2016-07-31

三枝充悳、黄文雄、三上修、他


 18冊挫折、3冊読了。

身近な鳥の生活図鑑』三上修(ちくま新書、2015年)/3分の1ほど読む。身近な鳥は30種類ほどもいるという。

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』クレア・キップス:梨木香歩〈なしき・かほ〉訳(文藝春秋、2010年/文春文庫、2015年/大久保康雄訳、小学館ライブラリー、1994年『小雀物語』の新訳)/著者は第二次世界大戦中に飛べない子スズメを拾う。クラレンスと名づけられたスズメはすくすくと育ち、やがてキップス夫人のピアノに合わせて歌うようになる。その芸は人々の前で行われ、喝采を浴びた。文章に澱(よど)みが感じられるのは一気に書いていないためか。

だから日本は世界から尊敬される』マンリオ・カデロ(小学館新書、2014年)/マンリオ・カデロはサンマリノ共和国の駐日大使である。天皇陛下の美しいエピソードを紹介している。クリスチャンなのだが神道にぞっこんで絶賛している。

「子供を殺してください」という親たち』押川剛〈おしかわ・たけし〉(新潮文庫、2015年)

インドとイギリス』吉岡昭彦(岩波新書、1975年)

東インド会社 巨大商業資本の盛衰』浅田實(講談社現代新書、1989年)

オランダ東インド会社』永積昭(講談社学術文庫、2000年)

ウイルスは生きている』中屋敷均(講談社現代新書、2016年)/以上5冊は暑さのせいか、文章が全く頭に入らず。

なぜ人はキスをするのか?』シェリル・カーシェンバウム:沼尻由起子訳(河出書房新社、2011年)/ダメ本。文章を書く仕事に向いていないと思われる。各ページに「キス」という言葉が20回くらい出てくる。構成も内容も悪い。

呼吸整体師が教える 深呼吸のまほう 体の不調が消える、人生が変わる』森田愛子(ワニブックス、2015年)/飛ばし読み。参考にはなる。構成が悪く、体験談や「治る」という薬事法違反の健康食品みたいなムードが漂う。編集者の問題か。

「ラットレース」から抜け出す方法』アラン・ワッツ:竹渕智子訳(サンガ、2014年/めるくまーる、1991年『タブーの書』改訂版)/スタイルが合わない。アラン・ワッツは1960年代のカウンター・カルチャーにおいて、若者たちのカリスマ的リーダーであったというから、ややニューエイジ絡みの可能性もある。引用はされていないのだが巻末の推薦文献にクリシュナムルティの『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー』が入っている。

東洋の呼び声 拡がるサルボダヤ運動』A・T・アリヤラトネ:山下邦明、長井治、林千根訳(はる書房、1990年/新装版、2003年)/『ぼくは13歳 職業、兵士。 あなたが戦争のある村で生まれたら』の鬼丸昌也がサルボダヤ運動を実践しているようだ。スリランカなので社会参画仏教と関係があるのかと思って読んでみたが外れた。仏教の精神に基づく農村開発運動である。

ブッダのユーモア活性術 役立つ初期仏教法話8』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/初期仏教法話シリーズを読んできたが初めて挫ける。前置きが長過ぎて読む気が失せた。宗教性よりも出版事業に重きを置いているのではないか?

ブッダの瞑想法 ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』地橋秀雄〈ちはし・ひでお〉(春秋社、2006年)/良書といってよいと思う。「サティ(気づき)を入れる」との表現がよい。ただし古い体質から脱し切れていない印象を受けた。視点の高さも感じられない。

無の探求「中国禅」 仏教の思想7』柳田聖山〈やなぎだ・せいざん〉、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)/読む気の起こらない文章だ。

不安と欣求「中国浄土」 仏教の思想8』塚本善隆〈つかもと・ぜんりゅう〉、梅原猛(角川書店、1968年/角川文庫ソフィア、1997年)/出来が悪い。シリーズ7以降の失速は目に余るものがある。

生命の海「空海」 仏教の思想9』宮坂宥勝〈みやさか・ゆうしょう〉、梅原猛(角川書店、1968年/角川文庫ソフィア、1996年)/これも期待外れ。空海の飛躍が描けていない。

 110冊目『スズメ つかず・はなれず・二千年』三上修(岩波科学ライブラリー、2013年)/私がスズメの巣を発見できるようになったのは昨年のことだ。電信柱の変圧器を支える架台の鋼材にあった。スズメは何と言っても声と姿がよい。一度でいいから手に乗せてみたいものだ。スズメの数はかなり減少しているそうだ。

 111冊目『世界が憧れる 天皇のいる日本』黄文雄〈コウ・ブンユウ〉(徳間書店、2014年)/小林よしのり作『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』の次に読むのがよい。著者は台湾出身の評論家である。日本と台湾で活動している。親日・反共の旗幟を鮮明にしているため誤解されやすいが、想像以上にしっかりした内容で驚いた。

 112冊目『初期仏教の思想(中)』『初期仏教の思想(下)』三枝充悳〈さいぐさ・みつよし〉(レグルス文庫、1995年)/下巻は半分以上、飛ばし読みしたのでカウントしないでおく。三枝の研究ノートといってよい。大量のテキストが引用されている。推し進められた思索は称賛に値するが、やはり悟りの輝きは見られない。その意味で「悟りとは」の前に読んでおくと理解がより一層進むことだろう。

2016-07-30

自殺念慮/『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史


『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎
『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳
『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳

 ・自殺念慮

虐待と知的障害&発達障害に関する書籍

 自分は1984年4月に小学校に入学し、無茶苦茶にいじめられました。両親に訴えましたが、基本的に放置されました。担任教師も同様でした。自分はいじめから逃れる術(すべ)はないと思い、そして「終わりにしたい」と常に願うようになりました。それ以来、頭から自殺念慮が消えたことはありません。
 2010年の秋頃から自分の自殺念慮は急激に強くなり始めました。自分が抱えた虚しさにいよいよ堪えられなくなり始めたからです。嘘の設定が精神安定剤として効かなくなり始めていました。この虚しさは、例えば事件や事故や災害で息子を亡くした母親が「息子を亡くしてから何をしても面白いとも楽しいとも感じられない。とにかく虚しさばかりが募る」と語る時の虚しさと非常によく似ています。娯楽でやり過ごせる虚しさではありません。むしろ周囲が楽しんでいる中で孤立感を覚えてより悪化するタイプの虚しさです。

【『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史〈わたなべ・ひろふみ〉(創出版、2014年)】

 精神科医の香山リカが拘留中の渡邊に『子ども虐待という第四の発達障害』と『消えたい』の2冊を差し入れており、本書で鋭い考察が述べられている。渡邊は高橋本を読むことで秋葉原無差別殺傷事件の加藤被告の動機まで理解できたと語る。マスコミの取材を拒否し、自著以外ではコメントを発してこなかった加藤が、何と渡邊の意見陳述に関する見解を篠田博之(月刊『創』編集長)宛てに送ってきた。

「秋葉原事件」加藤智大被告が「黒子のバスケ」脅迫事件に見解表明!

 渡邊は学校ばかりでなく塾でもいじめに遭ったという。具体的なことは書かれていないが死を思うほど苛酷なものであった。私は自殺念慮という言葉を始めて知った。願望ではなく念慮としたところに貼りついて離れない思いが読み取れる。

 ここで見逃すことができないのは「両親が放置した」事実である。渡邊は自覚していないが両親による虐待があった可能性が高い。

 幼い頃からゴミ扱いされてきた男が自殺念慮を跳ねのけるべく社会に復讐をしようと決意する。計画は緻密で行動は精力的だった。邪悪ではあったがそこには生の輝きがあった。渡邊の目的はイベント中止であり、誰かを死傷することではなかった。

 闇を見つめてきた男の筆致は飄々としたユーモアに満ちて軽やかだ。何よりもそのことに驚かされる。渡邊が抱えてきた矛盾は多くの犯罪を防ぐ確かな鍵となるような気がする。

 お笑い芸人が芥川賞を受賞する時代である。犯罪者に直木賞を与えてもよかろう。それほどの衝撃があった。

2016-07-29

製薬会社による病気喧伝(疾患喧伝)/『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス

 ・製薬会社による病気喧伝(疾患喧伝)

『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』デイミアン・トンプソン
『快感回路 なぜ気持ちいいのかなぜやめられないのか』デイヴィッド・J・リンデン
『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング
『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』ローン・フランク
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『土と内臓 微生物がつくる世界』デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美

身体革命

 19世紀後半、新しい症状をヒステリーの貯蔵庫へと追加する手順は、次のように進められた。少数の興味深い症例をもとに、医者が公表して議論を重ね、病的な行動を体系化する。新聞や学術誌などがその医学的な新発見を記事にする。一般女性が無意識にその行動を表して、助けを求めはじめる。それから、医者や患者がいわゆる「病気の取り決め」をし、それによって患者の行動に関する互いの認識を作り上げていく。この取り決めにおいて医者は、症状が正当な疾病分類に当てはまるかどうかを科学的に検証する。一方、患者の増加に伴い、メディアがふたたびこれを報じ、その正当性がさらに確立されるという文化的なフィードバックが繰り返されるようになる。そして、この反復のあとに、拒食や足の麻痺などの新しいヒステリー症状が広く受け入れられるようになるわけだ。

【『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ:阿部宏美訳(紀伊國屋書店、2013年)】

 人類史を振り返ると文明がダイナミックに移り変わる時期があった。伊東俊太郎は人類革命(二足歩行、言語の発明、道具の製作)・農業革命・都市革命・精神革命(枢軸時代)・科学革命(産業革命、活版印刷〈=情報革命〉を含む)と分けた(PDF「環境問題と科学文明」伊東俊太郎)。

 社会のあり方や一人ひとりのライフスタイルは緩やかに変わり続ける。例えば農業革命によって農産物の保存が可能となり、「富」の創出によって戦争が開始されたとの指摘もある。また近代以降は金融・メディアの発達、通信・移動のスピード化、目まぐるしい電化製品の誕生など、変化の潮流が激しい。

 いつの時代も世の中の変化についてゆけない人や、社会に違和感を覚える人は存在する。精神医学のグローバル化が地域性や文化に基づく要因を否定し、アメリカ単独の価値観が疾患を特定するに至った。情報は脳のシナプス構造をも変えてしまう。「昔々、製薬会社は病気を治療する薬を売り込んでいました。今日では、しばしば正反対です。彼らは薬に合わせた病気を売り込みます」(マーシャ・エンジェル)。始めに病気喧伝(疾患喧伝とも〈PDF「特集 双極スペクトラムを巡って 双極性障害と疾患喧伝(diseasemongering)」井原裕〉)ありきで症状はどうあれ、投薬・服薬が目的と化す。

 病気喧伝(疾患喧伝)は孔子の「名を正す」とは正反対に向かう。名づけること・命名することで人々の不安を搦(から)め捕る戦略といってよい。うつ病・PTSD・自律神経失調症・パニック障害・ADHD(注意欠陥多動性障害)・発達障害などが出回るようになったのは、ここ20~30年のことだ。本書では具体的に摂食障害が取り上げられている。

 尚、ADHD(注意欠陥多動性障害)については「作られた病である」(ADHDは作られた病であることを「ADHDの父」が死ぬ前に認める)との怪情報がネット上に出回っているが、「『ADHDの父』が言いたかったのは、『診断基準の甘さ』『薬の過剰投与』であって、『ADHDが架空のもの』ってことじゃない」(「ADHDは作られた病である」という記事について)との指摘もある。英語原文は「セカオワ深瀬の精神病(発達障害ADHD)は病気でない?」で紹介されている。「ADHDに関する論争」に書かれていないので眉唾情報だろう。PDF「精神医療改善の為の要望書」も参照せよ。

 例えばうつ病という疾患が設定されると、その上下左右に位置する症状もうつ病に引き寄せられる。我々は名づけることのできない不安状態を忌避する。うつ病と認定されれば処方箋があると錯覚する。

 DSM-IVの作成から小児の障害は、注意欠陥障害3倍、自閉症20倍、双極性障害20倍となった(DSMの功罪 小児の障害が20倍!)。医学は医療をやめて病気創出に余念がない。



現実の虚構化/『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル

2016-07-28

事件を見世物にしたがる新聞記者(朝日新聞ヨーロッパ特派員)






2016-07-26

精神医学のバイブルが新たな患者を生み出す/『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン

 ・精神医学のバイブルが新たな患者を生み出す

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』ローン・フランク

 DSMとは「精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」の略だ。それも当然なのだが、1980年まで、DSMは目立たないちっぽけな本で、たいして注目されていなかったし、読まれてもいなかった。そこへ突然、DSM-III(スリー)が現れた――この分厚い本はすみやかに文化の象徴となり、息の長いベストセラーになり、精神医学の「バイブル」としてむやみな崇拝の対象になった。
 DSMは正常と精神疾患のあいだに決定的な境界線を引くものであるため、社会にとってきわめて大きな意味を持つものになっており、人々の生活に計り知れない影響を与える幾多の重要な事柄を左右している――たとえば、だれが健康でだれが病気だと見なされるのか、どんな治療が提供されるのか、だれがその金を払うのか、だれが障害者手当を受給するのか、だれに精神衛生や学校や職業などに関したサービスを受ける資格があるのか、だれが就職できるのか、養子をもらえるのか、飛行機を操縦できるのか、生命保険に加入できるのか、人殺しは犯罪者なのかそれとも精神障害者なのか、訴訟で損害賠償をどれだけ認めるのかといった事柄であり、ほかにもまだまだたくさんある。
 定期的に改訂されるDSM(DMS-IIIR、DSM- IV)に20年間にわたってかかわってきた私は、落とし穴をしっており、改訂につきまとうリスクを警戒していた。これに対して私の友人たちは新参者であり、DSM-5の作成に自分らが果たす役割に興奮していた。

【『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス:大野裕〈おおの・ゆたか〉監修、青木創〈あおき・はじめ〉訳(講談社、2013年)以下同】

 アレン・フランセスはDSM-IV(1994年)の編集委員長を務めた人物である。DSMの第5版は単なる更新ではなかった。それは製薬会社からのリクエストに応じる新たな症状の創造であった。聖書が罪を定めるようにDSM-5が病気を決めるというわけだ。病気が増えれば薬は売れる。

 DSM-IVでは小さな誤りも許されないことを私は承知していた。DSMは度を越して重要になりすぎ、それ自身のためにも、社会のためにもなっていなかった。ささいに思える変更であっても、甚大な災いをもたらしかねない。そしていまや、DSM-5がまさに大きな誤りを犯そうとしているように思えた。友人たちがあまりにも無分別に後押ししていた疾患は、のべ何千万もの新たな「患者」を生み出すものだった。じゅうぶんに正常な人々がDSM-5の広すぎる診断の網にとらわれるのが私には想像できたし、多くの人々が必要なものにともすれば危険な副作用のある薬の影響にされされる恐れがあった。製薬企業も、お得意の病気作りに新しい格好のターゲットをどう利用してやろうかと、舌なめずりをしているはずだった。

 DSM-5は製薬会社にとって打ち出の小槌となった。

 DSM-IIIでは主要な診断名の有病率が著しく高く報告されるようになり、過剰診断を促していると批判されたため、DSM-IVでは7割以上の診断基準に「著しい苦痛または社会的、職業的、その他の領域での機能の障害を引き起こしている」という項目を追加した。しかし、その後も主要な製薬会社は強力なマーケティングを展開し、アメリカでは精神障害の罹患率が毎年上昇し続け、注意欠陥多動性障害が3倍、自閉症が20倍、子供の双極性障害が40倍、双極性障害は2倍となり。伴って処方箋医薬品による死亡が違法薬物によるものを超えることとなった。

Wikipedia

 以下に批判を列挙する。



精神科医・鈴木映二教授による「DSM5の問題」に関する連続ツイート

 平成23年5月にアメリカ精神医学会から発刊された『精神疾患の診断と統計の手引き第5版』(DSM-5))において,「インターネットゲーム障害」が今後研究が進められるべき精神疾患の一つとして新たに提案されました。

PDF:インターネット依存症について

アスペルガーの診断が消えたと話題に 自閉症一本化の恐怖

DSM-5:アメリカ精神科協会出版利益至上主義がもたらした弊害 →精神疾患診断への信頼性危機増大

「DSM-5、聖書ではない」

 要はアメリカ精神医学会が薬を売る目的で嘘をついたということである。今までは「正常」とされたものが、これからは「異常」となる。もちろんあなたも私も。資本主義も共産主義も最終的には「管理~支配」に向かう。『すばらしい新世界』や『一九八四年』が現実となりつつある。



現実の虚構化/『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル

2016-07-25

支離滅裂な文章/『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎


 ・支離滅裂な文章

『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳
『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳
『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史

 徐々に筆者は、被虐待児は臨床的輪郭が比較的明確な、一つの発達障害症候群としてとらえられるべきではないかと考えるようになった。
 筆者は現在、被虐待児を【第四の発達障害】と呼んでいる。【第一は、精神遅滞、肢体不自由などの古典的発達障害、第二は、自閉症症候群、第三は、学習障害、注意欠陥多動性障害などのいわゆる軽度発達障害、そして第四の発達障害としての子ども虐待である】。

【『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎〈すぎやま・としろう〉(学研のヒューマンケアブックス、2007年)】

 杉山は発達障害の権威らしい。日本で軽度発達障害という概念を樹立した人物でもある。海外の研究や事例も豊富だ。しかし人間性が伝わってこない。本の体裁も変わっていてフォントが大きい二段組で読みにくい。尚、私が誤読しているかもしれないので、お気づきの点があればご指摘を請う次第である。

 障害と病気は異なる(※通常は「障碍」と表記しているが発達障害との絡みで今回は「障害」とする)。昔は精神障害を精神病と呼んだ。1982年(昭和57年)には山本晋也が口にした「ほとんどビョーキ」というセリフが流行語となった(流行語 共通史年表)。当時はまだ、普通でない=病気という感覚が支配していた。因みに「気違い」という言葉に苦情が出始めたのは1974年のことである(Wikipedia)。ただしマニアを意味する言葉としてカーキチや釣りキチなどは1980年代まで通用していたと記憶する。少年マガジンで『釣りキチ三平』の連載が終了したのは1983年であった。

 現在、精神障害の分類はアメリカ精神医学界が出版しているDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)の第3版以降に基くが、2013年に発表された第5版についてはアレン・フランセス(第4版編集委員長)からの批判もある(『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』)。この業界はきな臭い話が多い(『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン)。

「被虐待児は」→「一つの発達障害症候群」、「被虐待児」→「第四の発達障害」とあるが「人=障害」となっていて支離滅裂な文章だ。そもそも本書のタイトルが致命的で虐待には加害者と被害者が存在するわけだが、親なのか子なのかわからぬ「子ども虐待」という言葉を発達障害に直接結びつけている。

 上記引用箇所では「被虐」と読めるが、「表3 発達障害の分類」では第四群の定義を「子どもに身体的、心理的、性的加害を加える。子どもに必要な世話を行わない」とある。これだと「加虐」となる。学研には編集者がいないのだろうか?

 説明の拙さや言葉の曖昧さが読み手に不安を募らせる。こんな人物が本当に権威なのか?

 私の理解では杉山の主張は「被虐待によって脳がダメージを受け、発達障害と酷似した症状が現れる」ということなのだろう。それにしても被虐(状況)=障害(症状)という設定そのものがおかしい。

 拘留中の渡邊博史〈わたなべ・ひろふみ〉に香山リカが差し入れた一冊である。

2016-07-23

修行としての掃除/『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵


『「捨てる!」技術』 辰巳渚
・『1週間で8割捨てる技術』筆子

 ・修行としての掃除

『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『人生を掃除する人しない人』桜井章一、鍵山秀三郎
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士
『手ぶらで生きる。 見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』ミニマリストしぶ

 このように、私自身が片づけについて真剣に向き合ってきた経験と、たくさんの「片づけられなかった人」たちを「片づけられる人」に導いてきた経験から、自信を持っていえることが一つあります。それは、【家の中を劇的に片づけると、その人の考え方や生き方、そして人生までが劇的に変わってしまう】ということです。

【『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵〈こんどう・まりえ〉(サンマーク出版、2010年/河出書房新社改訂版、2019年)以下同】

「そんな馬鹿な……」と思う人は掃除をしない。「そうなのか!」と受け止めた人は直ちに掃除を開始する。コンマリを「一時的にテレビで持てはやされた女だろ?」などと侮ってはならない。幼い頃から好きだった片づけで大学時代に起業し、2015年のアメリカ『TIME』誌で「世界で最も影響力のある100人」に村上春樹と共に選ばれたのである(近藤麻理恵さんってどんな人 TIME誌「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる)。「芸は身を助く」を極めた人生といってよい。アメリカでも100万部を超えるベストセラーとなり、「ときめき片づけ法を使って片づけを実践することを“Komaring”“Kondoing”と表現するワードも浸透しているという」(「片づけで人生がときめく」で世界600万部超の大ヒット、その理由とは)。まるで「パレアナ現象」だ。

 では、なぜ家の中を片づけると、このように考え方や生き方が、つまりはその人の人生までもが変わってしまうと思いますか。
(中略)【ひと言でいうと、片づけをしたことで「過去に片をつけた」から。その結果、人生で何が必要で何がいらないか、何をやるべきで何をやめるべきかが、はっきりとわかるようになるのです。】

 近藤の「片をつける」という発想が、桜井章一の「間に合う」(『運に選ばれる人 選ばれない人』)を思わせる。一つひとつ小さな決着をつけてゆくことが、大きな判断を確かなものとするのだろう。

 片づけは目に見える形で必ず結果が表れます。【片づけはウソをつきません】。だから、私がお伝えしている片づけの極意は、【「片づけの習慣を少しずつつける」のではなく、「一気に片をつけることで、意識の変化を劇的に起こす」】ことにあります。

「塵も積もれば山となる」というが実際にできた山はない。地殻変動がマグマを噴火させることで山は生まれる。劇的な変化は一瞬で決まる。心の底にはヘドロが堆積している。怠惰という名のヘドロが。それを一掃することから掃除は始まる。

【「片づけは祭りです。片づけを毎日してはいけません」】

 蓋(けだ)し名言である。

【驚かれるかもしれませんが、私は自分の部屋の片づけを今ではまったくしていません。なぜなら、すでに片づいているからです】。

 掃除は修行なのだ。「行(ぎょう)を修める」とは行為を正しくする・整えることである。修行とは何かを単純に繰り返すことではない。心構え次第では日常生活の全てが修行となる。

【片づけを真剣にしていると、瞑想状態とまではいかないまでも、自分と静かに向き合う感覚になっていくことがあります。自分の持ちモノに対して、一つひとつときめくか、どう感じるか、ていねいに向き合っていく作業は、まさにモノを通しての自分との対話だからです】。

 ブッダの弟子にチューラ・パンタカ(周利槃特)がいる。双子の兄のマハー・パンタカは頭脳明晰であったが、チューラ・パンタカは愚かで3ヶ月かかっても一偈を暗誦することができない。自分の名前すら覚えられなかったとの説まで伝わる。出産の時刻が兄と隔たっているようなので何らかの障碍(しょうがい)があった可能性も高い。

 兄に連れられて出家したものの、あまりの愚かさゆえに弟を哀れんだ兄が還俗(げんぞく)を命じた。それを聞いたブッダがチューラ・パンタカを訪ねる。ブッダは1枚の布を渡し、心を込めて「塵や垢を除け」と唱えて掃除をすることを教えた。やがてチューラ・パンタカは「清浄な布が汚れていく」事実をありありと見て諸行無常を悟る。掃除はまさしく修行であった。(「悟りを開いた人たち A・スマナサーラ長老」を参照した)

 はたきを使っていると私の頭では「お祓(はら)い」の文字が明滅する。清浄・浄化を目指すのが宗教であれば、掃除が悟りにつながることは決して不思議ではない。「婦」の字も白川静によれば、「『帚』(ほうき)を持って宗廟(そうびょう)を清めるという大切な役割をする女」という字義がある(第21回 人の形から生まれた文字 5 女の人の姿 2「婦」 主婦が掃除する廟)。

 掃除は聖と俗を往来する道なのだろう。取り敢えず現段階では自分の部屋を振り返ることはしない。


J・クリシュナムルティ、那智タケシ、岡崎勝世、小林よしのり、他


 1冊挫折、5冊読了。

チームワークの心理学』國分康孝〈こくぶ・やすたか〉(講談社現代新書、1985年)/國分の著書には外れがない。多少古くても十分読める。「ワンマンショウ」という言葉に思わず笑った。既に死語である。良質なビジネス書としても通用する一冊。

 105冊目『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり(小学館、2009年)/小林の漫画作品を初めて読了した。名著といってよいと思う。日本人の自覚は天皇陛下を知ることから生まれる。否、そこからしか生まれ得ない。続く『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論』では女系天皇制を支持して評価が割れている。

 106冊目『聖書 vs. 世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、1996年)/再読。やはり名著。そして冒頭50ページがやはり難解。

 107冊目『世界史とヨーロッパ』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、2003年)/途中で何度かあきらめようかと思ったのだが最後まで読んで正解だった。今こそ読まれるべき一冊である。9.11テロ後の世界における国家主義の潮流は、アンチ啓蒙主義としてのロマン主義と軌を一にするものだ。歴史は繰り返す。何度でも。

 108冊目『二十一世紀の諸法無我 断片と統合 新しき超人たちへの福音』那智タケシ(ナチュラルスピリット、2014年)/文という文字には「あや」との訓読みからもわかるように「かざる」義がある。その意味からいえば「かざっている」ようにも見える。ひょっとすると悟りが酔いをもたらすのかもしれない。あるいは年齢的な問題(=成熟)か。断片というキーワードと心身脱落という禅語の組み合わせに新味がある。日蓮が「禅は天魔の所為」と批判した理由は独善の陥穽を指摘したのだろう。悟りにはそうした危険がつきまとう。

 109冊目『時間の終焉 J・クリシュナムルティ&デヴィッド・ボーム対話集』J・ クリシュナムルティ:渡辺充訳(コスモス・ライブラリー、2011年)/自問自答のアクロバットである。時間とは「なりゆく過程」を指す。1980年の4月から9月にかけて断続的に行われた対話である。逝去の5~6年前だから、これが最後の作品かもしれない。私は梵天勧請として読んだ。仏と凡夫の差異を乗り越えんとするところに仏の苦悩があった。クリシュナムルティは一人二役を演じながら、ボームを通して人類に語りかける。対話の波長が合っているように感じるのは錯覚で、理(理論)と事(事実)の相違がある。

津波のメカニズム/『人が死なない防災』片田敏孝


『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 ・東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%
 ・釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた
 ・津波のメカニズム

気づき(アウェアネス)に関する考察
『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ

『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

必読書リスト その二

 津波は、断層が動いて、海の中で海底の地形が変化することで起きます。よく、10メートルとか15メートルの津波が来たといいますね。なぜそんなに大きな波が起こるのかということについて説明します。
 海の中で断層ができますね。例えば、3メートルの断層ができる。すると、そのまま海面の水も3メートルの段差がつきます。この段差が津波そのものとなります。これがそのまま移動していくわけです。ただ、普通の波は周期が短いので、海がしけたときに「今日の海上は5メートルの波です」ということを聞きますが、家を壊すほどのものではありません。波長が短いので、ザバッと来て、それで終わりです。ところが津波の高さ5メートルというのは、もはや波ではないわけですね。波だけれども、ものすごく周期が長い。無尽蔵の水が一挙に入ってくる。そうすると、陸地に、海から水の壁が大挙して押し寄せてくる。海からの大洪水となって、家々を全部壊し、瓦礫にして流していく。それが津波の恐さです。
 例えば、海底の段差が3メートルなら最初の津波は3メートルです。ところが実際に陸地に上がってくるときには、これが5メートル、7メートル、10メートルと、大きい波になる。
 津波は、海底の深いところでは時速800キロぐらいのスピードで伝播していくので、チリ津波は丸一日あれば日本に来てしまうわけですね。けれども、浅くなると急ブレーキがかかります。水深500メートルで新幹線並み、100メートルで電車並み、10メートルで人間が走るぐらいのスピードになる。そうなると、津波は背後からすごいスピードで来るのに、進む前面で急ブレーキがかかってしまう。そのため次から次へと津波が積み重なって、どんどん高くなっていく。向こうの沖合に白波が立ったと思ったら、目の前に来たときに波が急に立ち上がってくるのは、こうしたメカニズムに則(のっと)ったことなのです。

【『人が死なない防災』片田敏孝(集英社新書、2012年)】

 無知は恐ろしい。波浪と津波が全くの別物だったとは。チリ津波の場合、ハワイにぶつかることで内側に角度をつけた波が日本で収束するという。


 被災地を飲み込んだ大津波のメカニズムを初めて知った。片田の防災教育が「知は力なり」(フランシス・ベーコン)を証明した。知ることは備えることでもある。知っていれば対処できる。

 動物は恐怖を感じると闘争か逃走かを迫られる(ウォルター・B・キャノン)。安全に慣れきって本能の力が弱まると立ちすくんでしまう。東日本大震災の教訓は「逃げ遅れたら死ぬ」という単純な事実である。

 そして助かるべくして助かった人々と、たまたま助かった人々が存在する。多くの証言集は運のよさを示すだけで学べることが少ない。むしろ迂闊さを際立たせる内容となっている。本書が稀有なのは災害に対する正しい姿勢が即座の行動を生み、ほぼ100%といってよい人々が大災害を生き延びた事実にある。そんな小中学生たちが必ずや東北の未来を照らすことだろう。

人が死なない防災 (集英社新書)

2016-07-19

釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた/『人が死なない防災』片田敏孝


『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 ・東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%
 ・釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた
 ・津波のメカニズム

『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ

『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

必読書リスト その二

 大槌湾(おおつちわん)の近くに、この地域唯一の中学校である釜石東中学校があります。その隣には、鵜住居(うのすまい)小学校があります。
 釜石東中学校は、当日、校長先生が不在でした。教頭先生が、すごい揺れのなか、床を這(は)うようにして放送卓まで行ったのですが、停電のために放送できなかった。だけど、そのときすでに、生徒たちがダダダダダーッと廊下を駆け抜けていく音が聞こえたといいます。
 教頭先生は、やっとの思いでつかんだハンドマイクで校庭にいる子どもたちに指示を出そうとして立ち上がったら、すでに子どもたちは全力で走っていました。ある先生が「逃げろ!」と叫んだのを聞いて、最初に逃げたのはサッカー部員たちだったそうです。グラウンドに地割れが入ったのを見た彼らは、校舎に向かって「津波が来るぞ! 逃げるぞ!」と大声を張り上げ、そのまま走りはじめて、鵜住居小学校の校庭を横切ります。そして小学校の校舎に向かって「津波が来るぞ! 逃げるぞ!」と声をかけながら、「ございしょの里」という避難場所に向かって全力で走っていきました。(中略)
 この地域では、津波にいちばん詳しいのは中学生ということになっていました。学校の近所に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんたちも、その中学生たちが血相変えて逃げていく光景を見て、それに引き込まれるようにして、一緒に逃げはじめました。(中略)
 ところが、「ございしょの里」の裏の崖(がけ)が地震で崩れかけていた。それに気づいたある中学生がこう言ったそうです。「先生、ここ、崖が崩れかけているから危ない。それに揺れが大きかったから、ここも津波来るかもしれない。もっと高いところへ行こう」。(中略)
 本当にギリギリのところで、生き延びることができたのです。それは、中学生が「先生、ここは危ない。次へ行こう」と言った、このひと言に始まったと思います。

【『人が死なない防災』片田敏孝(集英社新書、2012年)】

 以下のページに地図と写真が掲載されている。

地域防災に関する実践的研究 岩手県釜石市 津波犠牲者ゼロを目指した地域づくり

 もしも学校の屋上に避難したり、ございしょの里にとどまっていたならば彼らは助からなかった。

 以下のページには避難をしている中学生を撮影した写真があるが、既に町が津波に飲み込まれている様子がわかる。

臨機応変に行動する力が培われていたことで、生徒全員が生き延びることができた

「率先避難者たれ」という片田の教えを守り、まずサッカー部が全力疾走で逃げた。この行動が集団同調性バイアスと正常性バイアスを打ち破った。彼らは地震発生から30分以上避難し続けたことになる。上記ページの地図から察すると、約1.5kmに渡る上り勾配(こうばい)だ。釜石は最も早く大津波が到達した地域と思われるが、地震発生からの30分間は決して余裕のある時間ではないことがわかる。

 中学生の一言はこれまた片田の「想定にとらわれるな」という教えによるものだった。釜石の奇蹟は防災教育の勝利であった。





人が死なない防災 (集英社新書)

必読書リスト その五


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『イスラム教の論理』飯山陽
『「自分で考える」ということ』澤瀉久敬
『壊れた脳 生存する知』山田規畝子
『「わかる」とはどういうことか 認識の脳科学』山鳥重
『世界はありのままに見ることができない なぜ進化は私たちを真実から遠ざけたのか』ドナルド・ホフマン
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『物語の哲学』野家啓一
『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』アンドレ・コント=スポンヴィル
『完全教祖マニュアル』架神恭介、辰巳一世
『宗教は必要か』バートランド・ラッセル
『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語』安冨歩
『服従の心理』スタンレー・ミルグラム
『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ
『一九八四年』ジョージ・オーウェル:高橋和久訳
『「絶対」の探求』バルザック
『絶対製造工場』カレル・チャペック
『華氏451度』レイ・ブラッドベリ
『われら』ザミャーチン:川端香男里訳
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
『しらずしらず あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』レナード・ムロディナウ
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー
『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹
『確信する脳 「知っている」とはどういうことか』ロバート・A・バートン
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン
『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル
『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー
・『LIFE3.0 人工知能時代に人間であるということ』マックス・テグマーク
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
『苫米地英人、宇宙を語る』苫米地英人
『数学的にありえない』アダム・ファウアー
『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹
『死生観を問いなおす』広井良典
『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹
『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール
『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース:茂木健一郎訳
『なぜ、脳は神を創ったのか?』苫米地英人
『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド
『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一、小原克博
『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン
『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー
『遺伝子 親密なる人類史』シッダールタ・ムカジー
『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン
『音と文明 音の環境学ことはじめ』大橋力
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン
『こうして、思考は現実になる』パム・グラウト
『こうして、思考は現実になる 2』パム・グラウト
『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ
『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
『ゆだねるということ あなたの人生に奇跡を起こす法』ディーパック・チョプラ
『同じ月を見ている』土田世紀
『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』アルボムッレ・スマナサーラ
『怒らないこと2 役立つ初期仏教法話11』アルボムッレ・スマナサーラ
『人生の短さについて』セネカ:茂手木元蔵訳
『怒りについて 他一篇』セネカ:茂手木元蔵訳
『怒りについて 他二篇』セネカ:兼利琢也訳
『中国古典名言事典』諸橋轍次
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『シッダルタ』ヘルマン・ヘッセ
『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン
『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元訳
『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 1』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 2』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 3』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 4』J・クリシュナムルティ
『生の全体性』J・クリシュナムルティ、デヴィッド・ボーム、デヴィッド・シャインバーグ

2016-07-18

必読書リスト その三


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『青い空 幕末キリシタン類族伝』海老沢泰久
『新訂 福翁自伝』福澤諭吉
『氷川清話』勝海舟:江藤淳、松浦玲編
『緑雨警語』斎藤緑雨、中野三敏編
『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク
『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン
『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』池谷裕二
『もう牛を食べても安心か』福岡伸一
『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー』本川達雄
『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ
『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』ペーター・ヴォールレーベン
『カミとヒトの解剖学』養老孟司
『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス
『なぜ美人ばかりが得をするのか』ナンシー・エトコフ
『売り方は類人猿が知っている』ルディー和子
『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』ルディー和子
『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『天才の栄光と挫折 数学者列伝』藤原正彦
『異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』チャールズ・サイフェ
『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』高橋昌一郎
『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎
『知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性』高橋昌一郎
『感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性』高橋昌一郎
『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル
『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ
『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島裕介
『複雑系 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』M・ミッチェル・ワールドロップ
『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン
『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』マーク・ブキャナン
『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』マルコム・グラッドウェル
『インフォメーション 情報技術の人類史』ジェイムズ・グリック
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー
『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』山本康正
『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ
『データ資本主義 ビッグデータがもたらす新しい経済』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール
『養老孟司の人間科学講義』養老孟司
『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド
・『宇宙は「もつれ」でできている 「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか』ルイーザ・ギルダー
『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー
『史上最大の発明アルゴリズム 現代社会を造りあげた根本原理』デイヴィッド・バーリンスキ
『アルゴリズムが世界を支配する』クリストファー・スタイナー
『生命を進化させる究極のアルゴリズム』レスリー・ヴァリアント
『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド
『宇宙を織りなすもの』ブライアン・グリーン
『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史
『生物にとって時間とは何か』池田清彦

必読書リスト その四


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編
『科学と宗教との闘争』ホワイト:森島恒雄訳
『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ:森島恒雄訳
『魔女狩り』森島恒雄
『インディアスの破壊についての簡潔な報告』ラス・カサス
『奴隷とは』ジュリアス・レスター
『ナット・ターナーの告白』ウィリアム・スタイロン
『砂糖の世界史』川北稔
『歴史とは何か』E・H・カー
『歴史とはなにか』岡田英弘
『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘
『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世
『世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界』川北稔
『時計の社会史』角山榮
『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『人類史のなかの定住革命』西田正規
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『世界のしくみが見える 世界史講義』茂木誠
『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『火縄銃から黒船まで 江戸時代技術史』奥村正二
『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』平川新
『鉄砲を捨てた日本人 日本史に学ぶ軍縮』ノエル・ペリン
『お江戸でござる』杉浦日向子監修
『幕末外交と開国』加藤祐三
『日本の知恵 ヨーロッパの知恵』松原久子
『驕れる白人と闘うための日本近代史』松原久子
『言挙げせよ日本 欧米追従は敗者への道』松原久子
『逝きし世の面影』渡辺京二
『乃木大将と日本人』スタンレー・ウォシュバン
『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人
『敵兵を救助せよ! 英国兵422名を救助した駆逐艦「雷」工藤艦長』惠隆之介
『英霊の絶叫 玉砕島アンガウル戦記』舩坂弘
『F機関 アジア解放を夢みた特務機関長の手記』藤原岩市
『パール判事の日本無罪論』田中正明
『石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人』早瀬利之
『月光の夏』毛利恒之
『神風』ベルナール・ミロー
『アーロン収容所 西欧ヒューマニズムの限界』会田雄次
『日本のいちばん長い日 決定版』半藤一利
『機関銃下の首相官邸 二・二六事件から終戦まで』迫水久恒
『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ
『國破れて マッカーサー』西鋭夫
『二世兵士 激戦の記録 日系アメリカ人の第二次大戦』柳田由紀子
『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹
『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』兵頭二十八
『日本永久占領 日米関係、隠された真実』片岡鉄哉
『大東亜戦争肯定論』林房雄
『封印の昭和史 [戦後五〇年]自虐の終焉』小室直樹、渡部昇一
『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹
『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫
『シベリア抑留 日本人はどんな目に遭ったのか』長勢了治
『日本人が知らない最先端の「世界史」』福井義高
『昭和の精神史』竹山道雄
『西洋一神教の世界』竹山道雄:平川祐弘編
『歴史的意識について』竹山道雄
『主役としての近代』竹山道雄:平川祐弘編
『みじかい命』竹山道雄
『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン
『人種差別から読み解く大東亜戦争』岩田温
『植民地残酷物語 白人優越意識を解き明かす』山口洋一
『敗戦への三つの〈思いこみ〉 外交官が描く実像』山口洋一
『いま沖縄で起きている大変なこと』惠隆之介
『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『小村寿太郎とその時代』岡崎久彦
『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦
『重光・東郷とその時代』岡崎久彦
『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦
『消えたヤルタ密約緊急電 情報士官・小野寺信の孤独な戦い』岡部伸
『昭和陸軍謀略秘史』岩畔豪雄
『田中清玄自伝』田中清玄、大須賀瑞夫
『五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」』小山俊樹
『陸軍80年 明治建軍から解体まで(皇軍の崩壊 改題)』大谷敬二郎
『二・二六帝都兵乱 軍事的視点から全面的に見直す』藤井非三四
『徳富蘇峰終戦後日記 『頑蘇夢物語』』徳富蘇峰
『日本人のための憲法原論』小室直樹
『「日本国憲法」廃棄論 まがいものでない立憲君主制のために』兵頭二十八
『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
『武士道』新渡戸稲造:矢内原忠雄訳
『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』中川右介
『自衛隊「影の部隊」 三島由紀夫を殺した真実の告白』山本舜勝
『三島由紀夫と「天皇」』小室直樹
『近代の呪い』渡辺京二
『悪の論理 地政学とは何か』倉前盛通
『新・悪の論理』倉前盛通
『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『春宵十話』岡潔
『風蘭』岡潔
『増補 日本美術を見る眼 東と西の出会い』高階秀爾
『日本の弓術』オイゲン・ヘリゲル
『日本人の身体』安田登
『左翼老人』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗
『「米中激突」の地政学』茂木誠
『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄

必読書リスト その二


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト その一
     ・必読書リスト その二
     ・必読書リスト その三
     ・必読書リスト その四
     ・必読書リスト その五

『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』ヴィクトール・E・フランクル:霜山徳爾訳
『それでも人生にイエスと言う』ヴィクトール・E・フランクル
『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』プリーモ・レーヴィ
『アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか』菅原出
『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編
『石原吉郎詩文集』石原吉郎
『親なるもの 断崖』曽根富美子
『女盗賊プーラン』プーラン・デヴィ
『生かされて。』イマキュレー・イリバギザ、スティーヴ・アーウィン
『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』レヴェリアン・ルラングァ
『戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった』イシメール・ベア
『武装解除 紛争屋が見た世界』伊勢崎賢治
『洞窟オジさん』加村一馬
『メンデ 奴隷にされた少女』メンデ・ナーゼル、ダミアン・ルイス
『囚われの少女ジェーン ドアに閉ざされた17年の叫び』ジェーン・エリオット
『3歳で、ぼくは路上に捨てられた』ティム・ゲナール
『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』M・スコット・ペック
『ものぐさ精神分析』岸田秀
『続 ものぐさ精神分析』岸田秀
『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『5つのコツで もっと伸びる カラダが変わる ストレッチ・メソッド』谷本道哉、石井直方
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
『走れ!マンガ家 ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』みやすのんき
『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫
『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎
『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔
『新健康法 クエン酸で医者いらず』長田正松、小島徹
『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之
『長生きは「唾液」で決まる! 「口」ストレッチで全身が健康になる』植田耕一郎
・『病気が治る「気功入門」』中健次郎
『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『生きぬく力 逆境と試練を乗り越えた勝利者たち』ジュリアス・シーガル
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『生きる技法』安冨歩
『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳
『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健
『累犯障害者 獄の中の不条理』山本譲司
『自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』佐藤幹夫
『永山則夫 封印された鑑定記録』堀川惠子
『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハッドン
『くらやみの速さはどれくらい』エリザベス・ムーン
『悩む力 べてるの家の人びと』斉藤道雄
『治りませんように べてるの家のいま』斉藤道雄
『べてるの家の「当事者研究」』浦河べてるの家
『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史
『オープンダイアローグとは何か』斎藤環著、訳
『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』斎藤環、水谷緑まんが
『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』多田富雄、柳澤桂子
『逝かない身体 ALS的日常を生きる』川口有美子
『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』ロバート・カーソン
『記憶喪失になったぼくが見た世界』坪倉優介
『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ
『パレスチナ 新版』広河隆一
『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー
『黒い警官』ユースフ・イドリース
『アラブ、祈りとしての文学』岡真理
『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ』橘玲
『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』橘玲、海外投資を楽しむ会
『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希
『銀と金』福本伸行
『平成経済20年史』紺谷典子
『円の支配者 誰が日本経済を崩壊させたのか』リチャード・A・ヴェルナー
・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎
『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代
『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス
『動物保護運動の虚像 その源流と真の狙い』梅崎義人
『マネーの正体 金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと』吉田繁治
『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート
『紙の約束 マネー、債務、新世界秩序』フィリップ・コガン
『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵
『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』宋鴻兵
『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン
『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ
『ペトロダラー戦争 イラク戦争の秘密、そしてドルとエネルギーの未来』ウィリアム・R・クラーク
『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』ジェームズ・リカーズ
『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タース
『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原丈人

東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%/『人が死なない防災』片田敏孝


『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 ・東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%
 ・釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた
 ・津波のメカニズム

『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

必読書リスト その二

 まず、数字から申し上げます。
 釜石市の小学生1927人、中学生999人のうち、津波襲来時に学校管理下にあった児童・生徒については全員が無事でした。ただし、学校管理下でなかった児童・生徒のうち、5名が犠牲となりました。生存率は99.8パーセントです。
 今、トータルな「数」を申し上げましたが、子どもたち一人ひとりについても、語り継ぎたい話がたくさんあるのです。逃げていくときに、保育園の子どもたちを抱きかかえて避難所まで走った子どもがいました。あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんの手をとって逃げた子どもがいました。
 私が震災直後に釜石に入ったとき、「わしゃ、孫に助けられた」と、泣きながら学校の先生に俺を述べていたおじいちゃんがおられました。
 地震直後、釜石に出た津波警報の第一報は、予想される津波の高さ3メートルでした。この情報が、その後、6メートル、10メートルと更新されていくのですが、じつは、3メートルという第一報が出た後に、地域は停電してしまいました。したがって、6メートル、10メートルという続報は住民に届かなかった。そのおじいちゃんも、3メートルという情報だけを聞いて、「ウチの前の防波堤は6メートルだから、大丈夫」と思ったと言います。孫が「逃げよう、おじいちゃん」と言ってきたけれど、「3メートルだから大丈夫、大丈夫」と言ってとりあわなかった。そうしたら、孫が泣きじゃくりながら「じいちゃん、だめだ」と言って腕をつかんだというのです。そうなったら、おじいちゃんはしょうがないですよね。孫が泣いてまで言うのですから。「しょうがないな、じゃあ、行くか」と言って避難所へ歩き出し、しばらく行ったところですごい音がした。後ろを見たら、すぐそこまで津波が来ていた。もちろん、家は津波に破壊されていたそうです。

【『人が死なない防災』片田敏孝(集英社新書、2012年)以下同】

 同じような体験をした大人は他にもいた。

 釜石市では死者・行方不明者が1000人を超えた。8年間にわたる片田の防災教育がなければ被害はもっと大きくなったことだろう。「人が死なない防災」とは単なるスローガンではない。片田に「釜石の奇蹟」を誇る姿勢は微塵も見当たらない。むしろ「敗北である」として我が身を責めている。

 それにしても象徴的なエピソードだ。子供の声に耳を傾けない大人の姿を凝視する必要がある。「孫に助けられた」と泣いた爺さんは、その後、孫の話を聞く姿勢を改めただろうか? そもそも片田の防災講演に対して「いい加減にしてくれ」という住民からの反発があった。地域に対するマイナスイメージを嫌ったのだろう。人は自分の感情を生きる。そして他人の話に耳を閉ざすのだ。大災害ではほんのちょっとした判断ミスが生死を分ける。

 ほとんどの子どもが生き延びてくれたとはいえ、学校管理下になかった5人の子どもが亡くなっています。この子たちには、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。命を守ってあげられなかったのですから。
 5人のうち、2人は病気で学校を休んでいました。1人は、避難している途中で親御さんが迎えに来て、引き渡さざるを得なかった。そして、親御さんと一緒に亡くなっていました。
 もう1人は、下校後に母親と買い物をしているときに被災しています。この子は事情がありまして、かわいそうなことになったと思っています。小学校6年生の女の子で、普段はお父さんと2人で暮らしていました。お母さんは、少し離れた町に住んでいた。そういう家庭環境でした。地震当日は3月11日ですから、中学校に上がる準備をする時期でした。やっぱり女の子ですから、女親と相談して買いたいものもいろいろあったのでしょう。そういうことで、久し振りにお母さんが来てくれることになった。この子は、喜んで職員室に来たそうです。先生も、「行っておいで、行っておいで。よかったね」と言って送り出してあげた。そして、お母さんと買い物中に亡くなっていました。
 そして、もう1人。中学2年生の女の子です。この子に対しては、私には自責の念があります。
 私は、中学生向けの講演でこう言っていたのです。
「中学生は、もう助けられる立場じゃない、助ける立場だ。お父さん、お母さんが仕事に行き、高校生が町の学校へ行ってしまうと、地域に残っているのはお年寄りと幼児ばかりだろう。だから、もう君らは助けられる立場じゃないんだ。地域を守っていく立場なんだ」
 この子は、それを実践して亡くなってしまったのです。しかも、津波ではなく、地震で亡くなりました。
 どういうことかというと、家の裏に、1人暮らしのおばあちゃんが住んでいました。女の子はその家に走っていって、おばあちゃんに「逃げるよ!」と声をかけた。おばあちゃんも、逃げる準備をしていた。それを待っているときに大きな余震が来て、箪笥(たんす)が倒れた。女の子は、その下敷きになってしまったのです。「助けられる立場じゃない、助ける立場だ」と教えられ、それを実行したために亡くなったのです。本当に無念であり、申し訳ないという気持ちでいっぱいです。

「くれた」という言葉遣いがおかしいが、深く関わってきたがゆえの思い入れなのだろう。

 情況は異なるがいずれも大人が子供を殺したと考えてよかろう。よく覚えておこう。大人が子供を殺すのだ。たぶん日常においても同様である。子供の意見を封じ込め、躾(しつけ)と称して抑圧することで我々は子供をゆっくりと少しずつ殺している。そして殺され切った子供が大人になるのだろう。


 冒頭1分前後で二人が取り残されてその後、姿が消えている。釜石に津波が押し寄せたのは地震発生からちょうど30分後であった。

 東北地方太平洋沖地震の発生は14時46分18.1秒で、小さな第一波は数分後、青森で観測されている。気象庁は14時49分に大津波・津波警報を発表。大津波は15時15分~16時にかけて到達した。それは警報をはるかに上回る高さの波であった。

 関東大震災(1923年/死者・行方不明者10万5000人)は焼死、阪神・淡路大震災(1995年/死者6434人、行方不明者3人)は圧死、東日本大震災(2011年/死者1万5894人、行方不明者2561人)は水死が主な死因である。

 避けられない死と避けられる死がある。釜石の奇蹟が教えてくれるのはその事実である。

2016-07-15

ダニエル・チャモヴィッツ、三枝充悳、稲垣栄洋、岡ノ谷一夫、堀栄三、他


 21冊挫折、13冊読了。これ以上のペースで読むと読書日記も書けなくなりそうだ。

生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』ピーター・ウォード、ジョゼフ・カーシュヴィンク:梶山あゆみ訳(河出書房新社、2016年)/文章が肌に合わず。もったいぶった姿勢を感じる。

森浩一対談集 古代技術の復権』森浩一〈もり・こういち〉(小学館ライブラリー、1994年)/良書。「鋸喩経」(こゆきょう)を調べて辿り着いた一冊。ノコギリの部分はしっかり読んだ。

絶対の真理「天台」 仏教の思想5』田村芳朗〈たむら・よしろう〉、梅原猛(角川書店、1970年/角川文庫ソフィア、1996年)/シリーズの中では一番面白みがない。最後まで目を通したものの半分ほどは飛ばし読み。説明に傾いて閃きを欠く。

日本の分水嶺』堀公俊(ヤマケイ文庫、2011年)/文体が合わず。

ブレンダと呼ばれた少年 性が歪められた時、何が起きたのか』ジョン・コラピント:村井智之訳(扶桑社、2005年/無名舎、2000年、『ブレンダと呼ばれた少年 ジョンズ・ホプキンス病院で何が起きたのか』改題)/武田邦彦が取り上げていた一冊。双子の赤ん坊の一人がペニスの手術に失敗する。性科学の権威ジョン・マネーが現れ、性転換手術を勧める。男の子はブレンダと名づけられ少女として育てられる。ところが思春期になるとブレンダは違和感を覚え始める。後に逆性転換手術をして力強く生きていった。ところが訳者あとがきで驚愕の事実が明らかになる。これは読んでのお楽しみということで。神の位置に立って勝手な創造を行うのが白人の悪癖である。尚、扶桑社版の編集に対する批判があることを付け加えておく。

(日本人)』橘玲〈たちばな・あきら〉(幻冬舎、2012年/幻冬舎文庫、2014年)/文章の目的がつかみにくく行方が知れない。

リベラルの中国認識が日本を滅ぼす 日中関係とプロパガンダ』石平、有本香(産経新聞出版、2015年)/有本香の対談本は出来が悪い。

「朝日新聞」もう一つの読み方』渡辺龍太〈わたなべ・りょうた〉(日新報道、2015年)/これも武田邦彦が紹介していた一冊。文章が軽すぎて読めない。ネット文体といってよし。

紛争輸出国アメリカの大罪』藤井厳喜〈ふじい・げんき〉(祥伝社新書、2015年)/文章に締まりがない。

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか』小谷賢(講談社選書メチエ、2007年)/とっつきにくい。後回し。

はじめての支那論 中華思想の正体と日本の覚悟』小林よしのり、有本香(幻冬舎新書、2011年)/本書では「小林さん」と呼んでいるが、有本は動画だと「小林先生」と呼ぶ。ある種の芸術家に対する尊称なのか、個人的敬意が込められているのかは判断がつかない。有本同様、小林の対談本も一様に出来が悪い。「わし」という言葉遣いが示すように公(おおやけ)の精神が欠如している。

川はどうしてできるのか』藤岡換太郎〈ふじおか・かんたろう〉(ブルーバックス、2014年)/変わった名前である。まるで北風小僧(笑)。文章がよくない。

カウンセリングの理論』國分康孝〈こくぶ・やすたか〉(誠信書房、1981年)/『カウンセリングの技法』(1979年)、本書、『エンカウンター 心とこころのふれあい』(1981年)、『カウンセリングの原理』(1996年)が誠信書房の4点セット。國分康孝は実務的な文章でぐいぐい読ませる。ただし今の私に本書は必要ないと判断した。

法句経講義』友松圓諦〈ともまつ・えんたい〉(講談社学術文庫、1981年)/初出は『法句経講義 仏教聖典』(第一書房、1934年)か。初心者向きの解説内容である。宗教を道徳次元に貶めているように感じ、読むに堪えず。

これでナットク!植物の謎 植木屋さんも知らないたくましいその生き方』日本植物生理学会編(ブルーバックス、2007年)/ホームページに寄せられた質問に学者が丁寧に答えたコンテンツの総集編である。続篇『これでナットク! 植物の謎 Part2』(2013年)も出ている。

〈税金逃れ〉の衝撃 国家を蝕む脱法者たち』深見浩一郎(講談社現代新書、2015年)/パラパラとめくって食指が動かず。

タックス・イーター 消えていく税金』志賀櫻〈しが・さくら〉(岩波新書、2014年)/「タックス・イーター」をスパっと説明していないのが難点だ。具体的に個人を特定するほどの執念がなければ、ただの解説書である。

パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』渡邉哲也(徳間書店、2016年)/これも渡邉本としては出来が悪い。文章に人をつかむ力が感じられない。

いちばんよくわかる!憲法第9条』西修(海竜社、2015年)/良書。これはおすすめ。歴史的経緯を辿ると自衛隊の役割がくっきりと浮かび上がってくる。しかも西は自ら海外を訪れ、直接資料に当たり、関係者に取材している。半分だけ読んだが、それでもお釣りがくる。

日本人よ!』イビチャ・オシム:長束恭行訳(新潮社、2007年)/話し言葉ほどの切れ味が文章にはない。

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち』切通理作〈きりどおし・りさく〉(増補新装版、2015年/JICC出版局、1993年宝島社文庫、2000年)/編集した町山智浩からの申し出で復刊した模様。読み手を選ぶ本だ。オタク目線が強く、一般よりは特殊に傾く。切通本人の心情も湿り気が濃い。

 92冊目『日本人だけが知らない戦争論』苫米地英人〈とまべち・ひでと〉(フォレスト出版、2015年)/久し振りの苫米地本である。右傾化への警鐘が巧みで一読の価値あり。サイバー戦争の具体的な解説が圧巻。

 93冊目『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司〈おおぐり・ひろし〉(幻冬舎新書、2012年)/大栗はカリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長を務める人物だ。場の量子論や超弦理論で国際的な評価を得ている大物である。読みやすい教科書本。いくつかの蒙(もう)が啓(ひら)いた。

 94冊目『植物はそこまで知っている 感覚に満ちた世界に生きる植物たち』ダニエル・チャモヴィッツ:矢野真千子訳(河出書房新社、2013年)/良書。200ページ弱の小品。著者はイスラエルの学者。後半にわずかなダレがあるが、しっかりとニューエイジ系の誤謬を撃つ。

 95冊目『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』堀栄三(文藝春秋、1989年/文春文庫、1996年)/上念司〈じょうねん・つかさ〉が毎年繰り返し読む本である。登場人物に精彩がある。原爆を大本営参謀は知らなかったと書いている。陸軍中野学校と情報が共有されていないことがわかる。「日本の近代史を学ぶ」に追加。

 96冊目『創価学会・公明党スキャンダル・ウォッチング』内藤国夫(日新報道、1989年)/往時、内藤国夫は本多勝一と人気を二分するジャーナリストであったが、その晩節は暗く寂しいものであった。福島源次郎著『蘇生への選択 敬愛した師をなぜ偽物と破折するのか』と本書を併せ読めば、内藤国夫の下劣さが理解できる。基本的にジャーナリストは人間のクズだと考えてよい。

 97冊目『裏切りの民主党』若林亜紀(文藝春秋、2010年)/面白かった。若林は文章はいいのだが性格が暗い。表情や声のトーンからもそれが窺える。たぶん生真面目なのだろう。若林はクズではない稀有なジャーナリストである。事業仕分けの経緯と舞台裏がよくわかった。本書に登場する民主党参議員の尾立源幸〈おだち・もとゆき〉が先日落選した。

 98冊目『言葉の誕生を科学する』小川洋子、岡ノ谷一夫(河出ブックス、2011年/河出文庫、2013年)/小川洋子の前文は読む必要なし。対談は上手いのだが科学的知識の理解に誤謬がある。言葉の発生は歌であったと岡ノ谷は主張する。おお、我が自説と一緒ではないか。岡ノ谷の博識に対して小川の反応がよく一気読み。

 99冊目『言葉はなぜ生まれたのか』岡ノ谷一夫:石森愛彦・絵 (文藝春秋、2010年)/まあまあ。岡ノ谷は手抜き本が多そうだ。これも執筆なのか語り下ろしなのか微妙なところ。

 100冊目『なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか 仏教と植物の切っても切れない66の関係』稲垣栄洋〈いながき・ひでひろ〉(幻冬舎新書、2015年)/見事な教科書本である。稲垣は植物学者でありながら仏教の知識もしっかりしている。これはおすすめ。

 101冊目『結局は自分のことを何もしらない 役立つ初期仏教法話6』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/このシリーズでは一番よくまとまっていると思う。ただしエントロピーに関する記述は完全に誤っている。社会的信用のためにも削除すべきだろう。スマナサーラは小さな誤謬が多いので要注意。

 102冊目『初期仏教の思想(上)』三枝充悳〈さいぐさ・みつよし〉(レグルス文庫、1995年)/難しかった。三枝ノートといってよい。研究者の凄まじさがよくわかる。

 103冊目『あべこべ感覚 役立つ初期仏教法話7』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/サンガ新書のスマナサーラ本は慣れてくると1時間ほどで読める。やや牽強付会な印象はあるが、相変わらず読ませる。

 104冊目『ぼくは13歳 職業、兵士。 あなたが戦争のある村で生まれたら』鬼丸昌也、小川真吾(合同出版、2005年)/良書。ただし終わり方がよくないので必読書には入れず。読者を誘導しようとする魂胆が浅ましい。「自分は正しい」という感覚が目を見えなくする。たとえ目的が正しいものであったとしてもプロパガンダはプロパガンダである。コンゴの少年兵の悲惨と彼らが語る夢に心を打たれる。「チャイルド・ソルジャー」だから子供兵・児童兵が正しい訳語か。