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2022-01-10

大塩平八郎の檄文/『日本の名著27 大塩中斎』責任編集宮城公子


『狗賓童子(ぐひんどうじ)の島』飯嶋和一

 ・大塩平八郎の檄文

『決定版 三島由紀夫全集 36 評論11』三島由紀夫

檄文

(袋上書)天の生んだ民である村々の         小百姓のものまでに告ぐ

「天下の人民が刻苦窮迫すると、天の愛も絶滅終熄するであろう」「小人に国家を治めさせたならば、災害は相次ぎ到来するであろう」と昔の聖人は、深く天下後世の民の君となり、臣となるものを誡めおかれたので、東照神君(徳川家康)も、寄るべない人にこそ、最も憐れみを加えるのが仁政の基だと仰せおかれた。にもかかわらず、この二百四、五十年の太平の間に、しだいに上に立つものは驕りをきわめ、大切な政治にたずさわる諸役人どもは、賄賂をおおっぴらに贈貰(ぞうせい)している。奥向女中の手づるにより、道徳仁義もない卑劣なものでも立身して重要な役に登り、自分一家を肥やすことのみに智術をめぐらし、その領分の民百姓へ過分の御用金を課している。従来、過重の年貢、諸役に困苦する上に、このような無理無法を申し渡され、民百姓はつぎつぎに出費がかさみ、天下の民は困苦窮迫するようになった。このため、江戸表より一国中すべて、民は上を怨まぬものはないようになってきた。にもかかわらず、天子は足利氏以来、御隠居同様(政治にあずかられず)賞罰の権を失われたので、人民の怨みはどこへ告げ愬えるに訴えるところのないようになってしまっている。ついに、人びとの怨みが天に達し、年々の地震火災により、山も崩れ水もあふれるなど、種々さまざまの天災が打ちつづき、ために五穀実らず飢饉と相成った。これらはみな、天が深く誡められる有難いお告げであるのに、上に立つ人はいっこうに気付かず、なおも小人、奸者らが大事な政治をとり行い、ただ下を悩まし、金、米を取りたてる手段ばかりに奔走している。

【『日本の名著27 大塩中斎』責任編集宮城公子〈みやぎ・きみこ〉(中央公論社、1978年https://amzn.to/3zCPaXc/中公バックス、1984年)以下同】

「檄」(げき)は「激」ではない。本来は「木札に記された文書」のこと。檄文とは「自らの主張を綴った文書」で、同意を求め行動を促すことを目的としている。「檄を飛ばす」とは急いで決起を促すこと。

 大塩平八郎は与力であった。現代であれば警察署長、地方裁判官、市長を兼務したような官職か。大塩平八郎の乱(1837年)は、社会の実情を知悉(ちしつ)し、国政(当時は藩=国)トップの無責任・無能を知る中間官僚が起こした叛乱である。

 加えて、三都の内、大阪の金持などは年来、大名貸の利息、扶持米などを莫大に掠(かす)め取り、いまだかつてないような裕福な暮し振りで、町人の身分でありながら、大名の家老、用人格の扱いをうけている。また自分の田畑、新田を夥しく所持し、何不足なく暮し、昨今の天災、天罰を見ながら、畏れもせず、餓死する貧乏人、乞食を救おうともしない。自身は膏梁の味だと美食をし、妾宅へ入りこみ、あるいは揚屋茶屋へ大名の家来を誘い、高価な酒を湯水同然に呑み、この難渋の時節に絹服をまとった役者を妓女とともに迎えて、平生同様に遊楽に耽るのは、いったい、どういうことか。紂王の長夜の酒盛も同様だ。そのところの奉行諸役人は、手にした権力でもってこれらのものを取り締り、人民を救うこともできず、日々堂島の米相場ばかりをいじくっている。まったく禄盗人で、決して天道聖人の心に叶わず、ご容赦のないことだ。蟄居の私も、もはや我慢ならず、湯王、武王の権勢、孔子、孟子の道徳はないけれど、致し方なく、天下のためと思い、血族への禍をもあえて犯し、この度有志のものと申し合わせた。
 つまり、民を悩まし苦しめる諸役人を、まず誅伐し、引き続いて驕っている大阪市中の金持町人どもを誅戮する。そして彼らが穴蔵に蓄えている金・銀・錫、およびその蔵屋敷に隠匿している俵米などを、それぞれ配分する。よって、摂津、河内、和泉、播磨の諸国のうち、田畑をもたぬもの、あるいはもっていても父母妻子らを養えぬほど困窮しているものへ、これらの米金を取らせるので、いつでも大阪市中に騒動が起こったと聞き伝えたら、里数をいとわず一刻も早く大阪へ向って馳せ参じるよう。銘々へ右の米金を分けよう。(紂王の)金・粟 を民に与えた遺意にならい、さしあたりの飢饉、難儀を救おう。もしまた、その内に人物、才能の優れたものは、それぞれ取り立てて無道の者を征伐する軍役にもつかおう。
 これは決して一揆蜂起の企てと同じでない。(われわれは)追々年貢諸役までを軽減し、すべて中興の神武天皇の政治のとおり、心豊かな取扱いをし、年来の驕奢、隠逸の風俗をすっかり改めて、本来の質素に立ち返り、天下の人々がいつまでも天の恩を有難く思い、父母妻子を養う事ができ、生きながらの地獄を救い、死後の極楽を眼前に展開し、堯・舜・天照皇大神の時代を再現できないにしても、中興の(神武帝)政治の姿には立ち返らせようと思うのだ。

 いつの時代も叛乱の原因は貧困である。五・一五事件二・二六事件も東北の貧困が背景にあった。現在であれば失業率がその指標となる。

 多くの庶民が塗炭の苦しみに喘ぐと、必ず誰かが立ち上がって叛乱を起こす。これがヒトという種に埋め込まれたコミュニティ戦略なのだろう。最低基準としての平等が破壊されるとコミュニティは成り立たない。

チンパンジーの利益分配/『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
他者の苦痛に対するラットの情動的反応/『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール

 理窟や政治力学ではない。ヒトの本能がそうさせるのだ。困っている人を見れば放っておかないのが惻隠の情である。

  天命を報じて天誅を致す。
 天保八酉年月日
  摂津・河内・和泉・播磨村々
   庄屋年寄百姓、ならびに小百姓共へ

 もしも自分の周囲の人々の半分が生活に困窮するようなことがあれば、男子たるものいつでも立ち上がる用意をしておくべきだ。檄文の準備も怠り無く。その時はもちろんネットも駆使する。「座して死を待つよりは、出て活路を見出さん」(諸葛孔明)との言葉を銘記せよ。

2021-08-24

社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

 米ソが対立すると「社会主義」は各国民の「妄想」を超えて、ソ連を親分とする集団の「陰謀」へと進化します。ソ連及びその手下となった東ヨーロッパ諸国、中華人民共和国、北朝鮮などが、先進国を陥れる「陰謀」の一貫として「社会主義体制の下で人々は幸せに暮らしている」というウソを流し始めたのです。でも、社会主義国が言うだけではウソは先進国の国民に届きません。そこで、先進国に住む政治家、マスコミ関係者、大学教授達が、社会主義国の宣伝員として、そのウソをバラまく役目を担当したのでした。
 ちなみに、日本の大学の少なくない文系学部は、令和時代の今でも、学生時代に民青(日本民主青年同盟)という事実上の共産党の下部組織に入っていたお陰で、学術的能力が劣るのに大学教授になれた人が大勢います。そのせいか少なくない大学の文系学部生の教員は、社会主義諸国の宣伝を信じていました。
 では、何故、昭和時代に日本人は、社会主義宣伝員のウソを信じたのでしょう。今と違って政治家、マスコミ関係者、大学教授などには多少の権威があったのが一要因でした。また、令和時代と違って戦争直後は、敗戦国日本の暮らしが厳しかったからという側面もありました。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 読書中。記憶力が読書量に追いつかないため、どんどん書いてゆく。「国立大学の反自衛隊イデオロギー/『正論』2021年6月号」関連テキストである。谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉の国賊三部作を読めば理解が深まる。グローバリズムに関しては馬渕睦夫著『国難の正体 世界最終戦争へのカウントダウン』を参照せよ。

 最も有名で悪影響が大きかったのは本多勝一〈ほんだ・かついち〉で中国当局の情報を鵜呑みにして書いた『中国の旅』(朝日新聞社出版局、1972年)は日本社会に深刻なダメージを与えた。私の世代でも洗礼を受けた人は多い。1980~1990年代はまだまだ左翼全盛と言ってよい時代であった。日本近代史を見直す端緒を開いたのは新しい歴史教科書をつくる会であり、ネトウヨと蔑まされた人々であった。私は実際のネトウヨを目撃したことはないのだが、今となっては罪(ざい)よりも功(こう)が大きいと信ずる。

 現在にあっても「ネトウヨ」と書くのは左翼であると断定してよい。そこには歴史修正主義、反国際条約といった意味合いが含まれている。彼らはすなわち東京裁判史観絶対主義で「日本=悪」と断ずることで、日本の文化や歴史を黒く塗り潰して、赤く塗り替えようとする手合いだ。

 1970年代に学生運動が行き詰まると左翼は各界に浸透工作を図った。これを侮ってはいけない。官公庁から大企業および学校から宗教団体に至るまで浸透は進んだものと考えるべきだろう。使命や任務に生き甲斐を感じる人は多い。まして共産主義という崇高な理想があれば、孤独な任務にも耐えられる。そして忍耐が大きいほど手に入る果実もまた大きくなると錯覚するのが大脳の癖なのだ。

 高い知能の特徴は何か? それは「他人を騙(だま)すこと」である。残念ながら「思いやりが本能である」事実はフランス・ドゥ・ヴァールが指摘している(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』)。騙すためには相手の信念を理解する必要がある。他人の頭の中(価値観)を理解した上で巧みな嘘を上書きするのが「騙す」という行為である。

 宗教や健康食品を見れば一目瞭然だ。マスメディアも同様で、むしろ大衆は騙されたがっているようにすら見える。我々が手品や大どんでん返しのストーリーに魅了されるのは「騙されるのが好きだから」としか言いようがない。

 左翼に騙されるのか、左翼の嘘を見抜くのかが問われる時代となった。ただし愛国心を重んじる保守派が「左翼を騙す」戦略をとることはないだろう。自国を愛する心は他国を尊重せざるを得ないからだ。グローバリズムを掲げるGAFAMが21世紀の左翼支配層である。ヨーロッパで殺され続けてきたユダヤ人の反撃と考えてもよかろう。

2021-04-27

開業医丸儲け/『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎 2018年
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎 2018年
『愛国左派宣言』森口朗

 ・開業医丸儲け
 ・既得権益の象徴「保育業界」

・『日本人が知らない日本医療の真実』アキよしかわ
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

 しかし残念ながら、あなたはけっして金持ちにはなれない。
 というのも、あなたには金持ちになるための決定的な要素がないからだ。
 それは「悪」である。
 誤解を恐れずに言うと、金持ちの99%は、何らかの「悪事」を働いている。それは、少しばかり「性格が悪い」というようなライトな話ではない。その実情を知れば、誰しもが激しい嫌悪感を抱くような、かなり「本格的な悪」である。

【『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(悟空出版、2018年)以下同】

「人間らしさは何か?」と問われれば善性や思いやり、親切と答える人が多い。確かに高等知能の特徴ではあるが実は違う(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール)。知能という点で考えると「相手を騙(だま)す」ところに真の人間らしさがある。騙すためには相手の信念を理解する必要がある。つまり優れた共感能力を駆使して相手を不幸に陥れるところに騙す行為の本質があるのだ。

 悪の臭いを放つ金持ちと聞いて真っ先に思い浮かぶのが政治家と教祖だ。庶民が想像する金持ちは贅沢な暮らしといったレベルであるが、彼らは多くの人々や組織を自由に動かす。他人の人生を翻弄するほどの権力を有している。目には映らないその影響力を決して軽んずるべきではないだろう。敗戦後の日本が精神的な堕落を止めることができなかった理由もここらあたりにあるのだろう。富裕層は増えたがそこに国士はいなかったのだ。

 開業医がどのくらい金持ちなのかは、厚生労働省のデータでもわかる。厚生労働省の「医療経済実態調査」では、開業医や勤務医の年収は、近年、おおむね次のようになっている。

開業医(民間病院の院長を含む)  約3000万円
国立病院の院長  約2000万円
勤務医  約1500万円

 このように、開業医というのは、勤務医の約2倍の年収がある。(中略)
 なぜ、日本の開業医はこんな金持ちになれるのか、不思議に思われる方も多いはずだ。地域の診療所のようなところでは、いかにも閑散として患者などそうたくさんいそうもないところが多々ある。なのに、なぜ開業医はそんなに儲かっているのか?
 実は、この開業医という職業には巨大な利権が存在するのだ。
 開業医には、収入面や税制面でさまざまな優遇制度が設けられており、それこそが彼らが金持ちになっている最大の要因なのである。

 開業医が持っている利権のひとつが、診療報酬優遇制度である。
 信じられないことに、同じ診療報酬でも、公立病院などの報酬と私立病院(開業医)の報酬とでは額が違うのである。たとえば、再診料は普通は570円なのだが、開業医は720円となっている。他にも、開業医は「高血圧や糖尿病の管理をすれば報酬を得られる」などの特権が与えられている。
「メタボリック」という言葉が大々的に流布されて久しい。これも、開業医の収入を増やすための仕掛けだと言われている。
 現在、メタボリック予防に対応して「特定疾患療養管理料」という診療報酬点数の項目がある。これは、高血圧、糖尿病、がん、脳卒中など幅広い病気に関して、「療養管理」という名目で治療費を請求できるというものだ。
 大病院には、この「特定疾患療養管理料」を請求することは認められておらず、開業医だけに認められているのだ。
 簡単に言えば、大病院と開業医でまったく同じ治療をしても、開業医だけが「特定疾患療養管理料」という名目で、治療費を上乗せ請求できるというこである。つまり、【同じ治療を行っても開業医のほうが、たくさん医療費を請求できるのだ。】

 日本医師会や東京医師会は開業医の団体である。コロナ騒動で偉そうなことをぶち上げているが、彼らはコロナ患者を診(み)ていない。新型コロナの死亡者数も陽性者数(※PCR検査の陽性=感染者ではないことに注意)も断トツで少ない日本の医療崩壊が叫ばれるのは、開業医がコロナ患者を診療しないためだ。

 それにしても勤務医と開業医の年収が2倍もあるとは驚愕の事実である。

 また、開業医は、税金に関しても非常に優遇されている。
 社会保険診療報酬の72%を経費として認められているのだ(社会保険診療報酬が2500万円以下の場合)。
 簡単に言えば、「開業医には収入のうち28%にだけ課税をしましょう、収入の72%には税金をかけませんよ」ということである。
 本来、事業者というのは(開業医も事業者に含まれる)、事業で得た収入から経費を差し引き、その残額に課税される。
 しかし開業医は、収入から無条件で72%の経費を差し引くことができるのだ。実際の経費がいくらであろうと、である。
 開業医の税制優遇制度の内容は、右の表の通りである。

 例えば、社会保険収入が5000万円だった場合、経費は次のような計算になる。

5000万円×57%+490万円=3340万円

 この3340万円が自動的に経費として計上できるのだ。これは、実に収入の約67%にもなる。つまり、【実際には経費がいくらかかろうと、この医者は収入の67%を経費に計上できるのだ。】
 医者というのは、技術職であり、物品販売業ではない。
 材料を仕入れたりすることはほとんどないので、仕入れ経費などはかからない。だから、基本的にあまり経費がかからないのである。
 普通に計算すれば、経費はせいぜい30~40%くらいだろう。にもかからず、67%もの経費を計上できるのだ。税額にして、500万円~900万円くらいの割引になっていると言える。
 開業医が儲かるはずである。
 この制度は世間の批判を受け、縮小はされたが、廃止されることなく現在も残っている。前記の税制は、縮小された後のものである。つまり、以前はもっと税制的に優遇されていたのだ。

「つまり、開業医の実質年収は6000万円程度だと推測されるのだ」。しかもこの「3340万円」に税はかからない。異様な仕組みといってよい。政治家と官僚が医者に与えた権益なのだろう。日本医師会の会員数が16万6883人(平成21年12月)である。開業医の数を15万人とすると、その年収合計額は9兆円にもなる。あまりの額の大きさに目まいがする。

 税務知識のある者が大村の批判をしていることは承知している。ただ私にはそれを検証するほどの知識がない。一方、批判者たちは大村以上に有益な情報を社会に提供しているのだろうか? 別に著作である必要はない。ブログやホームページでも十分発信は可能だ。ケチをつけるのは簡単なことだ。大村の意欲的な著作活動を見れば、多少の過ちがあったとしても彼は修正しながら更なる飛躍を目指すことだろう。

 もう一つは大村以外で、こうした税制上の不平等を指摘する元官僚や元税務調査感を私は知らない。この一点だけでもアンタッチャブルな分野に斬り込んでいることが窺える。あまりにも大きな不正は大きすぎて人の目に映らない。

 日本医師会は自民党の有力な支持団体である。一方で共産党を支持する医師も多い。つまり自民党も共産党も手をつけることができないわけだ。まるでロスチャイルド家を思わせる狡猾さである。


https://twitter.com/oishiku_naare/status/1385632343096840195

2020-10-20

穀物が国家を作る/『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット


『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『人類史のなかの定住革命』西田正規

 ・定住革命と感染症
 ・群集状態と群集心理
 ・国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ
 ・穀物が国家を作る

『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『近代の呪い』渡辺京二
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

必読書リスト その四

 しかし、なぜ穀物は、最初期の国家でこれほど大きな役割を果たしたのだろうか。結局のところ、ほかの作物は――中東ではとくにレンズマメ、ヒヨコマメ、エンドウマメなどの豆類が、中国ではタロイモ、ダイズが――すでに作物化されていたのだ。なぜ、こうしたものは国家形成の基盤とならなかったのだろう。もっと広げれば、なぜ歴史記録には「レンズマメ国家」がないだろう。ヒヨコマメ国家やタロイモ国家、サゴ国家、パンノキ国家、ヤムイモ国家、キャッサバ国家、ジャガイモ国家、ピーナッツ国家、あるいはバナナ国家はなぜ登場しなかったのだろう。こうした栽培品種の多くは、土地1単位当たりで得られるカロリーがコムギやオオムギよりも多く、労働力が少なくて済むものもある。単独で、あるいはいくつかを組み合わせることで、同程度の基礎的栄養は提供されたはずだ。言い換えれば、こうした作物の多くは、人口密度と食料価値という農業人口統計学的な条件を、穀物と同じ程度には満たしているのだ(このなかで水稲だけは、土地1単位当たりのカロリー値の集中度という点で抜きんでている)。
 わたしの考えでは、穀物と国家がつながる鍵は、穀物だけが課税の基礎となりうることにある。すなわち目視、分割、査定、貯蔵、運搬、そして「分配」ができるということだ。レンズマメやイモ類をはじめとするデンプン植物といった作物にも、こうした望ましいかたちで国家適応した性質がいくつか見られるが、すべての利点を備えたものはない。穀物にしかない利点を理解するためには、自分が古代の徴税役人になったと想像してみればいい。その関心は、なによりも収奪の容易さと効率にある。
 穀物が地上で育ち、ほぼ同時に熟すということは、それだけ徴税官は仕事がしやすいということだ。軍隊や徴税役人は、正しい時期に到着しさえすれば、1回の遠征で実りのすべてを刈り取り、脱穀し、押収することができる。敵対する軍隊にとっては、穀物だと焦土作戦がとても簡単になる。収穫を待つばかりの穀物畑を焼き払うだけで、耕作の移民は逃げるか飢え死にするかしかない。さらに好都合なことに、徴税役人にしても敵軍にしても、ただ待っていれば作物は脱穀され、貯蔵されるので、あとは穀物倉の中身をごっそり押収すればいい。実際に中世の十分の一税では、耕作農民が脱穀前の穀物を束にして畑に置いておけば、超税官が10束ごとに1束ずつ持っていくことになっていた。

【『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット:立木勝〈たちき:まさる〉訳(みすず書房、2019年)】

 国家とは徴税システムなのだ。衝撃と共に暗澹(あんたん)たる気持ちに打ちひしがれた。小室直樹が「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』)と指摘したが、初期国家は奴隷に支えられていた。つまり搾取を、民主政という擬制によってコミュニケーションと見せかけるまでに奴隷制度は薄められたのだろう。であれば国民とは納税者と消費者の異名である。

「チンパンジーの利益分配」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)を思えば、人類の不公平さはあたかもチンパンジー以下に退化した感を覚える。社会主義・共産主義への憧れがいつまで経っても消えない理由もこのあたりにあるのだろう。ただし旧共産圏が格差を自由主義以上に拡大した事実を我々は知っている。

 一体誰がどのような目的で国民の富を奪っているのだろうか? 税は強制的に徴収される。所得税は新しい税で、源泉徴収が導入されたのは第二次世界大戦前のことだったと記憶している。確かヒトラー率いるドイツに続いて日本が導入したはずだ。元々は収穫高に応じて負担が決められた。近代では戦費調達を目的とした税も多い(酒税、たばこ税など)。一旦設定された税が取り消されることはない。税負担は増え続ける一方で軽減に応じる国家は見当たらない。、国家はきっと酷税によって亡ぶことだろう。

 現代の奴隷は「自らお金を支払う者」である。消費には必ず税が含まれている。マイホームを購入すれば、印紙税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税などの負担があり、自動車を買えば、自動車取得税、消費税、自動車重量税、自動車税を取られ、ガソリンには2種類のガソリン税と石油税が含まれる。飛鳥時代の税金(租庸調の租)は収穫の約3%であった(税の歴史 | 税の学習コーナー|国税庁)。現在、日本の国民負担率(税+社会保障費)は42.8%(2016年)で、財政赤字分をも含めた潜在的国民負担率は50.6%となっている。所得の半分以上が税として徴収されている事実を殆どの国民は自覚していない。

負担率に関する資料 : 財務省
国民負担率の国際比較(OECD加盟34カ国)【PDF】
各国の「国民負担率」 - 前原誠司【PDF】
国民負担率の内訳の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース
世界で一番、税金が高い国

 渡部昇一が財務官僚に訊ねたところ、本当であれば所得税1割を全国民が納めれば国家は回ると答えた。だとすれば、4割の税金はどこに消えているのか? 2020年度の税収63.5兆円から単純計算すれば、25.4兆円のカネが消えていることになる。誰かの懐(ふところ)に入るにしては大きすぎる額だ。

 穀物が国家を作るための道具であったとすれば、穀物が健康を損なう原因になっていることは十分あり得る。本書では初期国家周辺の狩猟採集民が健康においても人生の充実度においても優(まさ)っていたと断じている。

 一貫して恐ろしいことを淡々と綴る筆致に白色人種の残酷な知性が垣間見える。300ページ足らずで4000円を超える価格をつけたみすず書房は更に残酷である。こんなべら棒な値段の本は買わない方がいいだろう。図書館から借りればよい。



税を下げて衰亡した国はない/『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一

2020-09-11

日本人の致命的な曖昧さ/『三島由紀夫と「天皇」』小室直樹


『二・二六帝都兵乱 軍事的視点から全面的に見直す』藤井非三四
『自衛隊「影の部隊」 三島由紀夫を殺した真実の告白』山本舜勝
『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』中川右介
『あなたも息子に殺される 教育荒廃の真因を初めて究明』小室直樹

 ・日本人の致命的な曖昧さ
 ・二・二六事件の矛盾
 ・二・二六事件を貫く空の論理

『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄
『〔復刻版〕初等科國史』文部省

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 そもそも(※二・二六事件の)決行部隊と正規軍との関係はいかなるものであったろうか。
 名前こそ“決行部隊”などとはいっても、勝手に軍隊を動かして、政府高官を殺し、首都の要衝を占領しているのである。いま仮に正当性の問題をしばらく措(お)いても、決行部隊は、反乱軍か、さもなくんば、革命軍(「維新軍」といってもよい)である。正規軍(政府軍)とは敵味方の関係である。生命がけで戦って、決行部隊が負ければ反乱軍として討伐され、勝てば、革命軍として新しい政府をつくる。
 これ以外の論理は、全くありえない。
 日本でも外国でも、これ以外の論理は、あったためしがない。その、ありうるはずのないことが、昭和11年2月26日の夜に起きた。(中略)
 決行部隊は、正規軍たる歩兵第三連隊長たる渋谷大佐の指揮下に入って、なんと、警備隊にくみこまれたのであった。
 想像を絶する出来ごとである。
 クロムウェルの鉄騎兵が、チャールズ二世の麾下(きか)に加わり、ロンドンを警備するようなものではないか。政府を潰滅(かいめつ)させ、東京を占領した決行部隊が、【政府】軍の指揮下に入って、自分たちが軍事占領している東京の警備にあたるというのである。

【『三島由紀夫と「天皇」』小室直樹(天山文庫、1990年/毎日コミュニケーションズ、1985年『三島由紀夫が復活する』に加筆し、改題・文庫化/毎日ワンズ、2019年)以下同】

 二・二六事件を三島理論で読み解くという意欲的な試みである。宗教に造詣の深い小室ならではの着眼で、唯識を通した現象論を展開している。

 世界恐慌(1929年/昭和4年)は既に関東大震災(1923年/大正12年)、昭和金融恐慌(1927年/昭和2年)で弱体化していた日本経済に深刻な打撃を与えた。東北地方は1931-35年(昭和6-10年)にかけて冷害で大凶作となった。1933年(昭和8年)には昭和三陸地震で岩手県を中心に30メートル近い津波に襲われた。

 そのため恐慌時に打撃を受けていた農家経済はさらに悪化し、木の実や草の根を食糧とせざるをえない家庭や、身売りする娘、欠食児童の数が急増した。芸妓(げいぎ)、娼妓(しょうぎ)、酌婦、女給になった娘たちの数は、33年末から1か年の間に、東北六県で1万6000余名に達している。

小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

二・二六事件と共産主義の親和性/『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫
『親なるもの 断崖』曽根富美子

 東北出身の兵士はじっとしていることができなかった。自分の姉や妹が芸者として売られているのである。戦時中の慰安婦は職業であったが、当時の性産業は奴隷のような扱いをしていたと考えて差し支えない。避妊すらまともに行われていなかった。

 格差が革命の導火線となることは必定である。そもそも動物の群れを支えているのは平等原則なのだ(チンパンジーの利益分配/『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。第一次世界大戦に敗れたドイツをいじめ過ぎてヒトラーが登場したのは歴史の必然と言ってよい。

 渦中の1932年(昭和7年)に血盟団事件五・一五事件が起こる。昭和維新の激流は二・二六事件へと至るが、天皇という巌(いわお)の前に水しぶきとなって弾けた。

「警備」が必要になったというのも、もともと、決起部隊が、政府を消滅させ、東京を占領したからではないのか。かかる事態に対処するために警備が必要になったというのに、ことを起こしたご当人が、その警備役を買って出るというのだから、放火魔に火の用心をさせるようなものだ。
 もっと重大なことはこれだ。
 かくまで、ありうべからざる事態に直面して、軍首脳が、これは不思議だとは思わないことである。
 軍首脳のほとんどは、「反乱軍」をそのまま正規軍にくみ入れるなんて、そんなベラボーな、と思うかわりに、これは名案だとばかりにとびついた。いきりたっている決行部隊を正規軍の指揮下に入れれば、気もやすまって、もうあばれないだろう、というのである。
 いずれにせよ、なんでこんなベラボーといっても足りないことが起きたのか。その合法的根拠は、いったい、どこにあるのか。
 それは、戦時警備令による。
「戦時警備令」によって、決行部隊は、「合法的」に警備隊の一部に編入された。
 歩兵第三連隊長の渋谷大佐もこれを許可し、決行部隊の側でも、ヤレヤレこれで官軍になれたワイとよろこんだ。
 ここに、われわれは、「日本人の法意識」を、端的にみる思いがする。
 決行部隊は、日本政府を潰滅させ、東京を軍事力で占領した。
 これが合法的であるはずはない。決行部隊は、大日本帝国の法律を蹂躙(じゅうりん)した。これは、たいへんな日本帝国にたいする挑戦である。しかし、彼らのイデオロギーからすれば、国家の法律なんかよりも、「尊王」「討奸」の大義のほうがずっと重いのである。
 でも彼らの行為は非合法である。
 だれだってわかる。
 まして、陛下の軍隊を勝手に動かした。
 これは軍人的センスからいえば、非合法のなかでも、最大の非合法である。ほかのどんな非合法が許せても、この非合法だけは、断じて許すことはできない。大逆罪以上の大罪なのである。
 決行部隊は、すでにこの大罪をおかしている。
 これは、大日本帝国の法に対する真っ向からの挑戦である。
 欧米的センスからすると、彼らの行為は、大日本帝国そのものの否定ということにほかならない。
 いや、天皇の地位の否定とも解釈されかねない。いや、ほとんど確実に、このように解釈されることであろう。

 彼らは尊皇・討奸を掲げながら天皇に弓を引いた。二・二六事件を知った天皇は激怒した。自ら賊を討ちにゆこうとされた。青年将校らに同情的だった軍首脳は慌てふためいた。

 当時の政党政治の腐敗に対する反感から犯人の将校たちに対する助命嘆願運動が巻き起こり、将校たちへの判決は軽いものとなった。このことが二・二六事件の陸軍将校の反乱を後押ししたと言われ、二・二六事件の反乱将校たちは投降後も量刑について非常に楽観視していたことが二・二六将校の一人磯部浅一の獄中日記によって伺える。

Wikipedia

 国民の人気ほど当てにならないものはない。民草はいともたやすく風になびく。助命嘆願運動に責任があったとは思えない。時代の暗がりの中でヒーローと錯覚しただけの話だろう。

 日本人の致命的な曖昧さは今日に至っても変わることがない。例えば朝日新聞の慰安婦捏造記事だ。日本人の信頼を地に落とし、どれほど国益を毀損したか測り知れない。木村伊量〈きむら・ただかず〉社長の辞任などで到底収まる話ではない。しかも英語版では執拗に「従軍慰安婦」の記事を配信し続けたのだ。発行停止処分にするべきだった。

 また慰安婦に関して言えば、外務省の誰が「comfort woman」と訳したのか? この語訳が国際理解を得られるはずもない。翻訳した者を投獄するのが当然だろう。

 尖閣諸島問題も同様で日中国交回復(1972年)の際、田中角栄首相は日本の領土であることをはっきりと言わなかったことに端を発している。自民党の首相は内弁慶ばかりで外国へゆくと相手の顔色を窺うの常だ。

 官僚は江戸時代であれば侍である。国益を損なうようなことがあれば切腹するのが当然だという意識を持つべきだ。

 昭和維新の余韻は宮城事件(1945年終戦前日)にまでつながった。



二・二六事件前夜の正確な情況/『重光・東郷とその時代』岡崎久彦

2020-06-27

キリスト教の教えでは「動物に魂はない」/『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一、小原克博


『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース:茂木健一郎訳
『なぜ、脳は神を創ったのか?』苫米地英人
『解明される宗教 進化論的アプローチ』 ダニエル・C・デネット
『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド
『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール

 ・経済が宗教を追い越していった
 ・キリスト教の教えでは「動物に魂はない」

『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲

キリスト教を知るための書籍
宗教とは何か?
必読書リスト その五

山極●聖書によれば、動物には魂はないのですか。

小原●そうです。

山極●なるほど。だからね、それは農耕牧畜とともに生まれたんだと思うんですよ。狩猟採集民の世界というのは、動物に魂があるか、人間に魂があるかという話ではなくて、動物と人間は対等ですから、動物と会話ができていたわけですね。

小原●そうですね。狩猟採集の時代にあった動物と会話できるという感覚は、その後、形を変えながらも、様々な神話や物語の中に引き継がれてきたと思います。日本の昔話では、動物と人間が会話を交わす物語がたくさんありますし、さらに言えば、動物にだまされたり、助けられたり、「鶴の恩返し」のように動物と結婚したり、いろいろなバリエーションがありますね。動物が人間をどう見ていたかはともかくとして、少なくとも人間の側からは、長きにわたって、動物は会話できる対象と見られてきたのではないでしょうか。

【『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一〈やまぎわ・じゅいち〉、小原克博〈こはら・かつひろ〉(平凡社新書、2019年)】

 日本人ならすかさず「一寸の虫にも五分の魂がある」と反論するだろう。一神教は神の絶対性を強調する。その神に似せて造ったのが人間だ。人間は神に最も近い動物であるが神には絶対になれない。この断絶性が「動物に魂はない」とする根拠になっているのだろう。

 具体的には南極観測隊の犬の扱い方が好例だ。日本は15頭の犬を南極に置き去りにした(1958年)。イギリスでは「日本人はなんと残酷な民族か!」と糾弾され、「イギリス犬の日本輸出を中止せよ!」という声まで上がった。翌年、奇蹟的に2頭の生存が確認された。これがタロとジロである。一方、イギリス隊は1975年、帰還を余儀なくされた時、100頭の犬を薬物で殺害した。「犬を殺すのが一番経済的だ」という理由で。こうした二面性は神の愛を説きながら殺戮(さつりく)を繰り返してきた彼らの歴史に基づく性質だ。彼らは一方で戦争を行いながら、もう一方で慈善活動を行うことができる。

 かつての捕鯨もそうだ。欧米は鯨油だけを採ってクジラの遺体は捨てた。黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった(『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男)。日本の場合、食用で尚且つ骨からヒゲに至るまでを活用する。そんな連中が「クジラは知能が高い」という理由で日本を始めとする捕鯨国を口汚く罵っているのだ(『動物保護運動の虚像 その源流と真の狙い』梅崎義人)。日本は「動物に魂はあるのか?」と反論すべきであった。

   日本人がキツネに騙されなくなったのは高度経済成長の真っ只中で昭和40年(1965年)のことだ(『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』内山節)。暮らしが豊かになり我々は自然との交感を失ったのだろう。

2020-04-07

マネーと言葉に限られたコミュニケーション/『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎

 ・マネーと言葉に限られたコミュニケーション

『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎

世界史の教科書
必読書リスト その二

 歴史というのは、政治、戦争などを中心に語られがちだ。「誰が政権を握り、誰が戦争で勝利したのか」という具合に。
【だが、本当に歴史を動かしているのは、政治や戦争ではない。
 お金、経済なのである。】
 お金をうまく集め、適正に分配できるものが政治力を持つ。そして、戦争に勝つ者は、必ず経済の裏付けがある。
 だからこそ、【お金の流れで歴史を見ていくと、これまでとはまったく違う、歴史の本質が見えてくる】ものなのだ。

【『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(KADOKAWA、2015年)以下同】

 大村大次郎は脂(あぶら)が乗っている。読みやすいビジネス書だと思ったら大間違いだ。著作が多いため重複する内容も目立つが必ず新しい視点を提供してくれる。元国税庁の調査官ということもあって節税本が殆どだが、具体的なアドバイスもさることながら、税に対する認識や意識が変わる。それは「国民の自覚」と言い換えてもよかろう。

 小室直樹が「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』)と喝破している。それをわかりやすく敷衍(ふえん)したのが上記テキストだ。

 なぜ古代エジプトだけが3000年もの間、平和で豊かな時代を送ることができたのか?
 筆者は、その大きな要因に、徴税システムがあると考える。
 古代から現代まで、その国の王や、政府にとって、一番、面倒で大変な作業というのは、徴税なのである。税金が多すぎると民は不満を持つし、少ないと国家が維持できない。
 また税金のかけ方が不公平になっても、民の不満材料になるし、徴収のやり方がまずければ、中間搾取が多くなり国の収入が枯渇(こかつ)する。
【古今東西、国家を維持していくためには、「徴税システムの整備」と「国民生活の安定」が、絶対条件】なのである。

 チンパンジーの世界でも「所有と分配の両方が行なわれている」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。ラットですら目の前で苦しむ仲間がいれば自分の利益を放棄する(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール)。

 ドゥ・ヴァールは「思いやりも本能である」と主張する動物行動学者だが、昨今の消費税増税は明らかに公平性を欠いており、段階的に下げられてきた富裕層の所得税を踏まえると、格差社会は政策によって生まれたと言いたくなる。

 バブル崩壊(1991年)後の日本を見てみよう。終身雇用が失われ非正規雇用が増え始める。学校ではいじめが日常茶飯事となり、若者の間ではニートや引きこもりが増加。人口構成は高齢化社会(65歳以上人口が7%、1970年)~高齢社会(高齢化率14%、1994年)~超高齢社会(高齢化率21%、2007年)と変遷してきた(Wikipedia)。有吉佐和子が少子高齢化を指摘したのが1972年のことである(『恍惚の人』)。200万部を超えるベストセラーとなったが政治家も国民も本気で考えようとはしなかった。

 私は少子化を問題とは思っていない。ピークを迎えた人口構成が緩やかに下がることはあるだろう。問題は「結婚したくてもできない」「恋愛をするほどの余裕もない」若者を増やし、挙げ句の果てには「子供をつくりたいと思えない」国家の有り様である。より本質的には災害や戦争が訪れることを告げているように思われてならない。

 近代以降のコミュニケーションはマネーと言葉に限定されてしまった感がある。古(いにしえ)の人々には祈り、踊り、狩り、祭りを通したコミュニケーションが存在した。現代人がスポーツや音楽に魅了されるのは「言葉を超えたコミュニケーション」を感じるためだ。コミュニケーションは交換が交感を生み交歓に至る、というのが私の持論だが、大前提として交換するものが少なすぎる。

 平等という価値観は既に左翼が汚してしまった。せめて公正さを取り戻すべきだろう。社会が崩壊する前に。

2020-02-12

「出る杭は打たれる」日本文化/『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール


『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』三井誠
『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー

 ・“思いやり”も本能である
 ・他者の苦痛に対するラットの情動的反応
 ・「出る杭は打たれる」日本文化

『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
フランス・ドゥ・ヴァール「良識ある行動をとる動物たち」
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」がうまれたとき』山極寿一、小原克博

必読書リスト その三

 アメリカでは「きしむ車輪ほど油を差してもらえる(声が大きいほど得をする)」のに対し、日本では「出る杭は打たれる」のだ。

【『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール:藤井留美〈ふじい・るみ〉訳(早川書房、2005年)】

 出る杭は打たれ、打たれなければ出る悔い。12年前に読んだのだが当時とは受け止め方が違う。他民族の距離が近く、戦争に明け暮れてきたヨーロッパの歴史を踏まえれば自己主張するのが自然である。一方、日本のような同質社会では言葉を介さぬ阿吽(あうん)の呼吸が空気を支配する。日本男児には長らく多弁を嫌う伝統があった。「男は黙ってサッポロビール」(1970年)というわけだ。

 日本人は感性を解き放つ道具としては言葉を大切にしてきたが、他人を説得するための理窟を忌避してきたように見える。「理窟じゃない」「口先だけなら何とでも言える」「生意気を言うな」などといった表現には言葉を低い価値と捉える日本的な感覚が表出している。言葉とは「言(こと)の端(は)」で言(こと)は事(こと)に通じる。言葉が「事の端」を示し幹や根ではないことに留意すれば日本人の達観が理解できよう。

 村八分(火事と葬式で二分)は稲作の水利権を巡って始まったとする説がある。水の管理は村(集落)全体で行う必要がある。そこで勝手な真似をする輩が出てくれば皆が迷惑を被る。出る杭が打たれるのは当然で、むしろ積極的に打つ必要さえあったのだろう。ところがコミュニティが町や都市、はたまた国家へと拡大する中で同様のメンタリティが働けば新しい産業の創出が阻まれる。天才も登場しにくい。イノベーションを成し遂げるのはいつの時代も型破りな人間なのだ。ここに大東亜戦争以降、変わらることのない日本の行き詰まりがあるのだろう。

2020-01-08

貨幣やモノの流通が宗教を追い越していった/『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」がうまれたとき』山極寿一、小原克博


『カミとヒトの解剖学』養老孟司
『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール
『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ

 ・貨幣やモノの流通が宗教を追い越していった
 ・キリスト教の教えでは「動物に魂はない」

宗教とは何か?

山極●世界宗教と呼ばれる宗教は、最初は価値の一元化、倫理の一元化を目指して文化を取り込んでいき、それぞれが交じり合うこともあったと思いますが、いずれも大きな壁にぶつかってしまった。それを追い越していったのは経済のグローバル化だと思うんですよ。

小原●経済活動の拡大が宗教に及ぼした影響は、間違いなく大きいです。

山極●貨幣が、モノの流通が宗教を追い越していった。宗教の境界があるにもかかわらず、モノはどんどん交換され、貨幣は流通していった。だから、貨幣はユーロという統一を果たしましたが、言語までは変えられなかった。つまり、言語の一元化はできなかった。同様に、文化の一元化もなかなか起こりえない。なぜならば、言語や文化というものは身体化されたものだからです。一方、貨幣というのは、いうなれば幻想の価値観を一定のルールのもとに共有しているに過ぎない。ですからそれは普及しやすい。それによって、宗教の力がどんどん圧縮されて、経済の方が実は宗教としての力を持つようになってきている。

【『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」がうまれたとき』山極寿一〈やまぎわ・じゅいち〉、小原克博〈こはら・かつひろ〉(平凡社新書、2019年)】

 思いつくままに関連書を挙げたが一冊の本が脈絡を変える。何をどの順番で読むかで読書体験は新たな扉を開く。それは一種の「編集」と言ってよい。実は細胞の世界でもコピー、校正、編集が繰り返し行われている(『生命とはなにか 細胞の驚異の世界』ボイス・レンズバーガー)。ミクロからマクロに至るあらゆる世界で実行されているのは「情報のやり取り」だ。

「貨幣やモノの流通が宗教を追い越していった」理由は情報の速度にあったのだろう。人々が「信じる」ことによって価値は創出される。神は存在があやふやだし、祝福には時間を要する。その点キャッシュ(貨幣)はわかりやすい。誰もがその価値を信用しているから即断即決だ。祈り(労働対価)と救済(消費)が数秒で交換される。

 日本で貨幣が流通するようになったのは鎌倉時代である。つまり宗教改革と金融革命が同時に起こった。更に国家意識が高まった事実も見逃せない。元寇によってそれまでは地方でバラバラになっていた武士集団が日本を守るために一つとなった。

 敗戦後に新宗教ブームが興ったが、これも高度経済成長で熱が冷めた。宗教は経済に駆逐される。

 貨幣は万人が信ずるという点において最強の宗教と化した。今となっては疑う者は一人もあるまい(笑)。果たしてマネーの速度を超える情報は今後生れるのだろうか? 経済を超える交換の仕様は成立するのだろうか? 現段階では全く思いつかない。

2019-08-25

囚人のジレンマと利他性/『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー


『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン
『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎

 ・利己的であることは道理にかなっている
 ・囚人のジレンマと利他性

『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
・『ゲノムが語る23の物語』マット・リドレー

必読書リスト その五

 ところが、ある一つの実験によってこの結論は覆されたのである。30年ものあいだ、囚人のジレンマからまったく誤った教訓がひきだされていたことがこの実験で示されたのである。結局のところ、利己的な行為は合理的ではないことがわかった。ゲームを2回以上プレイする場合には。

【『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー:岸由二〈きし・ゆうじ〉監修:古川奈々子〈ふるかわ・ななこ〉訳(翔泳社、2000年)】

「設定」を変えれば全く異なった結果が出る。設定に縛られてきた30年間は脳の癖を示してあまりあり、人間の思い込みや先入観の強さに驚く。現実をゲームに当てはめてしまえば単純な図式しか見えてこない。むしろゲームの方を現実に近づけるべきだ。

 メイナード・スミスのゲーム(※タカとハトの戦い)は生物学の世界の話だったため、経済学者には無視された。しかし、1970年代後半、人々を当惑させるような事態が起こった。コンピュータがその冷静で厳格かつ理性的な頭脳を使って囚人のジレンマゲームをプレイし始めたのである。そして、コンピュータもまた、あの愚かで無知な人間とまったく同じ振る舞いをしたのである。なんとも不合理なことに、協力しあったのだ。数学の世界に警報が鳴り響いた。1979年、若い政治学者、ロバート・アクセルロッドは、協力の理論を探求するためにトーナメントをおこなった。彼は人々にコンピュータ・プログラムを提出してもらい、プログラムどうしを200回対戦させた。同じプログラムどうし、そして他のプログラムともランダムに対戦させたのである。この巨大なコンテストの最後には、各プログラムは何点か得点しているはずである。
 14人の学者が単純なものから複雑なものまでさまざまなプログラムを提出した。そしてみんなを驚かせたことは、「いい子」のプログラムが高得点を獲得したのである。上位8個のプログラムは、自分から相手を裏切るプログラムではなかった。さらに、優勝者は一番いい子で一番単純なプログラムだったのだ。核の対立に興味を持ち、おそらく誰よりも囚人のジレンマについては詳しいはずのカナダの政治学者アナトール・ラパポート(彼はコンサート・ピアニストだったこともある)は、「お返し(Tit-for-tat:しっぺ返し戦略とも言う)」というプログラムを提出した。これは最初は相手に協力し、そのあとは相手が最後にしたのとまったく同じことをお返しする戦略である。「お返し戦略」は、現実にはメイナード・スミスの「報復者戦略」が名前を変えたものである。
 アクセルロッドは再度トーナメントを開催した。今度はこの「お返し戦略」をやっつけるプログラムを募集したのである。62個のプログラムが試された。そして、まんまと「お返し戦略」を倒すことができたのは…「お返し戦略」自身だったのである。またしても、1位は「お返し戦略」であった。

 貰い物があればお返しをする。痛い目に遭わされれば仕返しをする。これは我々が日常生活で実践している営みだ。つまり既に形骸化したと思われている冠婚葬祭や、失われてしまった仇討ち・果たし合い(西洋であれば決闘)といった歴史文化にはゲーム理論的な根拠が十分にあるのだ。すなわち、いじめやハラスメントを受けて泣き寝入りすることは自らの生存率を低くし、社会全体のモラルをも低下させてしまうことにつながる。

 そう考えると「目には目を、歯には歯を」(より正確な訳は「目には目で、歯には歯で」)というハムラビ法典の報復律も社会を維持するための重要な価値観であったことが見えてくる。

 社会を社会たらしめているのは相互扶助の精神であろう。「持ちつ持たれつ」が社会の本質であり、互いに支え合う心掛けを失えばそこに社会性はない。

2019-08-23

利己的であることは道理にかなっている/『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー


『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン
『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎

 ・利己的であることは道理にかなっている
 ・囚人のジレンマと利他性

『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
・『ゲノムが語る23の物語』マット・リドレー

必読書リスト その五

 この囚人のジレンマは、どうやったらエゴイストたちがタブーや道徳的束縛や倫理的規範に依存せず、協力しあえるようになるのかをはっきりとわれわれに示してくれる。どうしたら自己利益追求を動機とする故人が公共の利益のために行動できるようになるのだろうか。このゲームを囚人のジレンマと呼ぶのは、自分の刑を軽くするために相手に不利な証言をするかどうかの選択を迫られた二人の囚人の寓話がゲームの意味をよく物語っているからである。もしどちらも相手を裏切らなければ、警察は二人を軽い罪で起訴することしかできない。だから、両者が黙っていればどちらも得をするわけである。しかし、もし片方が裏切れば、裏切ったほうはもっと得をするのである。
 なぜか。囚人の話はおいておいて、二人のプレーヤーが特典を争う単純な数学的ゲームをしていると考えてみよう。もし二人が協力しあえば(つまり「沈黙を守れば」)、両者は3点もらえる(これを「報酬」という)。もし二人とも裏切れば1点しかもらえない(「罰則」)。だが、一人が裏切り、一人が協力したなら、協力したほうは得点をもらえず(「お人好しすぎたツケ」)、裏切り者は5点もらえる(「誘惑」)。だから、パートナーが裏切るなら、自分も裏切ったほうが得なのである。そうすれば少なくとも1点はもらえるのだから。しかし、もしパートナーが協力したとすれば、やはり裏切ったほうが得をするのである。3点ではなく、5点も入るのだから。つまり【相手がどういう行動にでようと、裏切るほうが得なのである】。ところが、相手も同じことを考えるはずである。だから当然の結果として、両者ともが相手を裏切る。それで3点とれるところを1点で我慢するはめになるのである。
 道理に迷わされてはならない。二人ともが高潔な人柄で実際には協力しあうとしても、それはこの問題とはまったく関係がない。われわれが追求しているのは、道徳がまったく関与しない場所で理論的に「最良」な行動であり、その行動が「正しい」かどうかはこの際関係ないのである。そして出た結論が裏切ることだったのだ。利己的であることは道理にかなっているのである。

【『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー:岸由二〈きし・ゆうじ〉監修:古川奈々子〈ふるかわ・ななこ〉訳(翔泳社、2000年)】

 原書は1996年刊行。上記リンクの順番で読めば理解が深まる。っていうか天才的なラインナップであると自画自賛しておこう。本は読めば読むほどつながる。シナプスもまた。

遺伝子 親密なる人類史』シッダールタ・ムカジーと本書、そして『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイドの3冊は同率1位である。文章ではシッダールタ・ムカジー、難解さではマット・リドレー、好みではマシュー・サイド。

 確かに「利己的であることは道理にかなっている」。騙(だま)す行為を見れば明らかだ。人を騙せば自分が得をする。騙すためには高度な知能が必要だ。なぜなら相手に「誤った信念を持たせる」必要があるためだ。つまり相手の気持ちを想像できなければ騙すことは不可能なのだ。詐欺師、宗教家、政治家、タレントを見よ。彼らは多くの人々を騙すことで懐(ふところ)を膨らませている。否、懐に入りきれないほどの資産を形成し、巧みな綺麗事を並べ立て、欲望を無限に肥大させる。

 ではなぜ我々のように平均的で善良な国民は詐欺を働かないのか? それは詐欺行為が横行すれば社会の存立が危うくなることを自覚しているからだ。大体普通の神経の持ち主であれば知人や友人を騙すことなど到底できない。ところがどっこいビジネスとなると話は別だ。腕のいい営業マンは値段を吹っ掛けた上で契約にまで持ち込むし、高額商品ほど粗利(あらり)も大きい。値引きをしたフリをするのも巧みだ。

 もっと凄いのは税金だ。ガソリンや酒類は二重課税(違法)になったままだし、いつの間にか国民健康保険料は国民健康保険税となり、自治体によっては有料のゴミ袋が指定されており、これまた税に等しい。しかも多くの国民は国民負担率を知らない。日本の租税負担率(所得税+国税+地方税+消費税+社会保障費)は42.5%(平成30年/2018年)である(国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ)。

 実際は国民全員が所得税10%を収めれば国家予算は回るという。つまり、あの手この手を使って金持ちが税金を払っていないのだ。これまた「利己的であることは道理にかなっている」。

 ただし、この話はこれで終わらない(続く)。

2019-06-24

国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ


 ・笑い飛ばす知性
 ・時は金なり
 ・国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法

『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎
『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル
『パーキンソンの法則 部下には読ませられぬ本』C・N・パーキンソン
『新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ

必読書リスト その三

 日本の憲法には「納税は国民の義務」という条文がありまして、例によってお上に従うのが大好きな日本人は、これをありがたく遵守しています。一方、アメリカ合衆国憲法には「議会は税を課し徴収することができる」としかありません。
 欧米諸国において憲法とは、国民の権利と国家の義務を規定したものなのです。日本はまるっきり逆。国民に納税しろと命じるずうずうしい憲法は世界的に見てもまれな例です。
 スペインの憲法には「納税の義務」が記されていますが、税は平等であるべしとか、財産を没収するようなものであってはならぬなど、国家に対する義務も併記されています。日本では納税しないと憲法違反となじられますが、役人が税金を湯水のごとくムダ遣いしても憲法違反にはならず、はなはだ不公平です。
 一方的に国民に納税を要求する取り立て屋のような憲法があるのは、日本・韓国・中国くらいものですから、こんな恥ずかしい憲法はもう、即刻改正しなければいけません。

【『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ(イースト・プレス、2004年/ちくま文庫、2007年)以下同】

 amazonで文庫本を選択するとなぜか「中古品」にチェックが入っており、新品を選択すると「この商品は、ECJOY!ブックス が販売、発送します」と書かれていて送料600円が発生する。こんなのは初めて見た。ヨドバシカメラで購入することをお奨めする。

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 憲法改正といえば9条を巡る議論となりがちだが、こうした角度を変えた視点が新たな問題意識を与えてくれる。日本が源泉徴収制度を採用したのは戦前のこと。確かナチス・ドイツが最初で日本がそれに続いた。ドイツは敗戦によって源泉徴収をやめたが日本は維持し続けた。時折、「世界最古の源泉徴収制度国家」と書いてある本があるのはこのためだ。

 源泉徴収は本来であれば納税者と税務署が行う仕事を事業者に押しつける暴挙で、税務署の負担を減らし、納税者から納税意識を奪う。むしろそれが目的なのであろう。

 日本の租税負担率(所得税+国税+地方税+消費税+社会保障費)は42.5%(平成30年/2018年)である。財務省はこれを知らせたくないようで定期的にURLを変えている。

平成30年度の国民負担率を公表します : 財務省
負担率に関する資料 : 財務省


国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD加盟35カ国)

「国民負担率の内訳の国際比較」は単純にそのまま比較するわけにはいかない。なぜなら法人税の違いがわからないからだ(主要税目の税収(一般会計分)の推移)。

 2015年で赤字法人の比率は64.3%である(梶原一義)。厳密には赤字でも法人税を支払うケースはある(三井啓介)が、実際には節税を目的とした赤字化が多い。

「一番うれしいのは納税できること。社長になってから国内では税金を払っていなかった」(2014年3月期の決算発表)――豊田章男社長の衝撃的な発言を覚えているだろうか? トヨタは2009年から2013年までの5年間にわたって法人税を支払ってこなかった(『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎)。メガバンク3行は10年以上法人税を収めてなかった。「諸々の制度の活用により、大企業の税負担率は、名目上の税率よりも実際には低いものとなっている」(村井隆紘)。

 一方、源泉徴収されるサラリーマンの場合、見なし経費として給与所得控除が設けられている(No.1410 給与所得控除|所得税|国税庁)。改正された特定支出控除はそれほど旨味がある制度ではない(宮塚達夫)。税法上は収入-必要経費=所得となるが、サラリーマンの場合、一律の給与所得控除が悪平等になってしまうケースもある。

 チンパンジーの世界でも「所有と分配の両方が行なわれている」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。最後は全員に餌が行き渡るというのだから我々はチンパンジー以下かもしれない。

 かつてこう書いた。「もしも完璧な政府が生まれ、完璧な税制を行えば、支払った税金は100%戻ってくるはずだ。否、乗数効果を踏まえれば増えて戻ってくるのが当然である」(借金人間(ホモ・デビトル)の誕生/『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート)。平均以下の収入の人々には該当すると思うがどうか?

 元々たばこ税は印紙税として始まり、日清・日露戦争の戦費調達を目的に対象を広げた歴史がある(Wikipedia)。戦争と税金には切っても切れない縁がある。

 要はこうだ。国民は「欲しがりません勝つまでは」と酷税に耐える。で、戦争に勝てば国家は富み栄えて国民に恩恵を施す。じゃあ負けたらどうなるんだ? その時は民主政あるいはGHQによって政府がすげ替えられる。それでもかつての日本が高度経済成長を遂げたのはアメリカの戦争に便乗したためだ。

 鎌倉幕府は二度にわたる蒙古襲来(元寇)を斥けたが、借金をして馳せ参じた武士に恩賞を施すことができず、苦肉の策として徳政令(永仁5年/1297年)という借金棒引き政策を行ったが結局失敗して滅んだ。延(ひ)いては徳政令を求める土一揆が多発し遂には応仁の乱に至るのである。政治の根幹が経済と戦争であることが理解できよう。



税を下げて衰亡した国はない/『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一

2019-06-14

道徳・モラルの起源


 発行年順に紹介する。

 ・『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン:1980年

・『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー:2000年
・『脳に刻まれたモラルの起源 人はなぜ善を求めるのか』金井良太 :2013年
・『モラルの起源 道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか』クリストファー・ボーム:2014年
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール:2014年
・『モラルの起源 実験社会科学からの問い』亀田達也:2017年
・『分かちあう心の進化』松沢哲郎:2018年

 ・『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ

 エドワード・O ウィルソンとユヴァル・ノア・ハラリで挟むところに私の卓抜したセンスがある(笑)。金井・松沢以外は全部読んでいるがマット・リドレーが圧倒的に面白い。尚、道徳と倫理の違いを調べていたところ、次のページを見つけた。

Q.道徳と倫理の違いは何ですか? - まさおさまの 何でも倫理学

 書籍も挙げておく。

・『高校倫理からの哲学 第3巻 正義とは』直江清隆、越智貢編

徳の起源―他人をおもいやる遺伝子
マット リドレー
翔泳社
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2018-10-31

アメリカが行ったベトナム・ホロコースト/『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タース


『ベトナム戦記』開高健
『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン

 ・アメリカが行ったベトナム・ホロコースト

・『ベトナム戦争 誤算と誤解の戦場』松岡完
『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン

必読書リスト その二


「アメリカが戦争に勝ってよかったと思う。日本が勝ったらアメリカ人に対してどれほど残虐なことをしたか知れない」「アメリカのお蔭で日本は民主主義になった」――20~30年前まではこう考える人々が多かった。日本人に対して戦争の罪を刷り込ませるGHQの宣伝工作(ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム)は見事なまでに成功し、長期間にわたって日本人の精神を呪縛した。

 東京裁判では「平和に対する罪」というそれまでなかった概念を創作し、新しい基準を設けて過去の罪を裁くトリックまで行った。「平和に対する罪」を犯した人々がA級戦犯で25名中7名が処刑された。誤解している人々が多いが、ABCは罪のランク付けを意味するものではなく、A項・B項・C項の違いにすぎない。

 アメリカは日本に平和憲法を与えた。そのアメリカが第二次世界大戦後、朝鮮戦争(1950-53年)・ベトナム戦争(1955-75年)を行った。米兵はベトナムで何をしたのか。ご覧いただこう。

 クアンナム省と同様クアンガイ省でも、すさまじい砲撃や空爆が加えられる一方、地上部隊による目を覆うばかりの残虐行為がくり広げられた。数年後、エスクァイ誌の記者、ノーマン・ポワリエが軍の記録をもとに、そうした恐ろしい出来事のひとつを生々しく再現した記事を書いた。このような残虐行為の詳細が雑誌に掲載されるのは、戦争中としては異例のことだったが、そこに書かれた民間人の受難は、少しもめずらしくない、むしろありふれたものだったのだ。
 ポワリエの記事によれば、1966年9月23日、海兵隊のある部隊がスアンゴック集落に降り立った。彼らの狼藉は、まず1軒の家に押し入るところからはじまった。家の主人はコメ農家兼大工のグエン・ルウという61歳の男性だった。海兵隊員たちはこの武器を持たない住人に殴る蹴るの暴行を加えた。ひとりの兵士が「このベトコン野郎め!」と叫んでいたという。彼らはルウの民間人身分証明書を破り、家のなかを荒らした。ルウの若い姪たちは恐怖のあまり悲鳴をあげた。70歳近い妻は手荒な扱いを受け、ルウの妹も容赦なく足蹴にされた。
 それからほどなく、38歳の農民、グエン・チュックの家の扉がさっと開いた。チュックの妻は5人の子供たちのもとへ駆け寄ろうとしたが、海兵隊員たちにつかまって外へ放り出された。そのあとチュックはさんざんに殴られ、立ち上がることもできなくなった。やがてふたりの兵士が彼の両脚をつかんで逆さ吊りにし、もうひとりが彼の顔を力いっぱい蹴りつけた。悲鳴とすすり泣く声が部屋に満ちた。
 何度もあがったその叫び声は、16歳のグエン・チ・マイの家まで聞こえてきた。彼女は母とおばといっしょに地下壕に逃げ込んだ。3人が身をすくめてしゃがんでいると、海兵隊員たちが上からのぞき込み、手招きで出てこいと指示した。母とおばは従ったが、マイは恐怖のあまり動けなかった。手が伸びてきて、片脚をつかまれ、彼女は引きずり出されてしまった。兵士たちは3人の民間人身分証明書を破り捨てた。アメリカ人のひとりがマイの首すじに手をあてがい、もう一方の手で彼女の口をふさいだ。すると別のふたりの兵士が彼女の両脚をつかんで地面に引き倒し、荒々しくズボンを剥ぎ取った。
 海兵隊員たちはこのようにしてさらに5~6軒の家に押し入って集落を恐怖に陥れたが、武器も禁制品も見つからず、敵に関する情報さえも入手することができなかった。彼らが次に襲ったのは、18歳のブーイ・チ・フォンとその20歳の夫、ダオ・クアン・ティンの家だった。ティンは農民で、病気のために兵役につけなかったのだ。ふたりは3歳の息子と、ティンの母、姉、その5歳になる娘といっしょに暮らしていた。海兵隊員たちは、ティンをベトコンと決めつけ、ほとんど意識がなくなるまで殴った。彼らはティンを外へつれ出し、家の前の壁にもたせかけておいて、その横に恐怖にすくみ上がった姉と母親とふたりの子供を立たせた。
 妻のフォンは家のわきへと引きずっていかれた。ひとりの兵士が彼女の口を手で覆い、ほかの者が両腕と両足を地面に押さえつけた。米兵たちは彼女のズボンを脱がせ、シャツを引き裂き、体をまさぐった。そして輪姦がはじまった。最初はひとりの兵士が、次に別の兵士が襲いかかり、合計5人で彼女を陵辱した。ティンは妻のすすり泣きを聞き、大声で叫んで抗議した。すると海兵隊員たちはまた彼を殴りはじめた。やがて銃が乱射され、その声がやんだ。次の一連射がティンの母親の嗚咽に終止符を打ち、さらなる銃撃が姉を黙らせた。まもなく、子供たちの声もフォンの耳に届かなくなった。パン!という音に続いて閃光が弾け、灼けるような痛みが走ったかと思うと、フォンはどっと倒れた。
 海兵隊員たちは、現場の「見栄えをよくする」ために手榴弾を爆発させ、無線で戦果を報告した。ベトコン3名を殺害した、と。だが指揮所に戻ると、彼らは中尉に、あらかじめ決めておいた待ち伏せ場所では銃撃戦が起こらず、誤って民間人を数人死なせてしまったと話した。中尉は隊員たちに集落へ案内させ、自分の目で事実を確かめた。
 中尉は部下が大量虐殺を犯したことにショックを受けたが、すぐに犯罪の隠蔽に取りかかった。ティンの遺体を、当初計画していた1キロほど先の待ち伏せ場所まで運んでいき、細工をして、そこで銃撃があったように見せかけた。彼らはスアンゴック集落の殺戮現場にも手を入れた。ティンの5歳の姪は血まみれになり、裸で倒れていた。その体を抱きあげたとき、いきなり彼女が泣きだした。死んでいなかったのだ。しかしジョン・ポッター上等兵が二度と生き返らないようにした。彼はほかの兵士たちにカウントしろと言い、ある隊員によれば、たっぷり時間をかけて「ライフルでぐしゃぐしゃにした」という。別の隊員はこう証言している。「わたしは、1……2……3……と数えました。すると上等兵は(ライフルの)台尻であの子を何度も何度も殴りつけたんです!」
 じつはブーイ・チ・フォンもまだ生きていたのだが、隊員たちは気づかなかった。彼女は銃で撃たれたあと、意識を失っていた。数時間後、激しい痛みを感じて目を覚ました。どこもかしこも血まみれだった。手当てをしてもらうため、村人のひとりがもよりの米国海兵隊基地まで彼女をつれていってくれた。そこでフォンはベトナム人通訳者に、自分がレイプされたこと、家族が惨殺されたことを話した。通訳はこのことを同情的なアメリカ人医師に伝えてくれた。医師はフォンを診察し、性暴力被害に遭った確証を得ると、大隊指揮官に犯罪行為がおこなわれたことを報告した。フォンが一命をとりとめなければ、そして海兵隊員たちが戻ってきたあいだも意識が戻らず、基地へ運ばれてから勇気ある通訳者に話をし、その人物がフォンのために働いてくれそうなアメリカ人士官を見つけてくれなければ、ほかの多くの大量虐殺事件と同様、スアンゴック集落の事件も闇に葬られていたことだろう。しかしフォンの証言に基づく公式の捜査が実施されたにもかかわらず、殺戮にかかわったアメリカ人9名のうち、3名は無罪となり、4名は短期の懲役刑を受けただけですんだのだった。

【『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タース:布施由紀子〈ふせ・ゆきこ〉訳(みすず書房、2015年)】

 かような事実が300ページにわたって羅列されている。一片の罪もない婦女子や老人を暴行し、切り裂き、銃で撃ち、家屋には火を放ち、避難壕に手榴弾を放り込み、ナパーム弾で焼き尽くした。ありとあらゆる兵器が試され、白リン弾クラスター爆弾も投入された。白リン弾は破片が体内に刺さっても燃え続ける兵器で、クラスター爆弾は1発の爆弾に数百もの子爆弾が搭載され、金属片の飛散によって人間の手足を吹き飛ばしたり人体を切り刻む。意図的に殺傷能力を低くして多数の怪我人を出すことで社会機能にダメージを与える目的がある。

白リン弾
ローラ・ブシュナク: クラスター爆弾の破壊的な負の遺産 | TED Talk

「平和に対する罪」を規定したアメリカの残虐行為をどう考えればいいのだろう? きっと彼らが説く「平和」とは「アメリカに逆らわないこと」なのだろう。かつてアメリカ大陸を【発見】したヨーロッパ人は先住民インディアンを大量虐殺した(『インディアスの破壊についての簡潔な報告』ラス・カサス)。合衆国政府はインディアンの頭皮に懸賞金をかけた。インディアンは報復のために白人の頭の皮を剥(は)いだ。あろうことかハリウッドは映画作品を通して皮剥ぎの刑をインディアンの一方的な蛮行として描いた。自分たちの悪行を相手になすりつけるプロパガンダを行ったわけだ。日本に対して行われた戦後のイメージ操作もこれとよく似ている。

 白人なかんづくアングロサクソンの暴虐振りは人類史の中で際立っている。アジアは平和的であったがゆえに侵略されたのだろう。アジア人がボノボであれば白人はチンパンジーほどの違いがある(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール)。

 米軍が行ったベトナム民間人の大虐殺は「ベトナム・ホロコースト」と名づけるべきだ。日本に対して行った「原爆ホロコースト」や「東京ホロコースト」(東京大空襲)と同じく人類史に大書される歴史的蛮行である。やがて彼らの血に流れる暴力性によって自ら滅びる時が訪れることだろう。

 それにしても北ベトナムはよくぞアメリカの攻撃に耐えたものだ。私がベトナム戦争を意識したのは8歳の頃である。テレビで聴き、児童雑誌で見るたびにベトナム戦争は永遠に続くのだろうと思った。

 上記テキストの直後に韓国軍の残虐行為が描かれている。「1961年11月、クーデターにより政権を掌握した朴正煕〈パク・チョンヒ〉国家再建最高会議議長はアメリカを訪問するとケネディ大統領に軍事政権の正統性を認めてもらうことやアメリカからの援助が減らされている状況を戦争特需によって打開すること、また共産主義の拡大が自国の存亡に繋がるという強い危機感を持っていた為にベトナムへの韓国軍の派兵を訴えた。ケネディ大統領は韓国の提案を当初は受け入れなかったが、ジョンソン大統領に代わると1964年から段階的に韓国軍の派兵を受け入れた」(Wikipedia)。カネ目当てで投入された韓国軍は米兵同様、非道の限りを尽くした。韓国兵による強姦でライダイハンと呼ばれる子供が5000~3万人も生まれた。実際は犯された後で手足や頭部を斬り落とされる女性も数多く存在した。韓国は現在でも性犯罪大国でアジアの中では強姦犯罪率が突出している。そんな自分たちの残虐性を基準にして旧日本軍を見ているのだろう。従軍慰安婦にまつわる嘘の物語も韓国の似姿としか思えない。

 組織の理想型は軍隊であるが、どの軍隊も必ず嘘をつく現実がある。戦果を偽り、戦争犯罪を誤魔化し、平然と政治家や国民に対して嘘をつく。ここに軍隊の致命的な問題があるように思う。戦闘の最前線では何があるかわらかない。であればこそ「君命をも受けざる所有り」(『香乱記』宮城谷昌光)との孫子の言は重い。時にシビリアン・コントロール(文民統制)を無視する局面があってもおかしくない。ただし、軍という組織の暴走に向かう傾向を踏まえれば、軍法を厳しくするのが望ましい。

 私は心底驚いたのだが、クアンナム省もクアンガイ省も南ベトナムである。クアンガイ省にはあのソンミ村がある。ソンミ村虐殺事件を本書ではミライ事件と表記されているが、米兵に殺された500人以上の村人(男149人、妊婦を含む女183人、乳幼児を含む子供173人)は本来なら米兵が守るべき人々であった。この事件に関与した者も曖昧で中途半端な処分しか受けていない。

 ベトナム民主共和国は圧倒的な軍事力を誇る米軍にゲリラ戦で勝った。ナチス・ホロコーストはその量において圧倒したが、ベトナム・ホロコーストはその質において人類史上最悪の大虐殺といえよう。こう考えると、ジョン・F・ケネディ、リンドン・B・ジョンソン、リチャード・ニクソンら米大統領はヒトラーと肩を並べる十分な資格がある。

動くものはすべて殺せ――アメリカ兵はベトナムで何をしたか
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2018-07-19

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2017-07-23

“芯の堅い”利他主義と“芯の柔らかい”利他主義/『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン


『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン

 ・“芯の堅い”利他主義と“芯の柔らかい”利他主義

・『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
・『モラルの起源 道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか』クリストファー・ボーム
『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン
『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート

宗教とは何か?
必読書リスト その五

 この奇妙な選択性を理解し、人間の利他行動にまつわる謎を解くためには、我々は、協力的な行動の二つの基本的な形態を区別しておかねばならない。まず第一に、利他的な行動は、非理性的な形で、一方的に行使されることがある。この場合行為者は、意識の上で等価的見返え(ママ)りを望んでいないばかりでなく、同時に、無意識的な振舞いにおいても、結果としてそういった報いを望むのと同じ効果を示すような行動は、示さないのである。このような形態の行動を私は、“芯の堅い”利他主義 hard-core altruism と呼んでいる。これは、子供期以後の社会的賞・罰によっては、あまり影響を受けない一群の反応である。仮にこのような行動が見られるならば、それはおそらく、血縁選択、すなわち、競争関係にある家族または部族そのものを単位として作用する自然選択に基づいて進化したものと考えられる。“芯の堅い”利他主義は、非常に近縁な血縁者に向けられるものであり、相手との近縁の程度が薄まるに従って、その出現頻度や強度は急激に減少するものと予想される。これに対してもう一つ、“芯の柔らかい”利他主義 soft-core altruism と呼ぶべきものがあり、こちらは本質的には利己的な行為である。この場合、“利他的行為者”は、社会が、彼自身あるいはそのごく近縁な親族に、お返しをしてくれることを期待しているからである。彼の善行は損得計算に基づいており、この計算は、しばしば完全に意識的な形で実行されている。彼は、うんざりする程複雑な、各種の社会的拘束や社会的要請をうまく活用しながら、あの手この手を行使するのである。“芯の柔らかい”利他主義の能力は、主として個体レベルの自然選択に基づいて進化したものと考えられ、同時に、文化進化のきまぐれな変動にも大幅な影響を受けているものと思われる。“芯の柔らかい”利他行動の心理学的媒介項となるのは、嘘、見せかけ、欺瞞などである。欺瞞には自己欺瞞も含まれている。自分の振舞いに嘘いつわりはないと信じ込んでいる行為者は、最も強い説得力を示すだろうからである。

【『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン:岸由二〈きし・ゆうじ〉訳(思索社、1980年思索社新装版、1990年/ちくま学芸文庫、1997年)】

 旧ブログの抜き書きを削除してこちらに移す。再読して痛感したのだが、やはり「第7抄 利他主義」が本書の白眉である。

 2009年に読んであっさりと挫けたのだが、昨年何とか読了した。私にとっては忘れ難い読書道のメルクマール(指標)となった一冊である。エドワード・オズボーン・ウィルソン(1929-)は昆虫学者で社会生物学を提唱したことで知られる。

「情けは人の為ならず巡り巡って己(おの)が為」という。親切な行為には何らかの自己犠牲が伴うものだが時に疲労を覚えることがある。裏切られることも決して少なくない。「巡り巡って己(おの)が為」をエゴイズムと捉える向きもあるようだがそうではない。利他とは自分を取り巻く環境に正義や公正を実現する営みなのだ。困っている者や弱い者、打ちひしがれた者を助けるのは当たり前だ。躊躇(ちゅうちょ)や逡巡が入り込む隙(すき)はない。

「“芯の堅い”利他主義」とは例えば我が子が目の前で溺れた時に発揮される行動であろう。それに対して「“芯の柔らかい”利他主義」とは文化的・社会的・宗教的価値観に基づく判断と考えられる。殉教や自爆テロなど。

 因(ちな)みに仁義の仁とは自分と近しい人に施す情愛で、義は距離に関係なく示される正義のこと。

 このテキストだけではわかりにくいと思うが、冒頭の「奇妙な選択性」とは国際社会で無視された大量虐殺を示している。中東の例を出してインディアン虐殺を出さないところがいかにもアメリカ人らしい。

 利他主義を相対的に捉えるのはウィルソンの「暫定的な理神論」という立場とも関係があるのかもしれない。

“芯の堅い”と“芯の柔らかい”は先天的・後天的に置き換えることも可能だろう。ところが私の育った家庭を振り返るとこれに該当しない。全く困ったものである。父は惜しみなく弱者を助ける性質で少々大袈裟にいってしまえば英雄的気質があった。ただし立派な父親ではなかった。私は長男だが物心ついてから会話らしい会話をした記憶がない。極端に正義感が強いと家庭を省みることが少なくなる。つまり父や私に関しては“芯の堅い”利他主義は存在しない。むしろ逆で血縁関係を軽んじるところがある。

 日本において核家族化が急速に進んだのは私が生まれた1963年(昭和38年)のこと。出生率のピークは10年後の1973年(昭和48年)で209万人(出生率 2.14)となっている。核家族・少子化の影響も考慮する必要があるだろう。

「義を見てせざるは勇無きなり」(『論語』「為政」)という。「弱きを助け強きを挫く」のは当然だ。利他行動を失えばもはや動物である。その意味からも社会機能を正常に維持するためには窃盗や詐欺などの犯罪には厳罰を課すべきだ。特に振り込め詐欺を放置してきた警察・銀行・政府与党の責任は重い。

2016-08-29

杉田かおる、エドワード・O ウィルソン


 1冊挫折、2冊読了。

 『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール:柴田裕之訳(紀伊國屋書店、2014年)/著者の卑屈さが内容をなし崩しにしている。エドワード・O ウィルソンと内容が重なるだけに残念極まりない。理想的な思い込みが先にあり科学的な姿勢を欠く。牽強付会が捻じれば文章となってわかりにくい。

 133冊目『杉田』杉田かおる(小学館、2005年)/びっくりするほど面白かった。詐欺を繰り返す父親、精神の病んだ母親との確執。創価学会で一級の活動家となったものの、池田大作の実像に幻滅し、脱会するまで。そして24時間100kmマラソンが綴られている。誤読しやすいと思われるが著者は創価学会を批判するよりも、忠実に実体験を書いている。「杉田」とのタイトルは父親の姓で既に戸籍も変えたという。中年に差し掛かった女性が過去への訣別を綴る。不思議なことにマラソンで走ったコースは著者に縁のある土地であった。佐藤典雅著『ドアの向こうのカルト 九歳から三五歳まで過ごしたエホバの証人の記録』と併読せよ。姿勢としては杉田かおるの方が上だ。

 134冊目『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン:岸由二〈きし・ゆうじ〉訳(思索社、1980年思索社新装版、1990年/ちくま学芸文庫、1997年)/何とか読了。難解ではあるが挿入されたエピソードはいずれも面白い。生物学者が利他性・道徳の起源を探る。「必読書」と「宗教とは何か?」に入れる予定。利他性という点ではフランス・ドゥ・ヴァールを先に読むべし。宗教だとニコラス・ウェイド著『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』と併読せよ。

2016-07-18

必読書リスト その三


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『青い空 幕末キリシタン類族伝』海老沢泰久
『新訂 福翁自伝』福澤諭吉
『氷川清話』勝海舟:江藤淳、松浦玲編
『緑雨警語』斎藤緑雨、中野三敏編
『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク
『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン
『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』池谷裕二
『もう牛を食べても安心か』福岡伸一
『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー』本川達雄
『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ
『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』ペーター・ヴォールレーベン
『カミとヒトの解剖学』養老孟司
『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス
『なぜ美人ばかりが得をするのか』ナンシー・エトコフ
『売り方は類人猿が知っている』ルディー和子
『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』ルディー和子
『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『天才の栄光と挫折 数学者列伝』藤原正彦
『異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』チャールズ・サイフェ
『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』高橋昌一郎
『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎
『知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性』高橋昌一郎
『感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性』高橋昌一郎
『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル
『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ
『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島裕介
『複雑系 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』M・ミッチェル・ワールドロップ
『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン
『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』マーク・ブキャナン
『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』マルコム・グラッドウェル
『インフォメーション 情報技術の人類史』ジェイムズ・グリック
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー
『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』山本康正
『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ
『データ資本主義 ビッグデータがもたらす新しい経済』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール
『養老孟司の人間科学講義』養老孟司
『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド
・『宇宙は「もつれ」でできている 「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか』ルイーザ・ギルダー
『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー
『史上最大の発明アルゴリズム 現代社会を造りあげた根本原理』デイヴィッド・バーリンスキ
『アルゴリズムが世界を支配する』クリストファー・スタイナー
『生命を進化させる究極のアルゴリズム』レスリー・ヴァリアント
『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド
『宇宙を織りなすもの』ブライアン・グリーン
『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史
『生物にとって時間とは何か』池田清彦