・『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
・『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
・バランスシート思考
・『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』橘玲、海外投資を楽しむ会
・『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希
・『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
・『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』橘玲
・必読書リスト その二
「黄金の羽根」とはいったい何か? これを私は次のように定義しました。
【黄金の羽根】Golden Feather
制度の歪みから構造的に発生する“幸運”。手に入れた者に大きな利益をもたらす。
【『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ』橘玲〈たちばな・あきら〉(幻冬舎、2014年/幻冬舎、2002年『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計入門』改訂版)以下同】
アービトラージ(裁定取引、サヤ取り)という投資手法である。B・N・Fという有名な個人投資家がジェイコム株大量誤発注事件(2005年)で稼いだのも価格の歪みを捉えた取引だ。機関投資家などがアービトラージを行うことで価格は常に調整され、正常な値を目指す。
橘玲が着目するのは制度や法律である。例えば税制には様々な優遇措置がある。制度は自ら歪み特定の人に恩恵を与える。
旧版が刊行された2002年というタイミングも見事である。インターネット回線は電話回線~ISDN~ADSL~光ファイバーと進化してきたが、オンライントレードが広まったのはADSLが普及した1999年前後のことと記憶する。そして『金持ち父さん 貧乏父さん』が2001年に出版される。アメリカは不動産バブルに沸き、2007年の頂点に向かっていた。2003年から2013年に渡って証券優遇税制が布(し)かれ、株式投資のキャピタルゲイン、インカムゲインに対しては10%という軽減税率が適用された(通常は20%)。多数のデイトレーダーが誕生したのは政府の主導によるものと考えてよい。
89年のバブル崩壊から、10年以上に及ぶ長い平成大不況が続いています。企業の収益は悪化し、不良債権は積み上がり、財政赤字は拡大の一途を辿っています。しかしその間、個人が豊かになったことは、あまり指摘されていません。
企業の収益が悪化すれば株価が下落しますから投資家は損失を被りますが、従業員には関係ありません。なぜなら、業績が悪化しても賃金はそう簡単に下げられないからです。
資金繰りに窮した企業がリストラをし、ベースアップを抑制し、賃下げを行なうようになれば従業員にも影響は及びますが、そこまで至るにはバブル崩壊後、10年を要しました。失業率の上昇や個人所得の減少が深刻な問題になってきたのは、最近のことです。
企業収益が悪化し、それでも従業員の賃金が下がらないということは、企業から従業員に大規模な所得移転が行なわれたことを意味します。企業の富が株主のものだとすれば、株主が損した分だけ、従業員が得をしたということです。
同時に、日本国の財政赤字も急速に悪化しました。いまや国と地方を合わせた債務残高は690兆円(2002現在)に達し、GDP(国内総生産)を大きく上回っています。
財政赤字が拡大したということは、国家が国債の増発などで資金を調達し、その資金を公共事業などのかたちで国民に再分配したということです。その恩恵を被った度合いに差はあるでしょうが、結果としてみれば、この10年で400兆円に及ぶ国の借金が国民の所得に移転しました。こうして、1400兆円の個人金融資産が形成されたのです。
橘玲の魅力はこのバランスシート思考にある。実に巧みな解説だ。メディアに出てくる経済評論家は政治テーマや景気の上っ面を撫でるだけで、経済の本質を全く語っていない。
橘は元々編集者で本書の冒頭でも日本の出版流通が抱える問題にメスを入れている。その後、「ゴミ投資家」シリーズで投資家として頭角を現し、著作も精力的に発表してきた。目の付けどころも独創的で決して借り物ではない。わずかな制度の歪みに投資機会を見出すことは凡人には極めて難しい。そうした発想すら持てないことだろう。近著ではマイクロ法人の設立を奨励し、海外を転々と移住することまで進言している。やや愛国心の欠如が気になるところだが、合理性は易々と国境をも超えてしまうのだろう。