頃 仏教などの非正統派の時代
 第4期 紀元600年頃~紀元1200年頃 ヒンドゥー教の時代
 第5期 紀元1200年頃~紀元1850年頃 イスラム教支配下のヒンドゥー教の時代
 第6期 紀元1850年頃~現在 ヒンドゥー教復興の時代

【『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵〈たちかわ・むさし〉(講談社学術文庫、2003年)以下同】

 根本分裂はブッダの死後100年頃と考えられているので、中村元説を取れば紀元前283年前後となる。

 全くの私見であるが、後期仏教はバラモン教復興(「バラモン教からヒンドゥー教へ」の流れ)への対抗措置として生まれたと考える。一言で述べれば、双方が「信仰化」を図(はか)ったのだ。具体的には祭儀を求めた大衆心理に迎合する形で仏教が密教化していった。

 インド仏教は紀元前5世紀あるいは紀元前4世紀に生まれて、13世紀頃にはインド亜大陸から消滅したのであるが、この千数百年の歴史は初期、中期、後期の3期に分けることができよう。
 まず、初期とは仏教誕生から紀元1世紀頃まで、中期は紀元1世紀頃から600年頃までの時期を指す。後期とは紀元600年頃以降、インド大乗仏教滅亡までである。

 そしてインドで仏教が消滅した13世紀に鎌倉仏教が花開くのである。

 アルボムッレ・スマナサーラが日本仏教の特徴を「祖師信仰にある」(『希望のしくみ』アルボムッレ・スマナサーラ、養老孟司)と喝破している(『希望のしくみ』アルボムッレ・スマナサーラ、養老孟司〈ようろう・たけし〉、宝島社、2004年/宝島SUGOI文庫、2014年)。そして祖師信仰が座主(ざす)・法主(ほっす)・血脈志向を生んだ。ここにウパニシャッドの近座思想が垣間見えるではないか。

 日本仏教は梵我一如に染まり、大日如来久遠本仏を設定し、即身成仏を説くのである。その神格化と理論化がヒンドゥー教変遷の歴史と酷似している。

 言葉はコミュニケーションの道具である。すなわち言葉を通してブッダの悟りに迫ることが大切なのであって、言葉を崇(あが)め奉(たてまつ)るるところにブッダの精神はない。ブッダの教えは仏教へと変わり果てた。

 私は数年前にクリシュナムルティと出会い、ブッダの姿がくっきりと見えるようになった。また、アメリカインディアンに伝わる言葉の数々はアルハット(阿羅漢)を示すものと考えている。バイロン・ケイティジル・ボルト・テイラーも現代のアルハットであろう。



仏教学への期待:長尾雅人、上山大俊
中央公論社「世界の名著」一覧リスト
「私は在る」(I Am)その二/『誰がかまうもんか?! ラメッシ・バルセカールのユニークな教え』ブレイン・バルド編

2016-06-27

ネレ・ノイハウス、桜部建、上山春平、仲谷正史、小林よしのり、アルボムッレ・スマナサーラ、他


 21冊挫折、9冊読了。

天災と国防』寺田寅彦(講談社学術文庫、2011年)/読みにくい。昨今は文章にスピード感、鋭さ、躍動感のいずれかがないと読む気が起こらず。

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ:高橋健次訳(草思社、2006年)/二度目の挫折。文章も構成も悪い。

インターネットは民主主義の敵か』キャス・サンスティーン:石川幸憲訳(毎日新聞社、2003年)/哲学書並みの難解さ。

すごい!ゼラチンふりかけ健康レシピ』浜内千波、藤野良孝(扶桑社ムック、2013年)/健康本で「すごい」「治る」「絶対」「必ず」は禁句である。ま、インチキ本と思ってよい。食用ゼラチンをゴマなどに混ぜるだけ。フードプロセッサーがあればレパートリーは格段に増える。お肌がきれいになるらしいよ。取り敢えずゼラチンは買った(笑)。

長くつ下のピッピ』アストリッド・リンドグレーン:大塚勇三訳、桜井誠イラスト(岩波少年文庫、2000年)/ずっと「長靴の下にいるピッピ」だと思い込んでいた。ハイソックスのことだったとはね。読むのが遅すぎた。リンドグレーンはスウェーデンを代表する児童文学作家。

文明の逆説 危機の時代の人間研究』立花隆(講談社、1976年/講談社文庫、1984年)/文庫化された当時に読んでいる。何となく開いたのだが読めず。正確の悪さを露呈している。興味が勝ち過ぎて抑制を欠いているようにも見える。

日本国の研究』猪瀬直樹(文藝春秋、1997年/文春文庫、1999年)/この人の文章が苦手だ。

続・日本国の研究』猪瀬直樹(文藝春秋、1999年/文春文庫、2002年)/正に比べると文章が短くて格段に読みやすい。規制緩和の警鐘を鳴らした書。

白雪姫には死んでもらう』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2013年)/シリーズ第4作。酒寄進一の文章に堪(た)えられず。2冊で十分だ。

脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める』築山節(生活人新書、2006年)/年寄り用の本だった。

神経とシナプスの科学 現代脳研究の源流』杉晴夫(ブルーバックス、2015年)/ちょっと見当が外れた。専門色が濃い。

枠組み外しの旅 「個性化」が変える福祉社会』竹端寛(青灯社、2012年)/「叢書 魂の脱植民地化 2」。仲間内でやっている印象が拭えず。こういうのはサブカル色を強く出した方が広範囲にアピールできると思う。

宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』青木薫(講談社現代新書、2013年)/帯に「科学書の名翻訳で知られる著者初の書き下ろし」とある。誇大広告。盛り過ぎ。私とは相性が悪い。飛ばし読みで読了。人間原理に興味のある人は読む価値あり。

魂の殺害者 教育における愛という名の迫害』モートン・シャッツマン:岸田秀訳(草思社、1975年/新装版、1994年)/94年の新装版で「気違い」を直していないのは草思社の手抜きだ。教育的虐待の影響を明かした一冊だが、例としては特殊すぎるだろう。統合失調症を調べようと思ったのだが当てが外れた。

幻の女』ウイリアム・アイリッシュ:稲葉明雄訳(ハヤカワ文庫、1976年)/黒原敏行の新訳(2015年)の評判が悪い。古典的名作であるが今となっては古い。被害妄想的なストーリー。自分のアリバイを証明できる行きずりの女性が幻のように消えてしまう。

A型の女』マイクル・Z・リューイン:石田善彦訳(ハヤカワ文庫、1991年)/再読。石田善彦の悪文に堪えられず。既に書評済み

A型の女』マイクル・Z・リューイン:皆藤幸蔵〈かいとう・こうぞう〉訳(ハヤカワ・ミステリ、1978年)/別訳があったとは露知らず。石田訳よりはずっといい。文章がきちんと頭に入ってくる。ただし文体に切れはない。

遥かなるセントラルパーク(上)』トム・マクナブ:飯島宏訳(文藝春秋、1984年/文春文庫、2014年)/今頃になって文庫化するってえのあどういう料簡なのかね? 1984年に幼馴染みのムラモトさんから借りて読んだ。日高晤郎がラジオで強く推していた一冊。

ワールド・カフェ カフェ的会話が未来を創る』アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス、ワールド・カフェ・コミュニティ:香取一昭、川口大輔訳(ヒューマンバリュー、2007年)/読みにくい。

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論』小林よしのり(小学館、2000年)/やはり漫画作品は読めない。活字本の方は読了。本書は台湾でもベストセラーとなっている。

1日10分で自分を浄化する方法 マインドフルネス瞑想入門』吉田昌生(WAVE出版、2015年)/ダメ本。

 76冊目『悪女は自殺しない』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2015年)/オリヴァー&ピアシリーズの第一作。ドイツ・ミステリ。まあまあ、といったところ。基本的に酒寄進一の訳文が苦手である。オリヴァー(貴族の血を引く上司)とピア(バツイチ女性)に何の魅力も感じない。それでも構成がよいので読了できた。

 77冊目『深い疵』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2012年)/ドイツ版『犬神家の一族』という評価は当たっていない。第二次世界大戦にまでさかのぼる歴史ミステリである。一読の価値あり。日本同様、歴史観がすっきりしない世相を反映しているようにも思える。

 78冊目『存在の分析「アビダルマ」 仏教の思想2』桜部建、上山春平(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1996年)/上山の対談がよい。アビダルマは仏教心理学だが煩瑣すぎて付いてゆけず。それでも勉強になることが多い。

 79冊目『触楽入門』テクタイル、仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太(朝日出版社、2016年)/触覚に関する珍しい本。文章がまどろっこしいのだが、なかなか面白かった。テクタイルとはチーム名。

 80冊目『そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか? 領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ』大村大次郎(日本文芸社、2007年)/蕎麦屋からクレームが来て改訂したのが『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』(宝島社新書、2012年)である。要は現金商売ということ。大村本は外れが少ない。

 81冊目『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎(角川書店、2015年)/これはオススメ。目から鱗が落ちる世界史の教科書本。

 82冊目『李登輝学校の教え』(小学館、2001年/小学館文庫、2003年)/『台湾論』の活字版。何と李登輝と対談している。長らく小林のことを誤解してきたが、彼は感情のバランスが優れている。そして嘘が少ない。これは稀有なことである。佐藤優が欠いているものを私は小林に見出す。

 83冊目『苦しみをなくすこと 役立つ初期仏教法話3』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/再読。サンガ新書のスマナサーラ本を渉猟中である。

 84冊目『現代人のための瞑想法 役立つ初期仏教法話4』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/一読の価値あり。再読はしないだろう。「慈悲の瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」の具体的なやり方を伝授する。「慈悲の瞑想」を3日間ほど実践してみた。言葉の語呂が悪い。

 あと10冊あるのだが、疲れたので明日書くことに。

2013-01-03

アルボムッレ・スマナサーラ


 1冊読了。

 1冊目『原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章』アルボムッレ・スマナサーラ(佼成出版社、2009年)/クリシュナムルティを手掛かりにしてブッダを探ることが私のライフワークだ。その意味においてスマナサーラ長老の書籍は最高の参考書となる。願わくは本格的な仏典の新訳に取り組んでもらいたいところ。眼からごっそりと鱗が落ちた。

2015-04-02

鍵山秀三郎、アルボムッレ・スマナサーラ、養老孟司、渡部昇一、馬渕睦夫、他


 4冊読了。

 26冊目『人たらしの流儀』佐藤優(PHP研究所、2011年/PHP文庫、2013年)/Q&A語り下ろし。あとがきに出てくる小峯隆生〈こみね・たかお〉が相手か。あたかもスパイの流儀といった内容で、「凄い」と思う一方で嫌悪感が湧いてくる。どうも好きになれない人物だ。

 27冊目『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉、馬渕睦夫〈まぶち・むつお〉(飛鳥新社、2014年)/馬渕本は本書から入るのがいいだろう。渡部という相手を得たことでテーマに広がりがある。反グローバリズム=ナショナリストとしてプーチン大統領と安倍首相が挙げられている。

 28冊目『希望のしくみ』アルボムッレ・スマナサーラ、養老孟司〈ようろう・たけし〉(宝島社、2004年/宝島SUGOI文庫、2014年)/養老孟司は媚(こ)びを売ることをしない男である。そして宗教に対する造詣も深い。スマナサーラは養老を「先生」と呼び、やや下手に出ている。編集者を含めた鼎談(ていだん)で3人のバランスが絶妙。これはオススメ。

 29冊目『小さな実践の一歩から』鍵山秀三郎〈かぎやま・ひでさぶろう〉(致知出版社、2002年)/久し振りに鍵山本を読む。鍵山といえば掃除道の元祖である。講演が元になっていて読みやすい。ま、本好きからすればスカスカ本ではあるが。イエローハット創業者の清らかな心根が読む者にじわじわと染み伝わってくる。

2013-09-08

野口健、宮城谷昌光、アルボムッレ・スマナサーラ、南直哉、岸田秀、他


 10冊挫折、4冊読了。

性と呪殺の密教 怪僧ドルジェタクの闇と光』正木晃(講談社選書メチエ、2002年)/前置きが長すぎる。

偶然とは何か その積極的意味』竹内啓〈たけうち・けい〉(岩波新書、2010年)/まどろっこしい。

確率と統計のパラドックス 生と死のサイコロ』スティーヴン・セン:松浦俊輔訳(青土社、2004年)/冗長。無駄話が多すぎる。

なぜ少数派に政治が動かされるのか?』平智之〈たいら・ともゆき〉(ディスカヴァー携書、2013年)/これも安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉のオススメ。TPP参加に賛成している件(くだり)を読んでやめた。

100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図』ジョージ・フリードマン:櫻井祐子訳(早川書房、2009年)/文章がよくない。本書でも日本が戦争を行うことを予測している。

続 獄窓記』山本譲司(ポプラ社、2008年)/文章はいいのだが、メンタル面が弱すぎる。

2円で刑務所、5億で執行猶予』浜井浩一(光文社新書、2009年)/良書。ただし著者の性格が悪い。読者の無知を指摘し続けて辟易させられる。

徒然草』島内裕子校訂・訳(ちくま学芸文庫、2010年)/時間のある時に読み直す。『徒然草』は本書が一番よい。

唯幻論大全 岸田精神分析40年の集大成』岸田秀〈きしだ・しゅう〉(飛鳥新社、2013年)/「第三部 セックス論」を除いて読了。ストックホルム症候群で一つ閃きを得た。

出家の覚悟 日本を救う仏教からのアプローチ』アルボムッレ・スマナサーラ、南直哉〈みなみ・じきさい〉(サンガ、2009年)/やはりスマナサーラ長老は声聞であるとの確信を強めた。南のことを「先生」とは呼んでいるものの、常に上から目線で語っている。一方、南は南で遠慮しながら自らの疑問を投げかけている。議論が擦れ違う理由は南の仏教アプローチにある。知に傾きすぎているのだ。今のままだと宮崎哲弥の僧侶版となりかねない。

 38冊目『写真集 野口健が見た世界 INTO the WORLD』野口健(集英社インターナショナル、2013年)/これはオススメ。素晴らしい写真集だ。しかも廉価(2100円)。構成がまとまりを欠いているのは仕方がない。本書は野口の眼を紹介するところに重きを置いたのだろう。小中学生にも読ませたい作品だ。

 39、40、41冊目『太公望(上)』『太公望(中)』『太公望(下)』宮城谷昌光(文藝春秋、1998年/文春文庫、2001年)/3日で読了。殷の紂王周の文王武王周公旦、そしてほんのわずかながら伯夷〈はくい〉と叔斉〈しゅくせい〉まで登場する。彼らの名は鎌倉時代の日本にまで及び日蓮も遺文で紹介している。壮大な復讐譚(ふくしゅうたん)。唯一の瑕疵は幼少の太公望が既に天才として描かれており、由来が示されていないところ。紀元前11世紀において軍に戦略を用いたというのだが凄い。

2014-05-29

石原結實、アルボムッレ・スマナサーラ、ステイシー・オブライエン、ガイ・ドイッチャー、他


 5冊挫折、2冊読了。

言語が違えば、世界も違って見えるわけ』ガイ・ドイッチャー:椋田直子〈むくだ・なおこ〉訳(インターシフト、2012年)/発売は合同出版。久し振りに社名を見て嬉しくなった。言語が知覚に及ぼす影響を探った書籍。思考ではなく知覚というのがミソ。読書に関しては堪え性がなくなっているため、巻頭で要旨を簡潔に書いてくれないと読む気が失せる。思わせぶりな文章であやふやな行き先を示されても困る、というのが本音だ。興味がある分野だけに残念。

暗号解読(上)』サイモン・シン:青木薫訳(新潮社、2001年/新潮文庫、2007年)/サイモン・シンは文章に締まりがない。圧縮度が低い分だけ抽象度も薄まっているように感じる。『インフォメーション 情報技術の人類史』(ジェイムズ・グリック)と両方読んだ人の声が聞きたい。

新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』エドマンド・バーク:佐藤健志〈さとう・けんじ〉訳(PHP研究所、2011年)/パス。

僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』佐藤健志〈さとう・けんじ〉(祥伝社、2013年)/最初の方だけ読む。ゴジラのダンスを見てから、悪臭のようにこのイメージがつきまとう。好き嫌いというレベルを超えて人間不信に陥りそうだ。

フクロウからのプロポーズ』ステイシー・オブライエン:野の水生〈のの・みお〉訳(日経ナショナルジオグラフィック社、2011年)/学者が書いたエッセイ。完全なエッセイだ。個人的な内容が多くて辟易。本の作りも最悪だ。

 34冊目『ブッダの教え 一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ(PHPハンドブック、2008年)/新書サイズで上下2段組。1日分は半ページとなっている。初期経典の教えが簡潔に書かれている。この簡潔さが難しいのだ。スマナサーラ入門にうってつけの一冊。トイレにおいておくのがよいと思う。必読書の『怒らないこと』と入れ替えるかどうか思案中。

 35冊目『「食べない」健康法 』石原結實〈いしはら・ゆうみ〉(東洋経済新報社、2008年/PHP文庫、2012年)/これは凄い。必読書入り。石原は「40歳を過ぎたら一日一食で十分」と説く。病気になる最大の原因は食べ過ぎにある。具体的にはこうだ。朝:にんじん&りんごジュース、昼:そば、夜:自由。生姜紅茶というのもいいらしい。糖尿病などの慢性疾患、冷え性、癌などにも効果があるそうだ。親不孝者の私が母のために買ってあげたくらい素晴らしい内容だ。早速、今日から一日一食を実践する。

2014-07-06

クリストファー・スタイナー、佐々木閑、齋藤孝、アルボムッレ・スマナサーラ、他


 7冊挫折、4冊読了。

インド仏教変移論 なぜ仏教は多様化したのか』佐々木閑〈ささき・しずか〉(大蔵出版、2000年)/「大乗仏教は、部派仏教の延長線上に現れた、出家者僧団の宗教であった」という説を提示。『仏教研究』誌に掲載された8編の論文が元になっており、後に佛教大学(※本文では仏教大学と表記)の学位論文として提出している。一般人からすれば重複した文章が多く冗長に感じた。私は学術的な意義に興味はなく、閃きを求めているゆえピンとこなかった。横書きというのも致命的だ。

科学するブッダ 犀の角たち』佐々木閑〈ささき・しずか〉(角川ソフィア文庫、2013年)/真面目な科学書。初歩的な内容なのでやめた。

「10年大局観」で読む 2019年までの黄金の投資戦略』若林栄四〈わかばやし・えいし〉(日本実業出版社、2009年)/過去の自分の姿に酔っている節があり薄気味悪い。名の通った元ディーラーだがチョビ髭は伊達じゃなかったのね。ナルシストは苦手だ。

アメリカは日本の消費税を許さない 通貨戦争で読み解く世界経済 』岩本沙弓〈いわもと・さゆみ〉(文春新書、2014年)/前著との重複が多い。たぶん読み返すことはないだろう。

流れよわが涙、と警官は言った』フレドリック・ブラウン:友枝康子〈ともえだ・やすこ〉訳(ハヤカワ文庫、1989年)/名作といわれているがサービス精神が旺盛すぎて安っぽい印象を受けた。後半をパラパラとめくり仕掛けがわかったが、今となってはちょっと古いね。ただし時折キラリと光る名言が出てくるのはさすがである。

竹林はるか遠く 日本人少女ヨーコの戦争体験記』ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ著・監訳:都竹恵子訳(ハート出版、2013年)/ベストセラー。米国では中学の教科書に掲載されているとのこと。韓国でも刊行されたが後に発売中止に。『流れる星は生きている』(藤原てい)の方が面白い。若い人たちは読むといい。動画を紹介しておこう。




監獄ビジネス グローバリズムと産獄複合体』アンジェラ・デイヴィス:上杉忍訳(岩波書店、2008年)/学術書。民営化という手法で成立したのが監獄ビジネスだ。犯罪率と関係なくしょっ引かれている模様。これもショック・ドクトリンの影響だろう。

 40冊目『「やさしい」って、どういうこと?』アルボムッレ・スマナサーラ(宝島社、2007年)/内容はいいのだが薄っぺらいスカスカ本。スマナサーラは積極的に出版ビジネスを展開しているように見える。

 41冊目『偏愛マップ キラいな人がいなくなる コミュニケーション・メソッド』齋藤孝(NTT出版、2004年/新潮文庫、2009年)/面白かった。自分の偏愛マップも作ってみたい。齋藤孝の説明能力は評価するが、彼の文章はあまりにもバラ色すぎる。優秀なマーケティング野郎だと思うよ。

 42冊目『本当の仏教を学ぶ一日講座 ゴータマは、いかにしてブッダとなったのか』佐々木閑〈ささき・しずか〉(NHK出版新書、2013年)/これは読みやすかった。しかも勉強になる。ただし佐々木には閃きが感じられない。何かとオウム真理教を持ち出すところも感心しない。手垢にまみれたやり方だ。佐々木は『服従の心理』をしっかり読んで出直すべきだ。

 43冊目『アルゴリズムが世界を支配する』クリストファー・スタイナー:永峯涼〈ながみね・りょう〉訳(角川EPUB選書、2013年)/アルゴリズム本には必ず金融マーケットの話が出てくる。多少の知識がないとちょっと苦しいかも。「情報とアルゴリズム」に追加した。終盤の失速が惜しまれる。

2012-11-21

開沼博、藤本晃、アルボムッレ・スマナサーラ、畑谷史代


 2冊挫折、2冊読了。

フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』開沼博〈かいぬま・ひろし〉(幻冬舎、2012年)/フォントが悪くて読みにくい。また短い対談の量が多く、構成に難ありと感じた。新書形式の方がよかったのではあるまいか。

悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃(サンガ新書、2009年)/第二章まで読む。価格的にはお釣りがくる内容だ。悟りの段階が詳しく描かれている。南伝大蔵経のテキストが参考になる。

 67冊目『苦しみをなくすこと 役立つ初期仏教法話 3』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/いやはや素晴らしい内容だ。スマナサーラ長老の登場で、過去の日本仏教本は色褪せてしまった。実践なき学者が書く仏教書は所詮解説書の域を超えることがない。日本の仏教界は一度鎌倉時代を否定する作業が必要だと思う。鎌倉万歳といった視線ではブッダを見失う可能性すらある。

 68冊目『シベリア抑留とは何だったのか 詩人・石原吉郎のみちのり』畑谷史代〈はたや・ふみよ〉(岩波ジュニア新書、2009年)/一気読み。もっと早く読んでおくべきだった。石原という人物の輪郭がくっきりと浮かんでくる。シベリアの寒風に削(そ)がれた頬の陰まで見えるような気がした。石原の詩文と証言のバランスが素晴らしい。小さいながらも香月泰男の絵が数点掲載されており、実に目が行き届いている。

2020-07-17

わかりやすい入門書/『マインドフルネス瞑想入門 1日10分で自分を浄化する方法』吉田昌生


 ・わかりやすい入門書

・『現代人のための瞑想法 役立つ初期仏教法話4』アルボムッレ・スマナサーラ
・『自分を変える気づきの瞑想法【第3版】』アルボムッレ・スマナサーラ
『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門 豊かな人生の技法』ウィリアム・ハート
『呼吸による癒し 実践ヴィパッサナー瞑想』ラリー・ローゼンバーグ
『「瞑想」から「明想」へ 真実の自分を発見する旅の終わり』山本清次

 マインドフルネスとは、今という瞬間につねに注意を向け、自分が感じている感覚や感情、思考を冷静に観察している心の状態のこと。
 つまり、【「今、ここ」に100%心を向ける在り方】のことです。元々はパーリ語の「サティ」という言葉の英訳で、日本語では「気づき」、漢語では「念」と訳されています。「自覚」「集中」「覚醒」とも言い換えられます。

【『マインドフルネス瞑想入門 1日10分で自分を浄化する方法』吉田昌生〈よしだ・まさお〉(WAVE出版、2015年)以下同】

 ヴィパッサナー瞑想は静かにアメリカで広まっている。健康本で紹介されることも珍しくない。プラグマティズムの伝統が脈打っているのだろう。一方、鈴木大拙〈すずき・だいせつ〉によって日本の禅は世界で知られるようになったが、我が国で瞑想の潮流が深まることはなかった。かつて武士が禅に打ち込んでいた歴史を思えば武士道の衰退とも関係があるように思う。

 サティは八正道正念である。これが戒・定・慧の三学だと(じょう)=サマディ(三昧)となる。現在では三昧(ざんまい)と変化して残るが、無我夢中で没頭している様子を表す(贅沢三昧、読書三昧など)。

 吉田は「集中」を挙げているがこれは誤りで「注意」が正しい。集中と注意は異なる。一点に集中すれば周辺は見えなくなる。集中は眼、注意は耳と皮膚というのが私の持論だ。瞑想の観察は眼で行う性質ではない。仏像の半眼がそれを示している。眼は自己の内側を見ることができない。

 頭のなかの思考の世界に巻き込まれて、それに気づいていない状態です。そんな状態のことを「マインドレスネス」と言います。(中略)
 このように、「今、ここ」の現実とのつながりが失われ、なおかつそのことに気づいてもいない状態のことを「マインドレスネス」と言うのです。

 フルネス(fullness)は「満ちている状態」で、レスネス(lessness)は「より少ない状態」である。コマが回っている状態がフルネスである。フル回転しながら止まっているのが瞑想だ。その意味では自転車に乗る行為も瞑想と似ている。

 お釈迦様が仏教をつくったのは今から2500年前のインド。一方、世界初のペダル式自転車が登場したのは、150年ほど前のフランス。だから(あたりまえだが)お釈迦様は自転車を知らなかった。しかしもし、お釈迦様が自転車に乗ったなら、必ず「瞑想修行と自転車は似ている」と言ったに違いない。

【『日々是修行 現代人のための仏教100話』佐々木閑〈ささき・しずか〉(ちくま新書、2009年)】

 具体的な瞑想の方法が書かれていて、わかりやすい入門書となっている。クリシュナムルティは方法を否定したが、我々凡夫は何らかの手掛かりがなければ瞑想の入り口に立つことも不可能だ。例えば無実の罪で獄につながれた時、怪我や病気で体の自由を失った時、災害や戦争に巻き込まれた時など、絶体絶命という場面を想像すれば平時に瞑想を行うことは生きるための備えといってよい。

2016-11-07

橘玲、大村大次郎、佐伯啓思、他


 6冊挫折、3冊読了。

重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(SB新書、2016年)/本書の次に菅沼光弘著『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』を読むといい。順番が逆になると本書はやはりインパクトが弱い。

ペリリュー島戦記 珊瑚礁の小島で海兵隊員が見た真実の恐怖』ジェームス・H・ハラス:猿渡青児訳(光人社NF文庫、2010年)/翻訳は優れている。戦記物は取っ掛かりで引き込まれるかどうかが勝負の分かれ目である。文章のリズムや読み手の体調に左右される面も大きい。挫けたのは私のコンディションの問題だ。

欲ばらないこと 役立つ初期仏教法話13』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2011年)、『忘れる練習・記憶のコツ 役立つ初期仏教法話14』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2013年)/初期仏教を広く日本に知らしめた功績は認めるが、やはりこの人物の鼻持ちならない態度に傲慢な心が透けて見える。わかりやすさと短絡は別物だ。専門以外の話になると誤謬も目立つ。後者だと直観像記憶に関する解説は完全な誤りである。とにもかくにも声の悪さが致命的だ。

餓死(うえじに)した英霊たち』藤原彰(青木書店、2001年)/資料的な価値は高い。が、左翼系出版社から出された左翼系学者による著作と断じて構わないだろう。本書も「餓死」にまつわる証拠を並べ立て、大本営の無能さを糾弾することには成功しているが、大東亜戦争全体を見通す史観が欠如している。

マインドフルネス』バンテ・H・グナラタナ:出村佳子訳(サンガ、2012年)/新書サイズのハードカバーという変わった体裁。ちょっと気分が乗らなかった。体調がいい時に読み直す予定。

 158冊目『さらば、資本主義』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(新潮新書、2015年)/文体をガラリと変えて若者に語りかけるような平易な文章に驚く。ぐいぐいと深みに誘(いざな)う手並みが職人芸を思わせる。第二次世界大戦後の世界が信じてきた民主政と資本主義に対し真正面から疑義を呈示する。福澤諭吉『文明論之概略』、トマ・ピケティ『21世紀の資本』の解説も見事である。水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』の後に読むのがよい。

 159冊目『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(ビジネス社、2015年)/迷うことなく「必読書」入り。政治家、宗教法人、公益法人、開業医、富裕層、そして学校に至るまでを俎上(そじょう)に載せる。税の不平等性をこれほどわかりやすく説いた本はないだろう。本書の次には響堂雪乃『独りファシズム つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?』をお勧めしよう。

 160冊目『「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する』橘玲〈たちばな・あきら〉(筑摩書房、2015年)/説明力の高さに驚いた。複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義という五つの分野における知の最前線を紹介。「読まなくてもいい本」というのは釣りタイトルで、古いパラダイムを示唆する。各分野の王道ともいうべき書籍を網羅しており、読書案内としては非常にレベルが高い。しかもこれらが進化論を軸に展開されているところに斬新さがある。にも関わらず私の鼻は何か嫌な匂いを嗅ぎ取った。まだその正体を掴みかねているのだが。

2012-12-12

リチャード・E・サイトウィック、デイヴィッド・M・イーグルマン、片山一良、アルボムッレ・スマナサーラ


 4冊挫折。

脳のなかの万華鏡 「共感覚」のめくるめく世界』リチャード・E・サイトウィック、デイヴィッド・M・イーグルマン:山下篤子訳(河出書房新社、2010年)/リチャード・E・シトーウィック、改めリチャード・E・サイトウィックの新著。表記については山下があとがきで言いわけをしている。カラー図版が多く気合の入った作りだ。個人的な関心が低下してしまい読了できず。

月曜閑談』サント・ブーヴ:土居寛之訳(冨山房百科文庫、1978年)/ウェブで小林秀雄が書いた文章に目が止まり、直ぐ取り寄せた。最初っから「覚書と断想」しか読むつもりはなかった。わずか17ページではあるが十分お釣りがくる。小林が翻訳した『我が毒』も読んでみたい。

ブッダのことば パーリ仏典入門』片山一良〈かたやま・いちろう〉(大法輪閣、2008年)/後回し。中村本の後で読むことに。

沙門果経 仏道を歩む人は瞬時に幸福になる』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ、2009年)/これまた中村本の後に回す。仏典テキストは片山訳を採用している。六師外道の内容が詳しく書かれている。元々は「仏教以外の教えを説いている6人の高名な先生」との意味であるという。沙門果経はアジャータサットゥ(阿闍世王)とブッダの対話が基調となっている。観無量寿経と比較することで大衆部の政治的狙いが見抜けるようにも思う。

2016-03-26

アルボムッレ・スマナサーラ、他


 4冊挫折、1冊読了。

パリは燃えているか?(上)』ラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエール:志摩隆〈しま・たかし〉訳(早川書房、1966年/ハヤカワ文庫、1977年/ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース、2005年/ハヤカワ文庫新版、2016年)/二度目の挫折。体力不足で読み切れず。

無縁社会』NHKスペシャル取材班(文春文庫、2012年/文藝春秋、2010年、NHK「無縁社会プロジェクト」取材班『無縁社会 “無縁死”三万二千人の衝撃』改題)/行間から嫌な匂いがプンプンしている。NHKという安全な立場から社会正義の鎧(よろい)を身にまとい、「不幸な人々」を商品化するビジネスモデルといってよい。しかもテレビ番組の二次商品化である。文章は悪くない。悪くないからこそ、より一層悪臭が際立つのだ。平成26年度のNHK職員平均年収は1160万2859円となっている。「取材班」の給与は当然もっと上だろう。「こんなに大変な人がたくさんいるんですよ」といった内容を超えていない。

老人漂流社会 他人事ではない“老後の現実”』NHKスペシャル取材班(主婦と生活社、2013年)/これまた同様。社会問題を指摘するだけの似非ジャーナリズム。

 36冊目『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ(佼成出版社、2003年)/再読。易(やさ)しいのだが決して浅くない。真理というものは我々が想像するよりもずっとシンプルなのだろう。ただし悟性の輝きは見られない。この人は飽くまでも解説者である。別の本で中村元訳に対する嫌味を書いていたが、もしそれが本当ならきちんとした『ダンマパダ』の訳書を出すべきだろう。それをしないところにこの人物の性根が透けて見える。

2012-10-13

等身大のブッダ/『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン


『シッダルタ』ヘルマン・ヘッセ

 ・等身大のブッダ
 ・常識を疑え
 ・布施の精神
 ・無我

『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元訳
『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』アルボムッレ・スマナサーラ
『ブッダが説いたこと』ワールポラ・ラーフラ
『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』くさなぎ龍瞬
『自分を許せば、ラクになる ブッダが教えてくれた心の守り方』草薙龍瞬

ブッダの教えを学ぶ
必読書リスト その五

 私は懐疑心に富む男だ。加齢とともに猜疑心(さいぎしん)まで増量されている。元々幼い頃から「他人と違う」ことに価値を置くようなところがあった。だからいまだに付き合いのある古い友人は似た連中が多い。嘘や偽りに対して鈍感な人物はどこか心に濁りがある。曖昧さは果断と無縁な人生を歩んできた証拠であろうか。

 クリシュナムルティと出会ってから宗教の欺瞞が見えるようになった。暗い世界にあって宗教は人々を更なる闇へといざなう。クリシュナムルティの言葉は暗い世界を照らす月光のようだ。無知に対する「本物の英知」が躍動している。

 そんな私が本書を読んで驚嘆した。人の形をもった等身大のブッダと遭遇したからだ。「ああ世尊よ……」と思わず口にしそうになったほどだ。「小説」とは冠しているが、記述は正確で出典も網羅している。あの中村元訳のブッダが「ドラマ化された」と考えてもらってよい。

 もう一つ付言しておくと、私はティク・ナット・ハンやアルボムッレ・スマナサーラ声聞(しょうもん)だと考えている。決して軽んじるわけではないが、やはりクリシュナムルティのような悟性はあまり感じられない。その意味では「現代の十大弟子」といってよかろう。我々一般人は彼らから学んでブッダに近づくしかない。

 本書については書評というよりも、研鑚メモとして書き綴ってゆく予定である。また中村訳岩波文庫に取り掛かった後で再読を試みる。

 どこかに到着するのではなく、ただひたすら歩くことを楽しむ。ブッダはそのように歩いた。比丘たちの歩みもみなおなじように見えた。目的地への到着をいそぐ者はだれもいない。ひとりひとりの歩みはゆっくりとととのって平和だ。まるで一緒にひとときの散歩を楽しんでいるようだった。疲れを知らないもののように、歩みは日々着実につづいていった。

【『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン:池田久代訳(春秋社、2008年)】

「歩く瞑想」である。

歩く瞑想/『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール
「100%今を味わう生き方」~歩く瞑想:ティク・ナット・ハン

 偉大な思想家や学者は皆散歩を楽しむ。特に「カントの散歩」は広く知られた話だ。晩年のアインシュタインはゲーデルとの散歩を殊の外、楽しみにしていた。

 散歩は「脳と身体の交流」であり、「大地との対話」でもある。我々は病床に伏して初めて「歩ける喜び」に気づく。失って知るのが幸福であるならば、我々は永久に不幸のままだ。

 幸福とは手に入れるものではないのだろう。「味わい」「楽しむ」ことが真の幸福なのだ。すなわち彼方の長寿を目指すよりも、現在の生を楽しむ中に正しい瞑想がある。

 まずは「歩くことを楽しむ」と決める。そうすれば通勤の風景も一変するはずだ。



ブッダが解決しようとした根本問題は「相互不信」/『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥

2016-04-02

福岡伸一、アルボムッレ・スマナサーラ、ジェームズ・リカーズ、他


 4冊挫折、3冊読了。

評伝 若泉敬』森田吉彦(文春新書、2011年)/若泉敬の死について何か書いてあるのかと思ったが何もなかった。

21世紀の貨幣論』フェリックス・マーティン:遠藤真美訳(東洋経済新報社、2014年)/遠藤の訳が悪い。「真逆」が何度も出てきたのでやめた。


3.11 慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』金菱清〈かねびし・きよし〉編、東北学院大学震災の記録プロジェクト(新曜社、2012年)/71人の被災者による手記である。一切手は加えられていない。金菱によれば「エスノグラフィー(民族誌)の応用」だという。記録に意味はあるだろう。学術的な価値も認められよう。ただし読むに堪(た)えない代物である。27ページで挫けた。「仮土葬という言葉に私は怒りを覚えた」(25ページ)とある。このような極めて個人的で瑣末な記述は読み物たり得ない。少なからず何らかの気づきや発見は見受けられるものの、被害の大きさを思えばあまりにも弱いと思う。結局、我々は同じことを何度も繰り返す生き方しかできないのだろう。輪廻からの脱却という視点が欲しかった。

西欧近代を問い直す』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(PHP文庫、2014年)/ジェームズ・リカーズ著『通貨戦争』の複雑性科学にまつわる文章を目にした後では読めた代物ではない。文学というものはスピードを欠いているのだろうか。ま、大学の講義を編んだものなので仕方がないが、丁寧に哲学史をフォローすることで、批判が弱まっているように感じられる。個人的には全く異なる価値観で頭から否定すべきだと思う。西欧の論理に乗っかった批判という印象を受けた。

 37冊目『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)/一度挫けている。やはりこの人は桁外れに頭がよい。第10章の複雑性科学の件(くだり)だけでも必読である。その辺の科学本より説明が優れている。本書の続きは『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』で披露されている。FRBは既にドルを手放すつもりでいるようだ。あまりにも印刷しすぎたということなのだろう。基軸通過にあぐらをかいた借金経済がいつまでも回るわけがない。ドルが沈んで人民元が台頭する時、どのような経済的混乱が生じるのか? また人類はそれをコントロールし得るのか? 数年間のうちに結果が判明することだろう。波乱は今年の総選挙以降に始まる。

 38冊目『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ(佼成出版社、2003年)/三読目。書写も終了。

 39冊目『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』福岡伸一(木楽舎、2009年)/相変わらず清新な文章である。分子生物学的な動的平衡は仏教で説かれる五蘊(ごうん)の色蘊(しきうん)を見事に説明していると思う。五蘊とは五つの集まりを意味する言葉であるが、存在論の文脈で語れば五蘊皆空(ごうんかいくう)である。その意味で動的平衡という言葉は空(くう)の本質を衝(つ)いている。尚、ももクロに「GOUNN」という歌があるようだが、歌詞を見る限りでは噴飯物の内容となっている(笑)。

2013-07-03

久坂部羊、アルボムッレ・スマナサーラ、クリス・ヘッジズ、ロバート・B・パーカー、吉田繁治、苫米地英人、他


 5冊挫折、7冊読了。「王様のレストラン」、「こんな恋のはなし」!、「HEROES / ヒーローズ」とドラマ漬けであったため書くのを失念。蜘蛛の糸のようなはかない記憶を頼りに記しておく。

古代インド』中村元〈なかむら・はじめ〉(講談社学術文庫、2004年)/当てが外れた。アーリア人の成り立ちについて知りたかったのだが、単なるインド古代史であった。

古代インド文明の謎』堀晄〈ほり・あきら〉(吉川弘文館、2008年)/威勢のいい牽強付会。小さな合理性で全てを押しのけてみせる。物事の大小を理解していないように見受けられる。

富の未来(上巻)』アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー:山岡洋一訳(講談社、2006年)/傲慢極まりない文章に耐えることができなかった。たぶん彼はユダヤ人だろう。

モサド・ファイル イスラエル最強スパイ列伝』マイケル・バー=ゾウハー、ニシム・ミシャル:上野元美訳(早川書房、2013年)/若い頃愛読した作家だ。私にとってパレスチナ人は同胞であるため、イスラエル礼賛本は唾棄すべき対象でしかない。

歴史の終わり(上)歴史の「終点」に立つ最後の人間』フランシス・フクヤマ:渡部昇一訳(三笠書房新装版、2005年)/著者が40歳でものした本を50になろうとする私が読めないのが業腹だ。今はとにかく時間が惜しい。私にとっては不要な書籍だ。

 22冊目『モーツァルトとレクター博士の医学講座』久坂部羊〈くさかべ・よう〉(講談社、2012年)/話し言葉で書かれているため最初は侮っていたが、「ウン?」と思っているうちに読み終えてしまった。私が引っ掛かったのは「少量の毒」に対してである。久坂部羊には恐ろしいことをさらりと言ってのける胆力がある。時折、挿入されるマンガの知識も楽しい。

 23冊目『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ(佼成出版社、2003年)/やはりスマサーラ長老の本は勉強になる。日本人が書いたどの仏教書よりもピンと来る。ただし私は彼の説明能力を評価しているだけで、根本的な立場が異なる。私は来世を信じない。

 24冊目『本当の戦争 すべての人が戦争について知っておくべき437の事柄』クリス・ヘッジズ:伏見威蕃〈ふしみ・いわん〉訳(集英社、2004年)/読んでおくべきデータ本。特に文章を書く人は。

 25冊目『背信』ロバート・B・パーカー:菊池光〈きくち・みつ〉訳(ハヤカワ文庫、2008年)/好きな作家の衰えを目の当たりにすることは悲しい。訳者も老いた。既にハードカバーは出版されていないようだ。

 26冊目『冷たい銃声』ロバート・B・パーカー:菊池光〈きくち・みつ〉訳(ハヤカワ文庫、2009年)/マチズモの限界。ホークの人物像を記す履歴書みたいな代物。スペンサーとスーザンのやり取りも薄気味悪い。

 27冊目『マネーの正体 金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと』吉田繁治〈よしだ・しげはる〉(ビジネス社、2012年)/絶賛に値する。天野統康〈あまの・もとやす〉を先に読めば一層理解が深まる。こんな日本人がいたとはね。信用創造に興味のある人は必読のこと。唯一の瑕疵はシルビオ・ゲゼルに対する批判で、これは見当違い。スタンプ紙幣は地域通貨である。400ページで1900円という破格の値段。一家に二冊置いてもいいくらいだ。

 28冊目『宗教の秘密 世界を意のままに操るカラクリの正体』苫米地英人〈とまべち・ひでと〉(PHP研究所、2012年)/キリスト教の歴史、仏教の哲学、そして現代の宗教である「お金教」に斬り込む。GDP本位制というアイディアはさすが。ただし本書の目的は第4章にあるのだろう。「私が代表理事を務める一般財団法人日本催眠術協会」への誘導だ。苫米地は巧みに仏教を語りながらも、常に「私」というエゴを前面に出す悪癖がある。これ自体が仏教とは無縁の生きざまを示しているように見えてならない。